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オリビア・バーンズ。
バーンズ伯爵家の娘として生まれた私のそばには、幼い頃からひとりの男の子の姿があった。
名前を、ウィリアム・ベケット。
幼い頃は、よく一緒に遊んだ。
彼と一緒に、同じ絵本を読んだりして。
日向ぼっこをして、青空を見たりもした。
ウィリアムは、優しいひとだった。
『ねえ、オリビア。僕、パブリックスクールに入ることになったんだ』
『そうなの?』
『うん。……不安だなぁ』
出来る長男と比較されることの多いウィリアムは、それを少しコンプレックスに思っているようだった。
悩んだ彼を励ましたくて、私は彼の手を取っていった。
『大丈夫よ!ウィリアムなら、きっと!絶対!』
『……ほんとう?なんだか、オリビアがそう言うならそんな気がしてきた』
はにかむ彼に、私はホッと安心した。
それと同時に、彼がパブリックスクールに入ってしまうということは、なかなか会えなくなることだと思った。
実際、彼がパブリックスクールに入ってからは、ますます彼と会う機会は減っていった。
それでも、ウィリアムとはいつか結婚するだろうな、と思っていた。
お父様同士が旧友で、付き合いも長い。
だから、きっと。
そう思っていたのだけど。
お父様からその報告を聞いた時、私は唖然とした。
『ウィリアムに恋人……?だって今まで、そんなこと』
『相手は使用人だそうだ。遊びだろう』
お父様はそう言ったが、私は悩んだ。
あのウィリアムが、遊びで女性と付き合うだろうか。
いや、そんなことはしない。
きっと、本気だ。
彼は本気で、その使用人と──。
私とウィリアムの婚約が正式に決まった。
だけど、ウィリアムは変わらずその使用人と付き合いを続けているようだ。
ついにベケット伯爵がウィリアムに使用人との関係を清算するよう命じた。
だけどウィリアムはそれに抵抗しているという。
ウィリアムは、私と会っても目を逸らし、気まずそうな顔を見せるようになった。
なんとも、ハッキリしない状況が続き、ある日私はその使用人に会ってみよう、と思った。
ベケット伯爵家に向かい、その使用人を呼び出してもらう。
ウィリアムは不在だというが、そのうち戻ってくるだろう。
使用人は、赤毛の少女だった。
ウィリアムより、二、三ほど年上だろうか。
童顔に、可愛らしい雰囲気。そばかすが白い頬に浮かんでいる。
名前は、ルシア。
私は、ルシアに、ウィリアムと別れるよう頼んだ。
ルシアは、私に呼び出された以上、その話だと予想していたのだろう。
泣くだろうか。
そう思っていたら、ルシアは涙目になりながらもハッキリと言った。
「ウィリアム様が結婚されても、私はそばにいます。彼が、望むなら」
少し、驚いた。
気の弱そうな少女に見えたから。
それと同時に、私は不快感に襲われた。
結婚してもそばにいる。
ウィリアムが望むなら。
そうすることで、彼女は想い人が結婚する辛さを耐えると、そう言いたいのだろう。
【例え、恋人がほかのひとと結婚しても、それでも私はそばにいる。彼のために。私が、そばにいたいから。そばで支えたいから】
ずいぶん、悲観的な考えだ。
悲劇に酔っている様子に、冷笑した。
可哀想な自分に浸って楽しんでいるところ悪いけど。
ねえ、それなら私はどうなるの?
「では、あなたは自分のせいで悲しむ人間がいても構わない、と……そう仰るのね」
そして、冒頭に戻るのである。
バーンズ伯爵家の娘として生まれた私のそばには、幼い頃からひとりの男の子の姿があった。
名前を、ウィリアム・ベケット。
幼い頃は、よく一緒に遊んだ。
彼と一緒に、同じ絵本を読んだりして。
日向ぼっこをして、青空を見たりもした。
ウィリアムは、優しいひとだった。
『ねえ、オリビア。僕、パブリックスクールに入ることになったんだ』
『そうなの?』
『うん。……不安だなぁ』
出来る長男と比較されることの多いウィリアムは、それを少しコンプレックスに思っているようだった。
悩んだ彼を励ましたくて、私は彼の手を取っていった。
『大丈夫よ!ウィリアムなら、きっと!絶対!』
『……ほんとう?なんだか、オリビアがそう言うならそんな気がしてきた』
はにかむ彼に、私はホッと安心した。
それと同時に、彼がパブリックスクールに入ってしまうということは、なかなか会えなくなることだと思った。
実際、彼がパブリックスクールに入ってからは、ますます彼と会う機会は減っていった。
それでも、ウィリアムとはいつか結婚するだろうな、と思っていた。
お父様同士が旧友で、付き合いも長い。
だから、きっと。
そう思っていたのだけど。
お父様からその報告を聞いた時、私は唖然とした。
『ウィリアムに恋人……?だって今まで、そんなこと』
『相手は使用人だそうだ。遊びだろう』
お父様はそう言ったが、私は悩んだ。
あのウィリアムが、遊びで女性と付き合うだろうか。
いや、そんなことはしない。
きっと、本気だ。
彼は本気で、その使用人と──。
私とウィリアムの婚約が正式に決まった。
だけど、ウィリアムは変わらずその使用人と付き合いを続けているようだ。
ついにベケット伯爵がウィリアムに使用人との関係を清算するよう命じた。
だけどウィリアムはそれに抵抗しているという。
ウィリアムは、私と会っても目を逸らし、気まずそうな顔を見せるようになった。
なんとも、ハッキリしない状況が続き、ある日私はその使用人に会ってみよう、と思った。
ベケット伯爵家に向かい、その使用人を呼び出してもらう。
ウィリアムは不在だというが、そのうち戻ってくるだろう。
使用人は、赤毛の少女だった。
ウィリアムより、二、三ほど年上だろうか。
童顔に、可愛らしい雰囲気。そばかすが白い頬に浮かんでいる。
名前は、ルシア。
私は、ルシアに、ウィリアムと別れるよう頼んだ。
ルシアは、私に呼び出された以上、その話だと予想していたのだろう。
泣くだろうか。
そう思っていたら、ルシアは涙目になりながらもハッキリと言った。
「ウィリアム様が結婚されても、私はそばにいます。彼が、望むなら」
少し、驚いた。
気の弱そうな少女に見えたから。
それと同時に、私は不快感に襲われた。
結婚してもそばにいる。
ウィリアムが望むなら。
そうすることで、彼女は想い人が結婚する辛さを耐えると、そう言いたいのだろう。
【例え、恋人がほかのひとと結婚しても、それでも私はそばにいる。彼のために。私が、そばにいたいから。そばで支えたいから】
ずいぶん、悲観的な考えだ。
悲劇に酔っている様子に、冷笑した。
可哀想な自分に浸って楽しんでいるところ悪いけど。
ねえ、それなら私はどうなるの?
「では、あなたは自分のせいで悲しむ人間がいても構わない、と……そう仰るのね」
そして、冒頭に戻るのである。
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