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デモ隊の作戦が功を奏し、八月末の祭りへ向けたアナゴの漁獲が芳しくなかったらしい。幸い、いけすを持つ料理屋の息子や娘がしばらく設備を提供すると申し出てくれたので、活かしておけるなら少しでもストックを増やそうと、佃水軍は今朝から総出でアナゴ探しをやっていた。そこへ突如押し寄せた青の秩序が、話を聞けッとばかり、強制的に漁を中断させたのだ。
これが別の漁法だったならばこんな輩は無視する水軍の子供たちも、水面でカヤックやカヌーから騒々しい水音を立てられ、アナゴが皆、砂底へ引っ込んでしまってはどうしようもない。言いたいことがあるのなら、とっととくっちゃべって失せやがれ、と正面切って対峙することになった。
だが時間が経つにつれ、双方の人数は膨れ上がる一方だった。昨今、周辺の水軍が結束してよそ者の大人へ対抗しよう、という機運が醸成されていたこともあるだろう。誰か一人が連絡を取り始めるとそれが続々広がって月島、晴海、勝どき、豊洲などの水軍が一斉にバヤックを漕いで駆け付けた。その動きに対抗すべく、青の秩序オリジナル魚髑髏ステッカーを船体へ貼り付けたカヤック、カヌー、小型船、水上バイクやバヤックなど様々な水上ビークルも増え続け、帆織が到着したころには佃大橋の少し上流、川の大分流点に両軍相対して今にも一触即発の有様となっていた。
「もう、君たちにこの川は任せて置かれない!」
ある程度人の集まるのを待っていたものだろう。やがて青の秩序、行動隊のリーダーが水上やぐらから拡声器を使って子供たちへ呼び掛けた。
同調した大人たちの歓声が威圧する中、
「どういうつもりですか」
水軍連合を代表するコハダは最初、あくまで冷静だった。
「我々は今朝早く、一頭のカイギュウを保護した。彼は傷を負っている」
指導者が合図を出すと、やぐらにセットされていた空間投影機が人々の頭上へ青白い巨大スクリーンの構築を始めた。やがて、夏の日差しと川の乱反射で幾らか減衰してはいるものの、鮮やかな色合いで動画の再生が始まる。
映し出されたのは、若いカイギュウの乳白色の肌、ぱっくり開いた、明らかに刃物傷から流れ出す鮮血、そして苦し気な呻き声だった。
「それが私たちの仕業だと?」
「論より証拠、これを見たまえ」
傷ついたカイギュウの動画が切り替わり、
(やられた!)
帆織は唸った。不鮮明で荒い画質だったが、夜の大川、長々しい銛を槍のように振るい、水に浮かぶSUPの上で暴れ回る素顔の少女が映し出され――、
「トヨミだ」「トヨミじゃん」
子供たちの間からも声が上がる。
帆織は急ぎ、トヨミへ起こっていることを伝えるメッセージを送った。
今か今かと返事を待つが、端末に応答はない。対策を立てるにしても彼女の意見がなければ始まらないだろう。すぐにもコハダと男の間へ割り込んでいきたい気持ちを彼は堪え続けた。
映像はトヨミの顔が大映しになったところで静止している。元となるデータが破損していたものか、何度も修復をかけなおしたらしい薄ぼんやりした投影だったが、眼をぎらつかせ、白い歯をむき出しに鬼の形相で銛を振るう少女は確かにトヨミだ。
しばし沈黙がある。
騒々しい蝉の声も遥かに遠いようだった。
指導者は勝ち誇った顔でやぐらから子供たちを見下ろし、コハダは腕を組んでキッと相手の顔を見上げたまま、目を逸らさない。
やがて彼女が口を開き、
「これが何かの証拠になると仰るんですか? カイギュウを傷つけている場面が撮られているならともかく、傷ついたカイギュウの映像の次に女の子の水上演武をくっつけただけですよね」
「確かにその通りだ」
潔く指導者は認めた。
「この少女がこんな大きな銛をこの川のどんな生き物に使おうというのか、昨日この映像が撮影されたほとんど直後に、刃物で傷つけられたカイギュウが保護されたことと何か関連があるのか、といった疑問はさておき、この映像が直接、虐待の証拠となるわけじゃない」
「じゃあなぜ――」
「君たちが公の、交通の場である大川で我が物顔にふるまえるのは、君たちが一応の決まりを作り、それに沿って動いているという前提があるからだ。自分たちを正しく律することができるという無言の契約を地域住民とかわしているからこそ、大手を振って漁をしてもそれほど文句を言われないわけだな。しかし、君たちに自らをコントロールする能力がないのであれば話は変わる。君たちの最大の決まりごとの一つが夜の禁忌だろう?」
「そうですよ。夜の大川に出てはいけない。夜通しの罠を仕掛けたりしてもいけない」
「夜の大川で暴れている子供の存在そのものが、君たちの管理能力の低さを露呈しているとは思わないのか? 夜の禁忌も協定も全く意味がない、君達に統治能力が無い証拠じゃないか。だから、そんな君たちにこの川を治めさせておくわけにはいかない。理屈としてはわかるだろう?」
「待てよ、おっさん」
カジメが口を挟んだ。
「そこに映ってる奴はどの水軍のメンバーでもねぇ、はみ出しもんなんだ。知らねぇのも無理はねぇけど、俺らの仲間じゃねぇ奴の話を持ってこられて、こっちの管理能力が足りねぇだなんて、ぶっ飛んだ言いがかりじゃねえか」
「じゃあなぜ、そのはみ出し者を取り締まらない?」
「なんだと?」
「君たちはこの川の主たる利用者としていつも、幅を利かせているじゃないか。大きな力には大きな責任が伴うものだろう? 君たちには彼女を注意するくらいの義務はあるはずだ。それに仲間じゃないと言っても、全く無関係なわけでもない。……そこの漁労長さんなら私の言ってることが分かるはずだがな?」
「どういうことだ、コハダ?」
「知らない……どういうことですか?」
コハダは素直に訝しむ顔つきで首を振った。
指導者はニンマリと笑い、
「警察筋からの情報だが、この少女、一説には水上警察が以前からマークしていた密猟者〝魔女〟ではないかとの声もある人物だがね――」
空間投影がトヨミの監視写真や警邏艇転覆の現場写真などに切り替わる。それは明らかに、ある方向性を持たされた資料の展開で、
「――この子は君の幼馴染みだそうじゃないか」
「だからなんだってのよ? 付き合いが無くなって、もう何年にもなる子なんだけど」
「付き合いがない? 君の右腕、マルタ君が彼女の家に訪れているのを最近見かけたって話があるぞ。佃水軍の漁労長の腹心が、密漁の容疑者に一体何の用なんだね?」
「あんたにゃ関係ねぇよ!」
マルタが言い放ったその時、コハダの目に一瞬、動揺が走った。
しかし彼女は堪え切り、
「知らないわ。私はマルタを逐一監視してるわけじゃない。それにトヨミは付き合いこそしなくなったけど彼女、密漁なんてする子じゃない。きっと理由があって夜、出てるのよ」
「理由ね。カイギュウの肉を仕入れる計画がその理由なんじゃないのかね。君たちはこのカイギュウを、自らを潤す資源くらいにしか思っていないんだろう?」
「は? どの口がそういうこと言えるの?」
漁労長が鼻息荒く一歩踏み出そうとしたその時、三度、投影機の映像が変わって奇妙な形の金属製器具が映し出された。見上げたコハダの足が止まる。くりくりと大きな目がさらに丸くなる。小さな口がぽかん、と開いた。
「カイギュウのミルクを使ったアイスクリームが流行っているらしいな。一時は大っぴらにやっていたが、乳搾りがカイギュウにストレスを与えると非難されそうになるやいなや地下に潜った。この搾乳機を誰が作り、誰が作らせたかは、君が一番、よく知っているはずだ」
映像がまた切り替わり、スクール水着の少女が青々と透いて輝く水中で楽し気に乳搾りする、牧歌的場面が映し出される。もちろん、それはコハダ自身の映像だ。
「うちはとっくにやめてる! 搾乳機だって試作機を作っただけよ!」
知らぬ存ぜぬで通せないところがコハダの良いところであり、悪意に対しての最大の弱点であることは明らかだった。マルタが「もう話すな」と忠告した様子を見て、相手は高らかに笑った。もう遅いのだ、とその目が嫌らしく言っていた。
「本当にやめたのか? ならどうして佃水軍御謹製の搾乳機が我々の手に入ったのかね。こいつは試作機には見えない。答えは簡単、やめたと言うのは表向きの姿勢だからだ」
これを見たまえ、と男は赤毛の女が足元のクーラーボックスから取り出したプラカップを受け取り、高らかに差し上げた。
「カイギュウアイスはまだ売っている!」
「うちじゃない!」
「カイギュウは今のところ、佃水軍の縄張りにしかいない。ここで乳を搾るには佃水軍の監視の目をごまかさなきゃならない。だが、ごまかす必要の無い者たちがいる。佃水軍のメンバー、それも主要メンバーなら、何をやっても咎められることはない!」
「ただの憶測よ!」
「君たちのカイギュウの資源活用はエスカレートしている。ネットではカイギュウの肉が長寿に効くという噂も広まっているようだ。大陸のブローカーが入ったという話もある。肉には相当の値が付くだろう。だが衆人環視の中、さすがの君たちも表立ってカイギュウを狩ることは憚られた。それで今や夜の大川、裏世界の人物となっている幼馴染みに目を付けたのだ。だが彼女は失敗した。そうだろう、漁のままごとで雑魚を捕るのとはわけが違う。まあ、その失敗のおかげで我々が君たちの陰謀に気づき、こうして阻止できたのだがね」
「証拠も何もないじゃない!」
「じゃあ、どう説明するんだ? 君たちが搾乳を行っていたことも事実、魔女と呼ばれる密漁者と連絡を取っていることも事実、傷ついたカイギュウの保護も事実――」
「だから、トヨミは密漁者じゃないってば! 魔女なんかであるはずもない!」
「優しいお嬢さん、付き合いのない無関係な人間をなぜ、躍起になってかばうんだね?」
それこそ、君たちが見えないところで繋がっている証拠だろう、と男。
「子供たちの中で夜の禁忌を破らないことに最も熱心なのは君だそうじゃないか。それは他の子供を夜の川へ近づけないためじゃないのかね。魔女と呼ばれる少女と裏で通じ、昼も夜もこの川を独占しようという君の動機こそ、タブーの正体なのではないのかね?」
状況証拠とも言えない低レベルな試料の寄せ集め、ただの羅列に過ぎない。だがコハダはいつもの達者な口を全く封じられていた。マルタがトヨミと会っていたことと、捨てたはずの搾乳機を青の秩序が回収していたことを知らず、この二つの事実そのものはもちろん、それを自分が知らなかったことに動揺しきっている。搾乳の写真を大人たちが撮れば彼女はそれに気づいたはずだから、子供たちの中の誰か、おそらく水軍のメンバーの誰かが首領の乳搾りを記録し、敵方に渡した可能性が強いことにもコハダは気付いているはずだ。そしてその事実がますます彼女を、普段の冷静なキャラクターから遠ざけてしまっている。
帆織は水上やぐらを見上げた。
指導者と赤い髪の目立つ目つきの悪い女、背広男の三人が立つやぐらはひどく窮屈そうだった。その中から指導者は決めつける。
「野生動物の利用が完全な悪だとは私たちも言わないさ。だが、ここのカイギュウたちは別物だよ。過去から蘇った地球との絆なんだ。人類が自分たちの過ちへ落とし前をつけるチャンスと言っていい。おままごとに遠慮して見過ごすわけにはいかない。そして、そのチャンスを君たちが傷つける可能性があるなら、我々は君たちと戦わなければならない」
それは嘘だ、と帆織は思った。
おそらく青の秩序と後援者は、住民投票まで待てなくなっていたのだ。イナコが彼らの「やらせ」をネットで指摘して以来、彼らの評判は以前ほど芳しくない。環境や生き物の守護者としてより、政治的背景を持つ思想団体としての組織の在り方へ言及されるようになったこともあるが、彼らの自主制限水域の設定に関する横暴や子供たちへの過激な警告、威嚇行動が広く知られるようになってきたことも大きい。
彼らが制限水域外縁に仕掛けたバヤックのスクリューを絡めとるためのトラップケーブルが、取り付け時の固定不足から潮に流され、それがもとで無関係な子供の漕ぐバヤックが事故を起こす映像も流出している。この映像について再び最初の媒体となったダゴンネットは、記事の掲載と併せ青の秩序を徹底して糾弾し、このような正義の名を借りて支配欲を満たそうとする連中を追放すべしと呼び掛けていた。こうした状況の目まぐるしい変化が彼らの強硬かつ強引な姿勢を引き出したのだろう。
だから今、大川分流点で開帳中のこれらは結局、非難の矛先をずらすための苦し紛れな自作自演に過ぎないのだ。
帆織は歯噛みした。
青の秩序の手法は疑惑を擦り付け、次第にそれを真実らしく広めるスタイルのようだ。ならば早いうちに手を打ってしまえばいい。水軍は公明正大に疑惑と向き合い、正し、一方で青の秩序の異常性を公表していく。相手は活動家だが、それほど完成されたロビーシステムを持っているわけでもないようだ。まだ、勝ち目はある。
だが、肝心のコハダがそれに気づく目を失っていた。
そして帆織自身の耳には、
「今度は気を付けてよ?」
という真奈の声が繰り返し聞こえてくる。
それは否応にも、川辺に群れるヒステリックな人々の中に、自分への冷たい眼差し、監視の目を感じさせるのだ。次は巧くやらねば、と思わせる。
どうすればいい、と彼が自問するうちにも状況は刻々と進んでいく。じりじりと日差しが顔を焼く。水軍側の動きがないことで場の空気を掴めると踏んだらしい、青の秩序の指導者はイスラエルの民を導くモーゼよろしく、やぐらの屋根に駆け上った。
「今こそこの川を、原始の楽園を、本当の意味で子供たちに委ねなければならない!」
「そのためには君たちの好き放題を許すわけにはいかない。川は皆のものなんだ!」
張りのある肉声で訴える。これはいつのまにか橋の欄干や護岸遊歩道にごった返している地域住民やマスメディアへの言葉でもあるのだ。組織の旗を彼が高く掲げ、水上活動家の集団から歓声が上がる。
冷静な、しかし熱っぽい調子で男は人々へ説きかける。
「贖いの機会は与えられたのです――」
そして環境省の審議官補が現れ、青の秩序と水軍連合の双方が進撃を開始し、帆織の目に映る影よりも濃いトヨミ、端末に届いたメッセージ、カイギュウの群れの、不穏な気配――。
「暴走だ!」
誰かが叫んだ。誰が叫んだのかはわからない。とにかく誰かが叫んだ。そしてその時、本当の意味で我に返っていたのは多分、帆織だけだったのだ。トヨミからのメッセージが数秒後に起こる危機を彼に予感させていた。
「全員、川から上がれッ!」
彼の声に間一髪、人間側が素早く動いた。人々が岸を向いた直後、カイギュウの大移動が始まる。のんびりとしか動けないはずの海の牛たちは今や灰褐色の大波、大アマゾン川のポロロッカのように巨大な流塊となって人々へ押し寄せてきた。鼻息荒く、怒りを露わに殺到した。あの穏やかな目が血走っていた。移動速度も迫力も、まるで別の生き物だった。
カイギュウたちは頭を下流へ向けて全速力で大川本流を泳ぎ下り、その進行する先々で人食い鮫の出現したハイシーズンの海水浴場めくてんやわんやが繰り広げられる。
逃げ惑う人々の中、子供たちのバヤックはさすがに素早い。速やかに上陸地点へ舳先を向けて漕ぎ進んだ。係留までが一々手際良い。もたついているのは青の秩序の中高年だ。カヤックやカヌーは水面からの視線が低いこともあり、活動家の大部分は何が起きているのかすら掴み損ねていた。バヤックの利用者はもちろん我先に逃げ出している。こういう時、最も機動力があるのはやはりバヤックだ。そして最も身動きが取れないのは、
「やぐらがッ!」
すでに上陸した子供の誰かが叫び、他の指導員たちと一緒に慌てふためく人々の介助にあたっていた帆織は川を見やった。今や川面にぽつねんと取り残される簡易やぐらは、陽光照り付ける広場に組み上げられた祭壇と見えた。殺到するカイギュウの群れは供物へ突き進む巨大な魔物だ。拡声器を投げ捨てて屋根から駆け降りるも立ち竦み、それ以上動けない指導者、赤毛の女が泣き叫び、審議官補が喚いた。岸へたどり着いた青の秩序の面々は肝心の頭脳を人質に取られ、動くことを忘れたように皆、固まっている。
「どうなってんだ、おいッ? なんでいきなり暴れだしたんだ?」
「それどころじゃない、あんなやぐら、すぐに倒されちまうぜ!」
カジメの疑問へ被せてマルタが叫んだ。
実際その結末はすぐに来た。カイギュウの波は簡易やぐらの立ついかだの下へ潜り込み、押し上げ、そのまま神輿でも担ぐように数秒間運んでからやぐらごと群れの中へ飲み込んだ。残骸も人間もそのまま、激流へ混ぜ込んで連れ去ろうとしていた。
三人がかろうじて顔を出し、いかだの足に使われていた浮力体へつかまっているのが見えたが、長くはもたないだろう。勢いを増し続ける群れの中へ再び飲み込まれれば、水中へ押し付けられている間に酸素を失って、二度と浮き上がることができないかもしれない。頭を打ち、気絶でもすればそれっきりだ。
「水警のボートはッ?」
「すぐに来られっかよ!」
「助けに行くよッ!」
「待て。君たちは岸にいろ」
踏み出したコハダとマルタを帆織が押しとどめた。
「そいつは俺の仕事だ」
「でもッ!」
焦って突っかかるコハダを制し、
「いいから、言うことを聞いてくれ。君たちだけがこの川の人間じゃないんだ」
コハダが口をつぐんで彼を見つめた。
「保安官!」
急ぎ自分のバヤックへ戻り、もやいを解こうとする帆織へ声がかかる。
振り向いたところへカジメから電子キーが投げられ、
「俺のバヤックを使ってくれ。その、保安官のバヤックより早く動ける」
帆織は頷き、自艇の荷台からロープの束を取りだしてカジメのバヤックへ走った。電子艤装の山ほど施された単胴式スポーツタイプへ飛び乗る。キーをアンロックし、スタンド代わりの補助フロートが完全に上がりきる前に漕ぎ出した。視線の先で審議官補のしがみついた浮力体が彼を乗せたまま軽々と水面へ直立する。そのまま飲み込まれてしまいそうだ。
(間に合わない!)
舌打ちをして一層、漕ぐ足へ力を入れたその時、
「保安官」
カジメの声がハンドル中央部に備えられた操作盤のスピーカーから聞こえた。
「コンソールの赤いスイッチが通話だ。押してくれ!」
相手が言い終わる前に帆織は手を伸ばしている。
「なんだ?」
「まだ実験段階なんだけど、そのバヤックのフロートにはスーパーキャビテーション装置がついてるんだ」
「スーパー……なんだって?」
「流体に生じた泡の中を進むことで水の抵抗を減らす工夫と思ってくれ。今じゃ潜水艦の魚雷なんかに標準装備されてる。魚雷だと排気を先端部から排出したりマイクロウェーブで周囲を沸騰させたりするんだけど、俺のはフロート表面を細かく振動させることで極小凹凸塗装の表面に細かい気泡を大量に生じさせて、あと光化学バッテリからの熱と……」
「――つまり、それを使えばもっと早く動けるんだな?」
「そういうこと。白のスイッチだ。ただし、電気を大量に食うからそれを使うと他に電力を回せない。あと、それでもあんまり持たないから、短期決戦にしか使えない」
「長くやる気は無いさ」
礼を言ってスイッチを入れる。無線が切れた途端、足元から鋭く響く耳鳴りに襲われた。超音波洗浄機の駆動音をさらに大きく、さらに耳障りにした感じだ。だが水抵抗がまるで無くなった。見ればフロートの喫水線より下が全て、白い泡に包まれている。スクリューだけが水を噛み、胴体への抵抗は限りなくゼロに感じられる。このバヤックは今、水面に生じた泡の道を進んでいるのだ。帆織は素直に感心する。ぐん、と目標に近づいた。
暴走する群れの後部に並走する。立ち上がった浮力体は少し、また少しとアリジゴクの巣にかかった蟻のように、灰褐色の流塊へ飲み込まれようとしていた。審議官補がこちらを見た。眼鏡はどこかへ吹き飛び、全身ずぶ濡れで、ぺたりとした黒髪をはためかせている。
「ロープを投げる、掴んでください!」
再び漕ぐ足に力を入れ、帆織は彼の斜め上流、群れの外縁へぎりぎりまで漕ぎ寄せるとロープを結んだ水入りの錘を投擲した。一発で浮力体の先端へロープが引っ掛かり、そのまま滑り落ちて審議官補の体と浮力体の間に滑り込む。審議官補はしばし躊躇し、一気に両手でロープを掴もうとした。だが、ぐらりと揺れた浮力体へ慌てて再びしがみつく。
「片手でロープを取って、腕に絡めてください!」
帆織は指示を出しつつスーパーキャビテーションのスイッチを切った。こうしなければ彼の方が群れへ引き寄せられてしまうだろう。がくがくと頷き、審議官補はロープを自分の右腕へ巻き付け始める。浮力体ごと没入するまさに直前、帆織がロープをおもいきり手繰り寄せた。審議官補はカイギュウの背中を滑り渡って群れから飛び出してくる。水へ落ち、群れの航跡に巻き込まれまいと必死で立ち泳ぎしながら、
「脱臼した、脱臼したんだ!」
叫び、
「早く引き上げろ、ここを離れるんだ!」
帆織艇のフローターにつかまろうとしたものの、帆織が巧みに操船してそれを避けた。鼻水を滴らせながら喚く官僚へ首を振り、
「まだです、まだ、二人!」
「馬鹿言えッ、もう間に合わん!」
「馬鹿はあんたよ」
手早くロープを巻き取っていた帆織が振り向く。コハダとマルタ、その他数名、水軍の年かさたちが追いついたところだった。
「ハロー、保安官」
二本指で敬礼をして見せるコハダ。
「岸にいろって言ったろッ?」
目を剥く彼へしゃあしゃあと、
「保安官だけが川の人間、ってわけでもないんだよ」
微笑む。
まじめな顔つきになり、
「救助そのものは保安官に任せるよ。助け終わった人は私たちが引き受ける!」
「……助かる」
まだ先端部に審議官補がしがみついているロープを一振りして彼を払い落とし、完全に巻き取った帆織は子供たちへ頷く。子供たちも頷きを返した。
群れへ再び向き直る帆織。赤毛の女が群れの真ん中で立ち上がっているのが見えた。今の審議官補を見て思いついたのかもしれない。鰐の背渡りをする因幡の白兎よろしく、カイギュウの背を飛ぼうというのだ。帆織はペダルを強く踏み込んで再びスーパーキャビテーションを作動させた。追いついて、再びロープを投げる。
スイッチを切った帆織が引くのと同時に女が跳躍し、カツオの一本釣りのような光景になった。放物線を描いた女は帆織の頭上を掠めて飛び去り、少し向こうへ没入した。
「もう一人はどこだッ?」
顔を出したところへ帆織が問いかけるも、怯えた顔つきで首を振るばかりだ。
水軍の別動隊が追いついてくるのを確認し、女を置き去りに帆織は再び漕ぎ出す。暴走はすでに勝鬨橋から旧築地市場横へ抜けようとしていた。いつものカイギュウたちからは考えられない速度だ。
「こんなに早く泳げるくせに絶滅したのかよ!」
帆織は歯を食いしばってペダルを漕ぐ。目を見開き、飛び込む飛沫も気にせず大群の中へ人影を探す。ぎらつく眩しさに目がくらんだその時、やぐらの残骸に誰か見えた。
「おいッ」
声を限りに呼びかける。
「大丈夫かッ?」
目を凝らせばやはりあの、青の秩序のリーダーで、しかし返事はない。気絶しているのかもしれない。
(どうすりゃいいんだ……?)
その時、けたたましい警告音がコンソールから鳴り響いた。見れば白いスイッチの上にある小さなランプが激しく明滅している。と同時に、船足の緩む感触がある。スーパーキャビテーションの電源が落ちかかっているのだ。
「くそッ」
毒づいた直後、
「帆織さんッ!」
馴染みある声を聞いた気がして帆織は周囲を見回した。誰もいない。水軍の連中は赤毛の女を救い上げたところで止まっている。水上警察のボートがようやく到着し、子供たちが彼女を船の上へ押し上げている様子が見えた。
と、すぐ近くの水面がふいに盛り上がり、黒い姿が飛び出してきた。トヨミだ。ひらりと帆織の後ろへ飛び乗る。細長いカジメ艇の荷台へちんまり着地、帆織の両肩へ掴まって勢いを殺す。バヤックが大きく横揺れして、
「おいッ!」
「ごめんごめん」
思わず抗議する帆織の肩を、彼女は軽く叩いていなした。
「遅かったな!」
やっぱり来ると思ってたぜ、という思いを込めて帆織が叫ぶと、
「明るいから、オニアカを見つからないように進めるだけで一苦労なんだもん!」
「状況はこんな感じだ。どうする?」
「私がロープをもってカイギュウの背中伝いに行くよ。合図したら引っ張って」
「行けるか?」
「多分ね」
彼女はロープの先端を受け取ると、ハーネスのように両肩へ巻き付けた。
「OK!」
もちろん、無事に解決した。
「――ありがとう」
帆織が警察へ最後の一人を引き渡すのを待たず、トヨミは川底伝いに陸へ戻っていたが、彼がカジメへバヤックを返し、息抜きに自販機で飲み物でも買おうかと川岸を離れたところで再び合流した。照れ臭そうな笑みをこちらへ向けながら、第一声が礼の言葉だった。
「あそこで君が来なかったら、多分助けられなかったはずだ。礼を言うはこっちだよ」
微笑み返す帆織へ、まだ髪を濡らしたままの黒の少女は「ううん」と首を振る。
「私、帆織さんに助けられてばっかりみたい」
殊勝な言葉に帆織は戸惑う。俺が助けてもらってばかりの間違いじゃないのか、とでも言おうとして、しかしトヨミのはにかむような微笑みへ水を差すのも躊躇われる。
だが、やがて、ある提案を思いつき、彼はにやりと笑った。
「俺たちのコンビは悪くないみたいだな。この勢いで化け物退治も済ませちまうってのはどうだ? 今、アドレナリンが過剰供給されてて仕方ないんだ」
「いいね」
見上げた彼女も同様に笑い返す。
そうなのだ。ここまでは前哨戦に過ぎない。
「よし。じゃあ決まりだ。今夜、俺たちはあのシラブカを釣り上げる。マスコットは全員海へお帰りになったし、今日は久しぶりに静かでやりやすいと思うぞ」
「あ、それはそうかも――」
「だろ。大物釣りの競争でもやってみるか?」
「あんまり調子に乗らないで」
軽口を叩き合いながら、しかし帆織には一つ、気にかかっていることがあった。
青の秩序のリーダーをトヨミが抱え込み、ロープが三度、合図で引かれたのはもう晴海埠頭にほど近い、ほとんど海に接続した場所だった。思い切り帆織がロープを手繰ると、トヨミは自分の背中をソリのように使ってカイギュウの背中を滑ってきた。抱えられた男が気を失っていたことが、かえって救出を楽にしたのかもしれなかった。帆織は彼女の滑る速度に合わせ、休むことなくロープを手繰り続けた。トヨミが群れの外縁から水中へ滑り落ちるのと、カイギュウたちが海へ抜け切るのがほぼ同時だったように思う。
最初、彼はカイギュウが単に勢いよく潜行し始めたのだと思った。だが、それだけではなかった。
あれほどの巨体、あれほどの数。
帆織にはステラーカイギュウの大群が海中で溶けるように消失したと見えた。
彼らは帰ったのではない。消えてしまったのだ。
デモ隊の作戦が功を奏し、八月末の祭りへ向けたアナゴの漁獲が芳しくなかったらしい。幸い、いけすを持つ料理屋の息子や娘がしばらく設備を提供すると申し出てくれたので、活かしておけるなら少しでもストックを増やそうと、佃水軍は今朝から総出でアナゴ探しをやっていた。そこへ突如押し寄せた青の秩序が、話を聞けッとばかり、強制的に漁を中断させたのだ。
これが別の漁法だったならばこんな輩は無視する水軍の子供たちも、水面でカヤックやカヌーから騒々しい水音を立てられ、アナゴが皆、砂底へ引っ込んでしまってはどうしようもない。言いたいことがあるのなら、とっととくっちゃべって失せやがれ、と正面切って対峙することになった。
だが時間が経つにつれ、双方の人数は膨れ上がる一方だった。昨今、周辺の水軍が結束してよそ者の大人へ対抗しよう、という機運が醸成されていたこともあるだろう。誰か一人が連絡を取り始めるとそれが続々広がって月島、晴海、勝どき、豊洲などの水軍が一斉にバヤックを漕いで駆け付けた。その動きに対抗すべく、青の秩序オリジナル魚髑髏ステッカーを船体へ貼り付けたカヤック、カヌー、小型船、水上バイクやバヤックなど様々な水上ビークルも増え続け、帆織が到着したころには佃大橋の少し上流、川の大分流点に両軍相対して今にも一触即発の有様となっていた。
「もう、君たちにこの川は任せて置かれない!」
ある程度人の集まるのを待っていたものだろう。やがて青の秩序、行動隊のリーダーが水上やぐらから拡声器を使って子供たちへ呼び掛けた。
同調した大人たちの歓声が威圧する中、
「どういうつもりですか」
水軍連合を代表するコハダは最初、あくまで冷静だった。
「我々は今朝早く、一頭のカイギュウを保護した。彼は傷を負っている」
指導者が合図を出すと、やぐらにセットされていた空間投影機が人々の頭上へ青白い巨大スクリーンの構築を始めた。やがて、夏の日差しと川の乱反射で幾らか減衰してはいるものの、鮮やかな色合いで動画の再生が始まる。
映し出されたのは、若いカイギュウの乳白色の肌、ぱっくり開いた、明らかに刃物傷から流れ出す鮮血、そして苦し気な呻き声だった。
「それが私たちの仕業だと?」
「論より証拠、これを見たまえ」
傷ついたカイギュウの動画が切り替わり、
(やられた!)
帆織は唸った。不鮮明で荒い画質だったが、夜の大川、長々しい銛を槍のように振るい、水に浮かぶSUPの上で暴れ回る素顔の少女が映し出され――、
「トヨミだ」「トヨミじゃん」
子供たちの間からも声が上がる。
帆織は急ぎ、トヨミへ起こっていることを伝えるメッセージを送った。
今か今かと返事を待つが、端末に応答はない。対策を立てるにしても彼女の意見がなければ始まらないだろう。すぐにもコハダと男の間へ割り込んでいきたい気持ちを彼は堪え続けた。
映像はトヨミの顔が大映しになったところで静止している。元となるデータが破損していたものか、何度も修復をかけなおしたらしい薄ぼんやりした投影だったが、眼をぎらつかせ、白い歯をむき出しに鬼の形相で銛を振るう少女は確かにトヨミだ。
しばし沈黙がある。
騒々しい蝉の声も遥かに遠いようだった。
指導者は勝ち誇った顔でやぐらから子供たちを見下ろし、コハダは腕を組んでキッと相手の顔を見上げたまま、目を逸らさない。
やがて彼女が口を開き、
「これが何かの証拠になると仰るんですか? カイギュウを傷つけている場面が撮られているならともかく、傷ついたカイギュウの映像の次に女の子の水上演武をくっつけただけですよね」
「確かにその通りだ」
潔く指導者は認めた。
「この少女がこんな大きな銛をこの川のどんな生き物に使おうというのか、昨日この映像が撮影されたほとんど直後に、刃物で傷つけられたカイギュウが保護されたことと何か関連があるのか、といった疑問はさておき、この映像が直接、虐待の証拠となるわけじゃない」
「じゃあなぜ――」
「君たちが公の、交通の場である大川で我が物顔にふるまえるのは、君たちが一応の決まりを作り、それに沿って動いているという前提があるからだ。自分たちを正しく律することができるという無言の契約を地域住民とかわしているからこそ、大手を振って漁をしてもそれほど文句を言われないわけだな。しかし、君たちに自らをコントロールする能力がないのであれば話は変わる。君たちの最大の決まりごとの一つが夜の禁忌だろう?」
「そうですよ。夜の大川に出てはいけない。夜通しの罠を仕掛けたりしてもいけない」
「夜の大川で暴れている子供の存在そのものが、君たちの管理能力の低さを露呈しているとは思わないのか? 夜の禁忌も協定も全く意味がない、君達に統治能力が無い証拠じゃないか。だから、そんな君たちにこの川を治めさせておくわけにはいかない。理屈としてはわかるだろう?」
「待てよ、おっさん」
カジメが口を挟んだ。
「そこに映ってる奴はどの水軍のメンバーでもねぇ、はみ出しもんなんだ。知らねぇのも無理はねぇけど、俺らの仲間じゃねぇ奴の話を持ってこられて、こっちの管理能力が足りねぇだなんて、ぶっ飛んだ言いがかりじゃねえか」
「じゃあなぜ、そのはみ出し者を取り締まらない?」
「なんだと?」
「君たちはこの川の主たる利用者としていつも、幅を利かせているじゃないか。大きな力には大きな責任が伴うものだろう? 君たちには彼女を注意するくらいの義務はあるはずだ。それに仲間じゃないと言っても、全く無関係なわけでもない。……そこの漁労長さんなら私の言ってることが分かるはずだがな?」
「どういうことだ、コハダ?」
「知らない……どういうことですか?」
コハダは素直に訝しむ顔つきで首を振った。
指導者はニンマリと笑い、
「警察筋からの情報だが、この少女、一説には水上警察が以前からマークしていた密猟者〝魔女〟ではないかとの声もある人物だがね――」
空間投影がトヨミの監視写真や警邏艇転覆の現場写真などに切り替わる。それは明らかに、ある方向性を持たされた資料の展開で、
「――この子は君の幼馴染みだそうじゃないか」
「だからなんだってのよ? 付き合いが無くなって、もう何年にもなる子なんだけど」
「付き合いがない? 君の右腕、マルタ君が彼女の家に訪れているのを最近見かけたって話があるぞ。佃水軍の漁労長の腹心が、密漁の容疑者に一体何の用なんだね?」
「あんたにゃ関係ねぇよ!」
マルタが言い放ったその時、コハダの目に一瞬、動揺が走った。
しかし彼女は堪え切り、
「知らないわ。私はマルタを逐一監視してるわけじゃない。それにトヨミは付き合いこそしなくなったけど彼女、密漁なんてする子じゃない。きっと理由があって夜、出てるのよ」
「理由ね。カイギュウの肉を仕入れる計画がその理由なんじゃないのかね。君たちはこのカイギュウを、自らを潤す資源くらいにしか思っていないんだろう?」
「は? どの口がそういうこと言えるの?」
漁労長が鼻息荒く一歩踏み出そうとしたその時、三度、投影機の映像が変わって奇妙な形の金属製器具が映し出された。見上げたコハダの足が止まる。くりくりと大きな目がさらに丸くなる。小さな口がぽかん、と開いた。
「カイギュウのミルクを使ったアイスクリームが流行っているらしいな。一時は大っぴらにやっていたが、乳搾りがカイギュウにストレスを与えると非難されそうになるやいなや地下に潜った。この搾乳機を誰が作り、誰が作らせたかは、君が一番、よく知っているはずだ」
映像がまた切り替わり、スクール水着の少女が青々と透いて輝く水中で楽し気に乳搾りする、牧歌的場面が映し出される。もちろん、それはコハダ自身の映像だ。
「うちはとっくにやめてる! 搾乳機だって試作機を作っただけよ!」
知らぬ存ぜぬで通せないところがコハダの良いところであり、悪意に対しての最大の弱点であることは明らかだった。マルタが「もう話すな」と忠告した様子を見て、相手は高らかに笑った。もう遅いのだ、とその目が嫌らしく言っていた。
「本当にやめたのか? ならどうして佃水軍御謹製の搾乳機が我々の手に入ったのかね。こいつは試作機には見えない。答えは簡単、やめたと言うのは表向きの姿勢だからだ」
これを見たまえ、と男は赤毛の女が足元のクーラーボックスから取り出したプラカップを受け取り、高らかに差し上げた。
「カイギュウアイスはまだ売っている!」
「うちじゃない!」
「カイギュウは今のところ、佃水軍の縄張りにしかいない。ここで乳を搾るには佃水軍の監視の目をごまかさなきゃならない。だが、ごまかす必要の無い者たちがいる。佃水軍のメンバー、それも主要メンバーなら、何をやっても咎められることはない!」
「ただの憶測よ!」
「君たちのカイギュウの資源活用はエスカレートしている。ネットではカイギュウの肉が長寿に効くという噂も広まっているようだ。大陸のブローカーが入ったという話もある。肉には相当の値が付くだろう。だが衆人環視の中、さすがの君たちも表立ってカイギュウを狩ることは憚られた。それで今や夜の大川、裏世界の人物となっている幼馴染みに目を付けたのだ。だが彼女は失敗した。そうだろう、漁のままごとで雑魚を捕るのとはわけが違う。まあ、その失敗のおかげで我々が君たちの陰謀に気づき、こうして阻止できたのだがね」
「証拠も何もないじゃない!」
「じゃあ、どう説明するんだ? 君たちが搾乳を行っていたことも事実、魔女と呼ばれる密漁者と連絡を取っていることも事実、傷ついたカイギュウの保護も事実――」
「だから、トヨミは密漁者じゃないってば! 魔女なんかであるはずもない!」
「優しいお嬢さん、付き合いのない無関係な人間をなぜ、躍起になってかばうんだね?」
それこそ、君たちが見えないところで繋がっている証拠だろう、と男。
「子供たちの中で夜の禁忌を破らないことに最も熱心なのは君だそうじゃないか。それは他の子供を夜の川へ近づけないためじゃないのかね。魔女と呼ばれる少女と裏で通じ、昼も夜もこの川を独占しようという君の動機こそ、タブーの正体なのではないのかね?」
状況証拠とも言えない低レベルな試料の寄せ集め、ただの羅列に過ぎない。だがコハダはいつもの達者な口を全く封じられていた。マルタがトヨミと会っていたことと、捨てたはずの搾乳機を青の秩序が回収していたことを知らず、この二つの事実そのものはもちろん、それを自分が知らなかったことに動揺しきっている。搾乳の写真を大人たちが撮れば彼女はそれに気づいたはずだから、子供たちの中の誰か、おそらく水軍のメンバーの誰かが首領の乳搾りを記録し、敵方に渡した可能性が強いことにもコハダは気付いているはずだ。そしてその事実がますます彼女を、普段の冷静なキャラクターから遠ざけてしまっている。
帆織は水上やぐらを見上げた。
指導者と赤い髪の目立つ目つきの悪い女、背広男の三人が立つやぐらはひどく窮屈そうだった。その中から指導者は決めつける。
「野生動物の利用が完全な悪だとは私たちも言わないさ。だが、ここのカイギュウたちは別物だよ。過去から蘇った地球との絆なんだ。人類が自分たちの過ちへ落とし前をつけるチャンスと言っていい。おままごとに遠慮して見過ごすわけにはいかない。そして、そのチャンスを君たちが傷つける可能性があるなら、我々は君たちと戦わなければならない」
それは嘘だ、と帆織は思った。
おそらく青の秩序と後援者は、住民投票まで待てなくなっていたのだ。イナコが彼らの「やらせ」をネットで指摘して以来、彼らの評判は以前ほど芳しくない。環境や生き物の守護者としてより、政治的背景を持つ思想団体としての組織の在り方へ言及されるようになったこともあるが、彼らの自主制限水域の設定に関する横暴や子供たちへの過激な警告、威嚇行動が広く知られるようになってきたことも大きい。
彼らが制限水域外縁に仕掛けたバヤックのスクリューを絡めとるためのトラップケーブルが、取り付け時の固定不足から潮に流され、それがもとで無関係な子供の漕ぐバヤックが事故を起こす映像も流出している。この映像について再び最初の媒体となったダゴンネットは、記事の掲載と併せ青の秩序を徹底して糾弾し、このような正義の名を借りて支配欲を満たそうとする連中を追放すべしと呼び掛けていた。こうした状況の目まぐるしい変化が彼らの強硬かつ強引な姿勢を引き出したのだろう。
だから今、大川分流点で開帳中のこれらは結局、非難の矛先をずらすための苦し紛れな自作自演に過ぎないのだ。
帆織は歯噛みした。
青の秩序の手法は疑惑を擦り付け、次第にそれを真実らしく広めるスタイルのようだ。ならば早いうちに手を打ってしまえばいい。水軍は公明正大に疑惑と向き合い、正し、一方で青の秩序の異常性を公表していく。相手は活動家だが、それほど完成されたロビーシステムを持っているわけでもないようだ。まだ、勝ち目はある。
だが、肝心のコハダがそれに気づく目を失っていた。
そして帆織自身の耳には、
「今度は気を付けてよ?」
という真奈の声が繰り返し聞こえてくる。
それは否応にも、川辺に群れるヒステリックな人々の中に、自分への冷たい眼差し、監視の目を感じさせるのだ。次は巧くやらねば、と思わせる。
どうすればいい、と彼が自問するうちにも状況は刻々と進んでいく。じりじりと日差しが顔を焼く。水軍側の動きがないことで場の空気を掴めると踏んだらしい、青の秩序の指導者はイスラエルの民を導くモーゼよろしく、やぐらの屋根に駆け上った。
「今こそこの川を、原始の楽園を、本当の意味で子供たちに委ねなければならない!」
「そのためには君たちの好き放題を許すわけにはいかない。川は皆のものなんだ!」
張りのある肉声で訴える。これはいつのまにか橋の欄干や護岸遊歩道にごった返している地域住民やマスメディアへの言葉でもあるのだ。組織の旗を彼が高く掲げ、水上活動家の集団から歓声が上がる。
冷静な、しかし熱っぽい調子で男は人々へ説きかける。
「贖いの機会は与えられたのです――」
そして環境省の審議官補が現れ、青の秩序と水軍連合の双方が進撃を開始し、帆織の目に映る影よりも濃いトヨミ、端末に届いたメッセージ、カイギュウの群れの、不穏な気配――。
「暴走だ!」
誰かが叫んだ。誰が叫んだのかはわからない。とにかく誰かが叫んだ。そしてその時、本当の意味で我に返っていたのは多分、帆織だけだったのだ。トヨミからのメッセージが数秒後に起こる危機を彼に予感させていた。
「全員、川から上がれッ!」
彼の声に間一髪、人間側が素早く動いた。人々が岸を向いた直後、カイギュウの大移動が始まる。のんびりとしか動けないはずの海の牛たちは今や灰褐色の大波、大アマゾン川のポロロッカのように巨大な流塊となって人々へ押し寄せてきた。鼻息荒く、怒りを露わに殺到した。あの穏やかな目が血走っていた。移動速度も迫力も、まるで別の生き物だった。
カイギュウたちは頭を下流へ向けて全速力で大川本流を泳ぎ下り、その進行する先々で人食い鮫の出現したハイシーズンの海水浴場めくてんやわんやが繰り広げられる。
逃げ惑う人々の中、子供たちのバヤックはさすがに素早い。速やかに上陸地点へ舳先を向けて漕ぎ進んだ。係留までが一々手際良い。もたついているのは青の秩序の中高年だ。カヤックやカヌーは水面からの視線が低いこともあり、活動家の大部分は何が起きているのかすら掴み損ねていた。バヤックの利用者はもちろん我先に逃げ出している。こういう時、最も機動力があるのはやはりバヤックだ。そして最も身動きが取れないのは、
「やぐらがッ!」
すでに上陸した子供の誰かが叫び、他の指導員たちと一緒に慌てふためく人々の介助にあたっていた帆織は川を見やった。今や川面にぽつねんと取り残される簡易やぐらは、陽光照り付ける広場に組み上げられた祭壇と見えた。殺到するカイギュウの群れは供物へ突き進む巨大な魔物だ。拡声器を投げ捨てて屋根から駆け降りるも立ち竦み、それ以上動けない指導者、赤毛の女が泣き叫び、審議官補が喚いた。岸へたどり着いた青の秩序の面々は肝心の頭脳を人質に取られ、動くことを忘れたように皆、固まっている。
「どうなってんだ、おいッ? なんでいきなり暴れだしたんだ?」
「それどころじゃない、あんなやぐら、すぐに倒されちまうぜ!」
カジメの疑問へ被せてマルタが叫んだ。
実際その結末はすぐに来た。カイギュウの波は簡易やぐらの立ついかだの下へ潜り込み、押し上げ、そのまま神輿でも担ぐように数秒間運んでからやぐらごと群れの中へ飲み込んだ。残骸も人間もそのまま、激流へ混ぜ込んで連れ去ろうとしていた。
三人がかろうじて顔を出し、いかだの足に使われていた浮力体へつかまっているのが見えたが、長くはもたないだろう。勢いを増し続ける群れの中へ再び飲み込まれれば、水中へ押し付けられている間に酸素を失って、二度と浮き上がることができないかもしれない。頭を打ち、気絶でもすればそれっきりだ。
「水警のボートはッ?」
「すぐに来られっかよ!」
「助けに行くよッ!」
「待て。君たちは岸にいろ」
踏み出したコハダとマルタを帆織が押しとどめた。
「そいつは俺の仕事だ」
「でもッ!」
焦って突っかかるコハダを制し、
「いいから、言うことを聞いてくれ。君たちだけがこの川の人間じゃないんだ」
コハダが口をつぐんで彼を見つめた。
「保安官!」
急ぎ自分のバヤックへ戻り、もやいを解こうとする帆織へ声がかかる。
振り向いたところへカジメから電子キーが投げられ、
「俺のバヤックを使ってくれ。その、保安官のバヤックより早く動ける」
帆織は頷き、自艇の荷台からロープの束を取りだしてカジメのバヤックへ走った。電子艤装の山ほど施された単胴式スポーツタイプへ飛び乗る。キーをアンロックし、スタンド代わりの補助フロートが完全に上がりきる前に漕ぎ出した。視線の先で審議官補のしがみついた浮力体が彼を乗せたまま軽々と水面へ直立する。そのまま飲み込まれてしまいそうだ。
(間に合わない!)
舌打ちをして一層、漕ぐ足へ力を入れたその時、
「保安官」
カジメの声がハンドル中央部に備えられた操作盤のスピーカーから聞こえた。
「コンソールの赤いスイッチが通話だ。押してくれ!」
相手が言い終わる前に帆織は手を伸ばしている。
「なんだ?」
「まだ実験段階なんだけど、そのバヤックのフロートにはスーパーキャビテーション装置がついてるんだ」
「スーパー……なんだって?」
「流体に生じた泡の中を進むことで水の抵抗を減らす工夫と思ってくれ。今じゃ潜水艦の魚雷なんかに標準装備されてる。魚雷だと排気を先端部から排出したりマイクロウェーブで周囲を沸騰させたりするんだけど、俺のはフロート表面を細かく振動させることで極小凹凸塗装の表面に細かい気泡を大量に生じさせて、あと光化学バッテリからの熱と……」
「――つまり、それを使えばもっと早く動けるんだな?」
「そういうこと。白のスイッチだ。ただし、電気を大量に食うからそれを使うと他に電力を回せない。あと、それでもあんまり持たないから、短期決戦にしか使えない」
「長くやる気は無いさ」
礼を言ってスイッチを入れる。無線が切れた途端、足元から鋭く響く耳鳴りに襲われた。超音波洗浄機の駆動音をさらに大きく、さらに耳障りにした感じだ。だが水抵抗がまるで無くなった。見ればフロートの喫水線より下が全て、白い泡に包まれている。スクリューだけが水を噛み、胴体への抵抗は限りなくゼロに感じられる。このバヤックは今、水面に生じた泡の道を進んでいるのだ。帆織は素直に感心する。ぐん、と目標に近づいた。
暴走する群れの後部に並走する。立ち上がった浮力体は少し、また少しとアリジゴクの巣にかかった蟻のように、灰褐色の流塊へ飲み込まれようとしていた。審議官補がこちらを見た。眼鏡はどこかへ吹き飛び、全身ずぶ濡れで、ぺたりとした黒髪をはためかせている。
「ロープを投げる、掴んでください!」
再び漕ぐ足に力を入れ、帆織は彼の斜め上流、群れの外縁へぎりぎりまで漕ぎ寄せるとロープを結んだ水入りの錘を投擲した。一発で浮力体の先端へロープが引っ掛かり、そのまま滑り落ちて審議官補の体と浮力体の間に滑り込む。審議官補はしばし躊躇し、一気に両手でロープを掴もうとした。だが、ぐらりと揺れた浮力体へ慌てて再びしがみつく。
「片手でロープを取って、腕に絡めてください!」
帆織は指示を出しつつスーパーキャビテーションのスイッチを切った。こうしなければ彼の方が群れへ引き寄せられてしまうだろう。がくがくと頷き、審議官補はロープを自分の右腕へ巻き付け始める。浮力体ごと没入するまさに直前、帆織がロープをおもいきり手繰り寄せた。審議官補はカイギュウの背中を滑り渡って群れから飛び出してくる。水へ落ち、群れの航跡に巻き込まれまいと必死で立ち泳ぎしながら、
「脱臼した、脱臼したんだ!」
叫び、
「早く引き上げろ、ここを離れるんだ!」
帆織艇のフローターにつかまろうとしたものの、帆織が巧みに操船してそれを避けた。鼻水を滴らせながら喚く官僚へ首を振り、
「まだです、まだ、二人!」
「馬鹿言えッ、もう間に合わん!」
「馬鹿はあんたよ」
手早くロープを巻き取っていた帆織が振り向く。コハダとマルタ、その他数名、水軍の年かさたちが追いついたところだった。
「ハロー、保安官」
二本指で敬礼をして見せるコハダ。
「岸にいろって言ったろッ?」
目を剥く彼へしゃあしゃあと、
「保安官だけが川の人間、ってわけでもないんだよ」
微笑む。
まじめな顔つきになり、
「救助そのものは保安官に任せるよ。助け終わった人は私たちが引き受ける!」
「……助かる」
まだ先端部に審議官補がしがみついているロープを一振りして彼を払い落とし、完全に巻き取った帆織は子供たちへ頷く。子供たちも頷きを返した。
群れへ再び向き直る帆織。赤毛の女が群れの真ん中で立ち上がっているのが見えた。今の審議官補を見て思いついたのかもしれない。鰐の背渡りをする因幡の白兎よろしく、カイギュウの背を飛ぼうというのだ。帆織はペダルを強く踏み込んで再びスーパーキャビテーションを作動させた。追いついて、再びロープを投げる。
スイッチを切った帆織が引くのと同時に女が跳躍し、カツオの一本釣りのような光景になった。放物線を描いた女は帆織の頭上を掠めて飛び去り、少し向こうへ没入した。
「もう一人はどこだッ?」
顔を出したところへ帆織が問いかけるも、怯えた顔つきで首を振るばかりだ。
水軍の別動隊が追いついてくるのを確認し、女を置き去りに帆織は再び漕ぎ出す。暴走はすでに勝鬨橋から旧築地市場横へ抜けようとしていた。いつものカイギュウたちからは考えられない速度だ。
「こんなに早く泳げるくせに絶滅したのかよ!」
帆織は歯を食いしばってペダルを漕ぐ。目を見開き、飛び込む飛沫も気にせず大群の中へ人影を探す。ぎらつく眩しさに目がくらんだその時、やぐらの残骸に誰か見えた。
「おいッ」
声を限りに呼びかける。
「大丈夫かッ?」
目を凝らせばやはりあの、青の秩序のリーダーで、しかし返事はない。気絶しているのかもしれない。
(どうすりゃいいんだ……?)
その時、けたたましい警告音がコンソールから鳴り響いた。見れば白いスイッチの上にある小さなランプが激しく明滅している。と同時に、船足の緩む感触がある。スーパーキャビテーションの電源が落ちかかっているのだ。
「くそッ」
毒づいた直後、
「帆織さんッ!」
馴染みある声を聞いた気がして帆織は周囲を見回した。誰もいない。水軍の連中は赤毛の女を救い上げたところで止まっている。水上警察のボートがようやく到着し、子供たちが彼女を船の上へ押し上げている様子が見えた。
と、すぐ近くの水面がふいに盛り上がり、黒い姿が飛び出してきた。トヨミだ。ひらりと帆織の後ろへ飛び乗る。細長いカジメ艇の荷台へちんまり着地、帆織の両肩へ掴まって勢いを殺す。バヤックが大きく横揺れして、
「おいッ!」
「ごめんごめん」
思わず抗議する帆織の肩を、彼女は軽く叩いていなした。
「遅かったな!」
やっぱり来ると思ってたぜ、という思いを込めて帆織が叫ぶと、
「明るいから、オニアカを見つからないように進めるだけで一苦労なんだもん!」
「状況はこんな感じだ。どうする?」
「私がロープをもってカイギュウの背中伝いに行くよ。合図したら引っ張って」
「行けるか?」
「多分ね」
彼女はロープの先端を受け取ると、ハーネスのように両肩へ巻き付けた。
「OK!」
もちろん、無事に解決した。
「――ありがとう」
帆織が警察へ最後の一人を引き渡すのを待たず、トヨミは川底伝いに陸へ戻っていたが、彼がカジメへバヤックを返し、息抜きに自販機で飲み物でも買おうかと川岸を離れたところで再び合流した。照れ臭そうな笑みをこちらへ向けながら、第一声が礼の言葉だった。
「あそこで君が来なかったら、多分助けられなかったはずだ。礼を言うはこっちだよ」
微笑み返す帆織へ、まだ髪を濡らしたままの黒の少女は「ううん」と首を振る。
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殊勝な言葉に帆織は戸惑う。俺が助けてもらってばかりの間違いじゃないのか、とでも言おうとして、しかしトヨミのはにかむような微笑みへ水を差すのも躊躇われる。
だが、やがて、ある提案を思いつき、彼はにやりと笑った。
「俺たちのコンビは悪くないみたいだな。この勢いで化け物退治も済ませちまうってのはどうだ? 今、アドレナリンが過剰供給されてて仕方ないんだ」
「いいね」
見上げた彼女も同様に笑い返す。
そうなのだ。ここまでは前哨戦に過ぎない。
「よし。じゃあ決まりだ。今夜、俺たちはあのシラブカを釣り上げる。マスコットは全員海へお帰りになったし、今日は久しぶりに静かでやりやすいと思うぞ」
「あ、それはそうかも――」
「だろ。大物釣りの競争でもやってみるか?」
「あんまり調子に乗らないで」
軽口を叩き合いながら、しかし帆織には一つ、気にかかっていることがあった。
青の秩序のリーダーをトヨミが抱え込み、ロープが三度、合図で引かれたのはもう晴海埠頭にほど近い、ほとんど海に接続した場所だった。思い切り帆織がロープを手繰ると、トヨミは自分の背中をソリのように使ってカイギュウの背中を滑ってきた。抱えられた男が気を失っていたことが、かえって救出を楽にしたのかもしれなかった。帆織は彼女の滑る速度に合わせ、休むことなくロープを手繰り続けた。トヨミが群れの外縁から水中へ滑り落ちるのと、カイギュウたちが海へ抜け切るのがほぼ同時だったように思う。
最初、彼はカイギュウが単に勢いよく潜行し始めたのだと思った。だが、それだけではなかった。
あれほどの巨体、あれほどの数。
帆織にはステラーカイギュウの大群が海中で溶けるように消失したと見えた。
彼らは帰ったのではない。消えてしまったのだ。
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