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ソフィア
エピローグのその後に 4
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今まで受けた屈辱はスティラとの茶会以外にもたくさんある。それは細かいものから、数日程度忘れられない衝撃的なものまで。ソフィアは子ができないことをせっつかれることに慣れていた。慣れてはいるが、それが彼女の傷つかない理由にはなり得ない。彼女はずっと苦しんでいたし、悲しんでもいた。ソフィア以外を愛するくせに、几帳面に行為のときは避妊具をつけているようだと知った時、ソフィアはなぜ、と思った。
ソフィア以外にも情を吐き、愛を口にしているくせに、なぜ。だけどソフィアは彼を責めることは出来なかった。
(私が子を成せないから………)
ソフィア自身の責任であるかもしれないのに、それを棚上げしてロウディオを問うことは、ソフィアには出来なかったほかの娘への愛を確認して、それが確かであるものだと知るのを恐れたのかもしれない。
ソフィアが黙って俯いていると、彼女の知るロウディオより十三歳歳若い少年が心配そうにソフィアの顔をのぞき込む。
「体調が悪い?」
「ううん……。すこし……今日は、いろいろあったから……。だから」
「……分かった。ソフィア、今日は一緒に寝よ?」
「え……」
顔を上げたソフィアに、僅かに目線が高いロウディオが笑う。
「未来のことも今のことも、置いといてさ。僕と話でもして、一緒に寝ようよ。くだらないことでいいんだ。僕はソフィアの考えていることは分からない。だけど、わかりたい。夫婦は手を取りあってお互いを支え合うものだと、聞いたことがあるんだ」
「………」
ロウディオの言葉はソフィアを動揺させる。
何を今更、という感情も、もちろんある。
だけど、それは今の彼に言うべきでないことも、理解している。ソフィアはふ、と息を吐いた。
確かに今日は様々なことが起きて疲れていた。
その夜、ふたりはとめどなく色々な話をした。ロウディオは時に年幼い少年のように。時にはソフィアの夫として、彼女と感情を分け合った。
十二個年下とはいえ、会話をして、共に時間を過ごしていくうちにソフィアは気がついた。ソフィアはもう彼を、庇護すべき子供と見ていなかった。
彼を、ロウディオだと思って接しているということに。
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