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21.後悔と決断
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「……ベリーナはどうしたんだ?」
「旦那様、ご自分でお分かりにならないのですか」
小さくため息を吐きながら、ジョルジュはカミロの前に置かれた冷めたポタージュを見つめた。
「いきなり後継ぎのことを言ったから怒っているのか」
「奥様は怒っていたわけではございません。言葉を選ばずに言っていいのなら、恐らく失望されたのではないかと」
「失望?」
「ええ。ご自分が仰ったことを今一度思い出してみてください」
「言ったこと……」
口に手を当て黙り込んだカミロの姿に、ジョルジュは重い口を開いた。
「このままの関係を続けていきたい、旦那様は奥様に対し笑顔でそう仰いました」
「確かにそう言ったが、それのどこがおかしい?」
「お気付きになりませんか?」
「何をだ?」
まるで謎解きのようで要領をえないジョルジュの言葉に、カミロは苛立ちを隠さず声を荒げた。
だが、ジョルジュはそんなこと気にもせず、厳しい表情のまま彼を見据えた。
「ずっとこのまま……その言葉の意味がお分かりにはなりませんか?」
「あっ……」
その問いかけに、カミロはようやく自らの過ちに気付いた。
自分の想いを自覚したばかりの彼にとって「このまま」という言葉は、ここから本当の夫婦になっていきたいとベリーナへの想いを伝えたつもりだったのかもしれない。
「恐らく奥様には『このまま契約結婚という関係を続けよう』と、そう聞こえたのでしょう」
「だったら、今すぐに誤解だと謝りにいけばベリーナだって……」
「それはおやめになった方がよろしいかと。後から何を言っても奥様にとっては、きっと言い訳にしか聞こえません」
「なら私は一体どうすればいいんだ」
頭を抱え力なく項垂れるカミロに、ジョルジュはそっと寄り添う。
「まだ勝機はございますよ、旦那様」
「何?」
「旦那様はご自分がどういう人間かお忘れですか? 誰もが絶望する中、お一人でこの公爵家を守り抜いたのは、他の誰でもない貴方様ではございませんか。それほどのお方がこれしきのことで、愛した女性を逃すわけがございません」
不敵な笑みを浮かべ、ジョルジュはカミロをまっすぐ見据える。
「たとえ奥様が旦那様にとって受け入れ難い決断されたとしても、それを受け止めた上で覆すくらいできなくてどうするのです?」
「ジョルジュ……」
「まぁ、それでも奥様はなかなかに手強いお相手でしょう。実際、これまでも旦那様に真っ正面からぶつかる場面を何度も見ておりますから」
「確かに、簡単にどうにかなる相手ではないな」
「まぁ、そんな方に惚れたのは旦那様ご自身です。振られたくないのであれば、次こそは必ずや奥様のお心を掴んでください。さもないと公爵家全員を敵に回すことになります故……」
「それはどういう意味だ?」
眉間に深く皺を寄せまるで睨むような険しい表情のカミロにも、ジョルジュは怯むことなく微笑みを返す。
「旦那様、奥様に惚れ込んでいるのは何も貴方様だけではございません。本当の家族のように愛情深く私達に接してくださる奥様のことを傷つけるようなことがあれば、使用人一同黙ってはおりませんので」
「待ってくれ。一応ここの主人は、私……」
「いいですか? 旦那様にはもう後はございません」
「ジョルジュ、少しは私の話も聞いて……」
「奥様がどんな決断をなされたとしてもまずは受け止めてください、話はそこからです。その後は……」
「わかった、もうわかった!」
カミロはジョルジュの口を慌てて手で押さえた。
「ベリーナのことは絶対に諦めたりしない。公爵家にとって、いや私にとって妻となってほしいと思える女性は、彼女しかいないんだ」
「そうやって素直に伝えたらいいんですよ、旦那様」
「ジョルジュ……そう簡単に言うな」
思わず笑い声を上げたカミロを見つめ、ジョルジュ目を細めた。
「さぁ、旦那様。まずはこのお食事を残さず食べるところから始めましょう。奥様に負けない元気をつけるにはやはり食べること、それ以外ございません」
「よし……」
ベリーナを真似て勢いよく両手を合わせたカミロは、大きく息を吸い込んだ。
「今日も全ての恵みに感謝を!」
「旦那様、ご自分でお分かりにならないのですか」
小さくため息を吐きながら、ジョルジュはカミロの前に置かれた冷めたポタージュを見つめた。
「いきなり後継ぎのことを言ったから怒っているのか」
「奥様は怒っていたわけではございません。言葉を選ばずに言っていいのなら、恐らく失望されたのではないかと」
「失望?」
「ええ。ご自分が仰ったことを今一度思い出してみてください」
「言ったこと……」
口に手を当て黙り込んだカミロの姿に、ジョルジュは重い口を開いた。
「このままの関係を続けていきたい、旦那様は奥様に対し笑顔でそう仰いました」
「確かにそう言ったが、それのどこがおかしい?」
「お気付きになりませんか?」
「何をだ?」
まるで謎解きのようで要領をえないジョルジュの言葉に、カミロは苛立ちを隠さず声を荒げた。
だが、ジョルジュはそんなこと気にもせず、厳しい表情のまま彼を見据えた。
「ずっとこのまま……その言葉の意味がお分かりにはなりませんか?」
「あっ……」
その問いかけに、カミロはようやく自らの過ちに気付いた。
自分の想いを自覚したばかりの彼にとって「このまま」という言葉は、ここから本当の夫婦になっていきたいとベリーナへの想いを伝えたつもりだったのかもしれない。
「恐らく奥様には『このまま契約結婚という関係を続けよう』と、そう聞こえたのでしょう」
「だったら、今すぐに誤解だと謝りにいけばベリーナだって……」
「それはおやめになった方がよろしいかと。後から何を言っても奥様にとっては、きっと言い訳にしか聞こえません」
「なら私は一体どうすればいいんだ」
頭を抱え力なく項垂れるカミロに、ジョルジュはそっと寄り添う。
「まだ勝機はございますよ、旦那様」
「何?」
「旦那様はご自分がどういう人間かお忘れですか? 誰もが絶望する中、お一人でこの公爵家を守り抜いたのは、他の誰でもない貴方様ではございませんか。それほどのお方がこれしきのことで、愛した女性を逃すわけがございません」
不敵な笑みを浮かべ、ジョルジュはカミロをまっすぐ見据える。
「たとえ奥様が旦那様にとって受け入れ難い決断されたとしても、それを受け止めた上で覆すくらいできなくてどうするのです?」
「ジョルジュ……」
「まぁ、それでも奥様はなかなかに手強いお相手でしょう。実際、これまでも旦那様に真っ正面からぶつかる場面を何度も見ておりますから」
「確かに、簡単にどうにかなる相手ではないな」
「まぁ、そんな方に惚れたのは旦那様ご自身です。振られたくないのであれば、次こそは必ずや奥様のお心を掴んでください。さもないと公爵家全員を敵に回すことになります故……」
「それはどういう意味だ?」
眉間に深く皺を寄せまるで睨むような険しい表情のカミロにも、ジョルジュは怯むことなく微笑みを返す。
「旦那様、奥様に惚れ込んでいるのは何も貴方様だけではございません。本当の家族のように愛情深く私達に接してくださる奥様のことを傷つけるようなことがあれば、使用人一同黙ってはおりませんので」
「待ってくれ。一応ここの主人は、私……」
「いいですか? 旦那様にはもう後はございません」
「ジョルジュ、少しは私の話も聞いて……」
「奥様がどんな決断をなされたとしてもまずは受け止めてください、話はそこからです。その後は……」
「わかった、もうわかった!」
カミロはジョルジュの口を慌てて手で押さえた。
「ベリーナのことは絶対に諦めたりしない。公爵家にとって、いや私にとって妻となってほしいと思える女性は、彼女しかいないんだ」
「そうやって素直に伝えたらいいんですよ、旦那様」
「ジョルジュ……そう簡単に言うな」
思わず笑い声を上げたカミロを見つめ、ジョルジュ目を細めた。
「さぁ、旦那様。まずはこのお食事を残さず食べるところから始めましょう。奥様に負けない元気をつけるにはやはり食べること、それ以外ございません」
「よし……」
ベリーナを真似て勢いよく両手を合わせたカミロは、大きく息を吸い込んだ。
「今日も全ての恵みに感謝を!」
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