魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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遭遇

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ガルディア王国聖騎士団の聖騎士長であるアーサーに呼び出されたマクスウェル。
その付き添い?で久々に王都メルサへとやって来たスズネたちは、魔人事件の話を聞くためにアーサーの元を訪れていた。
そこでスズネたちはアーサーから魔人がヒト族をベースに多種多様な生物の細胞を組み込んだ混合生物キメラである可能性が高いという話を聞かされたのだった。



─────── コン、コン、コン。

!?

ガチャッ ─────── 。


「パパ~?」


重苦しい空気が広がっていた部屋に場違いな声が響いたかと思うと一人の少年が入ってきた。


「何よこの子!!カワイイ~~~」


突然現れた少年にすぐさま駆け寄り、頭を撫でながら頬ずりをするミリア。
どうやらミリアは大の子供好きらしい。
そして、それに続くようにしてスズネたちも少年の元へと集まる。


「確か、その子はノイマン博士のところの ───── 」

「師匠はこの子が誰なのかご存知なのですか?」


───── バタバタバタバタ 。

その時、誰かが廊下を走る音がした。
そして、その足音はどんどん近づいてくると扉の開いたアーサーの執務室の前で止まり、そこで立ち止まった男性が少年に声を掛けた。


「ザザ!?こんな所にいたのか・・・。これは聖騎士長様、息子がご無礼を致しました」


そう言うと、少年の父親らしき男性は深々と頭を下げた。


「気にするな。確かノイマン博士の第一助手をしているメイニエルだったか?」

「はい、そうです。まさか、私などの名を覚えていらしたとは ───── 」

「そう謙遜するな。我らがガルディア王国が誇る最高の頭脳といわれるノイマン博士に負けず劣らずの頭脳を持っているいう噂は聞き及んでいる」

「そんな…恐れ多いです」


謙遜し続けるメイニエルであったが、駆け寄ってきた息子の姿を見ると瞬時に優しい父の顔へと変わったのだった。
その光景を微笑ましく眺めるスズネたちは、先程までの重苦しい空気のことなどすっかり忘れてしまっていた。
そして、そこに遅れてノイマンが姿を現した。


「おお~ザザ、何処に行ってしまったかと心配したぞ」

「あ~ノイマンのおじちゃん。なんかね、みんなが迷子になっちゃったから僕一人で探してたんだよ」

「ホッホッホッ。そうかそうか、それは心配をかけてしまったね。探してくれてありがとうザザ」


一生懸命に自分の頑張りをアピールするザザ少年にお礼を言いつつ、その労をねぎらったノイマンはスッと顔を上げるとアーサーへと視線を向けた。


「アーサー殿、お騒がせしました」

「な~に気にすることはない。子供は元気なのが一番だ」


そして、ノイマンがアーサーの元へと歩み寄ろうとしたその時、部屋の中にいたスズネたちの存在に気がついた。


「おやおや、先客でしたかな?」

「い…いえ、私たちの話は終わりましたので ───── 」


急に声を掛けられ動揺してしまうスズネ。
すると、その様子を見ていたアーサーがそれをフォローするかのようにノイマンに声を掛ける。


「ノイマン博士、そちらは私の弟子であるマクスウェルが世話になっている冒険者の方々だ」

「なんと!そちらにいるのはマクスウェル君でしたか、立派になられましたな~見違えましたよ」

「ノイマン博士、ご無沙汰しております」

「そして、そちらの皆様が冒険者パーティの方々ですね。初めまして、わたくしはノイマンと申します。ガルディア王国で学者をしております。以後、お見知りおきを」


そう言うと、ノイマンは左手を胸に当てながら軽く会釈をした。


「は…はい!!私たちは“宿り木”という冒険者パーティを組んでおりまして、マクスウェル君にはパーティ結成当初からお世話になっています。宜しくお願いします」


終始緊張しっぱなしのスズネはガチガチになりながらも何とか自分たちの紹介を終えたのであった。


「ホッホッホッ、可愛らしいお嬢さんだ。こちらこそ宜しくお願いしますね」


緊張から解放されホッとした表情を見せるスズネに対し笑顔を向けたノイマンであったが、その直後からチラチラとクロノへと視線を向ける。


「何見てんだよ、おっさん」

「い…いや、“宿り木”と聞いて思い出したのだが ───── もしや、君が魔王クロノなのかい?」

「あん?そうだよ。この俺が紛れもなく魔王クロノだが、それがどうした?」


その言葉を聞いた途端にノイマンは目をキラキラと輝かせながらクロノへと歩み寄る。


「おお~やはりそうでしたか。長い魔族の歴史において最強といわれる魔王。その魔力量も計り知れないものだと聞き及んでおりますよ~」

「おい、なんだお前。ぶっ殺されてぇ~のか!!さっさと離れろ」


興奮気味にクロノへと迫るノイマン。
それをかなり鬱陶しそうにあしらうクロノ。
何が何やら分からず、ただただその光景を眺めることしか出来ないスズネたち。
すると、その光景を見ていた助手のメイニエルが頭を抱えながらノイマンを止めに入る。


「先生、いい加減にして下さい。皆さん困ってるじゃないですか」


メイニエルの言葉によって我に返ったノイマンは気恥ずかしそうにしながら頭を下げたのだった。


「ホッホッホッ、これは失礼しました。魔王に会う機会などそうそうないものですから興奮してしまいました。それでクロノ殿、何とか我々の研究にご協力を ───── 」

「しねぇ~よ!!何で俺がそんなことしなきゃなんねぇ~んだよ」


怒りのあまりノイマンが最後まで話し終えるよりも前に拒絶するクロノ。
その一連の流れを見ていたスズネたちは笑みを溢す。
そしてクロノに協力を断られ気を落とすノイマンであったが、すぐに気を取り直すと今日の本題へと入る。


「アーサー殿、先程陛下には報告させて頂いたのですが、魔人について新たな報告がありますので少々お時間を頂いても宜しいですかな?」

「ああ、良いだろう」


こうしてクロノの一件もありすっかり打ち解けたスズネたちであったが、ノイマンによるアーサーへ新たな報告があるという言葉を聞き、彼らの話が終わるまでの間、時間を潰すために外でザザと遊ぶことにしたのだった ───── 。


─────────────────────────


「お姉ちゃんたち、バイバ~イ」

「ザザ君、またね~」


アーサーとノイマンたちの話が終わり、ザザとお別れしたスズネたち。
無邪気な子供との時間を過ごし日々の疲れが癒やされたようだ。

その後、再びアーサーの元を訪れたスズネたちは改めて魔人には十分に注意するようにと告げられる。
そして、魔人についての情報を得たスズネたちは次なる目的である王都でのショッピングへと繰り出したのであった。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


コポッ・・・コポッ・・・コポッ・・・。


「まだだ。魔法が使えるようになったのは大きな成果だが、完全体となるにはまだ足りない」


コポッ・・・コポッ・・・コポッ・・・。


「モ・・・ウ・・・ヤ・・・メ・・・テ・・・」

「安心しろ、次が最後となるだろう。次でお前は究極の生物となるのだ!!そうすれば、私は ───── 」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「「「「「「ロザリーさん、お誕生日おめでとう!!」」」」」」


パーン! パーン! パーン!


今日はスズネの祖母であるロザリーの誕生日である。
そのお祝いをするためにスズネたちはモアの街にあるロザリーの家を訪れていた。
ロザリーには、これまでに冒険者としての心構えやクエストについてアドバイスをもらい、新人冒険者であるスズネたちのために食料や薬草などのアイテム類を支援してもらったり、そして何よりも大きかったのが今パーティ全員で暮らしているホームを譲ってもらったことであり多大なる恩があるのだ。
そういったこれまでの大恩に対するお礼も兼ねて、ささやかではあるが思いを込めた誕生パーティを開催したのであった。


「おばあちゃん、お誕生日おめでとう」

「ロザリーさん、おめでとうございます」

「おばあ様、誕生日おめでとうなのじゃ」

「ロザリーさん、いつも本当にありがとうございます。今日はおめでとうございます」

「ロザリーさん、お誕生日おめでとうございます。いつもウチらのためにいろいろと気に掛けてもらって助かってるっす」

「あ…あの…初めまして、ご挨拶が遅くなりました。新しく“宿り木”に加入しましたセスリーと申します。この度はお誕生日おめでとうございます」

「おやおや、みんな今日はありがとね。この歳になってもこれだけの人に祝ってもらえるなんて私は幸せ者だよ」


これまではスズネと二人でお祝いしていたのだが、今年はスズネだけでなく、ミリア・ラーニャ・マクスウェル・シャムロム・セスリー、そしてクロノと多くの人たちが自身のために集まってくれたことを心から喜び笑みが溢れ出すロザリーなのであった。
そして、例年にはないほど数多くの料理が食卓に並び、食事の最後には大きなバースデイケーキも登場し、最後まで大いに賑わったのだった。


─────────────────────────


こうして日付が変わるまでロザリーとの時間を楽しんだスズネたち。
満面の笑みで手を振る今夜の主役に別れを告げ、ホームヘの帰路につく。

その帰り道 ───── 。


「うわぁぁぁ ──────── 」


!? !? !? !? !? !?


「何?何?何?」

「なんか今悲鳴が聞こえたっすよ」

「ま…まさか ───── 」


深夜の静まり返ったモアの街に響き渡った悲鳴。
突然のことに動揺し慌てるスズネたち。
辺りを見回すが夜も遅いため人影は見当たらない。


「みんな落ち着いて。とりあえず、悲鳴が聞こえた方角に向かってみよう」


そして、すぐさまスズネが全員に指示を出し、とりあえず“何か”が起きたであろう現場に急行することに。


「皆さん、もし仮に魔人と遭遇した場合には無闇に戦おうとはしないでください」

「そんなこと分かってるわよ。とにかく急ぐわよ」


先日アーサーより釘を刺されたこともあり、走りながらマクスウェルが全員に注意を促す。
そして、スズネたちが悲鳴が叫ばれた現場に到着すると、そこには三メートル近い巨体をした緑色の怪物の姿があり、その足下には血塗れの死体が転がっていた。


「なっ!?何よアレ・・・デカ過ぎでしょ」

「アレのどこがヒト族をベースにしてるんすか。ただの化け物っすよ」

「なんじゃなんじゃ、お主らあんなのにビビっておるのか?元がヒト族であるならば、燃やせば灰になるんじゃろ。わっちの魔法で火葬にしてくれるわ」

「ダメですよ!!手を出したら」

「みんな、一先ず戦闘準備を!!」


その異様な姿を目にした瞬間に全員が目の前にいるのが魔人であると確信した。
そして、瞬時に各々が武器を手に取り臨戦態勢をとったのだった。


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