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ミィナとの話し合い
しおりを挟む「私を助けて欲しいの。それが出来るのは、貴方だけなのよ」
我ながらなんてでまかせだと思う。
だけどあながち間違いでもない。
口からするする出てくる言葉をそのままに言うと、黒髪の彼女ーーーミィナは涙に濡れた目で私を見た。
気乗りしなさそうなルアヴィスを連れてきて、私はミィナとの話をすることに成功した。娼館の主はどこか胡散臭そうな男だったが、金を握らせればすぐに部屋に通した。つまりはそういうことだ。ここの店主は金に随分と汚いらしい。
私は早速ミィナに会うと彼女に援助の話をした。そして、見返りに私に協力して欲しい、とも。ルアヴィスは部屋に入ってから一言も話さない。
「で、でも、私に出来ることなんて」
「あるわ。………あのね、私は貴方に、してもらいたいことがあるの。それは………」
私はひとつ間を開けると、ソファから立ち上がり、対面にすわる彼女の隣へと腰掛けた。そしてそっとその手に触れる。
「情報を流してもらうため」
「………?」
「あなたには、とある情報をお客さんに流してもらいたいの。もちろん、無理にとは言わない。下手をすれば怪しまれるだろうし、危険なことだってわかってる。でも、協力してもらいたい」
「情…………報」
私が考えたのは娼婦を使って情報を流すことだ。娼館には色んな人が足を運ぶ。そこに敵味方は関係ない。であれば、さりげなく、少しずつ情報を流していけばそれは着実に噂になるだろう。あまり大掛かりにやれば私へ足がつく。
だけど娼館なら。どこから仕入れた情報かも、客の素性すら分からないのだから確かめようがない。私が言うと、ミィナはその大きな瞳を震わせた。
「私には目的がある。私は………私も、また。あなたのような状況にあるの」
「あなたが…………」
素性を知られたら困るので私は名を名乗っていなかった。ただ、落ち着いた声を意識して彼女に語りかける。使えるものなら何でも使う。手段は選ぶべきではない。私が大切なのは、守りたいのは祖国の彼女だけ。そして、父王を殺し王位へとついた叔父への復讐。夫婦間の精算と爆発事故についての調査はその前段階に過ぎない。
セレベークとは絶対に離縁し、私は祖国に帰る。正しい理由で、彼を弾劾しよう。だけどその前に爆発事故が起きればそれはおじゃんになる。ならばまずは爆発事故を防がなければいけない。
「無理にとは言わない。だけど…………協力してもらえたら、嬉しい」
「………………」
ミィナは悩んでいるようだった。
だけど答えなどおそらく決まっている。私はそれを見越してここに来たのだから。
ミィナはゆっくりと視線を持ち上げ、私と目を合わせた。そして、はっきりとした声で答える。
「分かりました。………そのお役目、私にやらせてください」
ミィナの黒玉色の瞳を見ながら、私はほほ笑みを浮かべた。
「ありがとう。そう言ってくれるって信じてた」
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