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妹
花瓶
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花瓶を割ったことがある。
メイドの目を掻い潜って、一人で遊んでいた時だ。
公爵家にある花瓶だから、それ相応に高価で、それ相応に貴重な芸術品だったのだろう。
勉強は出来ても、芸術に疎い私だから、それがどの程度の価値があるかなんて見ただけでは分からない。
私の目からはただの白い花瓶にしか見えなかったけれど、その流線形のシルエットが美しいことくらいは分かったし、さぞかし価値のあるものであろうことは、考えるまでもなく察することが出来た。
何故その花瓶を割ったかと言えば、もちろん、事故でしかない。
好き好んで花瓶を割る人間など、そう多くはないだろう。
私はただ、白い花瓶に活けられていた、見た事のない小ぶりな赤い花が綺麗で、触れてみたくて、手を伸ばしただけだった。
その時まだ、身長の低かった私は、台の上に乗っている花に手が届かずに、背延びをして、どうにか赤い花に触れようとしていた。
それでも赤い花には届かずに、手が花瓶にぶつかってしまい、台から落ちた花瓶が割れた。
そういうことだ。
花瓶は驚くほど小さな音を立てて割れた。
私のイメージだと、もっと『ガシャン!』と大きな音を立てるものだと思っていたのだが、せいぜいが『パリ』という鈍い音でしかなかった。
花瓶の材質がそういうものだったのか、床に敷いてあるカーペットがほとんどの衝撃を吸収したのか。
私には音が鳴らない理由は分からなかったけれど、ともかく、私が花瓶を割ったことは、誰にも気づかれることがなかった。
とはいえ割れた花瓶をそのままにする勇気は私にはなかったし、誰かが通って怪我をしては大変だ。
怒られるのは嫌だったけれど、すぐに片付けてもらおうと、使用人を探しに行った。
メイドの目を掻い潜って、一人で遊んでいた時だ。
公爵家にある花瓶だから、それ相応に高価で、それ相応に貴重な芸術品だったのだろう。
勉強は出来ても、芸術に疎い私だから、それがどの程度の価値があるかなんて見ただけでは分からない。
私の目からはただの白い花瓶にしか見えなかったけれど、その流線形のシルエットが美しいことくらいは分かったし、さぞかし価値のあるものであろうことは、考えるまでもなく察することが出来た。
何故その花瓶を割ったかと言えば、もちろん、事故でしかない。
好き好んで花瓶を割る人間など、そう多くはないだろう。
私はただ、白い花瓶に活けられていた、見た事のない小ぶりな赤い花が綺麗で、触れてみたくて、手を伸ばしただけだった。
その時まだ、身長の低かった私は、台の上に乗っている花に手が届かずに、背延びをして、どうにか赤い花に触れようとしていた。
それでも赤い花には届かずに、手が花瓶にぶつかってしまい、台から落ちた花瓶が割れた。
そういうことだ。
花瓶は驚くほど小さな音を立てて割れた。
私のイメージだと、もっと『ガシャン!』と大きな音を立てるものだと思っていたのだが、せいぜいが『パリ』という鈍い音でしかなかった。
花瓶の材質がそういうものだったのか、床に敷いてあるカーペットがほとんどの衝撃を吸収したのか。
私には音が鳴らない理由は分からなかったけれど、ともかく、私が花瓶を割ったことは、誰にも気づかれることがなかった。
とはいえ割れた花瓶をそのままにする勇気は私にはなかったし、誰かが通って怪我をしては大変だ。
怒られるのは嫌だったけれど、すぐに片付けてもらおうと、使用人を探しに行った。
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