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(こんな血が……こんな呪いがなければ)
ヴィクターが歯噛みした時、その場を一喝するような声が響いた。
「そうではない!!」
「!!」
「なぜ、よりにもってアリアなのだ!?……魔女の、異母妹なのだ!」
「なぜ、って……」
「ヴィクター。お前にはまだ、伝えていないことがある。五百年前、魔女に呪われた時の、我が国の話を──」
初代国王が恋に落ちたのは、婚約者──魔女の妹だった。
婚約者は風変わりな瞳をしていて、酷い差別を受けていたという。
それは初代国王も変わらず、国のために尽くした彼女を裏切り、彼女の妹に愛を誓った。
「な……」
思わぬ真実に絶句するヴィクターに、王が嘆く。
「よりによって、なぜ……」
「それ、は……。父上こそ、なぜその話をしてくださらなかったのですか!」
「これを伝えるのは、王太子が子を持ってから、と決まりがあるのだ。……これを伝えることで、下手に意識されては困るからな」
「…………」
「だが……アリアは心変わりをしたのだな。それは良かった。魔女の力を継承するものと、王子が結ばれること。それが、魔女の遺言であり、呪いだ。それを守らなければどうなるか。それは歴史が証明している」
王の、心底そう思っている、とでも言いたげな様子にヴィクターは産毛が立った。
そして、拳を握りしめて怒鳴る。
何もかもが理解不能だった。
「ど……うして、良かったなどと!!父上は、私に愛してもない女を妻にせよというのですか!?」
「それが王族に生まれものの責務だ」
「っ!」
「そんなことより、お前はこんな時ですら自分を優先するのだな。……残念だ。お前は、王の器ではない」
「な──」
「五百年前の悲劇を繰り返さずにすんで良かったと思いはしないのか。もし、お前が今代の魔女のメリアを裏切ったことが原因で、厄災が起きたら?お前は民に顔向けできるのか?!」
「そもそもが!おかしいのです!こんなのは魔女の逆恨み!!僕がメリアに呪われる謂れはありません!!臣下なら、王族に恭順を示すべきだ!!なぜ僕らが臣下の顔色を窺わなければ──」
その時、強い衝撃がヴィクターを襲った。
気がつけば、頬にじんじんと鈍い痛みと熱が走っていた。視界は天井。
ヴィクターは殴り飛ばされたのだ。
「ち、ちうえ……」
「……見損なったぞ、ヴィクター。お前を王にと考えていた私の目は……節穴だったのやもしれん」
王は、心底失望したような視線をヴィクターに向けると、そのまま踵を返した。
恭しく付き従う近衛騎士が頭を下げ、部屋から誰もいなくなる。
熱と痛みを伴う頬に、ヴィクターは呆気にとられた。
(なぜ……こんなことになった?)
アリアには裏切られ、王には失望され。
騎士たちの前で殴り飛ばされた。
「全部……全部、メリアのせいだ」
そうだ。そもそも彼女がいなければ。
彼女さえ、生まれてこなければ──。
そうすれば、ヴィクターの婚約者はアリアだった。
誰にはばかることなく、アリアに愛を誓うことができたのに……。
「ごほっ」
ひとつ咳をすれば、口内を切ったのか血が滲んだ。それを虚ろな目で見つめ、ヴィクターは呟いた。
「責任を……取らせてやる」
しかし、その翌日。
ヴィクターに届いたのは、メリアが行方不明になったという報せだった。
ヴィクターが歯噛みした時、その場を一喝するような声が響いた。
「そうではない!!」
「!!」
「なぜ、よりにもってアリアなのだ!?……魔女の、異母妹なのだ!」
「なぜ、って……」
「ヴィクター。お前にはまだ、伝えていないことがある。五百年前、魔女に呪われた時の、我が国の話を──」
初代国王が恋に落ちたのは、婚約者──魔女の妹だった。
婚約者は風変わりな瞳をしていて、酷い差別を受けていたという。
それは初代国王も変わらず、国のために尽くした彼女を裏切り、彼女の妹に愛を誓った。
「な……」
思わぬ真実に絶句するヴィクターに、王が嘆く。
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「…………」
「だが……アリアは心変わりをしたのだな。それは良かった。魔女の力を継承するものと、王子が結ばれること。それが、魔女の遺言であり、呪いだ。それを守らなければどうなるか。それは歴史が証明している」
王の、心底そう思っている、とでも言いたげな様子にヴィクターは産毛が立った。
そして、拳を握りしめて怒鳴る。
何もかもが理解不能だった。
「ど……うして、良かったなどと!!父上は、私に愛してもない女を妻にせよというのですか!?」
「それが王族に生まれものの責務だ」
「っ!」
「そんなことより、お前はこんな時ですら自分を優先するのだな。……残念だ。お前は、王の器ではない」
「な──」
「五百年前の悲劇を繰り返さずにすんで良かったと思いはしないのか。もし、お前が今代の魔女のメリアを裏切ったことが原因で、厄災が起きたら?お前は民に顔向けできるのか?!」
「そもそもが!おかしいのです!こんなのは魔女の逆恨み!!僕がメリアに呪われる謂れはありません!!臣下なら、王族に恭順を示すべきだ!!なぜ僕らが臣下の顔色を窺わなければ──」
その時、強い衝撃がヴィクターを襲った。
気がつけば、頬にじんじんと鈍い痛みと熱が走っていた。視界は天井。
ヴィクターは殴り飛ばされたのだ。
「ち、ちうえ……」
「……見損なったぞ、ヴィクター。お前を王にと考えていた私の目は……節穴だったのやもしれん」
王は、心底失望したような視線をヴィクターに向けると、そのまま踵を返した。
恭しく付き従う近衛騎士が頭を下げ、部屋から誰もいなくなる。
熱と痛みを伴う頬に、ヴィクターは呆気にとられた。
(なぜ……こんなことになった?)
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「全部……全部、メリアのせいだ」
そうだ。そもそも彼女がいなければ。
彼女さえ、生まれてこなければ──。
そうすれば、ヴィクターの婚約者はアリアだった。
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「ごほっ」
ひとつ咳をすれば、口内を切ったのか血が滲んだ。それを虚ろな目で見つめ、ヴィクターは呟いた。
「責任を……取らせてやる」
しかし、その翌日。
ヴィクターに届いたのは、メリアが行方不明になったという報せだった。
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