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夢じゃなかった編
19.作戦(2)
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また眠り始めたドラゴンを眺めつつ、ルディは今後どうするか考えた。
ドラゴンの体をジーク一人のものにするため、ドラゴンの魂だけを破壊しなくてはならない。
魂のみを攻撃する方法として現状取りうるのは、ルディの夢魔の能力を使って、ドラゴンの夢へ侵入し、夢の中にいる魂を破壊することである。
しかし夢の中のドラゴンは五体満足の可能性が高く、ルディ一人で倒せる相手ではない。
そんな無茶をさせないために、ジークはルディが眠っている間自分の夢へ呼び寄せて捕まえておこうとするだろう。かつて彼から生命力を分けてもらい魂につながりができてしまったばかりに、ルディに抵抗するすべはない。
このままではジークはドラゴンと共に心中するつもりだ。それはルディにとって到底受け入れられることではない。
ルディに残された道は、ジークを説得することである。そして十分な勝算のあるドラゴンの倒し方を提案しなくては、ジークは応じないだろう。まさか彼が障害になるとは思ってもみなかったが。
(何か方法を考えないと。……でもドラゴンの夢への侵入は叶いそう)
先ほどの会話の様子から、ドラゴンは命の残り時間の少なさに焦っているようだった。
焦りには付け入る隙がある。
ルディがドラゴンを夢の中で倒すにあたり、そもそもドラゴンの夢へ入れないという第一関門が存在したが、上手く誘導すればルディを夢へ招かせることができるかもしれない。
(侵入出来たら、次はドラゴンを倒さないと……。私が強くなる方法、ドラゴンを弱くする方法、何か……)
不意に、昨晩の夢での事が頭をよぎる。
『俺も戦えたらいいんだが、ドラゴンの夢か……』
『夢が繋がってる……?』
(夢が繋がる……。ジークと一緒にドラゴンの夢で戦えたら……?)
ルディは、突拍子もない作戦をひらめいていた。
◆
その夜、ルディは眠りについて、無駄と思いつつひとまず夢の中に籠城した。
しかし案の定、体を引っ張られる感覚がして、夢の空間がゆがみ始める。
昨晩のように空の半分が夜になり、後方の先ほどまでいた夢はそのままで、前方へジークの野営の夢が広がっていった。
「やあ、ルディ」
焚火の前に座っていたジークが振り返り、片手を上げた。
あと八日で死ぬと焦るドラゴンに対し、全て諦めているのかジークは穏やかなものだ。
「今日はいやらしいことするの禁止」
「君が目の前にいるのに、確約できないな」
ルディはジークの隣に腰をおろし、忍び寄る手を睨みつけて止めさせた。
「ゆっくり、話、しよう」
「……わかった」
落ち着いて話をしたがっているルディの気持ちが伝わったのか、ジークは手を引っ込めて膝の上で指を組んだ。
性的なことをしたがるのは、現実逃避の意図が含まれているのかもしれない。
ドラゴンの体をジーク一人のものにするため、ドラゴンの魂だけを破壊しなくてはならない。
魂のみを攻撃する方法として現状取りうるのは、ルディの夢魔の能力を使って、ドラゴンの夢へ侵入し、夢の中にいる魂を破壊することである。
しかし夢の中のドラゴンは五体満足の可能性が高く、ルディ一人で倒せる相手ではない。
そんな無茶をさせないために、ジークはルディが眠っている間自分の夢へ呼び寄せて捕まえておこうとするだろう。かつて彼から生命力を分けてもらい魂につながりができてしまったばかりに、ルディに抵抗するすべはない。
このままではジークはドラゴンと共に心中するつもりだ。それはルディにとって到底受け入れられることではない。
ルディに残された道は、ジークを説得することである。そして十分な勝算のあるドラゴンの倒し方を提案しなくては、ジークは応じないだろう。まさか彼が障害になるとは思ってもみなかったが。
(何か方法を考えないと。……でもドラゴンの夢への侵入は叶いそう)
先ほどの会話の様子から、ドラゴンは命の残り時間の少なさに焦っているようだった。
焦りには付け入る隙がある。
ルディがドラゴンを夢の中で倒すにあたり、そもそもドラゴンの夢へ入れないという第一関門が存在したが、上手く誘導すればルディを夢へ招かせることができるかもしれない。
(侵入出来たら、次はドラゴンを倒さないと……。私が強くなる方法、ドラゴンを弱くする方法、何か……)
不意に、昨晩の夢での事が頭をよぎる。
『俺も戦えたらいいんだが、ドラゴンの夢か……』
『夢が繋がってる……?』
(夢が繋がる……。ジークと一緒にドラゴンの夢で戦えたら……?)
ルディは、突拍子もない作戦をひらめいていた。
◆
その夜、ルディは眠りについて、無駄と思いつつひとまず夢の中に籠城した。
しかし案の定、体を引っ張られる感覚がして、夢の空間がゆがみ始める。
昨晩のように空の半分が夜になり、後方の先ほどまでいた夢はそのままで、前方へジークの野営の夢が広がっていった。
「やあ、ルディ」
焚火の前に座っていたジークが振り返り、片手を上げた。
あと八日で死ぬと焦るドラゴンに対し、全て諦めているのかジークは穏やかなものだ。
「今日はいやらしいことするの禁止」
「君が目の前にいるのに、確約できないな」
ルディはジークの隣に腰をおろし、忍び寄る手を睨みつけて止めさせた。
「ゆっくり、話、しよう」
「……わかった」
落ち着いて話をしたがっているルディの気持ちが伝わったのか、ジークは手を引っ込めて膝の上で指を組んだ。
性的なことをしたがるのは、現実逃避の意図が含まれているのかもしれない。
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