〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。

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2.伯爵令嬢リンシアは魔道具作りが楽しい

22話:魔道具の話ならリンシアにお任せ

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ルーズヴェルト卿の案内で、応接室を出る。廊下の突き当たりに進むと、部屋がいくつかあった。
その中の一室の前で彼は足を止めると、ルームナンバーの前で手をかざした。ここも、魔力認証で扉が開く仕組みのようだ。

彼に促されて私も部屋に入ると、そこは真っ白な部屋だった。一面真っ白な壁に、前世、理科の実験室で見たような白い机がいくつも置かれている。椅子が木製なところも、実験室に酷似していた。
部屋の広さと、壁際に置かれた棚の上に並ぶ魔道具の数々に、思わず歓声が出た。

「わあ……!」

見慣れない魔道具がたくさんあるわ!!

(あれはどう使うのかしら?作成者は誰かしら。エルヴァニア産よね?)

すぐにでも駆け寄って、じっくり拝見したいところだけど──流石に新人という立場だもの。そこまで自由な振る舞いはできない。ぐっと堪えて、目を皿のようにして見つめる。
見慣れない魔道具の数々を凝視しながら私は、ルーズヴェルト卿に尋ねた。

「ここは?」

「魔法管理部が所有する研究室です。ひとり一部屋、割り当てられます」

「こんなに広い部屋を、ですの!?」

「ええ。魔法管理部は毎年合格者数が少なすぎて、部屋が常に余っているんです。それに、長期任務で国外に出ている文官も少なくなく、使用されていない研究室は結構あるんですよ」

ここがあなたの研究室です、と説明を受けて、私はおずおずと、しかし迷いのない口調で彼に尋ねた。

「……では、あちらの魔道具を見てもよろしいでしょうか?」

ものすごく気になっていたのだ。

(あの、ウサギによく似た魔道具は何かしら!?)

近くに置いてある、髪飾りのような魔道具は?

効果は?魔法式は?構造は?どこの国の様式なのかしら?

気になることが山ほどあって、落ち着かない。

魔道具には、造り手の性格が現れる、と言われている。それは、魔道具に埋め込んだ魔法式にその人の色が出るからなのだとか。
私は、魔法学自体を独学で学んできたのもあって、結構特殊な魔法式を構成しているかもしれない。

私の申し出に、ルーズヴェルト卿は目を瞬いたが、すぐに苦笑した。

「ええ。ですがその前に、よろしいですか?」

「はい。何でしょう?」

「レディ・リンシア。まず、先程のあなたの質問にお答えします。我々──つまりフェリクスとヴィンセントと私の三人が、聖女の影響を受けていない理由は、ひとえに、私たちの魔力量の高さが理由かと思います」

思わぬ回答に、目を瞬いた。
そして、ふたたび疑問を口にする。

「……つまり、御三方には強い魔力抵抗があるから、ということですの?」

魔力値が高ければ高いほど、その分、魔力抵抗も高くなる。私の言葉に、ルーズヴェルト卿が頷いた。

「恐らく。ですが、万が一があってはいけないので、ヴィンセントは聖女となるべく顔を合わせないようにしています。コンラートも同じです」

「私の魔力量は、ごくごく平均値ですので」

クラインベルク様が頷いて答えた。
それに、ルーズヴェルト卿が補足するように言葉を重ねる。

「そして、私は代々ルーズヴェルト公爵家に伝わる魔道具を身につけています」

そう言うと、ルーズヴェルト卿は左手を示した。よく見れば、その中指には銀の指輪が嵌められている。

(指輪なんてしていたのね……)

全く気が付かなかったわ。意識して見ていなかったからだと思うけど。
ルーズヴェルト卿が、続けて言った。

「……気休めのようなものですがね」

「その魔道具は一体、どういうものですの?効果の程は?……と、お聞きしてもよろしいものなのかしら」

矢継ぎ早に尋ねると、ルーズヴェルト卿が困ったように私を見た。

「まじないのようなものですので、効果はあまり期待できません」

「…………」

(それなら、あまりつけていても意味は無いのではないかしら……)

私の考えを察して、ルーズヴェルト卿が苦笑した。

「家訓なんです。代々、当主ならびにその次期当主は、この魔道具を身につけるように、という家訓がルーズヴェルト公爵家にはあります。うちにはこれが、あと数個あるんですよ」

「予備が沢山あるのは、いいことですわね」

適当に私は相槌を打った。

(つまりお家事情、というやつね)

OK、それなら触れずにおきましょう。
人にはそれぞれ事情があるものだしね。そう思っていると、ルーズヴェルト卿が顔を上げた。

「それで、レディ・リンシア。これが本題なのですが……あなたに頼みたいことがあります」

「頼みたいこと?何でしょう?」

首を傾げると、彼は自身の手首を示した。

「あなたが今、身につけている魔道具。先程ヴィンセントに紹介した金の腕輪です。あれを、私の魔力に対応するよう改良することは、可能でしょうか?」

思いがけない要望に、私は目を瞬いた。

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