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第三章 騎士学校、留学(?)編
第5話 帝都ローム
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「うわぁ、すっげぇ……………」
ズール帝国に着いて早々、目の前にドンとそびえ立つ城壁に、僕は呆気にとられていた。これを作るのに一体どれだけの人手と金が必要なのか…考えるだけでも身震いしてしまう。
今日の早朝、第五宿場町の宿屋〈モリノキ〉を後にした僕は、再び行商の馬車の荷台に乗せてもらい、快適にロール街道を下ることができた。
途中にあったマドロミの森を徒歩で抜けようとしたら、一体何日かかったことだろうか…なんにせよ、今回は行きの道のりで行商をつかめて良かった。
徒歩だと三日かかる道のりも、馬車にのればたったの二日でつく。サガミと落ち合う日まであと一日あるし、昼過ぎにつけたので、今日はズール帝国の首都ロームを散策してみることにした。
「ここまで送っていただいて、ありがとうございました。」
ペコリと、僕は頭を下げる。
「いんや、そんなお礼言われるほどのことはしてねえよ。荷物のついでに運んだだけだしよ。」
行商のおじさんは、優しく僕に微笑みかける。
「んだけんども、今日はどうすっと?」
おじさんには期日までに着けるかどうかを聞くために、事前に日にちを教えといた。実際は予定よりも一日早く着いたので、どうするつもりなのか気に掛けてくれているようだ。本当に親切な人だなぁ。
「そうですね。まだ一日ぐらいゆっくりできそうなので、帝都を見て回ろうと思います。」
「そうか、観光すんのかぇ。お前さんは帝都は初めてだっけか?」
「はい。」
僕が覚えていないだけだが、ホスロが言うには、小さい頃に、父につれられてここまで来たことがあるらしい。ただ、ものすごく小さい時の話なので、記憶にない。
「…んなら、中央ストリートなんかどうだっぺか?」
「ああ、お店とかがいっぱい立ち並んでる、国随一の繁華街ですよね?」
「おお、よく知ってんな。」
「来る前に、少しだけ本を読んどいたので…」
兄にも内緒で、各国の機密情報が保管されている書庫に入り、ある程度は情報を下調べしておいてある。だけども、もう何年も前の資料なので、今の帝国がどれだけ強大なのかを知る術がなかった。案の定、帝国はここ数年で大成長し、武力も経済も大陸では右にでる者がいないほどになった。
だから、タールランドも従うしかない。迂闊に変なことをして、今保っている関係を崩してしまったら、僕らは強大な後ろ楯を失うことになる。
僕が今一番懸念していることは、それだ。だからこそ、今回のサガミ大臣の話を受けることにしたのだ。
「まあ、他にも色々見るところがあっからよ、ゆっくりと探してみんのがオススメだな。」
「本当に何から何までありがとうございます!」
さあ、まずは繁華街の中央ストリートへ行ってみよう。
…………後ろから妙に刺さる視線は無視するか。
◇
「うわぁ、マジかよ…」
中央ストリートには、僕の予想をはるかに越える店があり、そして人で賑わっている。タールランドにも市場は出るが、レベルの差は天と地ほどだ。
正直に言おう。僕は、帝国のことを少しなめてました。
ストリートをたくさんの人が横行している。そのなかには、帝国騎士学校の制服を着た生徒もいた。昼御飯を食べに来たんだろう。うーん、食べようと思ったらすぐ近くにたくさんのお店がある。どれだけ贅沢なんだよぉ。
「今日はラッキー中華にでもすっかな?」
「そうだな。あそこは時々オマケがついてくるからな。」
「スッゴいお得な気分になれるよね。」
なんていう生徒達の会話が聞こえてくる。うーん、何処で食べようかな。あんまり高いとこも嫌だけど。なんてことを考えながらウロウロしていた。
すると……
「………ねえ。」
後ろから突然声を掛けられた。
「はい?なんでしょう……………ふぉっ!」
振り向いて顔を見た瞬間…………僕の視界に、美しい顔が飛び込んできた。
「ねえ、もしかして、お昼ごはんで迷ってたりする?」
「ああ、はい。そうれす。」
おっと、衝撃のあまりに噛んでしまった。美しい人だ。例えるならば、砂漠の中に咲く一輪の小さい花………
「ちょっと、人の話聞いてるの?」
「ああ、はい! すみません……」
僕は緩む顔をこらえながら、謝る。
「もしよかったら、私と来ない?」
「もっちr………………はっ!?」
あぶねぇ。もう少しで、色気によって自分の理性が吹き飛ぶとこだった。
例え相手が女性だろうと、ここは外国。油断するわけにはいかない。
頬を両手で叩き、気合いを入れ直す。
「…………あんた、何者だ?」
思い切りその女性をにらむ。すると、まいったと両手をあげた。
「私のスキル、〈魅力〉に引っ掛からないとは。さすが大陸指折りの名君ね。」
「君、僕の正体を知ってるの?」
「正体って?」
あくまでもシラを切るつもりか。正体を吐かせたという証拠がなければ、本人の自爆ということで片付けられる。そんなことを考えるのは、タールランドの大臣か、ズール帝国の軍人や大臣だけなのだが。
「結局、あんたは誰なんだ?」
と、ここに走ってくる影を見つける。あれは…
「タイト様ぁ!!」
「しっ!声がでかいよ、バレるだろっ!」
ズール帝国外務大臣のサガミ。今回僕のことを呼び出し、計画を立てた張本人だ。
「うちの娘が失礼しましたっ。あれ程来るなと伝えたのですが、聞きませんで…」
「いや、いいよ。サガミの娘だったのか。道理で僕の正体を知ってるわけだ。」
「お父さん! 折角私が外国からの侵入者を捕まえたのに、横取りしないでよ!!」
「し、侵入者って……」
なかなかとんでもない性格のようだ。まあ、ある意味言ってることに間違いはないけどね。
「城の中に来た行商が私のところに来まして、タイト殿が一日早く到着して待ってるから、迎えに行ってやれと……そして、今に至ります。」
どうやら、行商のおじさんが伝えてくれたみたいだ。そうか、ズール帝国に売りに行くと言っていたが、王族と取引してるのか。だから、僕の正体も一発で見抜いたってわけだね。
「とにかく、こんなとこじゃなんですから。どこかお店を探して入りましょう。タイト殿も、お腹が空いているでしょう。さあ、どうぞ。」
「お、おう。ありがとう。」
てなわけで、さっき生徒が噂していたラッキー中華で昼食を摂ることにした。
ズール帝国に着いて早々、目の前にドンとそびえ立つ城壁に、僕は呆気にとられていた。これを作るのに一体どれだけの人手と金が必要なのか…考えるだけでも身震いしてしまう。
今日の早朝、第五宿場町の宿屋〈モリノキ〉を後にした僕は、再び行商の馬車の荷台に乗せてもらい、快適にロール街道を下ることができた。
途中にあったマドロミの森を徒歩で抜けようとしたら、一体何日かかったことだろうか…なんにせよ、今回は行きの道のりで行商をつかめて良かった。
徒歩だと三日かかる道のりも、馬車にのればたったの二日でつく。サガミと落ち合う日まであと一日あるし、昼過ぎにつけたので、今日はズール帝国の首都ロームを散策してみることにした。
「ここまで送っていただいて、ありがとうございました。」
ペコリと、僕は頭を下げる。
「いんや、そんなお礼言われるほどのことはしてねえよ。荷物のついでに運んだだけだしよ。」
行商のおじさんは、優しく僕に微笑みかける。
「んだけんども、今日はどうすっと?」
おじさんには期日までに着けるかどうかを聞くために、事前に日にちを教えといた。実際は予定よりも一日早く着いたので、どうするつもりなのか気に掛けてくれているようだ。本当に親切な人だなぁ。
「そうですね。まだ一日ぐらいゆっくりできそうなので、帝都を見て回ろうと思います。」
「そうか、観光すんのかぇ。お前さんは帝都は初めてだっけか?」
「はい。」
僕が覚えていないだけだが、ホスロが言うには、小さい頃に、父につれられてここまで来たことがあるらしい。ただ、ものすごく小さい時の話なので、記憶にない。
「…んなら、中央ストリートなんかどうだっぺか?」
「ああ、お店とかがいっぱい立ち並んでる、国随一の繁華街ですよね?」
「おお、よく知ってんな。」
「来る前に、少しだけ本を読んどいたので…」
兄にも内緒で、各国の機密情報が保管されている書庫に入り、ある程度は情報を下調べしておいてある。だけども、もう何年も前の資料なので、今の帝国がどれだけ強大なのかを知る術がなかった。案の定、帝国はここ数年で大成長し、武力も経済も大陸では右にでる者がいないほどになった。
だから、タールランドも従うしかない。迂闊に変なことをして、今保っている関係を崩してしまったら、僕らは強大な後ろ楯を失うことになる。
僕が今一番懸念していることは、それだ。だからこそ、今回のサガミ大臣の話を受けることにしたのだ。
「まあ、他にも色々見るところがあっからよ、ゆっくりと探してみんのがオススメだな。」
「本当に何から何までありがとうございます!」
さあ、まずは繁華街の中央ストリートへ行ってみよう。
…………後ろから妙に刺さる視線は無視するか。
◇
「うわぁ、マジかよ…」
中央ストリートには、僕の予想をはるかに越える店があり、そして人で賑わっている。タールランドにも市場は出るが、レベルの差は天と地ほどだ。
正直に言おう。僕は、帝国のことを少しなめてました。
ストリートをたくさんの人が横行している。そのなかには、帝国騎士学校の制服を着た生徒もいた。昼御飯を食べに来たんだろう。うーん、食べようと思ったらすぐ近くにたくさんのお店がある。どれだけ贅沢なんだよぉ。
「今日はラッキー中華にでもすっかな?」
「そうだな。あそこは時々オマケがついてくるからな。」
「スッゴいお得な気分になれるよね。」
なんていう生徒達の会話が聞こえてくる。うーん、何処で食べようかな。あんまり高いとこも嫌だけど。なんてことを考えながらウロウロしていた。
すると……
「………ねえ。」
後ろから突然声を掛けられた。
「はい?なんでしょう……………ふぉっ!」
振り向いて顔を見た瞬間…………僕の視界に、美しい顔が飛び込んできた。
「ねえ、もしかして、お昼ごはんで迷ってたりする?」
「ああ、はい。そうれす。」
おっと、衝撃のあまりに噛んでしまった。美しい人だ。例えるならば、砂漠の中に咲く一輪の小さい花………
「ちょっと、人の話聞いてるの?」
「ああ、はい! すみません……」
僕は緩む顔をこらえながら、謝る。
「もしよかったら、私と来ない?」
「もっちr………………はっ!?」
あぶねぇ。もう少しで、色気によって自分の理性が吹き飛ぶとこだった。
例え相手が女性だろうと、ここは外国。油断するわけにはいかない。
頬を両手で叩き、気合いを入れ直す。
「…………あんた、何者だ?」
思い切りその女性をにらむ。すると、まいったと両手をあげた。
「私のスキル、〈魅力〉に引っ掛からないとは。さすが大陸指折りの名君ね。」
「君、僕の正体を知ってるの?」
「正体って?」
あくまでもシラを切るつもりか。正体を吐かせたという証拠がなければ、本人の自爆ということで片付けられる。そんなことを考えるのは、タールランドの大臣か、ズール帝国の軍人や大臣だけなのだが。
「結局、あんたは誰なんだ?」
と、ここに走ってくる影を見つける。あれは…
「タイト様ぁ!!」
「しっ!声がでかいよ、バレるだろっ!」
ズール帝国外務大臣のサガミ。今回僕のことを呼び出し、計画を立てた張本人だ。
「うちの娘が失礼しましたっ。あれ程来るなと伝えたのですが、聞きませんで…」
「いや、いいよ。サガミの娘だったのか。道理で僕の正体を知ってるわけだ。」
「お父さん! 折角私が外国からの侵入者を捕まえたのに、横取りしないでよ!!」
「し、侵入者って……」
なかなかとんでもない性格のようだ。まあ、ある意味言ってることに間違いはないけどね。
「城の中に来た行商が私のところに来まして、タイト殿が一日早く到着して待ってるから、迎えに行ってやれと……そして、今に至ります。」
どうやら、行商のおじさんが伝えてくれたみたいだ。そうか、ズール帝国に売りに行くと言っていたが、王族と取引してるのか。だから、僕の正体も一発で見抜いたってわけだね。
「とにかく、こんなとこじゃなんですから。どこかお店を探して入りましょう。タイト殿も、お腹が空いているでしょう。さあ、どうぞ。」
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