魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

文字の大きさ
24 / 200

四人目

しおりを挟む
「ん…ん~…あれ??ここは・・・」


目を覚ましたシャムロムは朦朧とした状態の中で見慣れない天井を目にしながらも、少しずつ状況を整理し始める。


「確か、ウチはパーティメンバーに入れてもらうために“ザグレスの森”を訪れて・・・魔王さんにテストを・・・。ハッ!?テスト!!」


大きな声と共にシャムロムは勢いよく飛び起きた。
スズネたちのパーティに加入するためにクロノによるテストを受けていたシャムロムであったが、最後の最後で気を失い、スズネたちによってホームに運び込まれたのだった。


「どうやら目を覚ましたようですよ」

「ホントだ。スズネ~、シャムロムさん起きたわよー」

「はーーーい」


ドタバタドタバタ ───── 。

ミリアの呼びかけに大きな返事で応えたスズネが急いだ様子で走ってきた。


「シャムロムさん、目を覚ましたんですね。どこか痛む所とかないですか?」

「スズネさん。はい、特に痛む箇所とかはないっす。ウチは頑丈さだけが取り柄っすから」


クロノによる怒涛の攻撃を受け続けたにも関わらず、右腕をグルグルと回しながらケロッとした表情で無事を告げるシャムロム。
当初より本人が言っていた通り、身体の頑丈さに関しては常人を遥かに超える強度を誇るようだ。


「良かった~。とりあえず、怪我とかなくて安心しました」

「ご心配をおかけしたっすね。そんなことより、テストは・・・」


シャムロムは心配そうな顔をしながら恐る恐るテストの結果について質問した。
しかし、その質問に対する答えがすぐに返ってくることはなかった。

部屋中を静寂が包み込む。
数秒の沈黙が続く中、スズネ・ミリア・ラーニャ・マクスウェルの四人は一人の人物へと視線を向ける。
その人物とは、もちろんクロノである。
そして、部屋中の視線を一身に集めたクロノが口を開く。


「はぁ~、お前らの仲間だろ。誰を仲間にするかくらいお前らで決めろよ」


クロノはスズネたちの方へと視線を返しながら呆れた表情を見せる。
そしてひと息吐いた後、シャムロムにテストの結果を告げる。


「シャムロムといったか、防御ばっかじゃなく攻撃もしっかり鍛えろよ。役に立たなきゃすぐに追い出すからな」


少し照れくさそうにしつつもそう告げたクロノは、バツが悪そうに部屋を出ていった。


「えっと…今のは、どういうことっすか?」


何が何やら分からず困惑するシャムロム。
スズネとミリアは顔を見合わせ、マクスウェルは口元を緩め、ラーニャはフンッとひと息吐くとクロノを追いかけていった。


「えっ?えっ?どうなったんすか?」

「何言ってんのよ。魔王様はダメって言わなかったでしょ」

「そういうこと!!これから宜しくお願いしますね、シャムロムさん」


スズネとミリアの言葉とその嬉しそうな表情から自身のパーティ加入が認められたことを察したシャムロムは、涙を流しながら喜びをあらわにする。


「やったっす~~~」


こうして、スズネたちは新たに四人目の仲間を迎え入れたのであった。



─────────────────────────


「それにしてもシャムロムさん凄かったよね。クロノの攻撃を全部防いじゃったんだから」

「いえいえ、ウチなんてまだまだっす。それから、ウチのことはシャムロムって呼び捨てで大丈夫っすよ」

「それじゃ、改めてよろしくね。シャムロム」

「はい。こちらこそっす」


無事にシャムロムをパーティに加えることができ、安堵の表情を見せるスズネたち。
先程まで繰り広げられていた激しい攻防から一転して穏やかな時間が流れる。


「ところでシャムロム、アンタいつまでその重そうな防具着てんのよ。動きづらいでしょ」


気を失った状態で運び込まれたため防具を着たままでいたシャムロム。
そして、何故か目を覚ました後も全身に纏った重装備を外そうとはしなかった。
ホームにいるにも関わらず、どこか身構えているようなシャムロムの様子に違和感を覚えたミリアが堪らず声を掛けたのであった。


「えっ…あっ…はい。でも、人様の家で寛ぎすぎるっていうのも ───── 」

「は?アンタ何いってんの。さっきアタシたちのパーティに加入したでしょ」

「はい。しました」

「ここはね、アタシたちパーティ全員のホームなのよ。今日からアンタもここに住むに決まってんでしょ」


呆れたように言い放つミリア。
シャムロムは予想だにしていなかった言葉に動揺を見せる。
そして、キョロキョロしながら他のメンバーへと視線を送る。
スズネとマクスウェルは笑顔で頷き、クロノは大きく溜め息を吐き、ラーニャは・・・静かに魔法書を読んでいる。


「本当にウチもここに住んでいいんすか?」

「シャムロムは私たちのパーティの一員だからね、当然だよ。部屋も余ってるから好きなのを選んでいいからね」

「ありがとうっす。ウチ、お役に立てるように頑張るっす!!」



─────────────────────────


「こ…こ…これは・・・。シャムロム、アンタなんて物を」


あまりの衝撃にミリアがプルプルと身震いしている。
目の前には防具を外し身軽になったシャムロムの姿が。
そしてミリアの衝撃の原因は、自身よりも背が低く小柄なシャムロムが持つ二つの大きな山にあった。


「シャムロム、アンタなんでアタシよりも小さいのに、こんな巨大なモノぶら下げてんのよ!!スズネと同等・・・いや、それ以上ね」

「なっ…なんすか。背が低いのはドワーフだからっすよ。それに、胸に関しては防具を着ける時に窮屈だから邪魔なだけっすよ」


これは持つ者と持たざる者による意見の相違である。
しかし、この場合においてこの発言は持たざる者への挑戦であり、火に油を注ぐことにもなる。


「この野郎~~~。いい度胸だ、表に出ろ~」


突如としてシャムロムに襲いかかろうとするミリア。
そんなミリアを宥めるように止めに入るスズネ。


「まぁまぁ落ち着いて。ミリアはスタイル良いんだからいいじゃない。シャムロムも怖がってるよ」

「スズネ~、アンタも持ってる側の人間なんだからね~」


今度はスズネに対して目を見開きながら悔しさを滲ませるミリア。
そんなミリアの頭を撫でながら笑顔で宥め続けるスズネ。
一方のシャムロムは、突然の出来事に驚き、へたり込んだ状態のまま怯えていた。


「ふん。どうせアタシは貧乳ですよ」


スズネに宥められ、一応のところ落ち着きを見せるミリアであったが、腕を組みながら不貞腐れているところを見るに、まだまだ引き摺っていそうである。


「こんなモノのどこに ───── 」

「ん?」

「ヒィッ!?なんでもないっす」


未だに理解出来ずにいるシャムロムであったが、ミリアによる強烈な威圧によって口を噤むのだった。



「ところで、シャムロムっていくつなの?」


正式にパーティへ加入したということで、スズネは改めてシャムロムの事を知ろうと質問した。


「ウチっすか。25っすよ」

「「えっ!?」」

「シャムロム、アンタってアタシたちより年上だったの?小さいし顔も幼い感じだったから、てっきり年下だと思ってたわ」

「私も驚いちゃった。でも、お姉さんが出来たみたいで嬉しいな」

「ドワーフはヒト族と比べると長生きっすからね。それで多少若く見えるんすよ」


スズネ    十六歳
ミリア    十六歳
クロノ    二十歳
ラーニャ   十歳
マクスウェル 十六歳
シャムロム  二十五歳


ここにきて、まさかの最年長者の加入であった。
その事実を前にして、シャムロムは少し気恥ずかしそうな表情を見せる。
そんなシャムロムに向けてジッと視線を向ける者がいた。

視線の主はラーニャである。
そして、その視線に気付いたシャムロムがラーニャに声を掛ける。


「ど…どうも、これから宜しくお願いするっす」


シャムロムの言葉に対し、ラーニャは目を細めてジーッと見つめながら一言だけ返す。


「足引っ張んなよ。巨乳ロリババア」


!?!?!? ───── 。

十歳の少女から浴びせられたキツい一言にショックを受けるシャムロム。


「巨乳ロリババア・・・巨乳ロリババア・・・巨乳ロリババア・・・」


あまりにも衝撃的な一言にシャムロムは放心状態となる。
しかし、元凶であるラーニャはというと ───── 言いたいことだけ言って、再び魔法書を読み進めていた。

そして、この状況を喜び楽しんでいる者が ───── 。


「フフフフフッ。ナイスよラーニャ、巨乳がショックで苦しんでるわ。アタシたちを敵に回した事を後悔するがいいわ」


とても嬉しそうなミリア。
彼女にとって巨乳とは親の敵か何かなのだろうか。
周囲が一歩後退りしそうになるくらいの勢いで喜んでいる。


「おい、勘違いするな。わっちはまだ十歳。既に成長が止まった貴様と一緒にするでないわ」


どうやらラーニャ的には自分とミリアでは状況が違い、同類にされることが気に入らなかったようだ。
そして、ラーニャはクロノへと視線を送る。


「わっちはまだまだ成長期じゃ。これから大きくなるゆえ心配は無用じゃぞ、旦那様」

「誰も心配なんかしてねぇ~よ。興味もないし、勝手なこと言ってんなよ」

「そうか、そうか。心配はしておらんのか~。期待して待っておるがよいぞ」


クロノの言葉は虚しくも届くことはなく、嬉しそうな顔をしてご機嫌なラーニャ。
そんなラーニャの様子に頭を抱えながら深い溜め息を吐くことしか出来ないクロノなのであった。


「お前らくだらない話はそのくらいにしておけ。さっきからそこの色ガキが顔を真っ赤にしてキョドってるぞ」

「なっ、ぼ…僕は別にキョドってなど ───── 」


 必死になって否定してはいるものの、どこからどう見ても顔を真っ赤に紅潮させているマクスウェルの姿がそこにあった。
その様子を目にしたスズネたちは一斉に大笑いし、ホームは穏やかな空気に包まれたのだった。

こうして、新たにシャムロムをメンバーに加えたスズネたち。
当初はかなり不安いっぱいの滑り出しだったメンバー集めも、なんだかんだと四人目まで集めることができた。
そして、そこにクロノとマクスウェルを含めると総勢六名となり、パーティはさらなる賑わいを増していくのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

ウォーキング・オブ・ザ・ヒーロー!ウォークゲーマーの僕は今日もゲーム(スキル)の為に異世界を歩く

まったりー
ファンタジー
主人公はウォークゲームを楽しむ高校生、ある時学校の教室で異世界召喚され、クラス全員が異世界に行ってしまいます。 国王様が魔王を倒してくれと頼んできてステータスを確認しますが、主人公はウォーク人という良く分からない職業で、スキルもウォークスキルと記され国王は分からず、いらないと判定します、何が出来るのかと聞かれた主人公は、ポイントで交換できるアイテムを出そうとしますが、交換しようとしたのがパンだった為、またまた要らないと言われてしまい、今度は城からも追い出されます。 主人公は気にせず、ウォークスキルをゲームと同列だと考え異世界で旅をします。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。

佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。 人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。 すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。 『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。 勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。 異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。 やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。

パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。 「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」 そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。 スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。 これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...