弱輩者の第三王子~僕なんかに執政できるんですかね。~

拙糸

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第三章 騎士学校、留学(?)編

第6話 決意(?)

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「アイヤー、餃子お待たせヨ!」

随分と陽気な店員だなぁ。この辺だと聞かない言葉を話すので、多分違う大陸から来たのだろう。運んできた料理からは、なんとも香ばしい匂いが漂っていた。
サガミに連れられ入ったこの店は、“ラッキー中華”というらしい。僕はこれまで中華というジャンルの料理を聞いたことはあったが、食べたことはなかったので、凄い楽しみだ。帝国騎士学校に通う生徒も御用達のお店らしいが…
引戸を開け、店へと入る。

ガラガラ…

「こんにちはー。」

サガミが、店の奥に声をかける。うーん、なんとも異国情緒溢れる内装だ。ここまで派手な飲食店は見たことがないな。
すると、この店のオーナーらしいおばさんが奥から出て来て、僕たちに話しかけてきた。

「あら、サガミさんじゃないの。それに…………こちらは?」
「私の友人ですよ。」
「友人って………………」
「まぁ、いいじゃないですか♪」
「さあさ、とにかく奥の座席へどうぞ。」

と、言われるがままに奥の個室席に座った。
ちなみに、手前の席はというと、たくさんの学生達で賑わっていた。そういうこともあって、おばさんは奥の席に通してくれたのだろう。
背中に抱える荷物を置き、椅子に座る。ほう、背もたれがこれまた見たことがない形をしているなぁ。しかも、テーブルは回転するし。
僕がよく知らないのを察したのか、サガミも僕に聞いてきた。

「タイト様は、このようなスタイルのレストランは初めてですか?」
「うん。タールランドにはないスタイルだけど、これって…」
「ええ、元々は他の大陸で発達したスタイルです。大皿を回転テーブルの上に置いて、それを回して自分の欲しいものをこの取り皿に取って、箸でいただくんです。」

これが箸かな? こんな木の棒二本だけで、物を掴めるのだろうか。
なんでもいいが、これも後で使い方を聞かないとな。

「さあさ、とにかくまずは食べましょう!」
「そうだね……。でも、僕の知らない料理ばっかだから、代わりに頼んでもらってもいい?」
「わかりました。私のオススメ、いっぱい頼みますからね、たくさん食べてくださいね♪」

一体どれだけ頼むつもりなんだ…
腹一杯になって、話ができない状態にならなきゃいいが…



てなわけで、どんどん料理が運ばれてくる。おお、随分と美味しそうなのばっかだなぁ。

「サガミさん、この竹の容器に入ってるもっちりしたやつは?」
「これらは合わせて点心と言います。今手に持ってるのは、小籠包ショウロンポウですね。こっちの大きめのやつに入っているのが、焼売シュウマイです。」
「へえ…。」

聞いたことない料理ばっかだ。最初は食べられるかどうか心配だったけど、全部食べられそうなので良かった。

「僕、異国情緒溢れる民族料理だったら、どうしようかと思ってたよ…笑」
「一体何を想像されていたんですか……さぁ、料理が冷めますから、食べましょう!」

結局、僕はこの箸の使い方がわからなかったので、おばさんに頼んでフォークとスプーンを持ってきてもらった。やっぱり、慣れてるものの方が使いやすいよね。
てなわけで、まずは小籠包ショウロンポウを一口。

「あっつ!!」
「あ、気をつけてくださいね! 噛むと熱々のスープが出てきますよ!」

ふぅー、ビックリした。口の中でハフハフしながら冷めるのを待つ。
うーん、なんとも素晴らしい味わいだなぁ。この熱々スープが、元々美味しい小籠包ショウロンポウの美味しさを、最大限に引き出しているんだろうな……
なんて舌鼓をうちながら、食べ進める。最初は多いと思ってたけど、こうやって食べ進めてみると、なんとなく丁度良い気がしてきた。

「美味しいですね、中華料理。」
「でしょう、これでいて、値段も結構お手頃なんですよ。」
「そりゃ学生さんが沢山くるわけだ。」

学校に通い始めたらまた来よう。
………はっ、危ない危ない。本題に入るのをすっかり忘れてた。このままだったら、ただご飯を食べて帰るとこだった。

「サガミさん、そろそろ本題に入りましょう。」
「そうですね。」

テーブルの上を片付けて、サガミは内ポケットから出した書類を机の上に広げた。

「これは、この前学校から手に入れた、極秘文書です。」

その1つに手を取り、文書を開く。これは…

「内容は、裏金振り込み依頼です。差出人は、学校長。宛先は…」
「ジョンネル・クレオスか。」

僕のもとに届いた手紙に書かれていた名前。ズール帝国議会でトップを務めるこの大臣が、学校側と癒着し、優秀な卒業生を優先的に自分の軍に入れているらしいのだが…

「思ったんだけどさ、ただ自分の軍を強くするためなら、別に大きな問題じゃないんじゃない?どうせ国を守るためにそういうことしてるんだからさ。」

私軍といえども、ただ自分の分隊の戦力バランスが向上するだけで、結局はズール帝国の国力の増強に繋がるから、そんなに大問題になるはずがない。それなのに、サガミはどうして他のメンバーに黙って内密な調査を行っているんだろう。

「そうです。確かに、私軍の目的が身辺保護で、それがズール帝国全体の利益に結局繋がるようなものであれば、我々もここまではやりません。でも、もしこの私軍が他の勢力のために作られたものなら、どうでしょうか?」

議会トップであるとは言え、ズール帝国の一大臣がそこまで義理立てするような勢力が、近隣諸国にあるだろうか。色々考えてみる。やっぱり思い当たらない。もしかしたら、その勢力は国ではないのか………………

「………………まさかっ!?」
「ええ。この私軍は、テロ組織〈ムーン〉のために作られたものだと思います。」

なんてことだ。サガミが懸念していた、議会への権力侵入が現実になってしまった。これはまずいぞ。もしかしたら、帝国議会内のメンバーの大部分が、〈ムーン〉と通じあっているかもしれない。

「だから、迂闊に他の大臣に連絡が取れなかったんだね。」
「ええ。外国に助けを求めようとも、大々的にはできません。もしかしたら、助けを求めた先にも、勢力が進出している可能性があったからです。信用がある人にしか、この件をお話することはできません。ですから、以前〈ムーン〉のタールランド拠点制圧の際に協力していただいた、タイト様、あなたに手紙を送ったのです。どうか、我々に協力してください。」

〈ムーン〉の指導者、カルメン・タールは、僕のおじだ。これ以上身内の恥を晒すわけにはいかないし、止めなければならない。父の敵を討つためにもだ。絶対に、勢力を討伐しなくては…

「分かりました。我々タールランドは、ズール帝国に協力します。」
「あ、ありがとうございます!」

サガミは、肩を震わせて喜んでいた。

「……で、確か今回は学校に直接侵入するんだったよね?」
「はい。私の方から圧力をかけることもできますが、それをすると、ジョンネルに勘づかれてしまう可能性がありました。ですので、今回は裏口ではなく、正面から挑んでもらうことになります。」
「うん、分かっ………………………」

ん?正面から挑む?

「待って、もしかして…………………」
「はい、後期入学試験を受けてもらうことになります♪」

それって、受験勉強するしかないってことだよね………う、うう………

「……ん?どうされました?」
「…………いやああああああああああああああああ!!!!」

僕の嫌いな単語の1つ、テストが頭をぐるぐると駆け回っているのだった。
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