だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

十和とわ

文字の大きさ
559 / 866
第五章・帝国の王女

506.Main Story:Ameless

しおりを挟む
「あれ、でも……攻撃は当たらないんじゃあ」

 先程のシュヴァルツの説明では、妖精は奇跡を起こし続けるから一切攻撃が当たらないとの事だったが……一体どうやって凍結させろというのか。

「いくら妖精と言えども、全てを奇跡的に回避する事なんざ不可能だ。だから、一度に回避しきれない程の攻撃を行い、そちらに奇跡力を使わせる事で隙を作る。ありふれた戦略だが、妖精共への有効打はこれしかないんだよなァ」
「つまり総力戦ってこと?」
「そうだな。少しでも奇跡が分散された方が、成功する確率は高くなるだろォさ」

 そう言うやいなや、シュヴァルツは私の手を放した。そして片手をズボンのポケットに突っ込んだまま、彼はぽぽんっと魔法を使う。
 地面に浮かぶ緑色の魔法陣からツタのようなものが伸び、穢妖精けがれの触手とジェジの隙間を縫って入り込んではそこに隙間を作り、ジェジの体が滑り落ちる。
 触手から解放されたジェジは脱兎の如くその場から離脱し、涙目でシャルに飛びついた。

「よし……イリオーデ、お前の馬鹿げた出力の風魔法で穢妖精けがれを一箇所に集めてこい。その方がアミレスも凍結させやすいだろ」
「それは構わないが、その間お前は何をするんだ」
「何ってそりゃァ……応援?」
「は?」
「おい睨むなオレサマとて好きで何もしないワケじゃねェから」

 イリオーデの真っ直ぐな侮蔑の視線に、シュヴァルツは眉を顰めてため息を零す。

「制約の影響で魔族オレサマは妖精に手ェ出せないんだよ。さっきのちょっとした干渉が限界だから、オレサマは何も出来ないってワケ。その代わり、アミレスに魔力を分けたりとかそういったサポートはするつもりだ」
「……ふん、ならばいい」

 興味無さげに呟くとイリオーデは地面を蹴って広場じゅうを駆け回り、散り散りになっていた穢妖精けがれを色んな方向から風魔法を使って一箇所に追いやっていった。
 その威力が相変わらず凄まじく、奇跡力を駆使していると思しき穢妖精けがれを石畳諸共ふっ飛ばしていく。
 その余波がこちらにまで来るので、暫く髪とドレスを押さえ続けていた。

「お待たせしました、王女殿下。ディオ達に例の作戦を共有しておきましたので、今すぐにでも総力戦を決行出来ます」

 やだ! なんて有能なのうちの騎士!
 青い長髪と団服のマントが、彼の放った風の残滓に弄ばれふわりと踊る。長剣ロングソードを鞘に納めながら悠然と歩く姿は、まさに物語の英雄のようであった。
 そんな彼を褒めちぎろうとしたのだが、

「──遅れてしまい申し訳ございません、主君。各部統括責任者殿が中々見つからず、時間がかかってしまいました」
「ルティ!」

 ここで随分とタイミング良くアルベルトが合流する。
 影から出たばかりの彼に早速現状を説明して、協力を得る事にした。
 イリオーデによって広場の中心に山のように積み重ねられた大量の穢妖精けがれを見て、流石のアルベルトもドン引きだったが、彼はあっという間に気持ちを切り替えたようで。

「かしこまりました。では、遅れてしまったぶんを取り返すべく先陣を切りましょう」

 そう言って歩きだしたアルベルトを、すれ違いざまにイリオーデが睨んでいた。その不満げな様子から、きっと活躍の場を奪われたような気分なのだろう。

「……イリオーデもありがとう。お陰で作戦を進めやすくなったわ。この後も頑張ってくれる?」
「っ、はい! 無論、死力を尽くさせていただきます」

 イリオーデは気を取り直して踵を返し、アルベルトの背を追いかけた。
 やがて横に並んだ彼等は軽く会話を重ね、攻撃に出る。
 アルベルトは影で作った弓を構え、同じく闇を織り重ねたような無数の矢を放つ。それと同時に、穢妖精けがれ目掛けて放たれるイリオーデの風の刃。
 総力戦が始まったと悟った私兵団の面々も、次々渾身の魔法を穢妖精けがれに向けて発動する。

「さァ、アミレス。オレサマの魔力も貸してやるから、お前もぶちかましてやれ」

 ニヤリと笑いながら彼は私の手を握った。
 そこから、じわじわと魔力が流れてくるのが分かる。

「分かったわ」

 軽く頷き深呼吸する。
 皆が穢妖精けがれから離れてくれているから、魔法に巻き込まなくて済みそうだ。……魔法というか、魔法未満のただの現象なんだけどね。

「皆! 巻き添えを食らわないようにもう少し離れてて!!」

 念には念をと、魔法を使う前に忠告する。
 すると彼等は何歩か後退り、穢妖精けがれから更に距離を取ってくれた。だが細心の注意をはらいつつ、魔力を放出する。
 雨のように降り注ぐ攻撃の数々を平然と受け流す穢妖精けがれの山を覆うように、水の魔力を浸透させ……

「──絶対零度!」

 一気にその温度を下げる! とは言いつつも、実際は絶対零度まで下げている訳ではない。私が弄れる水温なんてせいぜい氷点下五十度とかが関の山。しかしそれでも、規模が規模なだけに消費する魔力は凄まじい。
 前回は魔導兵器アーティファクトを覆う程度でよかったから、特に負担はなかったのだが……今回は正気度を削られそうな穢妖精けがれの山ときた。
 シュヴァルツが魔力を貸してくれていなければ、魔力を半分以上ごっそりと持っていかれていたことだろう。

「ふぅ……これでとりあえずはどうにかなったかな?」
「いやァ~~、マジでとんでもないなその魔法。あのクソ妖精共が即死じゃねェか」

 鋭く口角を釣り上げ、シュヴァルツは興奮したように話す。
 どうやら絶対零度により穢妖精けがれは即死したらしい。その名に相応しい一撃必殺の技ね。

「でもあの死体の山、どうする? すっごく邪魔だけど」

 あのような名状しがたき何かをオブジェとして残す訳にはいかないわ。

「……砕くしかないだろうな」
「嘘でしょ?」
「残念ながら本気で~す。粉々に砕いてそこらの下水にでも流しとけばなんとかなるだろ」

 揃って遠い目になる。
 その後、私達は剣や魔法で氷山と化した穢妖精けがれの骸を粉砕し、その作業は日没を通り越して日付が変わる寸前まで続いた。
 ある程度砕かれた何かを木箱に詰め込み、ディオ達が手分けして運んで下水に投入。
 全ての作業が終わると全員クタクタ。その日はもう家事なんてしたくないと皆が嘆いていたので、夜遅くまでやってる酒場に皆で行って、私兵団の面々にご馳走したとも。

 お酒の力でどんちゃん騒ぎとなった酒場の一角にて。そこで夕食を済ませつつ、これから先の事を考える。
 西部地区の復興作業もしないといけないし、この件の報告書も書かないと。親善の為の食事会をドタキャンした事についての申し開きもしなきゃ。

 はぁ……やることが多い────!!
 ミシェルちゃんに会う日が更に遠のいたと、私は一人深く肩を落としていた。
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...