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夢じゃなかった編
14.あの時助けてもらった(4)
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「あなたがかつて、私に命を分けてくれたの。あのね、ジーク。ずっと、秘密にしていたんだけど……、昔、こうやってあなたに命を救ってもらった、夢魔の半魔は、私です……」
ジークの目が見開かれる。
「君が、あの、ヘルトルディス……? あ、だ、だから、ルディ?」
愕然としたジークの声は震えていた。
「名前、覚えててくれたんですね……。あの時は、本当に、ありがとうございました」
命の恩人に、ルディは改めて深々と頭を下げた。
がばりと起き上がったジークは、ルディの肩に手を添えて頭を上げさせる。
「いや、かしこまらないでくれ。でもどうして秘密にしていたんだ。せっかく旅の仲間にまで加わってくれたのに」
素性を明かしたからには、それも尋ねられる覚悟はしていた。
しかしやはり恥ずかしくて、ルディは先ほどまで肌を重ねておきながら、今更消えそうな声で理由を語りだす。
「その……、あなたのこと、好きになってしまって……。あんな風に優しくしてもらったの、初めてだったから……」
母は優しかったが憐れみの眼差しをルディへ向け、故郷の村人たちは嫌悪と侮蔑を向けた。半魔はそういうものだった。
だがジークは、村人たちの非道に怒りをあらわにし、ルディを助けるために危険を冒し、命を分けてくれた。
初恋の人だった。
「だから一緒に居たくて、魔王討伐の仲間に入れてもらえるように、強くなって、近寄ったの……。でも、半魔の私が、勇者のあなたのことが好きで追いかけてきたなんて言ったら、困らせると思って、丁度髪の色は変わったし、角も伸びたし、気付かないだろうから、別人として振舞えばいいかなって……」
当時のルディは栗色の髪で角は短かったが、再度の成長期を迎えて、髪は銀色に変わって角も伸びた。顔立ちも大人びて、想定通りジークは欠片も気付いていなかった。
ジークはルディの両手を包み込んで、深い藍色の瞳をしっかりと合わせた。
「困りやしない。どう表現していいかわからないぐらい、嬉しいよ。俺も、君のことが好きだった。旅が終わったら、本当に結婚してほしいと頼むつもりだった」
真剣な表情に、ルディの心臓は口からまろび出てくるのではないかというほど高鳴った。
前回結婚しようと言われた時は、自身の夢の中のジークが吐いた言葉だと思って、相手にしていなかった。彼の夢だと気付いた後も、性交の雰囲気づくりの睦言程度の認識だった。
だが、あれは本気の言葉だったのだ。
「あ、う、あ……」
長らく恋焦がれていた相手に、好意を伝えられて、ルディは混乱状態に陥っていた。まともに話せない。
今朝は、夢の中で性的に好き勝手にされたと気付いたが、好意と性欲は別という話を聞いたことがあったので、単に身近な性欲を感じる相手でしかなく、まさか好かれているとまでは思っていなかった。心の準備ができていない。
「本当にルディなんだな……。え? ということは、昨日のあれも、俺の夢の中の君ではなくて、現実の君、ということか?」
まだ何も言えないルディに対し、ジークは彼女が夢ではなく本人と知って、後から大変なことに気付き始めてしまっていた。
ジークの目が見開かれる。
「君が、あの、ヘルトルディス……? あ、だ、だから、ルディ?」
愕然としたジークの声は震えていた。
「名前、覚えててくれたんですね……。あの時は、本当に、ありがとうございました」
命の恩人に、ルディは改めて深々と頭を下げた。
がばりと起き上がったジークは、ルディの肩に手を添えて頭を上げさせる。
「いや、かしこまらないでくれ。でもどうして秘密にしていたんだ。せっかく旅の仲間にまで加わってくれたのに」
素性を明かしたからには、それも尋ねられる覚悟はしていた。
しかしやはり恥ずかしくて、ルディは先ほどまで肌を重ねておきながら、今更消えそうな声で理由を語りだす。
「その……、あなたのこと、好きになってしまって……。あんな風に優しくしてもらったの、初めてだったから……」
母は優しかったが憐れみの眼差しをルディへ向け、故郷の村人たちは嫌悪と侮蔑を向けた。半魔はそういうものだった。
だがジークは、村人たちの非道に怒りをあらわにし、ルディを助けるために危険を冒し、命を分けてくれた。
初恋の人だった。
「だから一緒に居たくて、魔王討伐の仲間に入れてもらえるように、強くなって、近寄ったの……。でも、半魔の私が、勇者のあなたのことが好きで追いかけてきたなんて言ったら、困らせると思って、丁度髪の色は変わったし、角も伸びたし、気付かないだろうから、別人として振舞えばいいかなって……」
当時のルディは栗色の髪で角は短かったが、再度の成長期を迎えて、髪は銀色に変わって角も伸びた。顔立ちも大人びて、想定通りジークは欠片も気付いていなかった。
ジークはルディの両手を包み込んで、深い藍色の瞳をしっかりと合わせた。
「困りやしない。どう表現していいかわからないぐらい、嬉しいよ。俺も、君のことが好きだった。旅が終わったら、本当に結婚してほしいと頼むつもりだった」
真剣な表情に、ルディの心臓は口からまろび出てくるのではないかというほど高鳴った。
前回結婚しようと言われた時は、自身の夢の中のジークが吐いた言葉だと思って、相手にしていなかった。彼の夢だと気付いた後も、性交の雰囲気づくりの睦言程度の認識だった。
だが、あれは本気の言葉だったのだ。
「あ、う、あ……」
長らく恋焦がれていた相手に、好意を伝えられて、ルディは混乱状態に陥っていた。まともに話せない。
今朝は、夢の中で性的に好き勝手にされたと気付いたが、好意と性欲は別という話を聞いたことがあったので、単に身近な性欲を感じる相手でしかなく、まさか好かれているとまでは思っていなかった。心の準備ができていない。
「本当にルディなんだな……。え? ということは、昨日のあれも、俺の夢の中の君ではなくて、現実の君、ということか?」
まだ何も言えないルディに対し、ジークは彼女が夢ではなく本人と知って、後から大変なことに気付き始めてしまっていた。
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