王妃の鑑

ごろごろみかん。

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行動

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あの後、ネアモネは結局王太子の婚約者に据えあげられてしまった。
その時になってネアモネははっきりと自覚した。
行動しなければ何も変わらない。既に婚約者になってしまった。今からでは遅いかもしれないが、まだ間に合うかもしれない。何はともあれ覚悟が決まったのはいいことでもある。怯えていただけでは変わらない。

不本意だが、アルフェインの言葉がネアモネの行動のきっかけになったのは否めない。下ばかり向いていては何も変わらない。未来を変えたいのであれば自分が行動しなければ。

ネアモネは行動に移すことにした。まずは、家を出ることを第一歩にしよう。そして、市井で暮らすことを目標にする。
そう決めたネアモネの行動は早かった。リリアベルを伴って家を抜け出す。両親に話したら怒るどころの騒ぎではないだろう。仕置きと称して酷い折檻にあうことは目に見えている。
それでも構わない。自分の未来を探す第一歩だ。念の為両親には気付かれないように抜け出したが、こればかりはどうなるかわからない。
一応自分の仕事だけこなして、ネアモネは家を出た。

市井に出ると、その活気に驚いた。そこでネアモネはまたしても気づく。自分は何も見えていなかったのだと。王妃の時だって人々にこんなに活気があるとは知らなかった。ひとり部屋にこもり、この世界に絶望していた。
喧騒やかましい街に、子供の笑い声が響く。

「ちょっと、さっきの人かっこよかったよ!」

「声掛けてみましょうよ」

すれ違った若い娘たちがはしゃいだ声を漏らす。その後ろを急いで男が走り去っていく。手には木材があり、その服は少し汚れている。恐らく土木関係の仕事についているのだろう。
ああ、世界はこんなにも………

「お嬢様?」

リリアベルに声をかけられてハッとする。気がつけば、ネアモネの目からは涙が零れていた。街中で泣き始める女は明らかに異質だ。元々自分が持っていた服は粗末なもので、これを着て外に出ても令嬢だと気づかれることは無いだろう。
ネアモネは目をごしっと擦ると、笑ってリリアベルに声をかけた。泣き笑いのような表情になったネアモネにリリアベルは困惑する。最近のネアモネは情緒不安定だとリリアベルは感じていた。
だから今回街に行ってみたいと言った時も念の為止めたのだが…………

(大丈夫かしら………?)

リリアベルは心配だった。だけどリリアベルの心配をよそに、ネアモネはそっと歩き出す。その後ろを慌ててリリアベルが着いていく。

「リリアベル、街はこんなにも活気に満ちているのね」

「ディアグレイは大国ですから」

「そうね………」

でも、私初めて知ったわ。
そう思いながらネアモネは歩を進める。そのあと持っていたなけなしの宝石をひとつ売り払うと思っていた以上の金銭ができた。そこまで大きな金額ではないが、街で食べ歩きするには多すぎる金額だ。
ネアモネはその半分をリリアベルに渡し、その半分を自分のポケットにしまった。
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