王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

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ふぅ。っとため息が出た。

私は賭けに負けてしまうのか・・・。

今は朝の5時。
考え過ぎて余り寝られず、自室で物思いにふけっていた。

ウィルフォードと話すようになって、彼の人となりを知り、段々と惹かれている自分がいたのだ。

もらったメガネも花束も、彼の優しさが詰まっていると知った時には嬉しかったのを覚えている。
そして、今も私の目的の為に力を貸してくれているウィルフォード。

当時は婚約解消をする為だけに始めた事だったが、時が経ち段々と変わって来ている自分がいた。

私の知っている前世の知識をこの世界に広めたい。
そして、より良い暮らしが出来るように少しでも力になれたら嬉しい。

そう思えたのは全てウィルフォードのおかげだ。

彼が私の話を聞き、一緒に話し合い。
忌憚きひのない意見を言ってくれる・・・。

とても有意義な時間だったのだ。

そして、いつも私の事を想ってしてくれているのが分かる。

・・・そんなの、意識しない訳がない。

心ではそう感じている。だが、認めてしまえば、私の夢はそこで終わってしまうのだ。

そうしたら、ウィルフォードと結婚して忙しい毎日を過ごす事になるだろう。

まだ、夢を諦めきれない自分がいるのも確かだ。

それに、まだこの気持ちに気付いたばかり。

期限の卒業までには時間があるので、もう少し考えてから、ゆっくりと答えを出して行こうと、そう納得をしたのであった。

でも、意識をし始めたら、なんだか会うのが恥ずかしいと感じてしまう。
妙にドキドキしてしまうのだ。

しかも同じクラスだから絶対に毎日顔を合わす事になる。

普通に話せるかしら・・・。

その時、ドアをノックする音が聞こえて来た。

「おはようございます。
早速、お仕度をさせていただきますね。
・・・お嬢様?
お疲れの様ですが、大丈夫ですか?」

私の異変に気がついたサーシャが顔を洗う為の桶をテーブルに置き、心配そうに聞いて来た。

「おはよう。そうね、昨日の課題が長引いてしまったのよ。」

そう伝える事しか出来ない。

「そうなのですね。ですが、無理は禁物ですよ」

そうして、いつも通りに準備をしても貰ったのだ。


その後、朝食を済ませてから学園へと向かう。

クラスに行くとアグネスがいた。

「おはよう。アグネス」

「エル、おはよう!
・・・どうしたの?いつもの元気がないわよ。何かあった?」

やはり、疲れが出ていたのか、アグネスが心配そうに聞いて来たので、私は『寝不足なの』と話したのだ。

そうして、アグネスと他愛の無い話をしていると、メルティアがやって来た。

「エル、顔が疲れてない?どうしたの?」

開口一番に聞かれるぐらいにひどいのだろうか。
クマを隠すように少し化粧を乗せて来たのだが・・・。

今日は早く帰って寝ようと思うフェアリエルだった。

そして、アグネスにも話した内容を伝えると、メルティアが口を開く。

「最近忙しそうだし、マジッククレーの開発も程々にね。
そうだわ!以前いただいたスチーム、凄く良かったのよ!
顔に当ててから保湿するとお肌がプルプルになったの!本当にありがとう」

とても喜んでくれている。

喜ぶメルティアの様子を見ていたら、疲れなど吹き飛んだ。
なので、私は改善点がないかを聞いてみたのだ。

「そうね、お部屋の加湿をする時は、広さによって効き目が変わる事に気付いたの。
広いお部屋だと、余り実感が出来なかったので、調節を出来る様にすれば更に良くなると思うわ」

私はお礼を言い、アイディア帳に書き込みながら思案したのだった。



「おはよー!みんな!」
「ごきげんよう。ネフタリアさん。今日もお元気ですわね」
とメルティアとアグネスが挨拶をした。

「妖精ちゃん、聞いてる?」

カキカキカキ・・・。

とその時、目の前からアイディア帳がいなくなったのだ。

「これは、マジッククレー?
へぇ、面白い事が書いてあるじゃないか。これは妖精ちゃんが考えたの?」

私は驚き、見上げると、ラウルが勝手に見ているではないか。

「ちょっと!返してください!勝手に見るのはマナー違反ですわよ!」

そう訴える私の事などお構いなしに、アイディア帳を返そうとしない。

「僕と妖精ちゃんの仲でしょ?」

「なっ!?誤解を招く言い方をしないでちょうだい。わたくしには婚約者がいるのですよ!」

「そんなの僕には関係ないでしょ?」
・・・全く話が通じない。本当に疲れる。

そして、押し問答の末、先生が来てしまったのだ。

「みなさん、おはようございます。早速、朝のホームルームを始めますよ。
はい、席に着いてください」

そうして強制的にその場が終了したのだった。

あれ?・・・ウィルは?

ハッとして、ウィルフォードの席を見ると空席だった。
その後、ホームルームでウィルフォードは公務の為、休みだと先生が言っていたのだ。

昨日の今日で、気持ちの整理がついていない私は、気持ちを落ち着ける時間が稼げたことに、ホッとしたのだった。

・・・あれ?
結局、アイディア帳を返してもらってないじゃない!

どさくさに紛れて、アイツ~!!

脳内でイライラが爆発し、席で一人、行き場のない怒りに震えたのであった。

授業が終わり、合間あいまの休み時間。

返してもらおうとしても、奴は全然捕まらない。
クラスの男子生徒と話していたり、将又はたまた、席にいなかったりと、今日に限ってどうしても捕まらない。

あの人、いつもは何処からともなく出てくるのに、何で今日は出て来ないの?

そうこうしている内に、あっという間に放課後となってしまった。

私はメルティアとアグネスに奴を探す事を伝え、先に帰ってもらう様に言ったのだ。

みんな手伝うと言ってくれたが、申し訳ないので断った。
奴に、みんなの時間が奪われるのは我慢ならない。

確認すると奴の席にはカバンがある。
そう遠くには行っていないだろう。

よし、捜索開始だ!

クラスを出て他のクラスを見てみた。
まずはAクラスを覗いてみるが、奴は居なかった。

次はCクラスよ。
そして、Cクラスも見たが誰もいない。

庭園かしら?

そう思い引き返そうとしたら・・・。
背後から耳元で話し掛けられたのだ。

「妖精ちゃん。今日は熱烈だね!そんなに僕に会いたかったの?
ふふっ、嬉しいな!」

驚きとなったが、ひるんではいられない。

出たな!諸悪しょあく根源こんげんが!

怒りをあらわにしそうとなり、踏みとどまった。
ウィルフォードに言われた事を思い出したのだ。

ふぅ。・・・冷静に。毅然と。

「手帳を返して頂けますか?」
「ん?これの事?」
「はい。返してください」
「返すから、そんなに怒らないでよ。
・・・はい」

思わずひったくってしまった。
これぐらいは見逃してほしい。

返して貰えたのでもう用はない。
なので、冷たく『では、これで』と伝え、Cクラスを出ようとした時、ラウルが口を開いた。

「妖精ちゃん待って!悪かったよ。揶揄からかうつもりはなかったんだ。
この通り。・・・ね?」

ラウルは両手を合わせ、少し頭を下げて上目遣いで見てくる。

何という、ほだされてはダメよ。
・・・毅然と。

「謝罪を受け取ります。ですが、二度とこの様な事はしないでください。
とても不愉快です」

「分かったよ。 
けどさ、僕の気持ちも知って欲しかったんだ」

「気持ちとは?」

「君の事が気になるんだ。もちろん好きと言う意味で」

・・・!?
今までの行動のどこに好きな要素があった?
それに、婚約者がいる事を知っているのに何を言い出しているの?

私は思わず、苦虫を嚙み潰したような顔をしてしまった。

わたくしには、ウィルフォード様がいます」

「けど、政略でしょ?
君は彼を好きなの?そうじゃないよね?」

昨日好きかもしれないと気付いたばかりだ。
なんだか、恥ずかしくて顔が赤くなる。

そんなフェアリエルの様子を見ていたラウルは挑発的に聞き返して来た。

「ふーん。
・・・そう。
でもさ、その気持ちは本物?絆されていない?」

「・・・は?」

余りの返答に目が点になってしまった。

「だって、君は彼しか知らないじゃないか。比べようもないだろう?
それとも、他の男を知っているの?」

「知る訳ないでしょ!」

本当に、なんて事を言うのだ、この男は。

「じゃあ分からないじゃないか。
好きだと勘違いしている事なんて、にあるよ。
それに、恋に恋する年頃でもあるしね!
ああ、もちろん僕は違うよ!
君を可愛いと想っている」

な、にを言っているのかしら?
ウィルに対する気持ちが勘違い?

・・・いいえ。そんな事ないわ。
ウィル以外の人は知らないが、この気持ちは本物だ。

騙されてはいけない。

「ネフタリアさん。私の気持ちは私のものです。
貴方に、とやかく言われたくはないわ」

「そっかぁ。・・・残念。
でも、僕は諦めないよ!気持ちなんて、いつかは変わるものだろう?
だから、これからは遠慮せずにアピールさせてもらうね!
じゃあ、そろそろ帰ろうか。
馬車まで送って行くよ!」

まったく悪びれる様子もなく言い放った。
ラウルとこれ以上一緒に居たくないので『いいえ。結構よ』と伝えると『そう。じゃあまた明日ね!』と明るく言い残して去って行った。

なんだったのかしら。

ある意味、洗脳されかけたわ。危ない危ない。

あの人、今まで遠慮していた。って言っていたけれど・・・。
おかしいわね?遠慮ってどう言う意味だったかしら?
・・・私の辞書とは大分違うわね。

取り敢えず、無事アイディア帳を奪還できたのだ。

・・・疲れたな。早く帰って寝よう。

フェアリエルは思った。
所詮、凡人の自分が、ヤバい奴の考えを知ろうとしたのが、いけなかったのだ。
そして、謎は謎のままでも良い事があるのだと、学んだのであった。
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