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ソフィア

真実を伝える日 6

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次の日、夕方。
ソフィアは鉛玉を飲み込んだような気分でロウディオの部屋へと向かった。答えは決まっていた。昨日はなかなか寝付けず、彼女は寝不足だ。何度考えても、答えはひとつしか見つけることが出来なかった。忘れてはいけない。ソフィアは二十五歳で、今の夫は十三歳なのだ………。
無垢で無邪気で、ただひたすら純粋な十三歳だ。まだ、この時のソフィアとロウディオは、傍から見れば仲が良かったの、だろう。
ソフィアは彼を苦手としていたが。

コンコン、とノックをする。ソフィアはもう覚悟を決めていた。いつまで引き伸ばしても仕方ない。たった一回。一回だけだ。
ノックをして──間。
返事もなく、扉が音もなく開く。驚いて息を飲むソフィアに、ほんの少し目線が上なロウディオは僅かに嬉しそうに笑って見せた。

「来たんだね。ソフィア、良かった。来ないかと思った」

「……来るわ。だって、約束したじゃない」

「それは今の僕とソフィアを知るために必要な期間のため、っていう名目だろ。そうじゃなくて……」

ロウディオがそっとソフィアの手を掴む。その手は驚くほど冷たかった。それで、ソフィアは気がついた。もしかしてロウディオもまた、彼女と同じくらい緊張し、恐れていたのかもしれない──と。途端に彼女は情けない思いが込み上げてきた。

(私は今の殿下より十二も年上なのに……。自分のことばかり……)

自分が言いたくない。そのためだけに、真実を隠す。これはきっと、良くないことだ。ソフィアはゆっくりと顔を上げた。そして、いつかのロウディオのようにまっすぐ彼の薄青の瞳をみあげる。

「……私たちのこと。話そうと思ったの。だから……入れてくれる?」

「……うん」

ロウディオもまた、言葉少なに彼女を部屋に招いた。




ソフィアは彼に促されてソファに座らされると、すぐに本題に入った。

「私と殿下は、上手くいってなかった」

「……うん」

「殿下は……恋多き方だったわ」

「………」

薄々勘づいていたのだろう。ロウディオは何も言わなかった。ソフィアは言葉を続ける。
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