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中編
23.赦罪-3
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「私があんなことをしなければ、グンナル先生も過ちを犯さずに済んだんだろうな……」
アルヴィドが何もしていなければ。
グンナルはイリスに偏見を持っていたため、あの場にいたことで罵りはしただろう。だが、酩酊している様子さえなければ、実際飲酒もしていないのだから、誤った処分を下すことはなかった。
そしてイリスに脅されてアルヴィドへの復讐へ加担することも、魔法契約で不利な状況に置かれることもなかった。
「先生にその話は?」
「したよ。あのことがなければ、今のルーヘシオンとは、教師も生徒も、顔ぶれが違っただろうと。自分の愚かさも見過ごしていただろうと。だが、君に取り返しのつかないことをする前に、自ら気付くべきだったと、仰っていた」
グンナルはアルヴィドを責めるような真似はしなかったらしい。
彼はイリスが口をつぐんだかつてのルーヘシオンを変えた。今もこの学校を、正しい方へ導こうと戦い続けている。何事もなければ、グンナルは自分を省みることなく、昔のルーヘシオンを良しとしただろう。
イリスは素直に幸いだったとはとても言えないが、あの出来事はグンナルに公正さをもたらした。
ルーヘシオンの変革は、グンナルの一つの償いなのだ。
「グンナル先生のことを、以前は昔と変わらず利己的な人だと思ってたわ。でも最近は、あの人なりに償いをしているのだと、わかってきた。過去のことは取り返しがつかないけれど、今のグンナル先生は許したい」
イリスは、アルヴィドへ伝えようと思っていたことを語り始めた。
「ただ、言葉で許すと伝えても意味はないのだと思う。言葉だけで許されたと自覚するには、重すぎる出来事だったから。先生が行動で示してきたように、私も、先生が許されていいと自ら悟るようにしなくてはならないわ」
許すという言葉を与えるのは簡単なことだ。
だが、言葉一つで本当に彼らの枷は外れるのだろうか。たったそれだけで、二人も未来のことを考えられた日々に戻れるのだろうか。
おそらく違う。
アルヴィドとグンナルが、安易な謝罪を口にせず、許しを得られるかもわからないその行動だけで償ってきたように、イリスも他の方法で許さなくては、彼らは心から許されたとは思えないだろう。
「そのためには、私が心の病を治して、もう前に進んでいると分かってもらう必要がある。そうすれば、先生はきっと、許されるはずよね?」
もう、アルヴィドを見ても、ほとんど昔のことを思い出さなくなっていた。
「だから、私はこの病気を必ず治す。自分のためだけではなく、みんなのためにも」
あえて明言しなかったが、グンナルのことだけを話しているのではない。
この許しの決意は、アルヴィドへも向けられている。
イリスは直接アルヴィドを許したいとは告げなかった。それでは彼に届かない。
だがアルヴィドが、グンナルだけでなく自らも許される希望があると、理解することを願った。
アルヴィドはイリスの前向きな強い意志を初めて見たからか、少し瞠目していた。
やがて、思い直したように、頷く。
「……ああ。必ず治そう。必ず……」
ぎこちなく笑ったアルヴィドのその顔は、どこか泣きそうに見えた。
アルヴィドが何もしていなければ。
グンナルはイリスに偏見を持っていたため、あの場にいたことで罵りはしただろう。だが、酩酊している様子さえなければ、実際飲酒もしていないのだから、誤った処分を下すことはなかった。
そしてイリスに脅されてアルヴィドへの復讐へ加担することも、魔法契約で不利な状況に置かれることもなかった。
「先生にその話は?」
「したよ。あのことがなければ、今のルーヘシオンとは、教師も生徒も、顔ぶれが違っただろうと。自分の愚かさも見過ごしていただろうと。だが、君に取り返しのつかないことをする前に、自ら気付くべきだったと、仰っていた」
グンナルはアルヴィドを責めるような真似はしなかったらしい。
彼はイリスが口をつぐんだかつてのルーヘシオンを変えた。今もこの学校を、正しい方へ導こうと戦い続けている。何事もなければ、グンナルは自分を省みることなく、昔のルーヘシオンを良しとしただろう。
イリスは素直に幸いだったとはとても言えないが、あの出来事はグンナルに公正さをもたらした。
ルーヘシオンの変革は、グンナルの一つの償いなのだ。
「グンナル先生のことを、以前は昔と変わらず利己的な人だと思ってたわ。でも最近は、あの人なりに償いをしているのだと、わかってきた。過去のことは取り返しがつかないけれど、今のグンナル先生は許したい」
イリスは、アルヴィドへ伝えようと思っていたことを語り始めた。
「ただ、言葉で許すと伝えても意味はないのだと思う。言葉だけで許されたと自覚するには、重すぎる出来事だったから。先生が行動で示してきたように、私も、先生が許されていいと自ら悟るようにしなくてはならないわ」
許すという言葉を与えるのは簡単なことだ。
だが、言葉一つで本当に彼らの枷は外れるのだろうか。たったそれだけで、二人も未来のことを考えられた日々に戻れるのだろうか。
おそらく違う。
アルヴィドとグンナルが、安易な謝罪を口にせず、許しを得られるかもわからないその行動だけで償ってきたように、イリスも他の方法で許さなくては、彼らは心から許されたとは思えないだろう。
「そのためには、私が心の病を治して、もう前に進んでいると分かってもらう必要がある。そうすれば、先生はきっと、許されるはずよね?」
もう、アルヴィドを見ても、ほとんど昔のことを思い出さなくなっていた。
「だから、私はこの病気を必ず治す。自分のためだけではなく、みんなのためにも」
あえて明言しなかったが、グンナルのことだけを話しているのではない。
この許しの決意は、アルヴィドへも向けられている。
イリスは直接アルヴィドを許したいとは告げなかった。それでは彼に届かない。
だがアルヴィドが、グンナルだけでなく自らも許される希望があると、理解することを願った。
アルヴィドはイリスの前向きな強い意志を初めて見たからか、少し瞠目していた。
やがて、思い直したように、頷く。
「……ああ。必ず治そう。必ず……」
ぎこちなく笑ったアルヴィドのその顔は、どこか泣きそうに見えた。
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