【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね

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後日談

アディエル視点

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エルの婚約が整ってから、そろそろ1ヶ月が経とうとしている。

僕は、まさか2人が仮婚約だったとは知らなかったし、エルもかなり驚いていた事は記憶に新しい出来事だ。

でも、今の2人を見ると、互いに想い合っているのが分かるので、上手く行って本当に良かったと、兄ながらに思っているのである。

そして僕は執務机の上にある、今日処理しなくてはならない書類をパラパラと見ていると、サミュエルが入室して来たのだった。

「アディエル様、他家のご令嬢から、お手紙が届いております。お渡ししても宜しいでしょうか」

「ああ。ありがとうサミュエル」

サミュエルが手紙の束を執務机に置いてくれた。

懇意にしているご令嬢はいないが一体何の手紙なのだろうか。

不思議に思い、ざっと見ると、20通程来ている。
どれも面識の無い方ばかりだ。

仕事の合間だが、休憩を兼ねて目を通す事にしたのだ。

そして、サミュエルに用意をしてもらったお茶を一口飲んで読み始めたのだが、読んでいくうちに段々と気分が悪くなって来たのだった。

何だ?これは・・・。

手紙の内容を掻い摘んで話すと、こんな感じだったのである。

目が合い、手を振ってくれたのに、何故婚約の打診をしてくれないのですか?とか、貴方様は私の事がお好きなんでしょう?いつまでも待っております。など、訳が分からない物ばかり。

何とも言えない恐怖を感じ、関わりたくないと思ってしまった。
そして、書類の整理をしているサミュエルに声をかけたのだ。

「サミュエル申し訳ないが、代筆で断りの返事をしてもらえないか」

「はい。かしこまりました。
アルマ、代筆の方法を教えますので着いて来なさい」

『はい。よろしくお願いします』と元気に返事をしたアルマとサミュエルは、一旦、書類の整理をする事を止めて、少し離れたテーブルへと移動して行ったのであった。

僕はテーブルに両肘をつき、握った両手を額にあてる。

一体何だったんだろう・・・。
身に覚えがなくて思い出す事も出来ない。

・・・あれ?
まだ一通残っているな。

サミュエルが忘れて行ったのだろうか。
でも、封が開いていない。恐る恐る送り主を確認するとメルティア嬢だったのだ。

よかったと思わず安心してしまった。

あれから、僕とメルティア嬢は、手紙のやり取りをしたり2人で会ったりしている。

彼女の事は好ましいと思う。

エルと仲が良いので、結婚しても上手くやってくれるだろうし、それに気心も知れているからね。

そうやって利点を上げればいくつもあるのだが、彼女が求めているのは、そう言う意味ではないのだろう。

先日、彼女が想いを伝えてくれた時の表情を思い出す。
緊張しながらも真剣に伝えてくれた。
僕は彼女と同じ気持ちが返せるのだろうか。
そう考えれば考える程に分からなくなるのだ。

僕は昔、女性と見間違えられる事が日常茶飯事で外見にコンプレックスを持っていた。
男らしくなりたいが為に始めた剣術だったが、今では生きがいとなっている。

そんな見た目も、成長と共に身体つきが変わり、今は女性と間違えられる事はなくなったのだが、その影響か、今まで恋愛に興味がなかったのだ。

もちろん、女性を見て綺麗だな。と思う事はあるけれど、だからと言って異性として好きかと聞かれると、そうではない。

そして話は変わるが、なんだか最近のメルティア嬢は何かが変わった様に思う。前は遠慮を感じたが、今はそうではない。
それから、よく笑う様になった。

話題もエルの事ではなくなり、他愛ない話しをよくする様になったのだ。

彼女といると楽しいと思う。
だが、それは恋なのか。
考えているのだが答えは出ない。

とその時、昔の出来事が頭をよぎったのだった。

・・・そもそも、考える事なのか?

以前、学園在学中に友人が言っていたのだ。
恋は頭でするのではなく、心でする事なんだよ。と。

聞いた時は意味が分からなかった。
だが、友人の言う事が正しいのであれば、一生懸命考えている僕は、間違っていると言う事だ。

そして更にもう一つ言っていたのだ。
その人の笑顔が見たい。しくは、他の異性と居る所を見るのが嫌だ。そう思ったのなら、それは恋の始まりだよ。と。

恋愛とはなんて難しいのだろう。

そう考えて、ふと庭に目を向けたのだ。
すると、エルと殿下が楽しそうに散歩しているのが目に入った。

最近は2人が一緒にいる事が増えたと感じる。

2人の幸せそうな顔を見ると、嬉しいと思う反面、うらやましいとも思ってしまうのは、仕方のない事だろう。

・・・そうだ。

もしかしたら、エルに聞けば分かるのではないか?と一瞬頭をよぎったのだが、流石に妹に、恋とは何か、を教えてもらうのは、兄としてどうかと考え直し、僕はメルティア嬢の手紙を大切に文箱へと入れたのである。

それから、アディエルは代筆を教えてもらっているアルマを横目に、恋愛の指導者はいないのだろうか。と考えながら、今日の仕事に励むのであった。
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