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人族の神エウラロノースと聖女アルダー
冥王、心残りのダンジョン、地上の状況に気がかり。
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ペルセポネが投げ飛ばした、装飾されている兜を被ったゴブリンの死体を見下ろすユカリ達。
鑑識眼を使うユカリの言葉にリフィーナやフェルトは驚く。
「このゴブリン。 ゴブリンジェネラル」
「ジェネラルって……」
「将軍って事ですわ。 もしかしたらゴブリン達は軍隊だったのかも知れませんわ」
「む、胸ぽっかり穴空いているぅ」
「絶対、ペルセポネさんの仕業ですよね」
頷くユカリ達は、ゴブリンメイジの所にいた格好が優れたゴブリンなのだから魔石持ちだろうと判断。だが、魔石すら無いから投げつけたのだろうと、意見が一致した。
――――それで間違いないだろう。
アースドラゴンは轟音となる咆哮を上た途端、急に静かになる。
ペルセポネの無数の斬撃がアースドラゴンを襲う。
――――やっとかなり希少な魔石を取るとが出来そうだなペルセポネ。
俺は、無念のため息を吐く。
後ろからユカリとフェルトが申し訳なさそうな顔で俺に声を掛けくる。
「ハーデスさん。 すみません」
「本当に、申し訳けないですわ」
沈んだ表情をする二人。後ろの方でミミンとリフィーナも暗い表情をしている。
――――謝る必要はないんだが?
俺は、突撃謝られたことに戸惑っている。
「何よその顔。 戦っている魔物の横取りなんて冒険者としてしてはいけない行為なの……だから悪かったわ」
「むぅぅ、ミミンも魔物を倒さないといけないと思ってた」
――――リフィーナの態度が目に余る。しかし、それを言うなら……。
俺はペルセポネとアースドラゴンの戦いに視線を戻す。
細かいかすり傷が幾つも付けられたアースドラゴンは、瞼や口元が腫れフラフラしている。
意気揚々とする笑顔のペルセポネは、アースドラゴンの胸部に斬撃が集まる。
アースドラゴンはペルセポネに恐怖を感じ距離を取り出す。
それに苦笑いする俺は、ユカリ達へ視線を動かす。
「まぁ、気にしないでくれ」
「そう言ってくださるのであれば、私達は助かるますわ」
「お互い様だな」
「違いますわ。 殆ど私達が」
「魔物の横取り――――うちの妻がアースドラゴンを奪っている……冒険者でもある妻のペルセポネが奪ったのだ、夫であるこの俺が何も言えまい」
無言になってしまったフェルト。
すると、リフィーナが鼻を鳴らす。
「ふん、これでお互い様よ。 別のパーティーで動いている訳では無いのだから、取った奪われたなんて関係ないって」
リフィーナの強気の発言に、ため息を吐くフェルト。
すると、落下した衝撃音が、突風と共に伝わってくる。
白目を剥き横たわるアースドラゴンの胸元からドロっとした肉片が漏れている。
剣を振るって血を落とすペルセポネは、険しい顔をしながらこちらに向かってくる。
「だから、これよ。 ランクAなんてバケモンよ」
「こんなにも簡単に倒すなんて、本当に素晴らしいですわ」
「むぅ、おねぇさま。 ステキィッ」
険しい顔をするペルセポネの視線が、ユカリを捉える。
その突き刺さる視線に血の気が引くユカリ。
「あのアースドラゴン。 本当に魔法使ったの?」
「えっ……わたしですか? ええ確かに使ってました……です」
ユカリはリフィーナ達の顔を伺うが、ペルセポネの視線はやはり、ユカリ自身に向けられていることに気付く。
「ユカリが、言ってたんじゃない? 強化魔法やら回復魔法とか」
「えっ、あんな遠い所にいたのに聞こえて……」
ユカリの小声をペルセポネは気にせずに、ユカリに顔を近づける。
「無いわよ、魔石。 胸の辺り探ったけど全く無かったの。 ユカリ本当に魔法使っていたのでしょうねぇっ!?」
ペルセポネに睨みつけられたユカリは、その恐怖のあまり引き攣り言葉が出ない。
そんな状況だが、俺はアースドラゴンの元に歩み寄る。
鱗が破損やら剥がれているのと、血が流れ過ぎている。特に胸部の損傷が激しい。
ミミンが、ペルセポネとユカリの間に入り緊迫した状況を阻止する。
「ムムムっ、止めてぇっ! おねぇさま。 キスするなら私でっ」
唖然とするペルセポネにユカリ達もミミンの言葉に戸惑っている。
「キスなんて……しないけど」
「ムッ! すごい近づいていました。 ユカリにキスを迫るなら私を選んでっ」
涙目のミミン。
そんなミミンを残念そうな目で見てため息を吐くリフィーナとフェルト。
フィルとドナは、なんの事か意味不明な顔をしている。
すると、ユカリが口を開く。
「あの、アースドラゴン。 使ってましたし、鑑識眼で使用できるの見えました」
「じゃぁ、なんでっ無いのぉぉっ!!」
鬼の形相のペルセポネがユカリに迫る。
顔を紅潮させ、怒りと嫉妬を二人に向けるミミンが、再び割って入る。
「む、私ペルセポネおねぇさまの事が好きぃぃっ!! それにドラゴンの魔石って胸じゃなく、別の所にあるのよっ」
「えっ!?」
ペルセポネが、ミミンの突然の言葉に呆然となる。
頬を赤らめるミミンは、顔を手で覆い小声で「むぅ言っちゃった言っちゃった」と恥ずかしそうにしている。
ゆっくりと二歩ほど後退するペルセポネ。
「そんな……」
その顔は、先程までとは全く異なり絶望へと変わる。
ミミン以外のユカリ達は、ペルセポネの表情に困惑している。
「だから、いくら探しても無かったのか……」
「そうです。 だってここに貴女の運命の人がいるんですから」
「ミミン。 貴女の魔石は角なのよね」
「むぅー、そうですぅ」
「ドラゴンも、個体で魔石の位置がバラバラってことなのよね?」
「むぅ、そうですぅ……って魔石!?」
眉をひそめるペルセポネ。
その顔を見たミミンは、何故かうっとりしている。
――――ミミン。夫がいるこの場で妻のペルセポネに手を出し愛の告白するは如何なものか?だがペルセポネは、今魔石にしか目がかないぞ。
ペルセポネは、急に周囲を見渡して俺を見つける。
「あっ、め……待って!!」
すぐにアースドラゴンの死体を、俺の空間収納に入れると、ペルセポネの悲痛の声が。
俺は、踵を返しペルセポネとユカリ達の元に歩み進め、兜を被ったゴブリンを指し示す。
「そのゴブリンジェネラルも回収し、このダンジョンから出なくてはな」
「何言ってるの? まだまだ先は長いのよ」
「あの勇者キンジョウが、地上にもどって数日経っている。 それにコベソやらあの猫獣人がどうなっているか」
「そうですわ。 私達の目的は……」
「ええ、勇者としての力があると証明する為に、ダンジョンを潜ること」
フェルトとユカリが目を見開いて口にする。
リフィーナとミミンも大きく頷く。
「――――と、言うことだ。 あのアースドラゴンは地上に出てからだ」
俺の言葉に肩を落としおちょぼ口のペルセポネ。
ゴブリンジェネラルを回収していると、フェルトとリフィーナが首を傾げつつ辺りを見回す。
フィルとドナも二人の行動に困惑気味。
そんな二人に俺は声を掛ける。
「どうした?」
「出ると行っても……」
「そう、どう出るのやらですわ」
しょげるペルセポネは、ミミンと共にゴブリンが落とした武具を拾っている。
「来た道を戻るって事?」
ユカリが、ボソッと告げるが広い部屋なので結構響く。
全員ユカリに視線を向ける。
――――まさにそのとおり。だが誰もその言葉を言いたくなかった。戻るということを。
――――うむ。異世界なら転移門やらそういう装置あると踏んでいた俺だ。しかしそれらしき物は無い。
戻るのも一苦労。
それは皆感じ取っている。
俺は、唯一様々なアイテムを持っていそうな魔石好きが、もしかしたら転移のなんらかを持っているかカマをかけてみた。
「ペルセポネ。地上へ戻る何かアイテム無いか?」
「あるっちゃあるけど……。来た道戻ってもいいんじゃない?」
――――うむ、俺としても戻る方が、ダンジョンを楽しるが、今は事が事だからな。
「アースドラゴンの魔石を渡す。皆それでいいか?」
「ええ、今は早く地上に戻るのが先決ですわ」
フェルトの言葉にユカリ達は首を縦に振る。
耳がピクリと動いた途端、見下すかのように笑みを浮かべやってくるペルセポネ。
「アースドラゴンの魔石、絶対くれるなら使って上げる」
「それなら頼む」
「本当にぃ? 約束守れる?」
険しい顔をするペルセポネの疑い深さに、ユカリ達は笑顔で頷いている。
「それじゃぁ、使うわ。これ地上への帰還転移の巻物ね」
巻いてある古そうな羊皮紙を広げ、描かれてある魔法陣が薄ら光を帯びると……。
一瞬真っ暗になった途端、光が目に飛び込んで俺は目をつぶってしまう。
ざわざわと人の声が聴こえ俺は、目を開けるとそこはグランウェスのダンジョン入口に到着していた。
慌ててやってくるギルド職員らしき若そうな男性。
「もしかして……」
「ベヒーモスは倒した。 これ依頼書」
ユカリ達をかき分けペルセポネが、依頼書をギルド職員に見せると、更に慌てて声が高くなる。
「お、お疲れの所すみません。 早くギルドに……私に着いてきてくださいぃ」
何回も頭を下げるギルド職員について行く俺たちは、周りにいる冒険者達の視線を集めながらそそくさとその場を後にギルドに向かう。
足取りが早い職員の視線が受付嬢と合うと、何かを察知したのか、今の仕事をそっちのけでギルドマスターを呼びに奥へ駆ける。
受付していた冒険者達は、職員について行く俺たちを口を半開きにし眺めている。
職員の案内で冒険者ギルド中庭なのか、広い場所にたどり着く。
職員がいなくなると同時にギルドマスターと受付嬢が、入ってきた。
「遂に、記録更新なのだな?」
「ギルドマスター早いです」
「あの依頼書も無くなると寂しいものだな」
「全く寂しくありません。 むしろ別の依頼書を貼る時めっちゃくちゃ邪魔でした」
ギルドマスターと受付嬢が、にこやかに会話をし情景の眼差しで俺たちを見ている。
「大丈夫だろうな? この前、あの胡散臭い勇者のキンジョウが、持ってきたベヒーモスと同じだったら」
「マスター静かにしてください。では、皆さん出してください。ベヒーモスを」
不安気なギルドマスター。
満面の笑みの受付嬢。
ユカリ達の視線が俺に向けられ、俺は空間収納から大きな奴を引っ張り出す。
おもむろに出された巨躯の魔物。
白目を向き、横たわるアースドラゴン。
目の前に現れたアースドラゴンを見てギルドマスターは絶句、受付嬢は口を開いたまま腰を抜かし地面に座り込んでしまう。
「なんだこれ……いや、もしかこれは?」
「べべべべベヒーモスゥゥゥじゃないっ!!」
「おい、確認しろ。 もしかしたらこれは、アースドラゴンかもしれんっ」
「はっはいぃぃっ」
受付嬢は、慌ててポケットから小瓶を取り出し、それを飲み干すと目が青く光る。
「ギルド……マスター。 これは」
「遂に記録更新といえるな?」
「はいっ、三十五階層主のアースドラゴンですっ!!」
口を結びながらも目を輝かやかせているギルドマスターと受付嬢。
――――その表情は明らかに喜んでいるだろうが、何故口を閉ざしている?
アースドラゴンの周囲を汲まなく観察している受付嬢の様子を、俺たちは眺めていた。
鑑識眼を使うユカリの言葉にリフィーナやフェルトは驚く。
「このゴブリン。 ゴブリンジェネラル」
「ジェネラルって……」
「将軍って事ですわ。 もしかしたらゴブリン達は軍隊だったのかも知れませんわ」
「む、胸ぽっかり穴空いているぅ」
「絶対、ペルセポネさんの仕業ですよね」
頷くユカリ達は、ゴブリンメイジの所にいた格好が優れたゴブリンなのだから魔石持ちだろうと判断。だが、魔石すら無いから投げつけたのだろうと、意見が一致した。
――――それで間違いないだろう。
アースドラゴンは轟音となる咆哮を上た途端、急に静かになる。
ペルセポネの無数の斬撃がアースドラゴンを襲う。
――――やっとかなり希少な魔石を取るとが出来そうだなペルセポネ。
俺は、無念のため息を吐く。
後ろからユカリとフェルトが申し訳なさそうな顔で俺に声を掛けくる。
「ハーデスさん。 すみません」
「本当に、申し訳けないですわ」
沈んだ表情をする二人。後ろの方でミミンとリフィーナも暗い表情をしている。
――――謝る必要はないんだが?
俺は、突撃謝られたことに戸惑っている。
「何よその顔。 戦っている魔物の横取りなんて冒険者としてしてはいけない行為なの……だから悪かったわ」
「むぅぅ、ミミンも魔物を倒さないといけないと思ってた」
――――リフィーナの態度が目に余る。しかし、それを言うなら……。
俺はペルセポネとアースドラゴンの戦いに視線を戻す。
細かいかすり傷が幾つも付けられたアースドラゴンは、瞼や口元が腫れフラフラしている。
意気揚々とする笑顔のペルセポネは、アースドラゴンの胸部に斬撃が集まる。
アースドラゴンはペルセポネに恐怖を感じ距離を取り出す。
それに苦笑いする俺は、ユカリ達へ視線を動かす。
「まぁ、気にしないでくれ」
「そう言ってくださるのであれば、私達は助かるますわ」
「お互い様だな」
「違いますわ。 殆ど私達が」
「魔物の横取り――――うちの妻がアースドラゴンを奪っている……冒険者でもある妻のペルセポネが奪ったのだ、夫であるこの俺が何も言えまい」
無言になってしまったフェルト。
すると、リフィーナが鼻を鳴らす。
「ふん、これでお互い様よ。 別のパーティーで動いている訳では無いのだから、取った奪われたなんて関係ないって」
リフィーナの強気の発言に、ため息を吐くフェルト。
すると、落下した衝撃音が、突風と共に伝わってくる。
白目を剥き横たわるアースドラゴンの胸元からドロっとした肉片が漏れている。
剣を振るって血を落とすペルセポネは、険しい顔をしながらこちらに向かってくる。
「だから、これよ。 ランクAなんてバケモンよ」
「こんなにも簡単に倒すなんて、本当に素晴らしいですわ」
「むぅ、おねぇさま。 ステキィッ」
険しい顔をするペルセポネの視線が、ユカリを捉える。
その突き刺さる視線に血の気が引くユカリ。
「あのアースドラゴン。 本当に魔法使ったの?」
「えっ……わたしですか? ええ確かに使ってました……です」
ユカリはリフィーナ達の顔を伺うが、ペルセポネの視線はやはり、ユカリ自身に向けられていることに気付く。
「ユカリが、言ってたんじゃない? 強化魔法やら回復魔法とか」
「えっ、あんな遠い所にいたのに聞こえて……」
ユカリの小声をペルセポネは気にせずに、ユカリに顔を近づける。
「無いわよ、魔石。 胸の辺り探ったけど全く無かったの。 ユカリ本当に魔法使っていたのでしょうねぇっ!?」
ペルセポネに睨みつけられたユカリは、その恐怖のあまり引き攣り言葉が出ない。
そんな状況だが、俺はアースドラゴンの元に歩み寄る。
鱗が破損やら剥がれているのと、血が流れ過ぎている。特に胸部の損傷が激しい。
ミミンが、ペルセポネとユカリの間に入り緊迫した状況を阻止する。
「ムムムっ、止めてぇっ! おねぇさま。 キスするなら私でっ」
唖然とするペルセポネにユカリ達もミミンの言葉に戸惑っている。
「キスなんて……しないけど」
「ムッ! すごい近づいていました。 ユカリにキスを迫るなら私を選んでっ」
涙目のミミン。
そんなミミンを残念そうな目で見てため息を吐くリフィーナとフェルト。
フィルとドナは、なんの事か意味不明な顔をしている。
すると、ユカリが口を開く。
「あの、アースドラゴン。 使ってましたし、鑑識眼で使用できるの見えました」
「じゃぁ、なんでっ無いのぉぉっ!!」
鬼の形相のペルセポネがユカリに迫る。
顔を紅潮させ、怒りと嫉妬を二人に向けるミミンが、再び割って入る。
「む、私ペルセポネおねぇさまの事が好きぃぃっ!! それにドラゴンの魔石って胸じゃなく、別の所にあるのよっ」
「えっ!?」
ペルセポネが、ミミンの突然の言葉に呆然となる。
頬を赤らめるミミンは、顔を手で覆い小声で「むぅ言っちゃった言っちゃった」と恥ずかしそうにしている。
ゆっくりと二歩ほど後退するペルセポネ。
「そんな……」
その顔は、先程までとは全く異なり絶望へと変わる。
ミミン以外のユカリ達は、ペルセポネの表情に困惑している。
「だから、いくら探しても無かったのか……」
「そうです。 だってここに貴女の運命の人がいるんですから」
「ミミン。 貴女の魔石は角なのよね」
「むぅー、そうですぅ」
「ドラゴンも、個体で魔石の位置がバラバラってことなのよね?」
「むぅ、そうですぅ……って魔石!?」
眉をひそめるペルセポネ。
その顔を見たミミンは、何故かうっとりしている。
――――ミミン。夫がいるこの場で妻のペルセポネに手を出し愛の告白するは如何なものか?だがペルセポネは、今魔石にしか目がかないぞ。
ペルセポネは、急に周囲を見渡して俺を見つける。
「あっ、め……待って!!」
すぐにアースドラゴンの死体を、俺の空間収納に入れると、ペルセポネの悲痛の声が。
俺は、踵を返しペルセポネとユカリ達の元に歩み進め、兜を被ったゴブリンを指し示す。
「そのゴブリンジェネラルも回収し、このダンジョンから出なくてはな」
「何言ってるの? まだまだ先は長いのよ」
「あの勇者キンジョウが、地上にもどって数日経っている。 それにコベソやらあの猫獣人がどうなっているか」
「そうですわ。 私達の目的は……」
「ええ、勇者としての力があると証明する為に、ダンジョンを潜ること」
フェルトとユカリが目を見開いて口にする。
リフィーナとミミンも大きく頷く。
「――――と、言うことだ。 あのアースドラゴンは地上に出てからだ」
俺の言葉に肩を落としおちょぼ口のペルセポネ。
ゴブリンジェネラルを回収していると、フェルトとリフィーナが首を傾げつつ辺りを見回す。
フィルとドナも二人の行動に困惑気味。
そんな二人に俺は声を掛ける。
「どうした?」
「出ると行っても……」
「そう、どう出るのやらですわ」
しょげるペルセポネは、ミミンと共にゴブリンが落とした武具を拾っている。
「来た道を戻るって事?」
ユカリが、ボソッと告げるが広い部屋なので結構響く。
全員ユカリに視線を向ける。
――――まさにそのとおり。だが誰もその言葉を言いたくなかった。戻るということを。
――――うむ。異世界なら転移門やらそういう装置あると踏んでいた俺だ。しかしそれらしき物は無い。
戻るのも一苦労。
それは皆感じ取っている。
俺は、唯一様々なアイテムを持っていそうな魔石好きが、もしかしたら転移のなんらかを持っているかカマをかけてみた。
「ペルセポネ。地上へ戻る何かアイテム無いか?」
「あるっちゃあるけど……。来た道戻ってもいいんじゃない?」
――――うむ、俺としても戻る方が、ダンジョンを楽しるが、今は事が事だからな。
「アースドラゴンの魔石を渡す。皆それでいいか?」
「ええ、今は早く地上に戻るのが先決ですわ」
フェルトの言葉にユカリ達は首を縦に振る。
耳がピクリと動いた途端、見下すかのように笑みを浮かべやってくるペルセポネ。
「アースドラゴンの魔石、絶対くれるなら使って上げる」
「それなら頼む」
「本当にぃ? 約束守れる?」
険しい顔をするペルセポネの疑い深さに、ユカリ達は笑顔で頷いている。
「それじゃぁ、使うわ。これ地上への帰還転移の巻物ね」
巻いてある古そうな羊皮紙を広げ、描かれてある魔法陣が薄ら光を帯びると……。
一瞬真っ暗になった途端、光が目に飛び込んで俺は目をつぶってしまう。
ざわざわと人の声が聴こえ俺は、目を開けるとそこはグランウェスのダンジョン入口に到着していた。
慌ててやってくるギルド職員らしき若そうな男性。
「もしかして……」
「ベヒーモスは倒した。 これ依頼書」
ユカリ達をかき分けペルセポネが、依頼書をギルド職員に見せると、更に慌てて声が高くなる。
「お、お疲れの所すみません。 早くギルドに……私に着いてきてくださいぃ」
何回も頭を下げるギルド職員について行く俺たちは、周りにいる冒険者達の視線を集めながらそそくさとその場を後にギルドに向かう。
足取りが早い職員の視線が受付嬢と合うと、何かを察知したのか、今の仕事をそっちのけでギルドマスターを呼びに奥へ駆ける。
受付していた冒険者達は、職員について行く俺たちを口を半開きにし眺めている。
職員の案内で冒険者ギルド中庭なのか、広い場所にたどり着く。
職員がいなくなると同時にギルドマスターと受付嬢が、入ってきた。
「遂に、記録更新なのだな?」
「ギルドマスター早いです」
「あの依頼書も無くなると寂しいものだな」
「全く寂しくありません。 むしろ別の依頼書を貼る時めっちゃくちゃ邪魔でした」
ギルドマスターと受付嬢が、にこやかに会話をし情景の眼差しで俺たちを見ている。
「大丈夫だろうな? この前、あの胡散臭い勇者のキンジョウが、持ってきたベヒーモスと同じだったら」
「マスター静かにしてください。では、皆さん出してください。ベヒーモスを」
不安気なギルドマスター。
満面の笑みの受付嬢。
ユカリ達の視線が俺に向けられ、俺は空間収納から大きな奴を引っ張り出す。
おもむろに出された巨躯の魔物。
白目を向き、横たわるアースドラゴン。
目の前に現れたアースドラゴンを見てギルドマスターは絶句、受付嬢は口を開いたまま腰を抜かし地面に座り込んでしまう。
「なんだこれ……いや、もしかこれは?」
「べべべべベヒーモスゥゥゥじゃないっ!!」
「おい、確認しろ。 もしかしたらこれは、アースドラゴンかもしれんっ」
「はっはいぃぃっ」
受付嬢は、慌ててポケットから小瓶を取り出し、それを飲み干すと目が青く光る。
「ギルド……マスター。 これは」
「遂に記録更新といえるな?」
「はいっ、三十五階層主のアースドラゴンですっ!!」
口を結びながらも目を輝かやかせているギルドマスターと受付嬢。
――――その表情は明らかに喜んでいるだろうが、何故口を閉ざしている?
アースドラゴンの周囲を汲まなく観察している受付嬢の様子を、俺たちは眺めていた。
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一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
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