〈完結〉離縁予定の王太子妃は初恋をやり直す

ごろごろみかん。

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ロウディオ

エピローグのその後に 5

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───────

7月6日
あと少しだった。それなのに僕はしくじった!
くそ。どうしようもない失敗だ。思ったよりも時間がかかる。あの女は妙に警戒心が強い。僕が抱かないのが理由かもしれない、と宮廷魔術師は言った。確かに抱けば一番早いのかもしれない。だけどそれだけは嫌だ。そもそも自分のそれをあの穢らわしい女にいれる?そんなことした日には僕はトラウマで二度と性行為が出来なくなるだろうな。
あの女が僕をロロと呼んだ。
腹が立つ。その愛称を許してるのはソフィアだけだ。あの女が口にしていいものじゃない。
どうしても耐えられなかった。そのせいで、僕はあの女に疑われた。それまで上手く恋人として魔女の目を欺けていたと言うのに。だいたい、何でロロなんて愛称を付けようとするんだ。咄嗟に出た拒絶の声は誤魔化しようがない。さいあくだ。振り出しに戻った。

7月31日
あの女のご機嫌伺いも吐き気がする。名は呼ばせていないが、前以上に距離が近い。ああ、早く死んでくれ。

8月1日
ソフィアは僕を悲しげに見て、その瞳に怒りを混ぜるようになった。魔女の噂を聞いたんだろう。なぜ尋ねないのだろう。
魔女のことは、彼女に直接話せばいい。それがいちばん早い解決法だ。わかってる。だけど、彼女から聞かれるのを待ちたいとも思ってしまう。怒って、僕をなじればいい。魔女の話をする度にソフィアは唇を噛んで、いいたげにするのに。
ソフィア。きみはどう思っている?きみが憎い。

───────




日記は魔女とやり直しの日々を綴るものと、ソフィアへの愛憎の文字で塗れていた。
日記はついに二十五歳のものに入った。





──────

1月5日
魔女の相手はほんとうに疲れる。寿命が削られているようだ。あの女の、期待した目が気持ち悪い。まるで視線で犯されているようだ。あの目で見られると、眼球をえぐり取りたくなる。
だけど、それもあと少しだ。あと少しで魔女を殺せる。彼女が僕の私室を尋ねる夜。あの女が僕と初めて体を重ねると思い込んでいるその時が、決行する瞬間だ。魔女に知覚されないシルバーナイフは枕の下だ。心臓を的確に狙えば、間違いなく死ぬだろう。
時間が無い。このままだと業を煮やした国王に王太子妃の交代を命じられるだろう。王太子妃交代──ソフィアと離縁して、新たな妃をめとるという話は議会にも出ている。決議まであと一週間以上あるが、それまでに終わらせる。宮廷魔術師を証人にして魔女の存在を明るみにする。離縁など死んでもしてたまるものか。

1月7日
失敗した。ああ、くそ──解読不能な文字──
時間が無い。僕がかけられた呪いは"退行"らしい。ということは、あと一分もしないうちに僕は幼くなるのだろうし、記憶も失うんだろう──解読不能な文字──
いずれ、この日記を幼い僕は見るのだろう。
日記を見れば多方は理解できるだろう。それが出来ないほど愚かだと僕は思っていない。
お前に向けて、メッセージを残す。

魔女イゾルテを殺せ。
そうすれば、全てが解決するはずだ。

─────────────





最後の走り書きのような言葉を最後に、日記は空白のページが続いていた。
筆跡は荒く、殴り書きのような様子だった。あまりにも乱暴なそれは読むことが不可能な部分も多くある。
僕はようやく理解した。ソフィアの様子のおかしさと、周囲の違和感を。僕たちが婚姻をしたのは十八歳の時と言うから、婚姻してもう七年。子もいなかったのだから、離縁の風向きが強いのは納得出来る。
目まぐるしく思考が回転する。

(僕は……ソフィアの愛を求めていた?)

日記に何度も出てくる、"ソフィアは愛を返さない"という言葉。彼女は僕を愛していなかったのだろうか。離縁できるとせいせいしているのだろうか。彼女は僕を、どう思っているのだろう──。

僕は、残りの日記を細工された机から探し出すと、朝まで読んでいた。
やがて、彼女の髪によく似た朝日が窓から差し込んでくる。眩しい目を細めながら、僕は二十五歳の彼らの関係を推定した。

『私は何も変わってない!変わったのは……変わってしまったのはあなたよ……!』

変化を恐れたソフィアと、変化を求めたロウディオ。それが、彼らの関係を難しくしてしまったのではないか、と。


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