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ソフィア
エピローグのその後に
しおりを挟む呪いは、解けなかった。
宮廷魔術師の見解によると、呪いを解く前に魔女を斃したことで呪いにねじれが生じたのではないか、ということだった。
これを聞いて蒼白になったのはソフィアだ。ふらりと傾いだ彼女の体を後ろで控えていた侍女が支えた。ロウディオの呪いが解けなければ、大変なことになる。国の問題、王太子としての立場。そもそも呪いの解呪にほかになにか必要な条件があるのか。
同席した国王夫妻もまた、息を飲んで様子を伺っていた。国王夫妻には子がひとりしかおらず、それはロウディオだ。もしロウディオを廃嫡するとなれば、次の王位継承者は王弟となり、現公爵に移る。政治的背景を鑑みてもそれは避けたいところだった。
張り詰めた空気の中、自身のペースを崩さない宮廷魔術師は、ロウディオを不可思議な光で包んだ。ふわりと青白い光が飛ぶ。
その光が収束を見せ、くるりと彼の周りを回った後、魔術師は間の抜けた声を出した。
「おや?これは……」
「何かわかったのか」
続けたのは国王だ。
魔術師はじっとロウディオを見た後、首を振った。
「解呪は成功です」
「では……!」
「ですが、呪い自体にねじれが生じていることによって、不完全な代物と化している」
「簡潔に言うがいい。回りくどい言葉は不要」
国王は僅かに苛立ちを見せたようだった。
その言葉に魔術師はこくりと頷く。
「王太子殿下は二十五歳のお姿に戻ることはありません。それは精神面においても同様。ですが」
魔術師は奇妙な珍獣でも見るような顔でロウディオを眺めた。まるで見世物にでもなったかのような気分になったロウディオはわずかに眉を寄せる。魔術師はじろじろとロウディオを眺めることはやめずに、さも貴重な研究対象にあたった、というふうにも──宇宙人とであった時の人間のようにも視線を忙しなく動かした。しかしその口調はやはり緩慢だ。
「王太子殿下は、今後、日に日に成長していくでしょう。ふつうの十三歳と同じように」
「!!」
それは部屋にいた、誰もが驚くべき事実だった。
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