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2.捨てたのか、捨てられたのか
地下の罠
「勝利の民……か。ヴィクトワールのことか?」
「言葉通りにとるならそうなのでしょうけど……」
私は、石版に手をかざした。
何も反応は無い……が、聖力をゆっくりと込めていく。
すると、明確な反応があった。
石版を中心として、ポツン、と雨粒が降ったかのような波紋が広がった。
「……!」
それは、何かを示しているのか、あるいは何かを待っているのか。
ポツン、ポツン、と間隔を開けて石版に波紋を広げてゆく。
「これは……?」
思わず私が呟くと、私の隣にローレンス殿下が立った。
そして、彼もまた、石版に手をかざした。
(一体何を……?)
不思議に思って彼を見ると、ローレンス殿下は静かになにか、力を込め始めた。
「───」
しかし、それは聖力ではない。
聖力とは全く違った種類の力だった。
聖力とは違う、ということはわかるのだけど、それがどういった力なのかまでは分からない。
少なくとも、私が聖女になってから今まで、目にしたことの無い力だった。
(この力は……?)
戸惑った瞬間。
石版がパァ……!!と大きく輝き出した。
「きゃ……!」
目を開けていられないほどの眩しさだ。
思わず目を細めると──次の瞬間。
ズズズ……と鈍い音がした。
何か、重たいものが移動したような音だ。
しばらくして、光はゆっくりと収束した。
目を開けた私は──あまりのことに唖然とした。
石版が、移動している。
石版が後ろにずれて、地下への階段……のようなものが広がっていた。
階段は長く、天井も高いようだ。
その下がどうなっているのか、ここからはまったくわからない。
絶句しながら見ていると、後ろで状況を見ていたルイスが言った。
「道が、出来ましたね」
「どういう……仕掛けなの」
にわかには信じられない。
石版に書かれていたのは、【ヴィクトワールの勝利の民よ、ここにその証を】……だ。
だけど今、私とローレンス殿下がしたのはそれぞれ力を込めたことだけ……。
その時、私はハッと我に返った。
そして、未だ驚きから覚めないまま、隣に立つローレンス殿下に尋ねた。
「先程の……殿下のあの力は一体何なのですか?聖力ではないと思うのですが」
問うと、同じように地下への階段を見ていたローレンス殿下が私を見て答えた。
「聖力じゃない。俺にあるのは……魔力だ」
「ま……!?」
想像もしていなかった単語だった。
魔力……と言われて結びつくのは、魔獣や魔族といった単語だ。
しかし、ローレンス殿下はどこからどう見ても人間で、魔獣には見えない。
魔族は迷信で、いわゆる作り話の中の存在のはず。
ローレンス殿下だって、魔族ではないと言っていた。
そこで私はハタ、と思い出した。
ローレンス殿下は、ハッキリ【魔族では無い】と断言したわけではない。
彼は──。
『ヴィクトワールにはそういう考え方があるのか。そういうものではないよ』
というもの。
(ずいぶんと含みのある言葉だったわ……)
言葉を濁すような話し方をするのは彼の癖なのか、ほんとうに話せないことがあるのか。
そのどちらもなような気がしてならないけど……いまいち、正体が掴めない。
私はローレンス殿下を探るように見ていたから──だから。
反応が遅れた。
「ッ……シャリゼ様!!」
ルイスが突然大声をだす。
前方に視線を向けると、地下の階段から何かがこちらに向かっていた。
いや、飛び出してきていた。
陽の光を浴びてきらりと光る鈍い色。
それは──
槍、のような、刃物だった。
「……!!」
避けようにも、あまりにも距離が近すぎた。
それは、私とローレンス殿下に真っ直ぐ向かってきた。
このままでは刺さる──と思った時。
二の腕を強い力で掴まれて、引き寄せられた。
「!?」
ローレンス殿下だ。
彼はくるりと体を反転させ、サーコートで私を包んだ。
それは僅か一瞬のことだった。
「ロ……!!」
彼の名を呼ぼうとした瞬間。
明確な衝撃が、私に触れている体から伝わってきた。
ドスドスッ、となにかに槍が刺さる音がする。
「──!!」
衝撃は、一度ではなかった。
飛んできた刃物は一本ではなかったのだ。
二本、三本。
それを背や腰に受けたのだろう。
ローレンス殿下がその短く呻いた。
「な……!!」
掠れた声を零す。
目を見開いた。
しっかりと抱きしめられているから、身動ぎすら出来なかった。
ローレンス殿下は、私を庇って、刃物をその体に受けたのだ。
「言葉通りにとるならそうなのでしょうけど……」
私は、石版に手をかざした。
何も反応は無い……が、聖力をゆっくりと込めていく。
すると、明確な反応があった。
石版を中心として、ポツン、と雨粒が降ったかのような波紋が広がった。
「……!」
それは、何かを示しているのか、あるいは何かを待っているのか。
ポツン、ポツン、と間隔を開けて石版に波紋を広げてゆく。
「これは……?」
思わず私が呟くと、私の隣にローレンス殿下が立った。
そして、彼もまた、石版に手をかざした。
(一体何を……?)
不思議に思って彼を見ると、ローレンス殿下は静かになにか、力を込め始めた。
「───」
しかし、それは聖力ではない。
聖力とは全く違った種類の力だった。
聖力とは違う、ということはわかるのだけど、それがどういった力なのかまでは分からない。
少なくとも、私が聖女になってから今まで、目にしたことの無い力だった。
(この力は……?)
戸惑った瞬間。
石版がパァ……!!と大きく輝き出した。
「きゃ……!」
目を開けていられないほどの眩しさだ。
思わず目を細めると──次の瞬間。
ズズズ……と鈍い音がした。
何か、重たいものが移動したような音だ。
しばらくして、光はゆっくりと収束した。
目を開けた私は──あまりのことに唖然とした。
石版が、移動している。
石版が後ろにずれて、地下への階段……のようなものが広がっていた。
階段は長く、天井も高いようだ。
その下がどうなっているのか、ここからはまったくわからない。
絶句しながら見ていると、後ろで状況を見ていたルイスが言った。
「道が、出来ましたね」
「どういう……仕掛けなの」
にわかには信じられない。
石版に書かれていたのは、【ヴィクトワールの勝利の民よ、ここにその証を】……だ。
だけど今、私とローレンス殿下がしたのはそれぞれ力を込めたことだけ……。
その時、私はハッと我に返った。
そして、未だ驚きから覚めないまま、隣に立つローレンス殿下に尋ねた。
「先程の……殿下のあの力は一体何なのですか?聖力ではないと思うのですが」
問うと、同じように地下への階段を見ていたローレンス殿下が私を見て答えた。
「聖力じゃない。俺にあるのは……魔力だ」
「ま……!?」
想像もしていなかった単語だった。
魔力……と言われて結びつくのは、魔獣や魔族といった単語だ。
しかし、ローレンス殿下はどこからどう見ても人間で、魔獣には見えない。
魔族は迷信で、いわゆる作り話の中の存在のはず。
ローレンス殿下だって、魔族ではないと言っていた。
そこで私はハタ、と思い出した。
ローレンス殿下は、ハッキリ【魔族では無い】と断言したわけではない。
彼は──。
『ヴィクトワールにはそういう考え方があるのか。そういうものではないよ』
というもの。
(ずいぶんと含みのある言葉だったわ……)
言葉を濁すような話し方をするのは彼の癖なのか、ほんとうに話せないことがあるのか。
そのどちらもなような気がしてならないけど……いまいち、正体が掴めない。
私はローレンス殿下を探るように見ていたから──だから。
反応が遅れた。
「ッ……シャリゼ様!!」
ルイスが突然大声をだす。
前方に視線を向けると、地下の階段から何かがこちらに向かっていた。
いや、飛び出してきていた。
陽の光を浴びてきらりと光る鈍い色。
それは──
槍、のような、刃物だった。
「……!!」
避けようにも、あまりにも距離が近すぎた。
それは、私とローレンス殿下に真っ直ぐ向かってきた。
このままでは刺さる──と思った時。
二の腕を強い力で掴まれて、引き寄せられた。
「!?」
ローレンス殿下だ。
彼はくるりと体を反転させ、サーコートで私を包んだ。
それは僅か一瞬のことだった。
「ロ……!!」
彼の名を呼ぼうとした瞬間。
明確な衝撃が、私に触れている体から伝わってきた。
ドスドスッ、となにかに槍が刺さる音がする。
「──!!」
衝撃は、一度ではなかった。
飛んできた刃物は一本ではなかったのだ。
二本、三本。
それを背や腰に受けたのだろう。
ローレンス殿下がその短く呻いた。
「な……!!」
掠れた声を零す。
目を見開いた。
しっかりと抱きしめられているから、身動ぎすら出来なかった。
ローレンス殿下は、私を庇って、刃物をその体に受けたのだ。
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