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なな

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「何が耐えられないという?シャーロット」

陛下に聞かれ、私はばっと手で顔をおおった。表情まで取り繕う余裕はない。できる限り肩を震わせて告げる。

「わた、わたくし…………!殿下が、わたくしのことを愛していないというのは存じています。でもわたくしは!それでもっ、それでも殿下をお慕い申し上げていました………!」

嘘だけど!
三回目の人生が始まった瞬間、あなたのことなんて好きじゃないわよ。いいのは顔だけね、本当。何考えてるかもわからないし、口数は少ないし、挙句の果てに違う女に現抜かすし。最悪の男だわ。私はね、顔は普通でも平民でも、私のことを一番に考えてくれる男性がいいのよ!
ずっと、彼のことが好きだった。だけど今となっては好きの感情は反転し、嫌いに変わった。
私は泣いていると勘違いされるように顔を手で覆い隠しながら続ける。

「ですが、気付いたのです………。それが、本当の殿下の幸せにはならないと………!わたくしは、殿下をお慕いしているからこそ、殿下には幸せになっていただきたく存じま」

「シャーロット」

えええいなんで割り込むのよ!割り込みは良くないって習わなかったのかしら!?
しかも割り込んできたのは何を隠そう、当事者の王太子である。私は鼻から下は手で隠しながらそろりと視線をあげた。王太子は椅子からたつと、なぜかこちらに向かって歩いてきている。うわくるなくるな。お呼びじゃないのよ。着席してお話は聞きなさい。

「いいえ殿下、お気を使わないでください。わたくしは存じています」

「………だから、きみは誤解している」

は~~~~!?!?
誤解!?5回!?ループならまだ三回目ですけど!?私はうら若い人生を二回も散らしているのよ!?あなたは5回も散らせと言うの!?
理解出来ずに脳内がぐるぐる回る。王太子の透き通るような黄金の髪がふわりと舞う。悔しいけど、やっぱりかかっこいい。ステンドグラスから漏れ出た淡い太陽光が王太子の髪を照らす。色素の薄い髪が、より明るくなる。
彼は床を見ていたが、次の瞬間私を見た。視線が混ざる。久しぶりに王太子と視線が合わさった。
海色の、綺麗な瞳。まるで宝石のようだ、なんてありふれたフレーズが喉まででかかった。

「誤解?そうですか………殿下にとってはお遊びのつもりだったんですね。わたくしのことは形ばかりも愛していなかったと………」

悪いけれど、この美味しい状況をみすみす逃すわけにはいかないのよ。
私の命がかかっているんだから。陛下は口を挟まず、状況を見守っている。
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