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第一章 ゼイウェンの花 編
31 王都マーゼ
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エレッセ王国王都、マーゼ。
大陸内で、十本の中に入るこの大都市には、多種多様な種族が、分け隔てなく入り乱れて生活している。これは、エレッセ王国における殆どの都市で、全ての種族が皆国民としての権利が保障されており、原理として平等であるためだ。
良い意味でごちゃ混ぜとなったのは、この国の建国経緯にその理由がある。
今から百年以上も昔、初代エレッセ王グルーウェル一世は、ガウル帝国の一介の領主にすぎなかった。そんな彼は、持ち前の武勇と人徳の深さで、たくさんの人々の支持を得て、どんどんと勢力を拡大していく。
そして、ガウル帝国の特別自治領として、当時の皇帝に認定されたのが、ここエレッセ王国の起源だ。そして、これを支えたのが、“五人の賢者”と言われている。
この五人というのが、“異種族”集団であった。
当時は、今ほどウィル大陸における異種族理解が進んでいなかった。そのため、就業制限を受けたり、ひどい場合には迫害され、奴隷にされたりと、そんなことが日常茶飯事だった。
そんな当時に、異種族を国の幹部として迎え入れたのが、初代王だった。
当時、“変人王”なんて二つ名が付けられていた初代王だが、彼は五人の力を見抜き、それぞれの力を最も活かせるように配置した。その結果、エレッセ王国は建国わずか五年にして、周りの国々に負けない経済力と地位を手にしたのだ。それに対し、人々はその評価をひっくり返し、“類まれなる賢王”と称されるようになった、とか。
「すごいよねぇ、初代エレッセ王は。僕にはムリだなぁ…。」
そう、ぼやきながらエレッセ王国のガイドを読む。“類まれなる賢王”、その重圧は如何ほどだったのか。利益にもならないのに……。
「損得勘定で物事をみていない、優しさに溢れる王だった、ということなのでしょうか。」
「さて、それはどうなんだろえねぇ。」
と、コールに投げかける。
「確かに、初代王はガウル帝国の領主だったんだけど……“養子”なんだ。」
パラパラとガイドブックをめくる。
「そうなんですか?」
コールは、半信半疑と言ったところだ。まあ、信じられない気持ちも分かるが…事実だから、致し方ない。
「うん。そして、その正確なルーツは……。」
エレッセ王国のガイドブックを閉じる。
「……ガウル帝国の“商家”。」
有力な商人が、王国貴族の外戚となり取り入るために、娘を送り込むことが今でも多々ある。初代王の場合は、商家の三男だけど……。
「どうやら、その領主家は跡継ぎに恵まれなかったようでね。当時領主家が懇意にしていた商人がいて、利害が一致して、養子として迎え入れたらしい。ま、得も知れぬ他家の人間を入れるよりかは良かったんじゃない?」
馬車は、それまでの土で作られた道をついに抜け、石畳で綺麗に舗装された道を進んでいく。
「まあ三男だから商家の跡継ぎとしては育てられなかっただろうけど、ある程度教育は受けているはず。そんな彼が、何の下心もなしに異種族を五人も幹部として迎え入れるかな?」
「それは………。」
コールがそこで、口をつぐんでしまう。だがまあ……損得勘定で判断しない、領主が居るのは確かなことだからなぁ。
「…ま、そういう優しい王であったことを、僕も願ってるよ。」
頭の後ろに手を組み、背もたれに寄りかかる。
「そして……忘れてはいけないのが、前王グルーウェル三世もまた、それを受け継いでいるということ。」
空に浮かぶ雲を指でなぞる。
「……いずれにしても、ジャールがここまで働いてきた狼藉をみすみす見逃すわけにはいかない。……ここで、勝負をつけるよ。」
「はい!」
王都マーゼ第一の城壁は、目と鼻の先だ。
大陸内で、十本の中に入るこの大都市には、多種多様な種族が、分け隔てなく入り乱れて生活している。これは、エレッセ王国における殆どの都市で、全ての種族が皆国民としての権利が保障されており、原理として平等であるためだ。
良い意味でごちゃ混ぜとなったのは、この国の建国経緯にその理由がある。
今から百年以上も昔、初代エレッセ王グルーウェル一世は、ガウル帝国の一介の領主にすぎなかった。そんな彼は、持ち前の武勇と人徳の深さで、たくさんの人々の支持を得て、どんどんと勢力を拡大していく。
そして、ガウル帝国の特別自治領として、当時の皇帝に認定されたのが、ここエレッセ王国の起源だ。そして、これを支えたのが、“五人の賢者”と言われている。
この五人というのが、“異種族”集団であった。
当時は、今ほどウィル大陸における異種族理解が進んでいなかった。そのため、就業制限を受けたり、ひどい場合には迫害され、奴隷にされたりと、そんなことが日常茶飯事だった。
そんな当時に、異種族を国の幹部として迎え入れたのが、初代王だった。
当時、“変人王”なんて二つ名が付けられていた初代王だが、彼は五人の力を見抜き、それぞれの力を最も活かせるように配置した。その結果、エレッセ王国は建国わずか五年にして、周りの国々に負けない経済力と地位を手にしたのだ。それに対し、人々はその評価をひっくり返し、“類まれなる賢王”と称されるようになった、とか。
「すごいよねぇ、初代エレッセ王は。僕にはムリだなぁ…。」
そう、ぼやきながらエレッセ王国のガイドを読む。“類まれなる賢王”、その重圧は如何ほどだったのか。利益にもならないのに……。
「損得勘定で物事をみていない、優しさに溢れる王だった、ということなのでしょうか。」
「さて、それはどうなんだろえねぇ。」
と、コールに投げかける。
「確かに、初代王はガウル帝国の領主だったんだけど……“養子”なんだ。」
パラパラとガイドブックをめくる。
「そうなんですか?」
コールは、半信半疑と言ったところだ。まあ、信じられない気持ちも分かるが…事実だから、致し方ない。
「うん。そして、その正確なルーツは……。」
エレッセ王国のガイドブックを閉じる。
「……ガウル帝国の“商家”。」
有力な商人が、王国貴族の外戚となり取り入るために、娘を送り込むことが今でも多々ある。初代王の場合は、商家の三男だけど……。
「どうやら、その領主家は跡継ぎに恵まれなかったようでね。当時領主家が懇意にしていた商人がいて、利害が一致して、養子として迎え入れたらしい。ま、得も知れぬ他家の人間を入れるよりかは良かったんじゃない?」
馬車は、それまでの土で作られた道をついに抜け、石畳で綺麗に舗装された道を進んでいく。
「まあ三男だから商家の跡継ぎとしては育てられなかっただろうけど、ある程度教育は受けているはず。そんな彼が、何の下心もなしに異種族を五人も幹部として迎え入れるかな?」
「それは………。」
コールがそこで、口をつぐんでしまう。だがまあ……損得勘定で判断しない、領主が居るのは確かなことだからなぁ。
「…ま、そういう優しい王であったことを、僕も願ってるよ。」
頭の後ろに手を組み、背もたれに寄りかかる。
「そして……忘れてはいけないのが、前王グルーウェル三世もまた、それを受け継いでいるということ。」
空に浮かぶ雲を指でなぞる。
「……いずれにしても、ジャールがここまで働いてきた狼藉をみすみす見逃すわけにはいかない。……ここで、勝負をつけるよ。」
「はい!」
王都マーゼ第一の城壁は、目と鼻の先だ。
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