悪名高い私ですので、今さらどう呼ばれようと構いません。

ごろごろみかん。

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断罪劇にはまだ早い

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ホールに窓って、当初の目的・・・・・を果たした、あと──。
ホールに響き渡る声が、私を呼んだ。

「ルナマリア!!」

私を、こんなふうに呼ぶひとなど心当たりはひとりしかいない。とはいえ、まさかこんな場所ホールで大声で呼び止められるとは思っていなかった。うんざりして振り返れば、そこにはやはり、想定通りのひとが。

「……ジェラルド様。どうされましたか?」

周囲がざわめく。私たちが、ルーゼン伯爵夫妻だと分かったのだろう。好奇に満ちた視線がこちらに向けられる。

(……私たちは見世物じゃないのよ)

今すぐ、ジェラルド様をどうにかせねば。ちら、とさりげなく周囲に視線を向ける。どうやら、ホストの公爵には気づかれていないようだ。

(先日、きつく注意を受けたばかりだというのにこんなに目立つことをしたら……)

それこそ、公爵主催の夜会は出禁になりかねない。私が視線を逸らしたことで、無視されたと思ったのか、ジェラルド様はツカツカと早歩きで向かってきた。

「お前……フローレンスに何をした!」

「はい?」

予想外の言葉に、声がひっくり返る。
眉を寄せれば、ジェラルド様は私が誤魔化しているとでも思ったのか。さらに声高らかに言った。

「フローレンスを泣かせただろう!!」

(ちょっ……)

ちょっと、いい加減にしてくれ……。
ここは自邸でもなければ、人気のない場所でもない。有力貴族が集う夜会の会場で、しかも今日はリドランス公爵主催だ。

少し頭を使えば分かることなのに、なぜこのひとはそれすらもしないのだろう。猪突猛進??
ひとつのことしか考えられないの??いや、視野が狭すぎるのか……?

ため息を押し殺せない。低く息を吐くと、私は彼を制止した。こんな夜会の場で醜聞沙汰など、いい噂の種である。

これ以上、ルーゼンの名を貶めるわけにはいかない。

「ジェラルド様。場所を変えま──」

「お前は可愛いフローレンスに嫉妬して!!醜くも彼女につらくあたり、泣かせたな!!そうだろう、ルナマリア!罪を認めよ!」

(何様だ、こいつ)

いい加減、いらっとしてきた。
話を聞こうともしない、旦那様に。

──なので。

「お言葉ですが、旦那様」

「な、なんだ。言い分があるなら聞いてやらなくも──」

「お顔の色が優れませんわ。体調がよろしくないのでは?」

「…………はっ!?いや、今はそんなこと──」

「失礼します」

私はジェラルド様の言葉を聞く前にカツカツと彼に近づくと。
そのまま、彼の頬に手を伸ばして無理に彼の顔をこちらに向かせる。もちろん、無理な姿勢なので、旦那様は苦しいことだろう。現に「ぐえっ」という声が聞こえてきた、が無視をする。

「あら、やはり顔色が悪いですわね少し休まれた方がいいと思います」

「は!?そんなことよりこの手を──」

旦那様は反論しようとしたが、その前に私は彼の鳩尾を肘で打った。
どすっという鈍い音、と共に彼が呻く。

「ゔっ」

しっかり、入ったようで何よりだ。
先程まで勇ましく私を糾弾していたジェラルド様も大人しくなった。

(これで良し)

少し手荒な方法になってしまったが、黙らせる手段がこれしか思いつかなかった。私は、崩れ落ちるジェラルド様の体を支え、意図して大きな声で言った。

「まあ!たいへん。やはり無理をされていたのですね。涙まで滲んで……これでは見間違えをしてもおかしくないというものです。早く帰りましょう」

ルーゼンの名を、これ以上ジェラルド様に貶められる、前に。
私はそのままジェラルド様を引きずって会場を後にした。私に演技力はないので、かなりぶっきらぼうな口調にはなってしまったが、ジェラルド様の体調が悪いのはほんとうだ。

ホールを出る際、侍従にジェラルド様の顔色が優れないことを伝えたが彼も疑っていないようだった。
馬車に乗り込んでも、ジェラルド様はぐったりした様子である。

(……すこしやり過ぎてしまったかしら)

咄嗟に日々の訓練通りの動きをしてしまった。もう少し、手加減するべきだったかもしれない。

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