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2章

にじゅー

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こんなに弱いのに霊媒師歴10年以上はありえない。
絶対経歴詐欺だ。
嘘をついた彼らを私は白い目で見た。

「ぎゃあああ!?なんだ!?何が起きてるんだ!?」

もうひとりの男が裏返った声で言う。
あまりにも仲間が弱くてびっくりしたのかもしれない。
それか、自分たちは強いと過信してたのかな。

妖怪相手に過信は危険だと知らないのだろうか。
これでよく今まで無事に生きてこれたなと私は感嘆した。
二人目が銃で屍人を撃つ。
でも屍人に銃は効かないんじゃないかな。
本当に物理攻撃をしかけた二人目の男もあっさり飲み込まれてしまった。

残りひとりだ。
え、これどうするつもりかな。
ひとりでこの数を祓うのは難しいだろうし、残りのひとも同じ結果になる気がする。
せめて手首の縄解けないかな。
うわ、固結びだ。

「くっ、くそ!何が起きてんだ!?うわぁっ来るなぁ!」

来るなと言っても屍人は言葉を理解しないので意味がないと思う。

突然がしっと肩を掴まれると屍人の群れに放り出された。

手首の縄がようやく解けて手が自由になる。
お姉様によく縛られることがあったから縄抜けは得意なのよね。
お姉様は万が一のことを考えてくれていたのね。
あの時の経験が役に立っている。
お姉様のおかげで今、私は手首が自由だわ!

「姿を現せ 神楽鈴」

すぐ手に馴染む感覚。
とりあえず近くの屍人を祓おうと神楽鈴を振る。しゃん、と澄んだ音がして近くの屍人が土に還る。

「うっ、うわああ!うわああ!うわあああ!」

男が叫ぶ。
何を言ってるか分からないから言葉を話して欲しい。
男は悲鳴をあげて走ってきた。
手には抜き身の剣。

屍人に向かって突き立てるはずがどうやら混乱して手先が狂ってしまったようだ。

私に突き立てられそうになった剣を咄嗟に神楽鈴で受け止める。
鈴の音と鉄のぶつかる鈍い音がする。

「うわああ!うわああ!」

男は混乱してるのかひたすら剣を押し付けてくる。
これじゃ屍人が祓えない。
困ったな。

とにかく落ち着かせようと思って「数を数えてください」と言う。
落ち着いて数でも数えれば混乱も収まるんじゃないかな。

そう思ったのになぜか男は顔を青ざめさせてしまった。

「か、数………?たくさん……たくさんいる……」

男は混乱して怯えてしまってるのか意味のわからないことを言った。

猫じゃないんだからパニックを起こして恐慌状態に陥るのはやめてほしい。

そう思っていると、「そこまでだ!」と声が割ってきた。

この忙しい時に一体誰だ。
空気が読めなさすぎる。
見ると、見知らぬ男が小脇に少年を抱えていた。
なんでいるんだろう。
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