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中編
20.過去との対峙-2
しおりを挟む「まず目を閉じて、体は楽にする」
イリスはベンチの背もたれへ体を預け、瞼を閉じ、目の上に畳んだハンカチを置いた。手は体の前で組んで、ゆっくり呼吸をする。
「これから、あの時のことをなるべく詳しく思い出してくれ。今ここで起きているかのように、現在形で話すんだ。辛くても、中断してはいけない。いいか?」
「……わかりました」
「少し前から、あの場所へ着く前から、始めてくれ」
「同級生の、エレーンという子が、パーティへ一緒に行ってほしいと、頼んできました……」
イリスは、記憶を思い返し、そのまま口にし始めた。
エレーンとはほとんど話したことはなかった。彼女が不安そうにしていたため、普段なら二の足を踏む、知らない仲間内のパーティへの参加を承諾した。
「その時どう思った?」
「行きたくなかったです。でも不安そうな彼女が気の毒で、頷いてしまいました。同情なんてせずに、行かなければよかった……」
「その時感じたことを話すんだ。今振り返ってのことじゃない」
使われていないはずの、取り壊し予定の寮の一室。綺麗に片付いていて、飲食物がテーブルに並んでいる。同じか一つ上の学年の生徒たち。ソファで語り合っている。薄暗くて、妙にくっついて喋っている。
想像していたパーティと違う。誰かの誕生日パーティだと思っていた。
「少し、怖い」
「なぜそう思った?」
「……何か、変で。あ、お酒……。何人か、声が大きくて、身振りも大げさになってた。あれは、多分、お酒のせい……。酔い始めてる人がいたから、お酒とは思わなかったけど、変に感じて、怖かった……」
それは新しく思い出した事柄だった。
続いてエレーンは、入り口で立ち止まっていては迷惑になると、イリスを部屋の奥へぐいぐいと押しこんだ。
男子生徒が、女子生徒の肩へ腕をまわして、胸元を触っていた。見てはいけないものに思えて、イリスは目を逸らした。
エレーンは、イリスを部屋の奥のソファへ座らせる。
「そのテーブルには誰がいた」
「誰も、いない。私だけ。テーブルには、何もない……」
帰りたいと告げると、エレーンは何か飲んでからにするよう言いつけた。飲み物を別のテーブルから取ってきてくれるという彼女を待つ。
だがエレーンは取りに行った先のソファに座って、話し込み始めてしまう。
帰りたい。早く戻ってきてほしい。自分で行こうか、悩んだ。
「グラスを、差し出された。左側から……」
飲み物の入ったグラス。オレンジジュースだった。
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