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3章

にじゅーきゅう

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猫を見ると耳が反ってて怒ってるらしい。陛下はそれに気づかず撫でくり回すからついに噛まれた。 

「痛っ」と陛下は口にしたけど続いて「痛みまである……本当に生きてる……」なんてことを言い始めた。死んでるけどね。
私は白猫を見ると、もう一度鈴を振る。
目を閉じて鈴を振り、契約を結ぶ。

目を開けると白猫の周りに契約が結ばれた模様がきらきらと舞い上がった。
古代術語だ。
私はそれを見留めると鈴をしまった。

疲れた。
そのまま枕にもたれ掛かるのと、白猫が痒そうに顔を振ったのは同時だった。

あ。
白猫がぶるるっと顔を振ると同時にぶわりと猫が大きくなった。

いや、大きさ的には豹だ。

「猫が成長した……」

陛下がポツリという。
成長というか、進化というか。陛下の撫でくりまわしていた手は止まっていた。
大きくなった白猫にベッドの大半を占領されてしまったので、手足を丸める。

「霊格が上がったので」

「霊格?」

「野良猫ではなく、主従の関係を結んだので、霊格が上がったんです」

白猫は満足そうに陛下の手に顔を擦りつけていた。
陛下はそのもふもふ具合に我慢ならなかったのか、猫の顔に頬を擦りつけた。猫が嫌そうにしている。

今噛まれたら酷い流血沙汰になりそうだ。

念の為教えてあげようと思ったけれど、遅かった。既に陛下はがぶりと噛まれていた。こめかみあたりを。
牙がくい込んでいる。痛そうだ。

「……すごく、痛い」

陛下が呟く。
そうだと思う。
陛下のこめかみからは血が一筋流れていた。

「頭大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないかな。猫にはいつもこうなんだ」

大丈夫じゃないみたい。
困ったな。
流血をさせたまま部屋に返すわけにはいかない。
私は陛下のこめかみに手を当てて、気を流した。
札がないけれど軽いものなら治癒できるだろう。
霊体からの攻撃で受けた傷は、霊力で癒すことが出来る。
少し力を込めると、ふわりと陛下の傷が癒された。
陛下が驚いた顔をする。

「これが霊力か」

「祈祷の類と同じですね」

「そうか………」

陛下はむくりと起きると、白猫に笑いかけた。初めてそんな顔を見た。
よっぽど猫が好きらしい。猫というより今は豹だけど。白豹。

「そういえば、まだお礼を言ってなかった。弟を助けてくれてありがとう」

忘れてた。

少年は今何してるのだろう。
目立った傷はなかったようだけど大丈夫かな。そして陛下が真っ直ぐ私を見て言う。

「それと、すまなかった。王宮面の警護もそうだし、侍女の件もそうだ。侍女は~~~¶༄𓇼◌」

陛下はやはり話が長いと思う。
眠くなってきてしまった。
残り少ない霊力も使ってしまったし。
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