冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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人族の神エウラロノースと聖女アルダー

冥王、ゴブリンのイメージに疑念を持つ。

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 ボブゴブリンよりも強固な武装し大きな戦斧を振り上げるゴブリンが、魔法を使うゴブリンから魔石を抜き出しているペルセポネを睨みつけている。
 振り下ろされる戦斧は、ペルセポネの頭を狙っている。

――――ペルセポネは、気づいてないのか?

 俺のハルバードで戦斧を持つゴブリンの腕を斬り下ろすと、切断された傷口を手で押えもがき苦しむ大きなゴブリン。

「おい、魔石に集中するなっ。 傷ついたらどうする!!」
「でもあなたが、いるから……」
「おっ、でも今は戦闘ち――――」
「ありがとっ」

 輝かしい満面の笑みを俺に見せるペルセポネ。
 その可愛らしい笑顔に俺は、言いかけていた言葉をしまう。

――――ペルセポネの笑顔、何たる素晴らしい輝き!!

 もがき苦しんでいた大きなゴブリンが、力強く鼻を鳴らしていることに気づき、俺はハルバードを再び握りしめ振り返る。

「あっ、そのゴブリンの武器や防具、かなり良さげだから奪った方がいいかもね」
「奪うって。……ゴブリンのいるか?」
「それ、コベソに渡せば作り替えしてくれるんじゃない。あの奴隷だった二人ように」
「あぁ、そうだな……」

 鼻息が荒い大きなゴブリンは、血塗れになった手で落ちた棍棒を拾い上げると、俺を払い除けるかのように振り回す。
 風を切る程に勢いが増す棍棒は、次第に大振りとなり大きなゴブリンは、その勢いに負けよろけ出す。

――――弱い魔物として代表格のゴブリン。冒険者ギルドで討伐の依頼があったり、最初に戦うのはゴブリンとか、だと思ったがこの世界では違うのか。

 風を切る棍棒を躱した俺の視線に、大きなゴブリンは、棍棒を何ふりふり構わずに振り続ける。
 振りすぎてよろけてしまうゴブリン。
 俺はハルバードで大きなゴブリンの頭を狙う。

 よろけた大きなゴブリンの頭が破裂しそのまま地面へ倒れ、首元から血飛沫をまき散らす。

 少し離れた所からユカリ達の声が。

「こっちもぉぉっ」
「リフィーナ、ユカリ足を。 ミミン魔法で、ですわ」
「むぅぅ! どりゃァァっ」
「フラガラッハッ!!」

 フィルの支援魔法、ドナの微力ながらも攻撃も入り大きなゴブリンを圧倒。
 大きいゴブリンは、やまない攻撃に押され片膝を付き頭を垂れる。
 頭上より急降下するフラガラッハが、大きなゴブリンの首を素通りすると、転がり落ちる大きなゴブリンの頭部。
 切断された首から血を噴き出しながら、大きなゴブリンの体は崩れていく。

「勝ったぁぁっ」
「ええ、勝ちましたわ」
「むぅ、大きいかったよぉ。 このゴブリン」
「このゴブリン。 ボブゴブリンって言うんだ」

 鑑識眼を使って横たわるゴブリンの死体を見ているユカリの鞘に戻る聖剣フラガラッハ。

「フィルとドナも、助かったわ」

 フェルトの声がけにフィルとドナも笑顔で頷く。
 ユカリ達は、大きなゴブリンを後にし更に先へ足を進める。
 そんな中、俺は大きなゴブリンの鎧を剥ぎ取り始めると、後続のフィルとドナは、俺の姿を見て、顔が引き攣り、嫌悪の眼差しが俺に届く。
 だが、俺はそんな事すら気にせずに、その鎧を空間収納へ押し込むと、魔石を眺めるペルセポネと共に先に進むユカリ達の後を追う。
 しばらく経つと、驚くリフィーナの声が聞こえると次々と驚きの声が続く。

「えぇっ、不思議すぎるぅぅぅ!!」
「な、なんで?」
「む、むむむむむぅっ」
「この扉、ベヒーモスと同じ部屋にあった。 でも……」

 待っていたのは大きな扉の前に立つユカリ達。
 ただ、草原の中堂々と立ち尽くす大きな扉を支える物は無く、まるで地面から生えているようにしか見えない。
 すると、疑心なリフィーナが駆け出し、その扉の裏へ回り込もうとする。

「裏からぁ、開けたらどぉなるぅっ。……っ痛ったぁぁいィィっ」
「リフィーナさまっ」

 何か障害物に顔をぶつけたリフィーナは、鼻を抑えながらもがき苦しみ暴れている。そこに駆けつけるフィル。

「なによっ、壁あるじゃないっ」
「えっ、ほんとです」

 リフィーナがぶつかった所をペタペタと手を触れる。フィルを見たフェルトが、その壁をまじまじと眺めている。

「これが絵なら芸術的に最高ですわ」

――――たしかに、草原の絵画としてなら普通かもしれんが風で雲や草が揺れる絵画が、あるなら最高の描写の絵画かもしれん。

 フェルトの言葉に納得する俺の横で、未だに鼻を抑えているリフィーナを下視するペルセポネ。

「そのエルフのフィルがいるから真面目だと思ってたのに、やはり本質は隠せないようね」
「なっななな。 私はいつも真面目よ」
「どうしかしら。 ダンジョン内なのに緊張感まるで無い軽率な行動をみたら――――」
「なによっ。 和むでしょ」
「―――はぁ、やはりアホエルフ」
「アホ……ってぇぇ」
「リフィーナ様はアホではありません」

 悲痛な表情のリフィーナを庇うかのようにフィルが、紅潮する顔でペルセポネに激抗する。

「フィル……」
「リフィーナ様は、アホエルフじゃないんです。 リフィーナ様は、アホの代わりにマヌケでお茶目なんです。 だからアホじゃないんです、アホエルフじゃないんですぅっ」

 喰いかかるフィルの発言にペ頬を引つるペルセポネと、泣き目なリフィーナ。

「フィルぅぅぅ」
「全くフォローになってないのは、エルフだから?」
「リフィーナ様の事を悪く言わないでくださいっ」
「あんたが、そのアホエルフの事を何度もアホ言ってたし、しまいにマヌケとか言ってるし」
「えっわたしそんな事言いました?」

 気まずそうなペルセポネと泣き目のリフィーナが首を縦に振るとユカリやフェルトにミミンも同じく振る。周りが同じ動きをすることでハッとするフィルは、ドナの顔を凝視し何かを訴えかける。
 そのドナも、首を縦に振るとフィルは申し訳なさそうな表情で、体をモジモジとさせ口を動かす。

「アーク種の方はとても高貴で素晴らしい方なのです。そんな悪口なんて言えません」
「へぇ、アーク種ねぇ。 アーホ種の間違いじゃないの」
「アーク種ですぅっ!! リフィーナ様はマヌケですど、アーク種でアイナノア様は本当に素晴らしい方。 まるで太陽のような方ですぅっ」

 再びフィルの口から悪い発言を受けたリフィーナだが、『アイナノア』という名前が出た途端、素早く立ち上がり話を終わらせようとする。

「いやぁ、まぁ大丈夫よ。 この話は終わり」
「リフィーナ様、素敵ですぅ」
「ええ……まぁ……」

 困惑のリフィーナにフィルは、情景の眼差しを向ける。
 その時扉に耳をつけ中の様子を伺うフェルトとミミンが騒がしい。

「何か聴こえますわ」
「むぅ、大きな声。 沢山の叫び声」
「あれか、誰か既に入っていて俺たち、入れないのか?」
「未踏の階よ。 誰も居ないハズよ」
「リフィーナぁぁっ」
「むぅぅぅっ!!」

 俺の言葉にリフィーナが、ズカズカと扉に迫るとフェルトとミミンを掻き分け扉に耳をつけようとした途端、軋む音を大きく立てながら扉が開く。
 リフィーナ達三人は、雪崩のように部屋に倒れてしまう。

「ちょっとっ。 開いてないんじゃなかったのぉぉ」

 フェルトとミミンへ振り返り文句を言うリフィーナ。だが、二人はその文句さえ流し部屋を凝視して固まっている。そして続いてユカリやフィルにドナも部屋の中に視線を奪われている。

「何があるんだ?」
「あぁ、これは大変ね」
「ん? あれは」

 ペルセポネがうっすら笑みを浮かべる部屋の中では、巨大な翼のないドラゴンに群がる数多くの様々なゴブリンが戦っている。



◇◇◇◇



 グランウェスの一角にある豪華な屋敷の中。
 皇帝ともう一人の男が、グランウェスの街並みを眺めながら会話している。

「エヴァン。 勇者とはあの程度なのか?」
「はい。 魔王討伐に来た時から、覇気すら感じ取れない程の人物でした」
「報告ではそう聞いてたが、直接視て剣聖のお前がそう言うなら……やはりこれが本当なのだろう」

 頷く剣聖エヴァンは、腰に神聖な輝きを放つ唾と鞘を魅せる剣を着け、太い眉毛に焼けた肌から目尻に数多くのシワを見せる。
 屋敷の庭で二人の子供が、剣の素振りをしている姿が目に入る皇帝と剣聖エヴァン。

「それにしてもフェルティエーゼ様の姿が、見えませんでした」
「うむ。 幾年も会えずにいたが、やっと会えるとなるとこうも会えぬとは」
「聖王メイガザス。 なにやら色欲的な噂を聞きますが、別の部隊に調べさせてます」
「頼む。 それにしてもブラウンのベヒーモスに苦戦するほど実力が低いとは。 勇者の質……転移者の質を見誤ったのかエウラロノースは?」
「ユカリと言う勇者がランドベルクで召喚された事で不穏な空気が有りましたから」
「うむ。 文献は無いが初代の勇者が女性以降全て男性の転移者が勇者だったのだ」

 部屋の扉をノックする音。
 皇帝が、振り向き入る指示を伝えると悲壮な表情をする女性が、皇帝に詰め寄る。

「あなた、フェルティエーゼはっ。 フェルティエーゼは大丈夫でしたか?」

 深刻な面持ちで首を横に振る皇帝を見ると、崩れるように床に手を付き項垂れる女性。
 皇帝が、膝を着き女性を立ち上がらせる。

「マリアンヌ。 見ていないだけだ」
「奥方様。 今フェルティエーゼ様が無事か調査部隊が行方を探しています」
「数年前、調査部隊はフェルティエーゼを見失ったのでは? 今回本当にみつかるのですか」

 涙を流すマリアンヌを見つめる皇帝。

「生きている」
「あなた」
「エヴァン。 見つけろ必ず」
「はっ」

 頷く剣聖エヴァンは、その返事と共に部屋を出て扉を閉める。

『探せ』か。

 フェルティエーゼ様はこの聖国のどこかにいるだろうが、もう一つはどうしたらいいものか……。
 廊下を歩き考え事をする剣聖エヴァンとすれ違う執事とその後ろに商人らしき格好をした二人の男。
 一人は顔も体型も丸い男に、もう一人は長身ながらお腹だけ出っ張った男が、その執事の後について行き皇帝の部屋に入っていく。

「皇帝が、自らの部屋へ通すとは珍しい。 それよりもだ……」

 独り言を放つほど剣聖エヴァンは、商人らしき格好をした二人を記憶にとどめこの場を後にした。
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