弱輩者の第三王子~僕なんかに執政できるんですかね。~

拙糸

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第四章 波乱の内政・外交編

第13話 仲間と、友と

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あれから数十分経ち、作戦開始時刻である9:00になった。僕は、ホスロやマクドル兄さん、それと大臣たちとともに一度城へと戻り、来るべき時に備えて、色々な対策を練っていた。

「………では、ここに兵を配置するのはどうでしょうか?」
「いや、そこだと見つかってしまうかもしれない。本当に少人数でいいから。それに範囲も狭くしなきゃ………ね。」
「タイト、さっきから何をホスロと話してるの?」

兄さんが、怪訝な顔をしてこっちを見てくる。大臣たちは、皆この後戦争に勝ったあと、民衆にどう知らせたりするかなどを徹底的に話し合っているのにも関わらず、僕らだけで全く関係のない布陣の話をしているから、怪しいと思ったのだろう。

「ああ、いや。ちょっと、布陣の話を………。」
「でも、戦争に関することはジーク兄さんに任せっきりなんじゃないの?」
「うん。確かに、これくらいの規模であれば、僕らの手助けなんて必要ないかもしれないね。」



「おせ! 盾を前に掲げ、全力で押しきるのだ!!」

小隊長が、前線の兵士へと告げる。その後ろに可動式の柵を置き、その間から弓矢で狙う。帝国の戦法の一つ、“影打”というらしい。スムジア兵は鋼鉄の鎧で身を固めているが、柵のおかげで安全に弓矢を射ることができるので、そんな鎧さえ貫くことができるのだ。ちなみに、前に盾を掲げている兵士は、死ににいくために配備されているわけではない。彼らは、スムジアの兵士よりも上等な鎧を着ている。

「ふふふ、僕らの商会の商品がこんな風に役立つなんてねー。後で『スムジア兵を一掃した!』っていう広告が貼れるねー。」

という訳で、カインが帝国から仕入れた高級な武器や鎧を貸してくれたのと、この戦法のおかげで、チャールート金山付近に滞留していた、スムジア兵を一掃。戦いの場を、付近のマルタナ高原へと移した。ちなみに、ジーク兄さんは勝ちの報告が沢山上がってきても、一つも喜びもしないで、作戦を練り続ける。兄さんは、一切妥協をしない人だ。外ではちゃらんぽらんしてるように見えるかもしれないが、立派な志を持っている人だと僕は思う。という訳で、だんだんとスムジア兵を追い込み、高原のスムジア方へとどんどん押していく。一部の人々は、恐怖のあまり逃げ出していた。勝敗は、明白だった。



スムジア王国軍、本拠地。皆、あわてふためきながら、どんどん入ってくる戦敗の報告を聞いている。一部の小隊長は戦場から逃げ出しており、もう戦線は崩壊寸前だった。将軍ハーレインは、真っ青な顔をして地面を見つめ、頭を抱えていた。彼のプライドは、ズタズタに引き裂かれていた。

「なぜだ……………なぜ私が、あいつらのような能無しに負けるしかないのだっ……………私は、あいつらよりも経験を積んでいるし、それに我々の方が積んでいる戦果も歴史もある。それなのに、なぜ私が……………。」
「…………まだ分からんのか、ハーレイン。」
「っ!!?? きっ貴様、どうやってここにっ!!? 衛兵はどうしたっ!!……………あっ……………。」

本拠地で作戦を練っていた兵士、周りを固めていた兵士、軍幹部は、皆タールランド軍に拘束されていた。

「なぜ、なぜたっ………! どうやってここまでっ………!?」
「お前が一番よく分かっているはずだぞ。まさか俺たちの本拠地に諜報兵を忍ばせて、作戦を盗み聞きするとは恐れ入ったな。」

縄でグルグル巻きにした諜報兵を、ハーレインの前へと投げる。

「あっ………………。」
「殺されるか、素直に自白して国に帰るか、どっちがいいと聞いたら、すぐに吐いてくれてな。おまけに本拠地への道しるべまで記してくれてな。こっちとしては手間が省けて助かったんだが、大層な歴史や戦果を背負っている割には、ずいぶんと軽いお口のようだな。」

ジークが、剣先をハーレインへと向ける。

「確かに、お前の言うとおりだ。俺たちタールランド王国は最近できたばかりの新興勢力。歴史もないし、地位もない。おまけにお金も全然ない。それに、その国を率いるリーダーも、まだ12歳の『弱輩者』だ。だがな、あいつはお前らの思っている数倍、数十倍も強い。俺なんかよりもだ。あいつは、死んだ父を報いるために、国の民が豊かに暮らせるように、そして皆が平和で過ごせるように、今日も前に立つ。例え目の前にあるのが、断崖絶壁であろうとだ。そんなあいつを、バカにしないでもらいたい。出来は悪いが、俺の可愛い弟なんでな。お前らの主よりも、よっぽど見所のあるヤツだと思うぜ。」

ハーレインの前に、書類を投げる。

「なんだ、これは…………。」
「お前らの主は随分な人でなしだな。お前らを巻き込んで、魔法で爆発させ、俺らを一網打尽にしようという随分な計画があったみたいだ。俺もタイトからついさっき送られてきて、初めて知ったんだがな………。」
「…………………………。」
「それに、俺たちはお前らを殺す気は更々ない。」
「…………どういう意味だ?」
「そのまんまさ。俺たちの目当ては金山なんかじゃないし、お前らを殺したところで何の意味もない。それに、タイトから『絶対に人を殺してはならない』と言われているからな。あいつもあまちゃんだよ。」

そう言いつつ、剣を鞘に納める。

「命があること、ありがたく思えっ!!」

ジークが怒鳴ると、ハーレインは目を瞑り、こう言った。 

「……我々は、敵を270度見誤っていたようだ。タールランドは弱小王国などではない。非常に申し訳なかった。」

腕を拘束されたまま、ハーレインは片ひざをつき、最大限の礼をジークに取る。

「あなた方がお察しの通り、今の我らが主はカーギス殿下などではなく、突然新興勢力として議会に加入してきた、宰相アリウス殿だ。資金を潤沢に用意するから、味方につかないかと言われたんだ。結果として、我々の資金は当時不足しており、それに頼らざるを得なかったのだ……。」

と言うと、目を伏せた。

「言うことは何もない。煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」
「そうか…………なら、自由にさせてもらうぞ。」

といい、ジークはにやっと笑った。



「そうですか、ハーレインの部隊が…………。」

スムジア宰相アリウス・クルヘイムは、報告を受けて天を仰ぐ。

「もう少し使える男かと思いましたが………残念です。」

マントを翻し、扉へと向かう。

「やむを得ません。最後の手段です。」
「しかし、アリウス殿。あれにタイトがのってくるでしょうか……。」
「大丈夫です。賢いからこそ、必ず我々の誘いに応えてくれると思いますよ。」
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