〈完結〉離縁予定の王太子妃は初恋をやり直す

ごろごろみかん。

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ソフィア

変わる日 4

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「場所は?」

「ロロ!」

具体的な話を聞こうとするロウディオに思わずソフィアが彼の真意を確かめるように声を出す。これではまるで、ロウディオがイゾルデの誘いに乗っているようではないか。ソフィアの驚いた声に反応したのは、しかしロウディオではなくイゾルデだった。

「………ロロ?」

イゾルデはじろりとソフィアを見て、そしてロウディオを見る。

「ロロ……そう。ロロ、貴方はそう呼ぶのね……」

「なに……」

イゾルデはぎっと力強い瞳でソフィアを睨みつけた。青い瞳はまるで冷たい炎のようにソフィアを射抜いた。

「彼が不機嫌になった理由も……そう。わたくしへの愛が冷めたのが原因ではない……」

「……?」

イゾルデはひとりでなにか呟くと、ついでロウディオを見た。未だに笑みを保っているが、その表情にいい感情は浮かんでいない。這うような暗い声でロウディオに尋ねた。

「わたくしも貴方をロロと呼んでもよろしくて?」

(え……)

驚いたソフィアに、ロウディオはイゾルデの問いかけには答えない。

「お前のことも思い出せないのは予想外って言ったね」

「ぞんざいな言葉遣い。十三歳のあなたならではね?」

「茶化すな。僕がお前のことを思い出す可能性はあると?」
 
「だとしたら?わたくしに愛の抱擁ハグでもしてくださるのかしら?……いつもみたいに」

イゾルデの最後の言葉は、ソフィアの胸を真綿でゆっくりと締め付けた。思わず苦い顔になりそうなソフィアは、いつものことだからと自戒する。

(そうよ。ハグくらい、なんてことない。殿下はもっと濃い時間を恋人たちと……)

ソフィアの思考を打ち破ったのは、ロウディオの無感情な声だった。

「いいよ。お前が僕を抱きしめてくれる?」

(ロロ………?)

ソフィアは今や、二十五歳の彼を"殿下"と呼び、十三歳の彼を"ロロ"と無意識的に呼び分けていた。何より、今の彼を殿下と呼ぶと彼は悲しそうな顔をするからだ。
ソフィアの声掛けに、ロウディオはちらりとソフィアを見たが、すぐにイゾルデに視線を戻す。どこか憮然とした顔をしているが、彼がイゾルデを取ったことに間違いはない。
ソフィアは国王の言葉を思い出していた。

ーー魔女が手ずから呪い解呪の手助けをするであろうな。アレはそれが狙いのはずだ

イゾルデの目的はロウディオだ。
国王はそれが現実となることを危惧していたが、ロウディオが乗り気であれば……?
ソフィアはどうするべきか?国王の命令通り、イゾルデの妨害をする?しかしそれはソフィアの妬みにしか見えないのではないか……。
ロウディオの意志を尊重すべきではないか。
ソフィアは硬直していた。

その間に、魔女イゾルデは恍惚とした表情を浮かべてロウディオに近づく。彼女は美しいものを愛している。二十五歳のロウディオも愛していたが、彼女は十三歳の少年であるロウディオもまた深く愛し、その未完成な美に酔いしれていた。

「ああ……貴方はほんとうに綺麗。美しいわ。わたくしのものよ」

イゾルデが彼の頬をするりと意味深に指先で撫でても、ロウディオは微動だにしない。あまりにも性的な触れ合いに、ドキドキと……あるいはハラハラしているのはソフィアの方だった。


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