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第一章 ゼイウェンの花 編
33 迫る手
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「クラムさん、さっきの………ハグレーラさんって、クラムさんのお友達なんですか?」
なんだかんだ言って、仲がよさそうだったので…、とコールは続けて言った。
「おっ、お友達ぃぃ!!?」
あ、あいつと仲が良さそうだってぇ!?
冗談じゃない。アイツの顔を思い浮かべ、しかめっ面をしてやった。
「何年か前から交流があるだけさ。別に仲が良いわけじゃない。けど……。」
南方商人であるハグレーラの商的センスは、はっきり言って大陸にいる商人の中でも抜群に秀でている。あまり褒めたくはないが……すごい男であることに間違いはない。
「ま、尊敬はしてるかな。一応。」
「そ、そうですか……。」
一応というところを強調させたからなのか、コールは少し困惑していた。
さて……僕らもそろそろ、行かなければ。
レーヴの街で起きた、穀物不作。
それは、フーロン商会が「管理」と称して畑に介入し売りつけた、“魔力矯正剤”による人為的なもたらしであった。
そしてその“魔力矯正剤”は…“育成剤”と名前を変えて、改良版が出回っている。
もちろん、フーロン商会の名義で。
しかし、それは今までの“矯正剤”とは別物のように、効果があるらしい。実際に見た訳では無いが、ラーズの街では穀物がよく採れるようになったようだし、ほぼ確定で間違いないだろう。
更に言えば、彼らはレーヴが“大陸の畑”に名を連ねる前、つまり“鉱山の街”だった時には何の関与もしなかったのに、閉山後に商店を置くようになった。
そして今、ほぼ同じ条件であるエレッセ国営鉱山のコンペに、出場しようとしている。
あからさまだが……これらを追求するには、証拠が必要だ。無ければすべて、憶測にすぎなくなる。
だから僕らは……証拠を集めた。
ただ、一つを除いて。
……色々考えても仕方がないね。
両頬をパンと叩き、気合を入れる。
僕らの目指す、エレッセ王城はもう目の前に迫っていた。
◇
所変わって、レーヴの街の中心部。
その人物は、中央広場を横切り、とある場所へと走って向かっていた。
「はぁ………はぁ………急いで……これを、ウェリス様に届けなければっ…………!!」
足が着くたびに、街道の石畳の隙間にたまった土ぼこりが、小さく舞う。
彼女は息を切らし、一直線に向かっていった。
しかし…。
「……おっと、待ちな。」
そこに、黒いローブをまとった一人の男が両手で行く手を阻み、立ちはだかった。男の後ろでは、小さく魔法陣が消えかかっていた。
「……恨みはないが、許せよ。」
そうぼやき、ポキポキと指を鳴らしながら、男は近づいていく。
その女とは………何かを大事そうに抑えた、セリだった。
男は助走をつけ、一気に取り押さえようとする。
セリはそれをパッと翻り、避けようとした。しかし…。
「残念でーした☆ 追手は一人だけじゃないって、わかんなかったー?」
その先には、黒いローブを羽織り、小さなバッジを胸元につけた少女が立ちふさがった。少女の右手には、炎の魔法装填がなされていた。
「ちょっと待ってください!!何かの人違いじゃないですか!?私はただの一般人で……。」
「……フーロン商会の機密情報を持っているお前が、一般人なのか。」
「………っ!?」
男のその一言で、セリは反射的にポケットを覆うよう、手を回す。男はそれを見て、察した。
「やはりな。あの人の言う通り、この女が、フォクサル※だったってわけか。」
「セリさん……旧名は、セリ・レーヴ。あなたのことは、調べさせてもらったよ♪」
二人はそう言いながら、魔法装填を進める。
……迂闊でした。こんなことなら、素直にあのクラムとかいう商人に、最初から引き渡しておけば良かった……。
そう考えるセリは、胸の中でぐるぐると、色々なものが渦巻いていた。小さく、ため息をつく。
「一つだけ伺いますが……あなた方は、一体何者でしょうか。少なくとも、私が予想していた人々とは……姿が異なるようなので。」
そう言い、セリは二人の服装を見る。羽織る黒いローブの下から、服がちらっとだけ見えるが……緑色ではない。それに、赤のワンポイントがないことから、少なくともフーロン商会の制服を着ているわけではないことが伺える。
セリは、これまで会ってきたフーロン商会の関係者と顔を照らし合わせるが………該当者はいない。
ならば…、何処の誰なのか。
「……答えるわけにはいかないねー、あの人との約束だから、さ。早く渡してちょーだい。」
その時、耳元についたアクセサリーが、小さく揺れた。それは……ハグレーラと同じ、南方商人の特徴である。
なんだかんだ言って、仲がよさそうだったので…、とコールは続けて言った。
「おっ、お友達ぃぃ!!?」
あ、あいつと仲が良さそうだってぇ!?
冗談じゃない。アイツの顔を思い浮かべ、しかめっ面をしてやった。
「何年か前から交流があるだけさ。別に仲が良いわけじゃない。けど……。」
南方商人であるハグレーラの商的センスは、はっきり言って大陸にいる商人の中でも抜群に秀でている。あまり褒めたくはないが……すごい男であることに間違いはない。
「ま、尊敬はしてるかな。一応。」
「そ、そうですか……。」
一応というところを強調させたからなのか、コールは少し困惑していた。
さて……僕らもそろそろ、行かなければ。
レーヴの街で起きた、穀物不作。
それは、フーロン商会が「管理」と称して畑に介入し売りつけた、“魔力矯正剤”による人為的なもたらしであった。
そしてその“魔力矯正剤”は…“育成剤”と名前を変えて、改良版が出回っている。
もちろん、フーロン商会の名義で。
しかし、それは今までの“矯正剤”とは別物のように、効果があるらしい。実際に見た訳では無いが、ラーズの街では穀物がよく採れるようになったようだし、ほぼ確定で間違いないだろう。
更に言えば、彼らはレーヴが“大陸の畑”に名を連ねる前、つまり“鉱山の街”だった時には何の関与もしなかったのに、閉山後に商店を置くようになった。
そして今、ほぼ同じ条件であるエレッセ国営鉱山のコンペに、出場しようとしている。
あからさまだが……これらを追求するには、証拠が必要だ。無ければすべて、憶測にすぎなくなる。
だから僕らは……証拠を集めた。
ただ、一つを除いて。
……色々考えても仕方がないね。
両頬をパンと叩き、気合を入れる。
僕らの目指す、エレッセ王城はもう目の前に迫っていた。
◇
所変わって、レーヴの街の中心部。
その人物は、中央広場を横切り、とある場所へと走って向かっていた。
「はぁ………はぁ………急いで……これを、ウェリス様に届けなければっ…………!!」
足が着くたびに、街道の石畳の隙間にたまった土ぼこりが、小さく舞う。
彼女は息を切らし、一直線に向かっていった。
しかし…。
「……おっと、待ちな。」
そこに、黒いローブをまとった一人の男が両手で行く手を阻み、立ちはだかった。男の後ろでは、小さく魔法陣が消えかかっていた。
「……恨みはないが、許せよ。」
そうぼやき、ポキポキと指を鳴らしながら、男は近づいていく。
その女とは………何かを大事そうに抑えた、セリだった。
男は助走をつけ、一気に取り押さえようとする。
セリはそれをパッと翻り、避けようとした。しかし…。
「残念でーした☆ 追手は一人だけじゃないって、わかんなかったー?」
その先には、黒いローブを羽織り、小さなバッジを胸元につけた少女が立ちふさがった。少女の右手には、炎の魔法装填がなされていた。
「ちょっと待ってください!!何かの人違いじゃないですか!?私はただの一般人で……。」
「……フーロン商会の機密情報を持っているお前が、一般人なのか。」
「………っ!?」
男のその一言で、セリは反射的にポケットを覆うよう、手を回す。男はそれを見て、察した。
「やはりな。あの人の言う通り、この女が、フォクサル※だったってわけか。」
「セリさん……旧名は、セリ・レーヴ。あなたのことは、調べさせてもらったよ♪」
二人はそう言いながら、魔法装填を進める。
……迂闊でした。こんなことなら、素直にあのクラムとかいう商人に、最初から引き渡しておけば良かった……。
そう考えるセリは、胸の中でぐるぐると、色々なものが渦巻いていた。小さく、ため息をつく。
「一つだけ伺いますが……あなた方は、一体何者でしょうか。少なくとも、私が予想していた人々とは……姿が異なるようなので。」
そう言い、セリは二人の服装を見る。羽織る黒いローブの下から、服がちらっとだけ見えるが……緑色ではない。それに、赤のワンポイントがないことから、少なくともフーロン商会の制服を着ているわけではないことが伺える。
セリは、これまで会ってきたフーロン商会の関係者と顔を照らし合わせるが………該当者はいない。
ならば…、何処の誰なのか。
「……答えるわけにはいかないねー、あの人との約束だから、さ。早く渡してちょーだい。」
その時、耳元についたアクセサリーが、小さく揺れた。それは……ハグレーラと同じ、南方商人の特徴である。
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