〈完結〉奪ってくれてありがとう。結果的に、感謝しています。

ごろごろみかん。

文字の大きさ
2 / 33
1.国家転覆罪

1話:奪われた婚約

しおりを挟む


「あなたの恋愛脳は、一回死ななきゃ治らないかもね」

友人に呆れ交じりに言われたのを思い出す。



私は、腫れぼったい瞼を持ち上げた。
カーテンから朝日が入り込んでくるが、私は全くそういう気分ではなかった。

コンディションは最悪だ。
泣きすぎたせいで瞼は腫れぼったいし、泣いてすぐ冷やさなかったせいで熱を持っている。

目がカエルになっている自信があった。

(怖いけど鏡で確認しなきゃね……)

そう考えながらも、私は昨日までに巣食っていた鬱屈とした気持ちが一切無くなっていたことに気がつく。
その理由に思いあたって、苦笑した。

(……本当、ばかよね)

前世──そう、私は昨日、前世の記憶を夢で見た。

口にしたものなら、精神的な病気を心配されるだろうから誰にも言えないけれど。

でも、確かにあれは前世だと思う。

夢なら、目が覚めたらだいたいは記憶が薄れることだろう。
だけど、昨日の夢は、ハッキリ覚えている。
それどころか、夢で見ていないことまで思い出した。

(あれは──確か、中学からの友達の言葉だったわね……)

『あなたは、いつもそうね。恋に溺れて、苦しんで、泣く羽目になる。いつか、身を滅ぼしそうで怖いわ』

前世の私は、いわゆる恋愛脳というやつで、ダメ男製造機でもあった。

恋人には尽くしたいと思っていたし、実際その通りにしていた。
話を聞いた友人からは

『家政婦?』

とか

『お金のかからない風俗嬢じゃない』

とか言われることもあった。

その度に、恋に浮かれて正常な判断のできない私は、憤って彼氏を庇った。

時には、忠告する友人とぶつかり──

まあ、お察しよね!

女友達はどんどん減っていった。
成人し、社会人になってからは中学からの友人くらいしか付き合ってくれるひとがいなかった。

(それも当然よね~~……)

強く思う。
それが、正常の反応だ。
何回言ってもひとの話を聞かず、毎回痛い目を見る友達なんて、一緒にいても疲れるだけだ。

しかも私ときたら友達と会っているのに、男の話しかしなかったと、いう……。

思わず、額を手で抑えた。

「……………」

(終わってるわ……!)

そりゃあ友達もいなくなるってものである。

友人の忠告には耳を貸さず、毎回痛い目を見るわ、その癖すぐ恋愛して彼氏を作るわ……。
それでまた、酷い目にあって泣くの繰り返し……。

あまりにも酷い。
前世の私も、昨日までの私も、完全に恋愛に依存していた。依存しきっていた。

まるで、それを失ったら生きていけない中毒症の患者のように。

……前世の私の最期は、呆気ないものだ。
こんな生活をしていたらまあ当然、という幕引きだった。

つまり、痴情のもつれで刺されたのである。
刺された後の記憶が無いので、恐らくそこで死んでしまったのだろう。



「しかし、生まれ変わってまた恋愛脳これって……私、呪われてるのかしらね?」

軽口を叩きながら、ベッドから降りる。

ドレッサーの前に腰を下ろすと、案の定酷い顔の自分がいた。

「……でも、悪くないわ」

そんなことを呟きながら、私は腫れぼったい瞼に手を触れた。やはり熱を持っている。

泣きすぎたために不調(物理)だが、精神面は良好、オールグリーンだ。

何せ、今日は私にとって、新たな門出となる。







私、キャロライン・キリシュネライトは特別な少女だった。

これは、私の痛い自認ではなく、客観的に見た事実であることを注記しておく。

私は、生まれつき、魔力量の桁が異常だった。
物心ついた時には、凄い凄いと言われてきたのた。

そんな時、唯一私を褒めなかったのが彼、ローガンだった。最初は気になるだけだった。
だけどすぐ、私は彼に夢中になった。
鍛錬に熱心なところは格好いいと思ったし、女性の扱いに不慣れなところも素敵だと思った。

(ローガンとの仲は、悪くなかった)

このまま、私は彼と結婚するのだと思った。
実際、そうなるはずだったのだ。

──あの事件が起きていなければ。

……王家主催の、夜会でのことだった。

そこで、騒ぎが起きた。

王女殿下が、乱暴されたのた。
それも、私の婚約者であるローガン・ローゼンハイムに。

その報告を聞いた時、頭が真っ白になった。
信じられなかったし、信じたくなかった。

おかしいと思ってさらに深く調べれば──どうやら、ローガンは嵌められたようだった。
王女殿下に。

もし本当に、ローガンが王女殿下に乱暴したなら。いくら彼が公爵家の嫡男とはいえ、タダではすまなかったはずだ。

それなのに、お咎めなし──王女を娶れば水に流す、なんて最初から仕組まれていたようにしか思えない。

他のひとも同じように思ったのだろう。
すぐに社交界に噂が流れた。
それも、
【ローガン・ローゼンハイムは王女殿下に嵌められた】
というものだ。

また、当時の彼女の服装がそれを裏付けた。

目撃者の話によると、彼女のドレスは確かに乱れていた。乱れてはいたが、王女殿下とローガンの間には距離があり、揉み合っているようには見えなかったらしい。

それに、彼女の服の乱れ方は、まるで・・・自分でやった・・・・・・かのように見えたという。

王女殿下のドレスの胸元は、真っ二つに裂けていた。
しかし、そもそも彼女のその日のドレスは、胸元が薄いレースに覆われているものだったのだ。
つまり、レースなら女の力でも容易に裂くことができる。

悲鳴を聞いて駆けつけた人達は、王女殿下の悲鳴と、乱れたドレス、そして彼女の様子から、ローガンがやったのだと思い込んだ。

しかし、後々思い返してみると、不自然な点が多いと考えたのだろう。

その日の夜会で、ローガンの評判は地に落ちた。
だけどすぐに、それは逆転することになる。

王女殿下が、婚約者のいる男を手に入れたいがためにローガンを陥れた、と噂が流れたためだ。

彼女が正妃の娘ではなく、愛人の娘だったことも、噂を加速させる一因となった。

私は、彼女を恨んだし、憎みもした。
私から彼を奪った彼女が酷く恨めしかった。

そして、ローガンは、私との婚約を破棄した。
彼は王女殿下と婚約を結び直したのだ。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。 挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。 だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……? 酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。 ※小説家になろうでも投稿しています

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」 その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。 「了承しました」 ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。 (わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの) そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。 (それに欲しいものは手に入れたわ) 壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。 (愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?) エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。 「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」 類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。 だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。 今後は自分の力で頑張ってもらおう。 ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。 ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。 カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*) 表紙絵は猫絵師さんより(⁠。⁠・⁠ω⁠・⁠。⁠)⁠ノ⁠♡

結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。

四季
恋愛
結婚から数ヶ月が経った頃、夫が裏でこそこそ女性と会っていることを知りました。その話はどうやら事実のようなので、離婚します。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

処理中です...