〈完結〉βの兎獣人はαの王子に食べられる

ごろごろみかん。

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βの集まり 3

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「んんんん!んん!」
 
 それでも何とか声が出ないか騒ぎ立てようとするが、男二人がかりで引きずられてはたまらない。あっという間にティナは三階の宿区域へと連れ去られてしまった。
 
 (アドリオン……!どうして!?)
 
 アドリオンと話していて、突然襲われたのだ。それを彼が見ていなかったはずがない。
 アドリオンも共犯だったのだ、とティナは下唇を噛んだ。
 
 事実、アドリオンは男がティナに襲いかかる時、冷静にその様子を見ていた。ティナが騒ごうとした時に口に布を詰め込んだのは、彼だ。
 アドリオンは男と結託してティナを攫ったのだった。
 彼女が懸命に抗おうとしても、ずるずると引きずられていくだけで、あっという間に宿の一室へと放り込まれた。室内には数人の男がいて、ティナの背筋がぞくりと冷える。
 ベッドに乱暴に突き飛ばされると、バランスを崩した彼女はうつ伏せになり、すぐに男がティナの背中にのしかかってきた。
 そして痛いくらいに紐のようなものを彼女の手首に巻き付けると、背中を押して彼女をベットに沈ませた。
 
「っ……!」
 
「そうそう、もうひとつ。タメになるお話をしますね」
 
 アドリオンが、ティナの背後で先程と変わらない声で言った。
 
「βは厳しく罰則が定められているΩと違い、国の法に強姦の条文記載がないんです。数が少なくて被害が表面化しにくい、というのとΩの強姦被害の数が多かったのでそちらが優先された結果ですね」
 
「…………」
 
「そして、この国の獣人はとても高値で売れる。あなたはフワローを出たことはありますか?」
 
 (フワローを……?)
 
 四方を海で囲われた島国、フワローはどの国とも交流はなく、他国の人間がフワローに来ることも、またフワローの獣人が外に出ることも禁止されている。
 海に面する区域は、常に各辺境伯が指揮を取る要塞があり、不審な船がないか監視していると聞く。
 
「国が海外との接触を禁じているといっても、対価次第では見て見ぬふりをする人もいる、ということです。どうやら、私たち獣人は外の国の人間にとって非常に珍しい種族のようでしてね、たいへん高く売れるんですよ」
 
「……!」
 
 ここまで言われればティナも彼らが何をしようとしているのか理解した。
 彼らは彼女を、フワローの外の国の人間に引き渡すつもりだ、おそらく、珍しい商品として。
 うつぶせの体勢のまま何とか逃れようと身をよじると男のひとりがティナの肩をつかみ、仰向けにした。近い距離から顔を覗き込まれ、ゾッとする。
 
 (どうしよう、どうしよう……!どうしたら!?)
 
 二階のβの集まりはまだ続いているだろうか。
 
 (誰でもいい。誰か、誰か来て……!)
 
 後ろ手に縛られ、口に布を詰め込まれた彼女がひとりでここを逃げられるとは思えない。出来るのは、じりじりとベッドボートに後退することくらいだが、それも男がベッドに乗ってしまえば意味がなくなる。
 
「お前は売り物にするが、その前にすこーし味見はさせてもらおうかなぁ」
 
「……!」
 
「兎の獣人を相手にすんのは初めてだ。せいぜい可愛く喘いでくれよ」
 
 その言葉にティナはゾッとした。
 彼らが何をするのか、今はっきりと分かってしまったからだ。咄嗟に逃げようにも縛られた手では上手くいかない。あっという間に彼女は、男の手によってその服を引き裂かれた。
 
 ビー、という布が裂かれる音がする。
 ティナのお気に入りの、大切に繕ったワンピースドレスは見る見るうちに無惨な布の切れ端となる。彼女は必死に暴れるが、手首を抑えられて腰を掴まれればまともに抵抗することは難しかった。
 
「んんん!んーー!んんん………!」
 
 誰か、誰か来て。
 その思いだけで必死にティナは声を上げた。
 誰でもいい、室内の様子をおかしく思ってくれれば……!
 しかし、悲鳴も出せないようでは誰も駆けつけてなどくれない。目をぎゅっと瞑り、目に映る全てを拒絶しながら首を何度も左右に振った。
 
「この子、胸は小さいが全体的に小作りで悪くねぇな」
 
「足開かせろ」
 
 胸を強い力で掴まれて、痛みが走る。
 きつく瞑ったまなじりからぽろぽろと涙がこぼれた、時だった。
 
 ──ガンッ!
 
 突然、木造の扉が吹き飛ばされたのだ。
 大きな破壊音と共に木片を飛ばされる。
 それに狼狽えたのは中にいた数人の男だった。こんなのは予定にないことで、予想外の出来事だったのだ。恐れ戦く男たちの前に現れたのは、銀の髪を持つ美しい男だった。
 
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