冥王さま、異世界に憧れる。~現地の神からいきなり貰った勇者スキルが全く使えない冥王とその妻は破壊神!?~

なまけものなのな

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人族の神エウラロノースと聖女アルダー

冥王、期待に胸をふくらませるが……。

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 部屋の様子を伺うフェルトとミミンに続きリフィーナが驚きのあまり口が開いている。
 更にユカリに、フィルとドナもその光景に唖然とする。
除く部屋の中は平らな石床に、壁も石で部屋を囲むが、それよりもその中の状況にユカリ達は、驚いている。

「なに、この状況?」
「あーっ、あぁ、あれはなんですの?」
「むぅ。 トカゲ? ドラゴン?」
「恐竜……」
「キョウリュウ? あれってキョウリュウって魔物? トカゲ……どう見てもドラゴンのような」
「ユカリ、鑑識眼でお願いですわ」

 焦りの色を見せるリフィーナとフェルトの顔を見たユカリは、直ぐに目を青くし鑑識眼を使う。

「あれドラゴンのように見えけど、それよりもこの状況おかしくない?」
「私もですわ。 もしあれがドラゴンだとしてもまさか、ゴブリンとなんて」
「むぅ、ゴブリン対ドラゴン」
「アースドラゴン……あのキョウリュウみたいの。 アースドラゴンっていうみたい」

 ユカリの言葉に絶句するリフィーナ達。

――――この世界に来て二度目のドラゴン。

 アースドラゴンは、首が短く基本後ろ足で立っている。ゴブリンとの交戦を見ると、尾での攻撃に加え前足の爪に噛み付きしか見られない。
 そしてそのアースドラゴンの周りには数多くのゴブリンが、アースドラゴンと戦っている。
 アースドラゴンゴミを払うかように振り回す尾に前足、口を開いてゴブリンを噛み砕く。
 ゴブリン、数で押し寄せ隙のある所へ攻撃。
 アースドラゴンから離れた所から魔法を放つゴブリンがいる。
 ユカリの鑑識眼から見れた内容がリフィーナ達に伝わると再び絶句するリフィーナ達。

「あぁあああぁぁっアースドラゴンっ!!」
「あの魔王ノライフの時にいたヤツとは見た目が違いますわ」
「むぅ。 翼が無いドラゴンがアースドラゴンなの?」
「アースドラゴンもだけど、ゴブリンの中にもメイジとか、強いそうなのが……」

 ユカリの『メイジ』という言葉が耳に入ったのか、耳を動かすペルセポネ。
 そこに、アースドラゴンが部屋が揺れるほどの咆哮を放つ。
 怯むゴブリン達の中に、怯えきって失神してしまっている。
 ユカリ達は、武器を手に取りゆっくりと前に進む。
「まずはゴブリンを倒す」
「ええ、ゴブリンを倒したらアースドラゴンですわ」
「む、温存しながらぁ?」
「ゴブリンのレベルは、さっきのより強い程度」

 ユカリの声に落ち着き始めるリフィーナやフェルトは、フィルとドナに声をかける。

「フィルは、支援魔法」
「はい、リフィーナ様」
「ドナは、フィルを守って」
「わかった、わん」

 ゆっくりと部屋の中央へ進むユカリ達だが、ペルセポネに首根っこを捕まれ驚くユカリ。
 近くにいるゴブリンが、気づき駆け寄ってくる。

「ちょっと。 なにしてるの?」
「ペルセポネさん。 手を離してですわ」
「むぅ。 おねぇさま乱心?」
「……ペルセポネさん。 なんですか?」
「なんですか、じゃないよ。 この中で魔法使うやつ何処?」

 ペルセポネは、ユカリの首根っこを放すと痛そうに苦しむユカリは、ゴブリンメイジの居る場所を指さす。
 ニンマリとほほ笑むペルセポネは、ユカリから手を離しユカリの指した方へ駆ける。
 崩れ落ちるユカリは、咳き込んでしまう。

「ゲボゲボ」
「大丈夫?」
「ユカリ?」
「むぅ」
「だ、大丈夫。 いきなり掴まれたから」

 ユカリを心配するリフィーナ達。
 ユカリは軽く手を挙げ無事と知らせると、周囲を見回すフェルトは、大盾を構えゴブリンの群れに近づく。

「アトラクトォォッ」

 その言葉を叫ぶフェルト。
 アースドラゴンに群がるゴブリン共が、一斉にフェルトの大盾へ視線を向ける。
 アースドラゴンもフェルトの大盾に注意が行くが、直ぐに視線を逸らし何度か首を横に振る。

「アースドラゴンの引き付けるの。 やはりムリでしたわ」
「アースドラゴンがゴブリンを攻撃してくれれば……」
「挟み撃ちできそうですわね」
「むぅ、ファイアボールゥゥッ」
「貧弱そうなのに、強そうな武器振り回してきたぁっ」

 武器を振り上げゴブリンが一斉にフェルトの大盾に目掛け突進。
 ミミンの火弾が、ゴブリンの行く手を狭めつつ何体か火だるまとなり、転がり焼け散っている。
 迫り来るゴブリンをリフィーナとユカリの挟撃。
フェルトの大盾スキルで、ゴブリンの攻撃を弾き、そこにミミンの攻撃魔法で追撃。
 そこにフィルの支援魔法が、放たれるとユカリ達がより活発な動きを見せる。

「一体、抜けた」
「ドナ、フィルぅ」
「っ……わん」

 不気味な笑みをするゴブリンが逆手に持ったナイフの切っ先をフィルに向け襲いかかる。
 固まったかのように動くことが出来ないフィルの前にドナの武器が、襲いかかるゴブリンの首を落とす。

 暗色なローブのフードを深く被り、杖の先を頭上に掲げるゴブリンメイジの群れは、この部屋の壁に沿うように並んでいてアースドラゴンへ魔法を放っていた。
 だが、今は突如乱入してきたペルセポネにむけられている。

「ふん、なによ。 そんなに魔石がおしいの?」

 ペルセポネの言葉をはじき返すかのように、立ちはだかるのは大きな盾を持つゴブリンの数々。

「何も言葉返してくれないのねぇ。 魔物ならアースドラゴンに攻撃している意味不明なのに」

 言葉と捉えられない何かを喚き散らす大盾のゴブリン。

「まぁ、魔族なら嬉しいんだけどねっ」

 薄らと笑みを浮かべるペルセポネは、二本の剣を握りゴブリンメイジへと襲いかかる。
 ゴブリンメイジを守る大盾のゴブリンが、ペルセポネの攻撃をはじき返す。
 ゴブリンメイジが、火弾やイシツブテ、氷の塊等、様々な魔法がペルセポネへと打ち込まれる。
 俺が見てもわかる程の、ゴブリンメイジが放つ魔法は弱い。

――――初級魔法ってやつか。俺に付けられたスキルが使えればもしかしたら、初級位の魔法使えたのかもな。

 ペルセポネは、魔法を躱しつつ、剣で打ち消している。


 俺は、この部屋を見渡し、状況を再確認している。


 小型のゴブリンの群れと戦うのは、ユカリ達。
 メイジや中堅ほどの実力者とで戦うのはペルセポネ。
 そして目の前にアースドラゴンが、少し口を開き嘲笑うかのように、俺を見下げている。

――――ん、もしかしてこれは。

 俺は、ハルバードをクルリと一回転回し、ゆっくりとアースドラゴンの目の前に立ち見上げてやる。
少しだけ上半身を起こし俺を睨みつけるアースドラゴン。

――――異世界にきて、俺の活躍する場面到来だな。

 俺は、再度ユカリ達やペルセポネの行動が変わってないか確認。
 アースドラゴンが、口を閉じると右前脚を俺の頭を目掛け振り下ろす。部屋を轟かせる程の咆哮が、部屋を包む。
 振動するアースドラゴンの咆哮の中、俺はアースドラゴンを見上げハルバードを握り構えた。




◇◇◇◇




 グランウェスの街一角、皇帝達が滞在する建物とは反対の地域にある館。
 その部屋にて泣きべそをかく聖王メイガザス。
そして、聖女アルダーは自分の息子に呆れて溜息を吐く。

「アドライガ、この俺がわざわざ、追いかけてやったのにぃぃぃぃっ」
「その名前を口にするでない。 しかしあの皇帝も、人が出来たといえる」
「あれで? このボクを睨んで冷たい感じだった」
「向こうは同盟を切りたがっておる。 じゃが、聖王であるメイガザスを人質にしなかった。 それに……」

 人質という言葉を聖女アルダーから聞いた聖王メイガザスは、肩を竦め縮こまってしまう。
 だが、それすら気にせず聖女アルダーは口を開く。

「未だ確信できんじゃろうな」
「なにが?」
「勇者が二人いると。 本来は勇者は一人しか存在しない。 勇者を召喚した国は神エウラロノース様の莫大な加護がある。 しかもエウラロノース様のお膝元である聖国に剣を向ける事は人族を敵にすることじゃ」
「なら、勇者キンジョウには更なる活躍を」

 聖女アルダーは、杖を突きながらゆっくりと窓から外を眺める。

「あれは、ダメだな」
「あれって、勇者キンジョウの事?」

 聖女アルダーは、踵を返し部屋の中心を見詰める杖を二回突くと、部屋の中で音が響く。
 部屋の中心の空間が歪む。
 聖王メイガザスはその音に耳を塞ぐが、歪みに目を奪われている。

「おかぁちゃん。 う、うるさ……」
「お呼びでしょうか? アルダーさま」
「うむ、どうじゃ」
「なんで?」
「勇者と賢者はいま、休みを取ってます」
「精神的には」
「勇者は、無能と呼ばれ苛立ち。 賢者は魔石を抜かれ腑抜けてます」

 聖王メイガザスが何回も瞬きをし今の現状に驚いている。
 歪みから現れたのは、勇者キンジョウと同行していた奴隷である金髪女性。

「勇者と賢者を差し出し。 新たな勇者の召喚を祈願するか」
「ええ、彼らは生命力や精力が人一倍ありますので、エウラロノース様も喜ぶかと」
「あの勇者達が戻る前に行動せねばな」
「わかりました。 この話を聞かれたメイガザス殿はどうします?」

 奴隷金髪女性に冷ややかな目でみられた聖王メイガザスは、無言のまま聖女アルダーに助けを求めようとするが、その聖女アルダーも同じ目をしている。

「かまわん。 こいつもお前と同じよ」
「げっ……」

 聖王メイガザスを汚い物を見るような表情をする奴隷金髪女性は、再び歪みを生み消えていく。

「なんなんだ、このボクがあの汚い奴隷と同じぃ?」
「そうじゃ。 あの女もお前も、この国の兵らも私が生み出したのじゃ」
「ボクは、おかぁちゃんの子だ!! あの女の……」

 怯える聖王メイガザスに、音も立てずに近づく聖女アルダーは、目を開いて聖王メイガザスの顔を覗き込むように近づける。

「そうじゃ。 だから今の事は忘れるがよいっ」

 聖女アルダーは、力強く大きく杖を床に突く。
すざましい轟音が部屋を振動させる。

「お前は、あの勇者に影響されすぎじゃ。 色欲なんぞ持ちやがって……」

 崩れ落ちるように床に眠る聖王メイガザス。
 聖女アルダーは、再び窓の外を見詰める。
 すると、再び部屋の中心から透き通った声がする。

「あら、良いじゃない。 色欲にまみれた、こ・ど・も」
「良く来れたものじゃ」
「これるわよ。 なんたって神ですからぁ~」

 エウラロノースが微笑みながら聖女アルダーに近づく。

「ふん。わしからしたら未だに勇者……」
「それ以上は禁句。 そもそも、その名前はとうに捨ててるし……。 それにしてもよく覚えているわね、老いぼれになっても」

 首を振るエウラロノース。
 聖女アルダーは、ため息混じりで発する。

「お前のように、そう簡単に割り切れん。 むしろ良く出来る」
「最初は私も辛かったわー。 慣れてしまえばなんて事ないのよ。 やっぱりアルダーもやる?」
「その時が来たら考えるが……。 最後の最後じゃ」

 眉間に皺を寄せてエウラロノースを睨む聖女アルダーに、エウラロノースは、首を傾げる。

「おまえ何故、女の勇者を召喚したのじゃ?」
「あぁ、間違っちゃったのよねぇ。 本当はあのキンジョウだっけ? あの男を召喚しようとしたんだけどぉ、まぁ適当に引っぱってきたからねぇ」

 あっけらかんと答えるエウラロノースに聖女アルダーは、頭を掻きむしる。

「とにかく、あの二人を送る。 新しい奴を召喚してくれ」
「あら、もう使い物にならなくなったの?」

 頷く聖女アルダーに、不敵の笑みをするエウラロノース。

「性欲……精力に強そうなのを選んだんだけどなぁ。 それだけじゃ魔王討伐しての肉体熟成は無理なのね」
「今度はマトモな者を頼む」

 エウラロノースは、部屋の中心へ歩き出し次第に体と共に空間が歪む。

「うーん、やってみるけど……。 あっ、賢者は要らないわ。 それはあなたが使ってぇぇ。 ……じゃあねぇアルダー」
「ちょっ、賢者は要らんじゃとぉっ」

 再び溜息を吐く聖女アルダーは、窓の外を眺める。

「このわしもそろそろ、あいつと同じ事をするしかないのか」

 目を覚ます聖王メイガザスに気づいた聖女アルダーは、杖を突くと。

「私は気を失ってしまい、すみません。 ……聖女アルダー。 どうなされましたか?」
「うむ……。 直しすぎたか……」

 聖女アルダーは頭を掻きながら肩を落とし、再び溜息を吐き悩みにふけっていた。
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