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第一章・救国の王女
92.緑の竜3
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「それでね、私、あなたの事を助けたいの。何をすればあなたを助けられる?」
突然話を変えてごめんね、と謝りつつ私は竜を見上げる。
竜の呪いが緑の竜が瀕死である事を理由に振り撒かれてるものなら…緑の竜を助けない事には呪いを根絶する事は不可能だ。
竜はちらりとこちらを見て答えた。
『まりょく………が、たりない。たいようの、ひかりも……これでは、しぜんちゆ…が、できぬ…なおるものも、なおらなぬ…のじゃ』
魔力と太陽光……? 確か悪魔が自然の権能がどうのこうのって言ってたけれど…もしかして、緑の竜は私が思ってる以上に自然と密接に関わっている存在なのかも。
白の竜が緑の竜を眠らせる場所に花と緑の国を選んだのもそれが理由…?
「…よし分かった。魔力は私の魔力を分けてあげる。太陽光は………ちょっと今から天井ぶち抜くから待ってて!」
『え、てんじょ、ぶち……?』
緑の竜は困惑したように目を丸くしてパチパチと瞬きした。
私はまず念の為にと、衝撃や崩れた天井から竜を守る為に竜を覆う半円型の氷の壁を作りあげた。その次に、氷で作った木の枝もどきを地面に立てて倒れさせる。枝もどきの倒れた方向の天井をぶち抜く事にした。
「今から頑張って地下大洞窟に穴を開けるから、この後分ける魔力無くなったらごめんね!」
そう宣言しながら私は魔法を発動する。イメージするは間欠泉。地中から土をぶち抜いて穴を作るにはピッタリだ。
間欠泉の仕組みはよく分かってないけれど、あんな感じで水で土を抉り地上に噴出させてしまえばいい。
これは難しい魔法なんかじゃあない。水の魔力を持つ誰もが扱える簡単な魔法だ。
ただ……この場合は、過去一魔力を込めた──最高火力での使用となる。
「できる限り収束させて──穿て! 水鉄砲!!」
その魔法を叫ぶ。それに合わせ指先に私の全魔力のうち七割程が集中され、圧縮して解き放たれる。
水鉄砲は凄まじい勢いを伴って天井に衝突し、当然のごとく浸食していった。
私がこの水鉄砲を維持出来たのはたったの十一秒。それだけで本当に魔力が限界に到達しそうなのだ。
──だがしかし。十一秒が過ぎた頃には天井に綺麗な穴が空いていた。僅かではあるが、そこから太陽光が差し込んでいる。
「やったー! 成功したぁあ!」
『………は…?』
見事地下大洞窟に差し込んだ太陽光を見て私は万歳した。
竜の周りに展開していた氷の壁を無くし、私は緑の竜が呆然としつつ日光浴をしているのを眺めながら、最後の万能薬を一気に飲み干した。
みるみるうちに回復する魔力。これなら思う存分竜に魔力を分けてあげられる、と安心した。
その為にも緑の竜に触れてもいいかと尋ねた所、『…とくべつじゃからな、われにふれていいのは……あねうえたち、だけだったのじゃぞ』と許可を貰えたのでその鱗に触れる。
そして手のひらから魔力を放出する感覚で、私の中にある魔力を緑の竜に流した。
魔力の性質が違うからこれが不可能な場合もあったが、水とは自然の一つ…自然の権能を持つ緑の竜なら私の水の魔力でも受け入れてくれるだろうと踏んだのである。
結果は見事大成功。日光浴による自然治癒とやらも出来たようで、一時間もすれば緑の竜は見違える程元気になっていた。
ボロボロだった体は綺麗になっていて、体に巻きついていたツタも取れている。そして何より、黄金の瞳に生気が宿っている。
結局復活した魔力の大半を失った私は、疲れからその場で座り込んでいた。だが目の前の元気な緑の竜を見たら…これで良かったのだと心より思えた。
『感謝する、心優しき人間の娘よ。我は誇り高き偉大なる緑の竜……受けた恩は忘れぬ。ほれ、何か望みを言うのじゃ。我がぽぽーっいと叶えてやるぞ』
言葉に覇気も戻り、とても上機嫌な緑の竜が望みを言えと急かして来る。私、結構疲れてるんだけどなぁ……。
まぁいいか。と一度息を吐き、緑の竜を見上げ望みを口にした。
「それじゃあ、あなたが撒いた呪いを今すぐどうにかして欲しいわ。それの所為でこの国は滅んでしまいそうなの」
『なぬっ、我の所為で…………それは駄目じゃ、とても駄目じゃ。そんな事が白の姉上にバレては我は叱られる……い、今すぐ何とかするから白の姉上には絶対! 絶対秘密じゃぞ?』
「…ふふっ、えぇ分かったわ。呪いを何とかしてくれるのなら、私から言う事は何も無いわ」
とてもかっこよくて威圧感も凄い存在なのに、どうしてかとても可愛く見えてしまう。
そして暫く待っていると、何だか辺りの空気がスっと軽くなったような気がして。もしかしてこれは……と期待に満ちた目で緑の竜を見つめる。
しかし、緑の竜は何故かふいっとまたそっぽを向いて視線を逸らしたのだ。
『…………すまぬ。呪いの種を撒くのはもう止めたのじゃが、既に撒かれ根を張った種は今の力無き我では消滅させる事が出来なかったのじゃ。ぽぽーっいと叶えてやると言うたのに…』
申し訳無さそうに、しょんぼりとした声で竜は語った。
「えっ!? それじゃあ既に呪われた人達は…?」
『……いや、それなのじゃが…実は少し前より次々に種が消滅しておるのじゃ。何者かによって、我の呪いが解呪されておるようじゃ』
この勢いであれば、一時間もしない内に全ての呪いが消え去るじゃろうな。と感心したように竜は付け加えた。
…リードさんとシャルが頑張ってくれている。それに、もしかしたら国教会から大司教が来てくれたのかもしれない。
ミカリアはちゃんと動いてくれたんだ…!
「…っ、よかったぁぁぁあ………!!」
『どうしたのじゃ人間の娘! まさかお前も呪いに…?!』
呪いが消え去ると言う言葉を聞いて、私はようやく心から安心する事が出来た。その為か体中の力が抜け、背中から倒れ込んでしまった。
絞り出したかのような弱々しい声。何とかこの国を守る事が出来た事による安心と喜びによる涙。今になって襲いかかってくる死の恐怖。
それらの所為で、私は今…凄く泣いていた。邪魔だったからと、この数日間押し殺していた感情が堰を切ったように流れ出る。
「…ぅぐ、ひぐ……っ! よかったっ…ほんとに…死なないで、よかっ……ぐすっ…しぬかと、おもった…っ! こわかっ…た、よっ……ぅっ…!!」
『どどど、我はどうすればいいのじゃ? こっ、この姿が怖いのか? それとも我の威圧感が悪いのか? 我はどうすればよいのじゃ……?!』
目元を押えながら泣きじゃくる私を見て、緑の竜はとても焦り狼狽していた。
すると突然近くでボフンッ! という爆発音に近い何かが聞こえる。何事かと思い涙でぐちゃぐちゃになった目元から手を退けると、
「…の、のぅ。これでもう怖くないじゃろ? 我はとても優しい竜じゃ…お前に悪い事などせぬ。だから泣き止むのじゃ、人間の娘よ」
そこには──真っ白なワンピースを着たとても可愛いロリっ子がいた。
翡翠色の長髪に、大きくて宝石のような黄金の瞳。瞳孔は変わらず鋭いものの…全体的に丸くなったから怖さや威圧感は感じられない。
小さな口からチラ見えする白い歯は上下どちらもギザギザしていて、人外味を助長する。
大変可愛いらしい声で、そのロリっ子は外見に似合わぬ言葉遣いをする。
この子は、まさか…。
「………緑の竜?」
「そうじゃ。どうだ、泣き止んだか?」
翡翠色のロリっ子は眉尻を下げてこちらの顔を覗き込む。
あまりにも驚き過ぎて涙引っ込んだわ。ついでに溢れ出てた感情もまた堰き止められたわ。
なんか可愛いなぁなんて考えてたけど、緑の竜が本当に可愛いなんて。
腕に力を込めて上体を起こす。そして私は緑の竜と向かい合ってその可愛い顔を見つめた。
「…可愛い……」
「む? 当然じゃ。我の擬態時の見目は姉上達もよく褒めてくれたからの!」
「…………」
「何故無言で頭を撫でるのじゃ…本来であれば不敬だと吹き飛ばすのじゃが……お前は特別よ。そうじゃ、お前の名を教えよ。我自ら呼んでやろうぞ」
ふふんっ、と上機嫌な緑の竜が名を聞いてくる。
……さっき一応名乗ってたんだけどなぁ。まぁ瀕死だったから聞こえてなかったんだろう。
「私はアミレス。あなたの名前は?」
ずっと緑の竜では呼び辛い。なので名前を教えてくれと頼んだのだが……その瞬間、竜はとても暗い表情をした。
「………竜に名は無い。色が個体を表す名のようなものじゃったからな」
あっ……と私は口を噤む。それはそうだ。名があったのならそれごと後世に伝わる筈…歴史の本でそれが伝わっていなかったのであれば、きっと名は無かったのだろう。
少し考えれば分かった事なのに、私はなんて無神経な事を…。
だからこそ、ここで終わる訳にもいかないと私は提案する。
「じゃあっ、私がつけてもいいかしら? あなたの名前を」
「お前が…我の名を?」
きょとんとする竜。その頬は僅かに紅潮しており、好反応なのではと私に感じさせた。
その後、緑の竜はもじもじとしながら小声で「……特に許す」とこぼした。それを合図に私は名前を考え始めた。
緑…グリーンはなんかなぁ、似合わない。自然から取るか? 自然…ナチュラル……ナトラ…。
ナトラって可愛いな、よし。これに決めた!
「ナトラ、っていうのはどうかしら。自然って意味の言葉なのだけれど…」
まるで月のように丸く見開かれる黄金の瞳。静寂の長考の後、緑の竜は嬉しそうに頬を綻ばせた。
「──ナトラ。ナトラ……くふふっ、我だけの名! 自然とな、緑の竜たる我に相応しい名じゃな! 褒めて遣わすぞ、アミレスよ!!」
満面の笑みを作り無邪気に飛び跳ねる緑の竜…ナトラを見て、私も自然と頬が綻んでいた。
突然話を変えてごめんね、と謝りつつ私は竜を見上げる。
竜の呪いが緑の竜が瀕死である事を理由に振り撒かれてるものなら…緑の竜を助けない事には呪いを根絶する事は不可能だ。
竜はちらりとこちらを見て答えた。
『まりょく………が、たりない。たいようの、ひかりも……これでは、しぜんちゆ…が、できぬ…なおるものも、なおらなぬ…のじゃ』
魔力と太陽光……? 確か悪魔が自然の権能がどうのこうのって言ってたけれど…もしかして、緑の竜は私が思ってる以上に自然と密接に関わっている存在なのかも。
白の竜が緑の竜を眠らせる場所に花と緑の国を選んだのもそれが理由…?
「…よし分かった。魔力は私の魔力を分けてあげる。太陽光は………ちょっと今から天井ぶち抜くから待ってて!」
『え、てんじょ、ぶち……?』
緑の竜は困惑したように目を丸くしてパチパチと瞬きした。
私はまず念の為にと、衝撃や崩れた天井から竜を守る為に竜を覆う半円型の氷の壁を作りあげた。その次に、氷で作った木の枝もどきを地面に立てて倒れさせる。枝もどきの倒れた方向の天井をぶち抜く事にした。
「今から頑張って地下大洞窟に穴を開けるから、この後分ける魔力無くなったらごめんね!」
そう宣言しながら私は魔法を発動する。イメージするは間欠泉。地中から土をぶち抜いて穴を作るにはピッタリだ。
間欠泉の仕組みはよく分かってないけれど、あんな感じで水で土を抉り地上に噴出させてしまえばいい。
これは難しい魔法なんかじゃあない。水の魔力を持つ誰もが扱える簡単な魔法だ。
ただ……この場合は、過去一魔力を込めた──最高火力での使用となる。
「できる限り収束させて──穿て! 水鉄砲!!」
その魔法を叫ぶ。それに合わせ指先に私の全魔力のうち七割程が集中され、圧縮して解き放たれる。
水鉄砲は凄まじい勢いを伴って天井に衝突し、当然のごとく浸食していった。
私がこの水鉄砲を維持出来たのはたったの十一秒。それだけで本当に魔力が限界に到達しそうなのだ。
──だがしかし。十一秒が過ぎた頃には天井に綺麗な穴が空いていた。僅かではあるが、そこから太陽光が差し込んでいる。
「やったー! 成功したぁあ!」
『………は…?』
見事地下大洞窟に差し込んだ太陽光を見て私は万歳した。
竜の周りに展開していた氷の壁を無くし、私は緑の竜が呆然としつつ日光浴をしているのを眺めながら、最後の万能薬を一気に飲み干した。
みるみるうちに回復する魔力。これなら思う存分竜に魔力を分けてあげられる、と安心した。
その為にも緑の竜に触れてもいいかと尋ねた所、『…とくべつじゃからな、われにふれていいのは……あねうえたち、だけだったのじゃぞ』と許可を貰えたのでその鱗に触れる。
そして手のひらから魔力を放出する感覚で、私の中にある魔力を緑の竜に流した。
魔力の性質が違うからこれが不可能な場合もあったが、水とは自然の一つ…自然の権能を持つ緑の竜なら私の水の魔力でも受け入れてくれるだろうと踏んだのである。
結果は見事大成功。日光浴による自然治癒とやらも出来たようで、一時間もすれば緑の竜は見違える程元気になっていた。
ボロボロだった体は綺麗になっていて、体に巻きついていたツタも取れている。そして何より、黄金の瞳に生気が宿っている。
結局復活した魔力の大半を失った私は、疲れからその場で座り込んでいた。だが目の前の元気な緑の竜を見たら…これで良かったのだと心より思えた。
『感謝する、心優しき人間の娘よ。我は誇り高き偉大なる緑の竜……受けた恩は忘れぬ。ほれ、何か望みを言うのじゃ。我がぽぽーっいと叶えてやるぞ』
言葉に覇気も戻り、とても上機嫌な緑の竜が望みを言えと急かして来る。私、結構疲れてるんだけどなぁ……。
まぁいいか。と一度息を吐き、緑の竜を見上げ望みを口にした。
「それじゃあ、あなたが撒いた呪いを今すぐどうにかして欲しいわ。それの所為でこの国は滅んでしまいそうなの」
『なぬっ、我の所為で…………それは駄目じゃ、とても駄目じゃ。そんな事が白の姉上にバレては我は叱られる……い、今すぐ何とかするから白の姉上には絶対! 絶対秘密じゃぞ?』
「…ふふっ、えぇ分かったわ。呪いを何とかしてくれるのなら、私から言う事は何も無いわ」
とてもかっこよくて威圧感も凄い存在なのに、どうしてかとても可愛く見えてしまう。
そして暫く待っていると、何だか辺りの空気がスっと軽くなったような気がして。もしかしてこれは……と期待に満ちた目で緑の竜を見つめる。
しかし、緑の竜は何故かふいっとまたそっぽを向いて視線を逸らしたのだ。
『…………すまぬ。呪いの種を撒くのはもう止めたのじゃが、既に撒かれ根を張った種は今の力無き我では消滅させる事が出来なかったのじゃ。ぽぽーっいと叶えてやると言うたのに…』
申し訳無さそうに、しょんぼりとした声で竜は語った。
「えっ!? それじゃあ既に呪われた人達は…?」
『……いや、それなのじゃが…実は少し前より次々に種が消滅しておるのじゃ。何者かによって、我の呪いが解呪されておるようじゃ』
この勢いであれば、一時間もしない内に全ての呪いが消え去るじゃろうな。と感心したように竜は付け加えた。
…リードさんとシャルが頑張ってくれている。それに、もしかしたら国教会から大司教が来てくれたのかもしれない。
ミカリアはちゃんと動いてくれたんだ…!
「…っ、よかったぁぁぁあ………!!」
『どうしたのじゃ人間の娘! まさかお前も呪いに…?!』
呪いが消え去ると言う言葉を聞いて、私はようやく心から安心する事が出来た。その為か体中の力が抜け、背中から倒れ込んでしまった。
絞り出したかのような弱々しい声。何とかこの国を守る事が出来た事による安心と喜びによる涙。今になって襲いかかってくる死の恐怖。
それらの所為で、私は今…凄く泣いていた。邪魔だったからと、この数日間押し殺していた感情が堰を切ったように流れ出る。
「…ぅぐ、ひぐ……っ! よかったっ…ほんとに…死なないで、よかっ……ぐすっ…しぬかと、おもった…っ! こわかっ…た、よっ……ぅっ…!!」
『どどど、我はどうすればいいのじゃ? こっ、この姿が怖いのか? それとも我の威圧感が悪いのか? 我はどうすればよいのじゃ……?!』
目元を押えながら泣きじゃくる私を見て、緑の竜はとても焦り狼狽していた。
すると突然近くでボフンッ! という爆発音に近い何かが聞こえる。何事かと思い涙でぐちゃぐちゃになった目元から手を退けると、
「…の、のぅ。これでもう怖くないじゃろ? 我はとても優しい竜じゃ…お前に悪い事などせぬ。だから泣き止むのじゃ、人間の娘よ」
そこには──真っ白なワンピースを着たとても可愛いロリっ子がいた。
翡翠色の長髪に、大きくて宝石のような黄金の瞳。瞳孔は変わらず鋭いものの…全体的に丸くなったから怖さや威圧感は感じられない。
小さな口からチラ見えする白い歯は上下どちらもギザギザしていて、人外味を助長する。
大変可愛いらしい声で、そのロリっ子は外見に似合わぬ言葉遣いをする。
この子は、まさか…。
「………緑の竜?」
「そうじゃ。どうだ、泣き止んだか?」
翡翠色のロリっ子は眉尻を下げてこちらの顔を覗き込む。
あまりにも驚き過ぎて涙引っ込んだわ。ついでに溢れ出てた感情もまた堰き止められたわ。
なんか可愛いなぁなんて考えてたけど、緑の竜が本当に可愛いなんて。
腕に力を込めて上体を起こす。そして私は緑の竜と向かい合ってその可愛い顔を見つめた。
「…可愛い……」
「む? 当然じゃ。我の擬態時の見目は姉上達もよく褒めてくれたからの!」
「…………」
「何故無言で頭を撫でるのじゃ…本来であれば不敬だと吹き飛ばすのじゃが……お前は特別よ。そうじゃ、お前の名を教えよ。我自ら呼んでやろうぞ」
ふふんっ、と上機嫌な緑の竜が名を聞いてくる。
……さっき一応名乗ってたんだけどなぁ。まぁ瀕死だったから聞こえてなかったんだろう。
「私はアミレス。あなたの名前は?」
ずっと緑の竜では呼び辛い。なので名前を教えてくれと頼んだのだが……その瞬間、竜はとても暗い表情をした。
「………竜に名は無い。色が個体を表す名のようなものじゃったからな」
あっ……と私は口を噤む。それはそうだ。名があったのならそれごと後世に伝わる筈…歴史の本でそれが伝わっていなかったのであれば、きっと名は無かったのだろう。
少し考えれば分かった事なのに、私はなんて無神経な事を…。
だからこそ、ここで終わる訳にもいかないと私は提案する。
「じゃあっ、私がつけてもいいかしら? あなたの名前を」
「お前が…我の名を?」
きょとんとする竜。その頬は僅かに紅潮しており、好反応なのではと私に感じさせた。
その後、緑の竜はもじもじとしながら小声で「……特に許す」とこぼした。それを合図に私は名前を考え始めた。
緑…グリーンはなんかなぁ、似合わない。自然から取るか? 自然…ナチュラル……ナトラ…。
ナトラって可愛いな、よし。これに決めた!
「ナトラ、っていうのはどうかしら。自然って意味の言葉なのだけれど…」
まるで月のように丸く見開かれる黄金の瞳。静寂の長考の後、緑の竜は嬉しそうに頬を綻ばせた。
「──ナトラ。ナトラ……くふふっ、我だけの名! 自然とな、緑の竜たる我に相応しい名じゃな! 褒めて遣わすぞ、アミレスよ!!」
満面の笑みを作り無邪気に飛び跳ねる緑の竜…ナトラを見て、私も自然と頬が綻んでいた。
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