弱輩者の第三王子~僕なんかに執政できるんですかね。~

拙糸

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第三章 騎士学校、留学(?)編

第17話 波乱の魔法実習

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空中に、綺麗な氷の結晶ができる。周りのクラスメイト達も、すっかり見とれてしまっている。

「……と、まあこんなものよ。」

シーナが杖の先を下ろす。その瞬間、拍手が沸き起こった。

「やっぱりスゲーなシーナ先生は。」
「そうだよね、二属性も魔法を操っちゃうんだもんね…。」

ボソボソと、話す生徒たちもいた。そう、何を隠そう、シーナは、大陸で数千人に一人しかいないと言われている、二属性使いダブルユーザーなのである。大半の生徒は、入学時には一つの属性しか扱えないので、ダブルユーザーはみんなの憧れの的になる、というわけだ。
ちなみに、今は魔法実習の時間だ。これまで習ってきた、身体強化魔法や初級魔法を、みんなの前で披露する。そしてそれを一クラスにつき二人の教官が、評価するというものだ。ちなみに、教官の一人はシーナで、後のもう一人はというと…

「お前ら、しっかりと実習に励め。もしできぬという者がいれば、即刻退学してもらう。」

ジョンネル・クレオス教官の一言に、周りに緊張がはしる。失敗することはできない。いや、許されない。

「ちなみに、今回の成績優秀者は、の可能性もある。よって、初級魔法とはいわずに、今自分が使役できる一番質が良いと思う魔法を、打ち込んでほしい。もちろん、質が良ければ、身体強化魔法でも構わんよ。ただし、騎士道精神に乗っ取ってだぞ。」

…ざわざわ。
「マジかよ、俺たちにもできるかもしれねえぞ!?」
「身体強化魔法でも飛び級できるなんて、聞いたことないわ!」

みんな、自信がみなぎっている。よし、僕も頑張らなきゃ……。
パンッと、頬を両手で叩く。僕も、飛び級を目指さなければ。僕の留学期間は、たったの二週間。二週間といえども、留学するために、一般生徒と同じように、試験を受けなくてはならなかった。帝国最難関の試験を突破して、今僕はここにいる。自分の力を把握し、更にそれを強くしていくために。

「それでは、始めようじゃないか。まずは……アーガラン!」
「はいっ!」

最初は、女子生徒のようだ。周りの生徒たちの視線が、彼女に集まる。

「精霊たちよ。森の生命…………」

どうやら、身体強化魔法らしい。さあ、どこまでいくのだろう。

「“防御強化モアプロテクト”!!」

そして、周辺が綺麗に光る。すごい、なんだあの厚みのある壁は!?

「……すごいわね、まさか魔導師レベルの“防御強化モアプロテクト”を使うなんて。」

シーナも感動している。一方、ジョンネルはというと…

「……………………………」

ただ黙って成績表を書いていた。むぅ、これでも満足しないのか。魔法のランクで言えば、Aレベルだというのに。

「次、いくわよ。」



「――次、タガル!」

おっと、僕の名前が呼ばれたようだ。さあ、僕の実力を見せてやろうじゃないか。
と、心配そうにジョンネルが聞いてきた。

「貴様、今日は根元魔法を使役できるのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。僕の場合、体調とかで成功率が変わるわけじゃなさそうなので。」
「そうか、ならいいが。」

どうやら、僕はかなりひ弱に見えるらしい。こうなったら…超強力な身体強化魔法を披露するしかないね。

「………“神の幸運ゴッズラック”!」

僕の周りを、神聖な光が取り囲む。そして、それを見た観衆は唖然とする。
ジョンネルも、鉛筆を落として驚いていた。

「ま、まさかそれって……光魔法の上位互換、聖魔法か?」
「はい。そうです。」

ざわざわ…
「まさか、呪文なしで使役するなんて…。」

どうやら、かなり衝撃的だったらしい。ちょっとやりすぎたかな?
でも、僕としてはかなりの手応えアリだと思うんだけどな…。

「聖魔法を無詠唱で使役するなんて、常人じゃないわよ。」
「そ、そうかな?」

リリーは驚きを通り越して、引いている。

「――よし、良いだろう。次、アレク!」

ざっと前に出てくる。あ、この前授業を妨害したヤンキーか。あまり良くない噂が絶えないようだが、その実力は……。

「………聞け! 天上の神々よ! 我に似合う熱き力をこの体に……」

火属性魔法か? いや、違うな。あれは……まさかっ!

「“全体防御オールプロテクト!”」

咄嗟の判断で、僕は周りを防御魔法で囲った。

「タ、タガル!? いったい何が起きるの!?」

リリーが、心配そうにこちらを見る。周りの生徒たちも、上空に発生している巨大な炎の渦を見て、パニックを起こしかけている。

「あれは、極大魔法だ。」
「えっ!?」

リリーの驚いたその時、

「極大魔法:“豪炎弾ファイアクラッシャー”!!」

シューンという音とともに、遠くへとそれが放たれる。そして、次の瞬間、

ゴォォォォォ…………ズーン

とんでもない低音が、振動とともに辺りを包む。そして、炎の欠片が頭上に降ってきた。正に、火の雨だ。防御魔法を張っておいて良かった…。

「見て! 街道の森が消滅してるわ!!」

ある生徒が、そう叫ぶ。それを聞き、みんな走って展望台に向かう。

「……あの、広大な森を一瞬で…。」

あのジョンネルが、驚いていた。

「こ、これは…凄いとしか……。」

シーナも、驚きで体を震わせていた。
生徒達も、唖然としている。ただ、アレクだけは平然としていた。

「ふっ……これで、飛び級確定だな。」
「残念だが、アレク。貴様は退学だ。」

ジョンネルがそう告げる。

「何故だっ!? 俺は今一番強い魔法を使役したんだぞ!?」

アレクは、猛反論する。そりゃあそうだ。極大魔法を使役できる者は、ダブルユーザーよりも限られてくるからね。

「貴様は、騎士道精神に欠けるようだな、アレク。森をいたわるという心が貴様にはないのか? それに周りを巻き込んでまで極大魔法を使役するとは、お前はどういう教育を今まで受けてきたのだ?」
「ちっ…だ、だがな、俺は許可をもらって使役したんだ。」
「一体誰の許可をもらったというのだ!? そんな危険を許す教官など、この学校にはいないぞ?」
「本当にもらったんだ。そう、シ(バチチッ!)…………んぐわぁっ!?」

名前を言おうとした瞬間、アレクに衝撃がはしった。

「おい、どうした!?」

教官達は、みなすぐに駆け寄る。生徒達は、パニックを起こしていた。
アレクの意識は、飛びかけていた。

「わ、分から……ない……………なぜ………名前が……………………………」
「おい、しっかりしろ!!」
「みんな、どいて!」

僕はアレクの前に立った。

「先生、これは呪いの類いです。すぐにホスロを呼んできてください。」
「分かりました。行きましょう!」

養護担当の先生が、ホスロを呼びに行った。
リリーも、僕の近くに来る。

「ねぇ、タガル。これってまさか……。」
「うん。闇魔法だよ。」
「なに? 闇魔法だと?」
「はい、ジョンネル先生。この額に刻まれた魔法痕は、間違いなく闇の紋章です。」
「そうか…。ならば、俺も部屋からアレを取ってくるか。」

ジョンネルも、走って自室へと戻っていく。それと入れ違いに、ホスロが走ってきた。

「タイ…タガル、一体これは何が起こったのですかな!? 突然光ったと思ったら………ん? その紋様……まさかこれは…?」
「ああ。間違いない。奴らが動き出したんだ。そして、敵の正体を知るアレクの口封じをしたんだ。」

魔法の使役は、必ず術者の痕が残る。つまり、リスクが伴うのだ。ところが、それを省みずに魔法を使役した。おそらく、相当な自信があるのだろう。

「とにかくホスロ、今日の試験は中止しないと…。」
「そうですな。シーナ先生!」
「ええ。皆さん、今日の試験は中止とし、続きはまた別日に行います! とにかく、今日は部屋に戻ってください!」

〈ムーン〉がついに動き出した。なんとしてでも、奴をとっちめなければならない。

「もう待てない。これ以上、犠牲を出すわけにはいかない…。ホスロ、大講堂に生徒と教官全員を呼び出してくれ。」
「分かりました。“タイト”様のお名前を使用してもよろしいですかな?」
「当たり前だ。もう僕は………我慢の限界だ!」

証拠は全て揃った。あとは皆を集める口実を待つつもりだったが、まさか相手から尻尾を出してくれるとはね。絶対に逃がさないぞ。
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