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2.捨てたのか、捨てられたのか
地下の罠 ②
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「ローレンス殿下!!」
ローレンス殿下は、ずるずると膝をつき、地下の階段の前で倒れた。
地下から飛んできたのは、槍だった。
それが三本、彼の背中と腰にそれぞれ突き刺さっている。
(敵!?でも、どこから!!)
地下への階段に視線を向ける。
そこに人気は感じない。
ただただ、恐ろしいほどの静けさが、地下への階段には広がっている。
じっとその暗闇を睨みつけてから、私はパッと倒れたローレンス殿下に視線を向けた。
(……今は、ローレンス殿下の傷の方が大事だわ)
私は彼の前に膝をつくと、咄嗟にその柄を掴もうとして、手を止めた。
ぬるついたものが手に触れたからだ。
(血…………)
私は、息を呑んだ。
彼は、黒のローブを身にまとっていたから、分かりにくいけれど。槍が突き刺さった三ヶ所の傷口から、血が流れ出していた。
それはローブに染み込み、触れた私の手を赤く染める。
頭に混乱と焦燥と恐怖が駆け巡った。
(どうして……なぜ)
ローレンス殿下は私を庇ったのだろう。
彼の反射速度なら、避けることも……きっとできたはず。
それなのに、どうして。
頭がガンガンと鳴り響く。
ぬるついた液体はあたたかく、ぬめりがあった。
手のひらが彼の血で赤く染まる。
手に付着した血液に意識を奪われている私に、ルイスが言った。
「シャリゼ様!刃は抜いてはなりません!失血死してしまいます!」
その言葉に、ハッと我に返る。
……そうだ。呆然としている場合ではない。
ショックを受けている暇はない。
ここには、私とルイスのふたりしかいない。
今の私にできることをしなければ。
(……しっかりしなさい!)
私は、ヴィクトワールの王妃だった女だ。
こんな時に動揺してどうするの。
ローレンス殿下は、私を庇って凶刃に倒れた。
私がすることはひとつだけ。
私は、聖女だ。
聖女にできることは、魔素の浄化。
そして、聖力を使用した治療、治癒。
私は意図的に息を深く吐くと、ローレンス殿下の傷を治癒しようと手をかざした。
パシンッ!!
「……!?」
なにかに弾かれた感覚があった。
驚いて、かざした手に視線を向ける。
聖力を巡らせようとした手には、痺れのようなものが走っていた。
瞬間、理解する。
(聖力が、使えない……?)
呆然としたのは、数秒のことだった。
(なぜ、私の聖力が使えなかったのか、考えるのはあと……!)
彼は、ここで死なせてはならない。
彼はアルカーナ帝国の皇子で、私の命の恩人だ。
ただでさえ、ヴィクトワール国とアルカーナ帝国の関係が悪い。今は一時休戦状態にあるとはいえ、ローレンス殿下がヴィクトワールで死亡した──など、間違いなく戦火に繋がることだろう。
それを避けるためにも、必ずローレンス殿下の命を繋がなければならない。
(冷静になりなさい)
(落ち着いて、考えるの)
深呼吸を何度か繰り返して、私は震える手を押さえつけた。
そして、ルイスに言う。
「止血を、しなければ。私の聖力は使えない。ルイス、布が必要よ!」
ルイスは、私の『聖力が使えない』という言葉に目を見開いた。
私は、布を探して自身のワンピースの裾に視線を向けた。
ルイスの剣で裾を切って、細布を作れば──と、そう思った時。
……呻き声が聞こえた。
「っ……ぅ、」
「ローレンス殿下!!」
顔を覗き込むと、彼のまつ毛がぴくりと震えた。
その顔は、白を通り越して、青い。
元々肌が白いひとではあったけれど、その顔色は明らかに悪かった。
「ローレンス殿下!!分かりますか?意識はありますか!?」
呼びかけると、銀のまつ毛が何度か震え──ゆっくりと、目が開かれる。
空色の瞳が現れる。
彼は、ぼんやりと私を見ていたがなにか思い出したかのように浅い息を吐いた。
「ああ……そう、か。うん、大丈夫」
返答は、できるようだ。
それにこころから安堵の息を吐く。
まだ、大丈夫。
間に合うかもしれない。
違う、間に合わせるの。
ひとまず、彼の意識を繋ぎ止めなければならない。
そう思った私がさらに彼に呼びかけようとした時。
ローレンス殿下が思いもよらないことを口にした。
「これ、抜いてくれる?力が入らない。恐らく、毒が塗られてる。神経毒……の一種かな」
「──」
毒。その言葉に、私とルイスは顔を見合せた。
槍の刃先に毒が塗られていた──。
それがどんなものかはわからないけれど、早く毒を抜かなければならない。
毒が完全に回る前に、体内から毒を抜くか、あるいは解毒しなければ。
背後には泉がある。
気休めにしかならないだろうが、そこで水をくんで彼に飲ませよう。
そして、早く森を出なければ。
応急処置ではなく、然るべき場所で、然るべき対処をしなければ。
ヴィクトワールの名にかけてでも、必ず、ローレンス殿下を助ける。
ことは一刻を争う。
私はルイスに頷いてから──ローレンス殿下に言った。
「殿下。……槍を、抜きます」
槍を抜いたらすぐにすることは患部を縛ること。
そして泉の水を飲ませ──ここから早急に去ることだ。
ルイスも同じ考えだったようだ。
私とルイスはそれぞれ槍の柄を掴むと、互いに目配せをし合い、一息にそれを抜く。
「っ……」
ローレンス殿下が僅かに息を詰める。
ルイスが三本目の槍も抜き、私は泉へと走った。
巾着に入れておいた水筒を取り出して、それに水を汲む。
そしてローレンス殿下の元に戻ると、彼はルイスの手によってローブとシャツがはだけられていた。
倒れた時と変わらず、うつ伏せのままだ。
白い肌があらわになっているが、その肌の至るところに血が付着している。
……出血量が多い。ルイスの手や服は彼の血で赤く染まっていた。
止血しようとしていたのだろう、ルイスは細布を手にしていたが──なぜか、その動きは固まっていた。
「ルイス?どうしたの?」
尋ねるが、しかしルイスは変わらず唖然とした様子で、答えない。
彼は、なにか信じられないものを見るかのように目を見開いていた。ルイスの視線の先は、ローレンス殿下の背中──刃を受けた場所。
疑問に思って私も同様にルイスの視線を追う、と。
「え…………」
思わず、ぽつりと言葉が零れた。
刃を受けて酷い傷を負っていたその場所が、みるみるうちに修復──ほんとうに、そうとしか言えない速度で治ってゆく。
私も、ルイス同様目を見開いた。
「これ、は……」
声が、掠れた。
これは、どういうこと、なのだろうか。
現実のものとは思えない光景を目の当たりにした私は、ふらふらとローレンス殿下の前に膝をついた。ぺたり、と座り込む。
数秒して。
ローレンス殿下の傷は、もはや最初から何も無かったかのように消え去った。
ふたりして呆然としていたが、私はふと我に返って、ルイスに言った。
「……とりあえず、怪我は治った、と思っていいのかしら……」
「それは……恐らく」
未だ現実味はなかったが、ルイスが同意するように答えた。
(さっきのことは気になるけど……とにかく、今はローレンス殿下のお体が優先だわ)
そう判断した私は、そっとローレンス殿下の肩に触れた。
あたたかい。……生きてる。
「ローレンス殿下!分かりますか?シャリゼです!」
声をはりあげて、私は彼の肩を揺さぶった。
そして、彼の体を返そうとすると、ルイスが手伝ってくれて、共に彼を仰向けにする。
そのまま肩をトントンと何度か叩いていると、そのうちローレンス殿下がちいさく呻いた。
それに心底ホッとした。
そして、ローレンス殿下に視線を向けた時。
私は気がついてしまった。
彼の薄いくちびるの下に覗く、牙、のようなものを。
(犬歯……?でも、ふつうはあんなに長くない……わよね)
長く伸びる歯は、もはや牙にしか見えないほどで。
動揺しているうちに、彼がゆっくりと目を覚ました。
ローレンス殿下は、ずるずると膝をつき、地下の階段の前で倒れた。
地下から飛んできたのは、槍だった。
それが三本、彼の背中と腰にそれぞれ突き刺さっている。
(敵!?でも、どこから!!)
地下への階段に視線を向ける。
そこに人気は感じない。
ただただ、恐ろしいほどの静けさが、地下への階段には広がっている。
じっとその暗闇を睨みつけてから、私はパッと倒れたローレンス殿下に視線を向けた。
(……今は、ローレンス殿下の傷の方が大事だわ)
私は彼の前に膝をつくと、咄嗟にその柄を掴もうとして、手を止めた。
ぬるついたものが手に触れたからだ。
(血…………)
私は、息を呑んだ。
彼は、黒のローブを身にまとっていたから、分かりにくいけれど。槍が突き刺さった三ヶ所の傷口から、血が流れ出していた。
それはローブに染み込み、触れた私の手を赤く染める。
頭に混乱と焦燥と恐怖が駆け巡った。
(どうして……なぜ)
ローレンス殿下は私を庇ったのだろう。
彼の反射速度なら、避けることも……きっとできたはず。
それなのに、どうして。
頭がガンガンと鳴り響く。
ぬるついた液体はあたたかく、ぬめりがあった。
手のひらが彼の血で赤く染まる。
手に付着した血液に意識を奪われている私に、ルイスが言った。
「シャリゼ様!刃は抜いてはなりません!失血死してしまいます!」
その言葉に、ハッと我に返る。
……そうだ。呆然としている場合ではない。
ショックを受けている暇はない。
ここには、私とルイスのふたりしかいない。
今の私にできることをしなければ。
(……しっかりしなさい!)
私は、ヴィクトワールの王妃だった女だ。
こんな時に動揺してどうするの。
ローレンス殿下は、私を庇って凶刃に倒れた。
私がすることはひとつだけ。
私は、聖女だ。
聖女にできることは、魔素の浄化。
そして、聖力を使用した治療、治癒。
私は意図的に息を深く吐くと、ローレンス殿下の傷を治癒しようと手をかざした。
パシンッ!!
「……!?」
なにかに弾かれた感覚があった。
驚いて、かざした手に視線を向ける。
聖力を巡らせようとした手には、痺れのようなものが走っていた。
瞬間、理解する。
(聖力が、使えない……?)
呆然としたのは、数秒のことだった。
(なぜ、私の聖力が使えなかったのか、考えるのはあと……!)
彼は、ここで死なせてはならない。
彼はアルカーナ帝国の皇子で、私の命の恩人だ。
ただでさえ、ヴィクトワール国とアルカーナ帝国の関係が悪い。今は一時休戦状態にあるとはいえ、ローレンス殿下がヴィクトワールで死亡した──など、間違いなく戦火に繋がることだろう。
それを避けるためにも、必ずローレンス殿下の命を繋がなければならない。
(冷静になりなさい)
(落ち着いて、考えるの)
深呼吸を何度か繰り返して、私は震える手を押さえつけた。
そして、ルイスに言う。
「止血を、しなければ。私の聖力は使えない。ルイス、布が必要よ!」
ルイスは、私の『聖力が使えない』という言葉に目を見開いた。
私は、布を探して自身のワンピースの裾に視線を向けた。
ルイスの剣で裾を切って、細布を作れば──と、そう思った時。
……呻き声が聞こえた。
「っ……ぅ、」
「ローレンス殿下!!」
顔を覗き込むと、彼のまつ毛がぴくりと震えた。
その顔は、白を通り越して、青い。
元々肌が白いひとではあったけれど、その顔色は明らかに悪かった。
「ローレンス殿下!!分かりますか?意識はありますか!?」
呼びかけると、銀のまつ毛が何度か震え──ゆっくりと、目が開かれる。
空色の瞳が現れる。
彼は、ぼんやりと私を見ていたがなにか思い出したかのように浅い息を吐いた。
「ああ……そう、か。うん、大丈夫」
返答は、できるようだ。
それにこころから安堵の息を吐く。
まだ、大丈夫。
間に合うかもしれない。
違う、間に合わせるの。
ひとまず、彼の意識を繋ぎ止めなければならない。
そう思った私がさらに彼に呼びかけようとした時。
ローレンス殿下が思いもよらないことを口にした。
「これ、抜いてくれる?力が入らない。恐らく、毒が塗られてる。神経毒……の一種かな」
「──」
毒。その言葉に、私とルイスは顔を見合せた。
槍の刃先に毒が塗られていた──。
それがどんなものかはわからないけれど、早く毒を抜かなければならない。
毒が完全に回る前に、体内から毒を抜くか、あるいは解毒しなければ。
背後には泉がある。
気休めにしかならないだろうが、そこで水をくんで彼に飲ませよう。
そして、早く森を出なければ。
応急処置ではなく、然るべき場所で、然るべき対処をしなければ。
ヴィクトワールの名にかけてでも、必ず、ローレンス殿下を助ける。
ことは一刻を争う。
私はルイスに頷いてから──ローレンス殿下に言った。
「殿下。……槍を、抜きます」
槍を抜いたらすぐにすることは患部を縛ること。
そして泉の水を飲ませ──ここから早急に去ることだ。
ルイスも同じ考えだったようだ。
私とルイスはそれぞれ槍の柄を掴むと、互いに目配せをし合い、一息にそれを抜く。
「っ……」
ローレンス殿下が僅かに息を詰める。
ルイスが三本目の槍も抜き、私は泉へと走った。
巾着に入れておいた水筒を取り出して、それに水を汲む。
そしてローレンス殿下の元に戻ると、彼はルイスの手によってローブとシャツがはだけられていた。
倒れた時と変わらず、うつ伏せのままだ。
白い肌があらわになっているが、その肌の至るところに血が付着している。
……出血量が多い。ルイスの手や服は彼の血で赤く染まっていた。
止血しようとしていたのだろう、ルイスは細布を手にしていたが──なぜか、その動きは固まっていた。
「ルイス?どうしたの?」
尋ねるが、しかしルイスは変わらず唖然とした様子で、答えない。
彼は、なにか信じられないものを見るかのように目を見開いていた。ルイスの視線の先は、ローレンス殿下の背中──刃を受けた場所。
疑問に思って私も同様にルイスの視線を追う、と。
「え…………」
思わず、ぽつりと言葉が零れた。
刃を受けて酷い傷を負っていたその場所が、みるみるうちに修復──ほんとうに、そうとしか言えない速度で治ってゆく。
私も、ルイス同様目を見開いた。
「これ、は……」
声が、掠れた。
これは、どういうこと、なのだろうか。
現実のものとは思えない光景を目の当たりにした私は、ふらふらとローレンス殿下の前に膝をついた。ぺたり、と座り込む。
数秒して。
ローレンス殿下の傷は、もはや最初から何も無かったかのように消え去った。
ふたりして呆然としていたが、私はふと我に返って、ルイスに言った。
「……とりあえず、怪我は治った、と思っていいのかしら……」
「それは……恐らく」
未だ現実味はなかったが、ルイスが同意するように答えた。
(さっきのことは気になるけど……とにかく、今はローレンス殿下のお体が優先だわ)
そう判断した私は、そっとローレンス殿下の肩に触れた。
あたたかい。……生きてる。
「ローレンス殿下!分かりますか?シャリゼです!」
声をはりあげて、私は彼の肩を揺さぶった。
そして、彼の体を返そうとすると、ルイスが手伝ってくれて、共に彼を仰向けにする。
そのまま肩をトントンと何度か叩いていると、そのうちローレンス殿下がちいさく呻いた。
それに心底ホッとした。
そして、ローレンス殿下に視線を向けた時。
私は気がついてしまった。
彼の薄いくちびるの下に覗く、牙、のようなものを。
(犬歯……?でも、ふつうはあんなに長くない……わよね)
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