蛍の光

こたつみかん

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三話

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 己もまた若い兄は、ぐるぐる廻る頭で考えた――どうして、石鹸の匂いがこんなにも苦しいのだろう――答はもう、知っている。
 最初はわからなかった。でも妹との夜を重ねるうちに気がついたんだ。
 
 石鹸の香りが、ユナの匂いを嗅がせてくれないから。だから苦しいんだって。

「謝ったって……だめだ」

 滑るように光点を下げてゆく。
 少しほっそりしてきた顎の先。白い喉元。触れることさえ躊躇してしまいそうな、細い鎖骨。そして、ピンク色のパジャマ。

 光がボタンを照らして止まった。

「……ぅん」

 首を曲げて光の行き先を見詰めていたユナは、闇の中でこくんと頷き、両手の指先を使ってパジャマのボタンを外し始める。

 ――おにいちゃんが、みてる――

 円い光が、少女の指先の動きを丹念に追い、ひとつはずれれば、もうひとつ下へと誘導した。

「ぜんぶ……おわった」
「脱ぐんだ」
「……ん」

 言われるがままに、もぞもぞとパジャマを脱ぐ。
 仰向けに寝た姿勢で袖から腕を抜こうとすると、どうしても胸を張る格好を取らねばならない――ユナは、頬を染めた――おにいちゃんは見てる。私のを照らしてる。

 このところ少し大きくなった気のする胸の先っちょのとこ。敏感なそこが、ペンライトの光が発する微かな熱を感じている――

「ふぁっ」

 刹那、襲いかかってきた快感に声を上げた。

 ねっとりと濡れ熱く火照った舌が、少女の鋭敏な淡い桜色の突起を包み込んだのだ。

「っ……っぅあ」

 慌てて自らの両手で自分の口を塞ぐ。
 階下は眠りに支配されているはずだが、それでも無音の闇の中で声を上げるのは、なにか禁じられた行為のような気がして。

 ――そう、実の兄の唇で己の躰を愛撫されながらも、ユナはそのこと自体にはっきりと背徳の念を感じてはいなかった。光に照らされた道を1本しか持たない少女に、これは間違った道だなどという考えが浮かぶはずもない。
 声を抑えたのは、その唯一の道が、自分が不用意に漏らした声のせいで壊れてしまいはしないかと、ふと思ったためだった。
 あまりにも大切なものを手にしていると、時にすべてのことが脅威と思えてしまう。

「おにいちゃ……ん」

 勇気を振り絞って言う。

 ――大丈夫。声を出しても壊れない。

「ゃ……痛っ……ぁん」

 舌の動きから開放された乳首に、なにか固く温かなものが当てられた。平坦な、しかし丸みを持った――ペンライトの先端だ。防水されたライトの先が、ぬりたくられた唾液を潤滑剤にして、ぐねりぐねりと無骨な愛撫を加えた。

「ぁぅ……はぁ」

 発達途上の感じすぎる乳首に、その愛撫は強すぎた。
 ユナは、溢れてくる涙の冷たさと、密着した部分から徐々に伝わってくるライトの熱との狭間でなす術もなく、背を反らせる。
 
 柔らかな音を立て、脱げたパジャマがカーペットの上に落下した。

「ぃっっ!」

 痛い。が、痛みに酔ってさらに痛みを欲してしまう。
 もっと強く、もっと強くと背を反らし、固いプラスチックを皮膚に食い込ませてゆく。

 しかし――唐突に痛みは消えた。

「おにぃ……ちゃん……?」

 ごそごそと布団が揺れる。密閉された布団の中で、さらに汗ばみだした妹の発する匂いに兄は我を忘れ、石鹸の香りを凌駕して香るユナの、汗の匂いがさらに強く嗅げる場所を探していた。
 やがて、さ迷う少年の鼻は、なだらかな窪地にたどり着く。

「やだあ」

 腋の下を鼻先で、舌でこねくり回されて、ユナは嬌声をあげた。

 だが、くすぐったさに笑顔を作る少女とは対照的に、兄は切羽詰まった表情でつるりとした無毛の窪みを味わっていた。
 汗に濡れてはいるが、うぶ毛さえないためにそれが強烈な匂いは変わらない。だから兄は直接舌で舐め取り、微かな酸味と、口の中から鼻腔に昇ってくる淡い香りを得る以外に方法はなく、夢中で舐める。
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