魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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宿り木

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シャムロムが加入したことにより、これまでパーティにいなかった前衛としてメンバーを守る大盾使いを得たスズネたち。
そんな状況も相まってシャムロムに興味津々な面々なのであった。


「それにしても大きな盾だね。ちょっと持ってみてもいい?」

「あっはい、いいっすよ」


シャムロムの許可を得たスズネが壁に立て掛けられた大盾に手を伸ばす。
それまで気がついていなかったが、改めてよく見てみると白を基調にした大盾に色鮮やかな金色で植物の蔓のような紋様が施されている。
そして、白い盾に金色で装飾されていることにより神々しくさえ見える。
そのあまりの美しさにスズネは思わず息を呑む。


「はぁ~綺麗」

「ホント綺麗ね。これって何かのデザインなの?」

「はい。それはドワーフ族の間で使われている加護の紋様っす」


どうやら大盾に施された紋様はただのお洒落なデザインなのではなく、古くからドワーフ族の間で使われてきたモノであり、それによって大盾には強力な加護の力が宿っているのであった。
正直に言って今のスズネたちの実力では、いくら手加減していたとしてもクロノの攻撃を全て防ぎ切ることは困難である。
しかし、今回のテストにおいてシャムロムはそれをやってのけたのだ。
その最大の理由がこの大盾にあったことは言うまでもないのだが、現時点でその事に気が付いているのはクロノだけなのであった。


「へぇ~綺麗なだけじゃないんだね。すご~い ───── って、重~~~い!!」


シャムロムが軽々と持っていたので同じように持とうとしたスズネであったが、ビクともしないその重さに驚愕する。
《因みに、シャムロムが気を失った後、ホームまで大盾を運んだのはクロノである。そのため他のメンバーたちはその重さを知らなかったのである》


「あはははは。一応それ三百キロ近くあるっすから、人族にはちょっと重いかもしれないっすね」

「「 三百キロ!? 」」


自分たちの想像を遥かに超える重さにスズネとミリアは思わず大声を上げる。
そして、声に出しはしないが、マクスウェルもまた目を見開き驚いた表情を見せるのだった。


「ドワーフって凄い力持ちなんだね」

「力持ちなんてレベルじゃないわよ。怪力種族だわ」


スズネとミリアが改めて感嘆の声を漏らす。


「いえ、みんながみんなってわけじゃないっすよ。まぁ~人族に比べたらドワーフ族の方が力が強かったりもするかもしれないっすけど。この大盾だって部族の中で持てたのはウチだけっすからね」


人間同様、ドワーフの中でも個人差というものはあるらしい。
それにしても、部族内において唯一三百キロを持ち上げる女性・・・。
その衝撃の一言に、スズネたちは揃って口を閉ざしたのだった。


「うちのお父さんが族長をやってるんすけど、冒険者になるって言った時に持たせてくれた我が家の“家宝”なんす」

「へぇ~だからこんなに立派なんだね」

「家宝まで持たせてくれるなんて、随分と太っ腹なお父さんね」

「まぁ~言い伝えによると、千年前の大戦に参加したドワーフ族の大戦士“ガルディン”様以降、誰一人として持てなかったらしいんすよね。だから、家に置いといてホコリ被ってるくらいなら、ウチが使った方がマシってことじゃないっすか」

────────── 家宝とは?? ・・・。

一同がツッコミたい気持ちをグッと抑え込んだところで、マクスウェルが一つの疑問を口にする。


「そういえばシャムロム、大盾はいいとして折れた短剣は大丈夫なんですか?アレも家宝とかでは ───── 」


確かにテストの最後の瞬間にクロノに切りかかった際、シャムロムが手にしていた短剣はクロノの物理障壁によって真っ二つに折られていた。
折られた張本人であるシャムロムが気にしている様子を見せていなかった為、スズネたちもその事をすっかり忘れていたのだった。


「あ~そうだった!!どうしよう、どうしよう。家宝なんて弁償出来ないよ~」


マクスウェルの言葉を聞き慌て出すスズネ。
もしも、家宝の短剣なんて代物ならば金額云々の問題ではなくなってしまう。


「まぁまぁ落ち着きなよスズネ。実際に壊したのはクロノだし、コイツに償わせればいいのよ」

「でも、クロノは私の契約者だし、知らんぷりは出来ないよ」


慌てた様子を見せる親友の姿を見かねたミリアがなんとか慰めようとするが、壊れた物は戻って来ない。
頭を抱えるスズネであったが、その様子を見ていたシャムロムがそれ以上に慌て出す。


「いやいや、大丈夫っすよ。あの短剣はその辺の武器屋で買った安物なんで気にすることなんてないっす」


広げた両手を身体の前で左右に振りながら、必死になって誤解を解こうとするシャムロム。
そして、その話を聞いたスズネはホッと胸を撫で下ろすのだった。


「でも、短剣が折れたのは事実だし、今後のことを考えるとやっぱり新しい物を弁償させてもらうよ」


家宝ではなかったにせよ短剣が折れたことに変わりはない。
その事を申し訳なく思うスズネは改めて新しい短剣の弁償を申し出る。


「いえいえ、剣が折れたのは単純にウチの実力が足りなかっただけっすから、新しい物は自分で買うっすよ」


スズネからの申し出に対して、短剣が折れたことは自身の実力不足による部分が大きいという理由で断りを告げるシャムロムなのであった。


「アンタたちってホント真面目ね。何回も言うようだけど、そんなの折った張本人であるコイツに買わせればいいのよ」

「はぁ?なんで俺がそんな事しなくちゃいけないんだよ。さっき自分の実力不足だってシャムロムも言ってただろうが。その通りであり、それが全てだ」


さすがは実力が全てである魔族のトップである。
一切の甘えを許さない“ザ・実力主義”。
しかし、そんなことで引き下がるミリアではない。


「いや~でもいいのかな~。確かアンタ以前に“お前らは俺の配下”って言ってなかったっけ?配下の者が武器を無くして困っているなら、パーティのトップとして装備を揃えるっていうことも必要なんじゃないのかな~」

「何が言いたい」

「いや、だからアンタがこのパーティを率いてるっていうなら、シャムロムの装備を整えてあげる必要があって、あくまでもスズネの召喚獣だっていうなら、主であるスズネが用意する必要があるっていうだけの話よ」


確かに、以前クロノは『この中で圧倒的に強いのは俺なんだから、その俺が率いているお前らは俺の配下に決まっているだろ』と言っていた。
その発言をはっきりと覚えていた(根に持っていた?)ミリアは、ここぞとばかりにその話を持ち出したのだった。
“やられた”と言わんばかりに悔しそうな表情を見せるクロノに対し、ミリアはニヤリと口角を上げ“してやったり”といった顔をしながら挑発を続ける。


「どうしたのクロノ?顔色が悪いようだけど。まさかとは思うけど、あの魔王クロノ様が召喚獣なんてものに成り下がるなんてことは ───── 」

「クソッ。分かったよ、武器を用意すりゃいいんだろ」


ミリアの勝ちである。
長い時間を共にしてきたこともあり、ミリアはだんだんとクロノの扱いに慣れてきたようだ。
それは相手と真っ直ぐに向き合うスズネには難しいことであり、意図せずスズネとミリアの二人によって絶妙なバランスでクロノの手綱を握っているのだった。


「いえ、悪いっすよ。ほんと自分で買うから大丈夫っす」

「黙れ!!この魔王クロノが口にした言葉を無下にするつもりか?お前は大人しく受け取ればいいんだよ」

「は…はい。了解したっす」


クロノからの脅しにも似た言葉に、シャムロムは背筋をピンッと伸ばして従うのだった。




異空間収納ストレージ


クロノがそう口にすると、クロノの隣に直径一メートル程の黒い円形の物体が現れた。
そして、クロノはその中に手を突っ込むとアレでもないコレでもないとブツブツ小言を言いながら何かを探し始める。
数分が経ち、やっとのことで目的の物が見つかりクロノが腕を引き抜くと、その手には青く輝く一本の短剣が握られていた。


「お前にコレをやる」

「はい、ありがとうっす。めちゃくちゃ高そうっすけど、ほんとに貰っちゃっていいんすか?」


手渡された短剣を前に恐縮するシャムロム。
しかし、そんなシャムロムを気にすることなくクロノは話を進める。


「それは“青龍の息吹アズール”という短剣だ。高いかどうかなんて知らん。お前は異常なまでの頑丈さはあるが、攻撃力と俊敏性に欠けるからな。その点“青龍の息吹アズール”には使用者の攻撃力と素早さを向上させる効果が付与されているからお前にはちょうど良いだろ」

「お~~~まさにウチの為にあるような武器っすね。大事にするっす~」


嬉しさのあまりクロノに抱き付くシャムロム。


「おい、止めろ。新しいのをやったんだからもういいだろ」


自身の言葉など一切耳に入らずただただ喜びを表すシャムロムに対し、発する言葉とは裏腹にどこか照れ臭そうでもあるクロノなのであった。


「アンタにしてはちゃんと考えてるわね」

「当然だ。この俺がわざわざ用意してやったのに弱くなられては困るからな」


面倒臭そうにしてはいるものの、しっかりとシャムロムの事を考えての武器選びをしたことにミリアは感心した様子を見せ、クロノは“どうだ”と言わんばかりに鼻を伸ばした。


「良かったね、シャムロム。これで一緒にクエストも受けれるね」

「はい。むしろこんなとんでもない物を貰っちゃって、かえって申し訳ないっす」

「いいっていいって、シャムロムのパワーアップはパーティにとっても喜ばしいことなんだから、遠慮しないで受け取ってよ」

「はい、有り難く頂くっす。ところで、このパーティの名前って何っていうんすか?」


────────── うん??


唐突に投げかけられた質問。
しかし、その問いへの答えを誰も持ち合わせてはいない。
パーティを組んでから数々のクエストをこなしてきたが、目の前のクエストと仲間集めに集中するがあまり肝心のパーティ名を決めていなかったのだ。
そのためシャムロムの素朴な疑問に対して、皆が一様にして腕を組んだ状態で首を傾げたのだった。

そんな中、ただ一人笑みを浮かべる者がいた。


「フフフフフッ、皆さんお困りのようですね。パーティ名のことなら既に考えてあるよ」


そこには不敵な笑みを浮かべるスズネの姿があった。


「何よスズネ、アンタ考えてあんの?」

「もちろんだよ。クエストを受けるにしろ、仲間を集めるにしろ、パーティ名っていうのは大事だからね。みんなの事を思いながらずっと考えてたんだ~。気に入ってもらえたらいいんだけど」


メンバー全員の視線を集める中、スズネは照れ臭そうにしている。
全員あえて口には出さないが、マイペースなスズネのことであるから、どんな突拍子もない名前が飛び出すか分からない。
一同が一抹の不安を覚える中、代表してミリアが恐る恐るスズネに聞く。


「そ…そうなんだ~、ありがとね。まぁ~一応大事な名前だし、聞いてみてみんなで決めようか。・・・で、スズネが考えたパーティ名は?」

「フフフッ。それはねぇ~ ───── 『宿り木やどりぎ』だよ!!」

「「「「 宿り木?? 」」」」

「そう。『宿り木』」

「どうしてそれにしたの?」


一先ず思っていたよりもまともな?名前が出てきたことに安堵する一同。
ただ今後自分たちも名乗ることになるパーティ名であるからには、その名の由来がどういったものなのかを知っておく必要がある。
変な緊張感が漂う中、一同はスズネから発せられる言葉に耳を傾ける。


「私たちって元々は別々の場所で生まれたでしょ。それがこうやって集まって、人族・魔族・ドワーフ族がいる。そして、剣士もいれば魔法師もいて、大盾使いに聖騎士(見習い)、魔王までいちゃうんだから。ここはそんな種族とか立場とかそういうのは一切関係なく、誰もが集まれる場所にしたいって思ったんだ」


これまで聞くことが無かったスズネの想いを知り、その場にいる全員が込み上げてくる熱いモノを感じ取る。


「いつか別れがあるかもしれないし、ここから離れることもあるかもしれない。だけど、ここにいる間はパーティの仲間だし、いつでも帰って来れる場所にしたいんだよね」

「誰もが“宿たちよれる場所”か・・・。なるほど、それで『宿り木』ってわけね」

「ダメ・・・かな?」


最初は自信満々であったスズネだが、いざ発表してみると急に不安が押し寄せてくる。
しかし、そんな不安も他のメンバーたちの表情によって吹き飛ばされる。


「うん。良いんじゃない」

「ウチも良いと思います」

「わっちもそれで良いぞ」

「僕もとても良いと思います。正式なメンバーではないですけど…」


元から何でもいいクロノは置いておき、他のメンバーたちからの承諾を得ることができ満面の笑みを見せるスズネ。

ここからスズネたち『宿り木』による新たな冒険の日々が始まるのであった。


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