悪役令嬢は鼻歌を歌う

さんごさん

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悪役令嬢4

第一印象

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「少しやり過ぎたかしら?」

 私が聞くと、「とてもお綺麗ですよ」とマリアが応える。

 せっかくだからと、目いっぱいおめかししようとしたら、随分と派手な装いになってしまった。
 赤いドレス、ダイアのイヤリング、クルクルと巻いた髪。

 香水は華やかな薔薇の香りを選んだ。
 鏡を見るととても派手で、コンプレックスのきつい目つきが際立ったようにも見える。

 やり直す時間もないのだけれど、これ以上やると下品になってしまうギリギリのラインの派手さになっている。

 マリアは綺麗だと言ってくれたが、信じて良いのだろうか。

 第三王子殿下は正午ごろにやって来た。
 午後に来る予定だと聞いたが、時間に遅れないように近くで待機していたのかもしれない。

 生憎の天気なので、脱いだ外套がびしょ濡れだ。
 徒歩で来たわけでもないだろうし、玄関先までは馬車に乗っていただろうに、それでも外套がびしょ濡れになるほど雨脚が強い。

 外套を雨具として着ていたおかげで、彼自身はほとんど濡れていなかったけれど、それでも足元は水を含んで色が変わっている。

「ようこそお越しくださいました」

 父が外向きの笑顔を貼り付けて言う。
 家族全員でのお出迎えだ。

 ナリアと、その母親のレイチェルもいる。
 彼女たちは殿下がやってくることを事前に聞かされていたのだろうか。

 ちらりとチェックしてみるが、無難な薄青色のドレスを揃えたように着ているだけで、焦りは感じられない。

 もっとも、焦りの感じられる身だしなみになっていたら、メイドたちが叱責されてしかるべきなのだけれど。

「出迎え感謝する、フェリエール公爵」

 殿下は父と時候の挨拶を交わす。
 私と同じ十三歳のはずなのに、しっかりした人だった。

 父との挨拶に気後れした様子もなく、慣れた様子で受け答えしている。

 彼はとても王子様然とした人物だった。

 王家にたまに生まれるという銀色の髪と瞳を持ち、髪は後ろで束ねている。
 中性的だけど凛々しくて、優しげな目もとからはどこか哀愁のような物が感じられる。
 背はまだ私と同じくらいだが、年齢を考えたら、あっという間においていかれるだろう。

「こちらが妻のレイチェルです」

 長い挨拶を終え、父がナリアの母を紹介する。

「レイチェルです」

 名乗り、カーテシーをする義母。
 私の母よりも格下の伯爵家だ、と以前の私は彼女の出生を罵倒していたが、由緒ある家柄なので、礼儀作法は必要十分に美しかった。

「今日はよろしく、夫人」

「よろしくお願いいたしますわ」

 短く挨拶を交わすと、「娘のナリアとシルティーナです」と私たちを紹介される。

 私と挨拶を交わす瞬間、何故かホッしたように息をついた。

 意味は分からないけれど、悪いことではないだろう。

 第一印象は悪くなかったようだと、私も安堵の息をついた。


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