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追跡
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ロザリーの誕生日を祝うためにモアの街を訪れたスズネたち。
その帰り道、突如聞こえてきた悲鳴を頼りにスズネたちが現場に駆けつけると、そこには三メートルを超える巨体をした緑色の怪物の姿があったのだった。
そして、その怪物の傍らには巨大なハンマーか何かで殴られたのかと思うほどに無惨に潰された死体が複数転がっていた。
その光景を見た瞬間に目の前にいるのが魔人だと確信したスズネたちは、一斉に武器を手に臨戦態勢をとる。
「コイツ…魔人よね」
「まず間違いないと思います」
「ヤバいっす、ヤバいっすよ」
自身に向けて武器を構える相手に対して殺意を向ける魔人。
スズネたちも臆することなく全員で負けじと闘気を返す。
両者の間にヒリヒリとした空気が流れる ───── 。
しかし、向かい合ってすぐさま襲い掛かってくるかと思われたが、魔人は視線を向けるだけで一向に動こうとはしなかった。
これまでに起きた事件の傾向として、魔人はターゲットとなった一般人はもちろんのこと、現場に駆けつけた兵士や聖騎士にも躊躇することなく襲い掛かってきていた。
そして、それは各聖騎士団の団長を務める“十二の剣”が相手であっても変わりはしなかった。
それが何故か今回のスズネたちに関してだけは殺気を放ちはするが視線を送るだけで戦おうという意思が見受けられなかったのだった。
そんな魔人の様子にスズネたちは困惑した表情を並べる。
「あれ?アイツ…もしかして戦う気がない?」
「いや、だから戦闘は避けるようにと言ってるじゃないですか。相手にその気がないのならむしろ好都合です」
「で…でも、足下に ───── 」
「それで、これからどうするんすか?」
現場に駆けつけたはいいものの、魔人に対してどのように対処するかを決めていなかったスズネたちはすぐに行動に移せずにいた。
そして、そうこうしているうちに魔人が先に動く ───── 。
向かい合うスズネたちと視線を交えていたが、一転背を向けたかと思うとおもむろに足下に転がっていた死体の片足を手に持ち上げ、その滴る血を飲み出したのだった。
「ちょっと、あれ ───── 」
その行動に気づいたスズネは、指を差しながらもあまりの衝撃に言葉を失ってしまう。
そして、その光景を目にした他のメンバーたちは魔人による非人道的な行いに怒りを露わにする。
「あんの野郎、アタシたちを無視した挙句になんてことを」
「みなさん、すみません。さすがに僕もアレを見逃すことは出来ません」
「いや~むしろアレを見ても逃げるなんて言い出したら、マクスウェルの人間性を疑うところっすよ」
「そ…そうですね。私もあの様な行いは許せません」
「ふん、やっとやる気になりよったか。わっちは初めからそのつもりじゃ」
こうして “宿り木” vs “魔人” の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
─────────────────────────
まず先手を取ったのは“宿り木”。
スズネの補助魔法によって身体強化と速度上昇を付与されたミリア・マクスウェル・シャムロムの前衛三人が距離を詰める。
自身に対する敵意を感じ取った魔人は手に持っていた死体を投げ捨てると、一瞬のうちに右手を大きなハンマーへと変えた。
そして、そのまま自身に対して一直線に向かってくるミリアたち目掛けて一気にハンマーを振り下ろした。
─────── ガンッ!!
「デカい割に威力はそうでもないっすね」
魔人の一撃を難なく受け止めたシャムロムは、想定していたよりも衝撃が少ないことに拍子抜けした表情を見せつつさらりと言ってのける。
そして、ハンマーを打ち下ろしたことにより動きが止まった魔人の左足をマクスウェルが斬り膝をつかせ、それに合わせるようにしてミリアが右腕を斬り落とした。
ドシーン ─────── 。
「あれ?なんか呆気ないわね。もしかして、コイツ弱いんじゃないの」
「油断しないでください。師匠から聞いたでしょ、魔人は再生能力を有していると」
あまりの手応えの無さに驚くミリアを横目に、冷静に状況を見極めようとするマクスウェル。
そして、その言葉通り魔人は斬られた左足と斬り落とされた右腕をあっという間に元通りにしたのだった。
「やっぱり再生するっすよ」
「何か弱点とかないのかな」
「そんなチマチマした攻撃をしておるから再生されるのじゃ。わっちの火力で一気に灰にしてくれるわ」
そう言うと、ラーニャが詠唱を始める。
「燃え盛る炎よ、その爆炎を以って敵を焼き払え ───── 摩炎楼」
ボゥォォォォォ ─────── 。
立ち上る炎の柱に包まれた魔人は、その威力と熱気に顔を歪めながら怒号を上げる。
「グウォォォォォ」
その光景を前にして一瞬仕留めたかと思われたが、魔人は苦しみながらもゆっくりと歩を進め、何とか炎による包囲から抜け出したのだった。
「なんじゃあやつは!!皮膚を溶かされながらも無理矢理出てきおった」
全身をドロドロに溶かされながらもラーニャによる爆炎を突破した魔人は、先程と同様にすぐさま元の姿へと戻ったのだった。
「アヅイ…イダイ…許ザナイ…。皆ゴロジニジデヤル…」
「喋った!?今、アイツ喋ったわよ」
「どうやら痛覚もあるようですね。再生出来るからといって無敵というわけではなさそうです」
ボコッ、ボコッ、ボコッ、ボコッ。
怒りを露わにした魔人は次々と身体を形状変化させていく。
その異様な光景を目の当たりにし畏怖するスズネたち。
そして、準備が整うと魔人が遂に動く。
ドゴーン。
地面を蹴りつけ一気に加速した魔人がその巨体を存分に活かした突進を繰り出す。
咄嗟の音であったが、なんとかギリギリのところで魔人とメンバーたちの間に入ったシャムロムが大盾で魔人の強烈なタックルを受ける。
しかし、先程受けたものと比べて速度も威力も桁違いの一撃に弾き飛ばされたのだった。
─────── ドーン 。
「シャムロムー!!」
「イテテテテ…問題ないっすよ。頑丈さでは魔人にも負けないっす」
壁に打ちつけられたシャムロムであったが、他のメンバーたちの心配をよそに頭を軽く擦りながらすぐに立ち上がったのだった。
さすがはドワーフ族の中でも随一の頑丈さである。
一先ず最初の一撃はシャムロムによって難を逃れたが、そのスピードはスズネたちの想像していたよりも数段上をいっていた。
その衝撃に戸惑いを見せるスズネたちであったが、相手はそれが落ち着くのをわざわざ待ってはくれない。
動揺するスズネたちの陣形が整うよりも早く魔人が第二波の準備に取り掛かる。
そして、再び足に力を込めて地面を蹴り上げようとした、その時 ───── 。
ヒュンッ ───── 。
───── グサッ 。
「グウォォォォォ」
魔人の左眼に矢が突き刺さる。
突如左眼に走った激痛に悶え苦しむ魔人。
「第二射、いきます!!」
ヒュンッ ───── 。
───── グサッ 。
「グウォォォォォ」
続いて魔人の右眼が射抜かれる。
もちろん矢を放ったのはセスリーである。
魔人との戦闘が始まってすぐに他のメンバーたちと分かれ、少し距離をとった建物の上から魔人に狙いを定めていたのだった。
「凄いよ!!セスリー」
「今がチャンスね!行くわよマクスウェル」
「了解です」
セスリーが作り出した好機を逃すまいと一気に魔人へと襲い掛かるミリアとマクスウェル。
両眼を潰され再生も追いついていない隙を突いて切り刻んでいく。
ブシュッ ───── 。
ブシュッ ───── 。
ブシュッ ───── 。
ブシュッ ───── 。
二人の連撃を前に魔人は青い血を吹き出しながら崩れ落ちる。
そして、動きが止まったところにラーニャが止の一撃をお見舞いする。
「二人とも、そやつから離れるのじゃ」
その言葉を聞いたミリアとマクスウェルは急いでその場から離脱する。
「天に轟く雷鳴よ、眩い閃光と共に敵を撃て ───── 雷光」
バリバリバリバリッ ───── 。
ラーニャによる強力な雷魔法を受けた魔人は一瞬で黒焦げとなった。
スズネたちもさすがに討ち取ったかと思ったが、数秒の後黒焦げになった皮膚がボロボロと剥がれ落ちると、元の姿になった魔人がゆっくりと立ち上がったのだった。
そして再び戦闘になるかと思われたが、そこで誰しもが予想だにしていなかったことが起きる。
「イダイ…モウ…イヤダ…」
それは大粒の涙を流す魔人の姿であった。
そして、その姿と発した言葉に驚くスズネたち。
「えっ!?泣いて…る?」
「一体どういうこと?」
「僕たちを油断させるためかもしれません。十分に警戒してください」
突然の出来事に戸惑うスズネたちであったが、相手はこれまでに幾人もの人を殺害してきた魔人である。
その光景を不思議に思いながらも警戒を続けるのだった。
その時 ───── 。
「何をしている!!」
突如として何処からともなく声が発せられる。
そして、その声を耳にした途端に魔人が怯えるような反応を見せる。
「モウ…イヤダ…。イダイノモ…キズヅゲルノモ…」
「黙れ!!何のためにお前を生かしてやってると思っているんだ。もういい、今日は終いだ。帰って来い」
その言葉を聞いた魔人は逃げるように夜の闇へと消えていったのだった。
「ちょっと、今のは何だったのよ」
「分からないけど、私には魔人が自分の意思で事件を起こしているわけじゃないように思えたよ」
「裏で魔人を操っている者がいるようですね」
「それで、これからどうするんすか?」
魔人が姿を消し、何の手掛かりも無くなってしまったスズネたち。
どうすることも出来ず、ただただ沈黙だけが流れる。
スズネたちがとりあえずホームに帰ってから今後について話し合おう考えていると ───── 。
「ラーニャ」
「うむ、皆まで言わずとも良いぞ旦那様。ちゃんと印は付けてあるのじゃ」
クロノの呼び掛けに自信満々で応えるラーニャ。
どうやら最後に放った雷光を魔人にくらわせた際に追跡用の印を付けていたようだ。
それを聞いたスズネたちは、話し合いの末どうにも最後の魔人の言動と謎の声が気掛かりだということになり、全会一致で魔人を追いかけることにしたのだった。
その帰り道、突如聞こえてきた悲鳴を頼りにスズネたちが現場に駆けつけると、そこには三メートルを超える巨体をした緑色の怪物の姿があったのだった。
そして、その怪物の傍らには巨大なハンマーか何かで殴られたのかと思うほどに無惨に潰された死体が複数転がっていた。
その光景を見た瞬間に目の前にいるのが魔人だと確信したスズネたちは、一斉に武器を手に臨戦態勢をとる。
「コイツ…魔人よね」
「まず間違いないと思います」
「ヤバいっす、ヤバいっすよ」
自身に向けて武器を構える相手に対して殺意を向ける魔人。
スズネたちも臆することなく全員で負けじと闘気を返す。
両者の間にヒリヒリとした空気が流れる ───── 。
しかし、向かい合ってすぐさま襲い掛かってくるかと思われたが、魔人は視線を向けるだけで一向に動こうとはしなかった。
これまでに起きた事件の傾向として、魔人はターゲットとなった一般人はもちろんのこと、現場に駆けつけた兵士や聖騎士にも躊躇することなく襲い掛かってきていた。
そして、それは各聖騎士団の団長を務める“十二の剣”が相手であっても変わりはしなかった。
それが何故か今回のスズネたちに関してだけは殺気を放ちはするが視線を送るだけで戦おうという意思が見受けられなかったのだった。
そんな魔人の様子にスズネたちは困惑した表情を並べる。
「あれ?アイツ…もしかして戦う気がない?」
「いや、だから戦闘は避けるようにと言ってるじゃないですか。相手にその気がないのならむしろ好都合です」
「で…でも、足下に ───── 」
「それで、これからどうするんすか?」
現場に駆けつけたはいいものの、魔人に対してどのように対処するかを決めていなかったスズネたちはすぐに行動に移せずにいた。
そして、そうこうしているうちに魔人が先に動く ───── 。
向かい合うスズネたちと視線を交えていたが、一転背を向けたかと思うとおもむろに足下に転がっていた死体の片足を手に持ち上げ、その滴る血を飲み出したのだった。
「ちょっと、あれ ───── 」
その行動に気づいたスズネは、指を差しながらもあまりの衝撃に言葉を失ってしまう。
そして、その光景を目にした他のメンバーたちは魔人による非人道的な行いに怒りを露わにする。
「あんの野郎、アタシたちを無視した挙句になんてことを」
「みなさん、すみません。さすがに僕もアレを見逃すことは出来ません」
「いや~むしろアレを見ても逃げるなんて言い出したら、マクスウェルの人間性を疑うところっすよ」
「そ…そうですね。私もあの様な行いは許せません」
「ふん、やっとやる気になりよったか。わっちは初めからそのつもりじゃ」
こうして “宿り木” vs “魔人” の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
─────────────────────────
まず先手を取ったのは“宿り木”。
スズネの補助魔法によって身体強化と速度上昇を付与されたミリア・マクスウェル・シャムロムの前衛三人が距離を詰める。
自身に対する敵意を感じ取った魔人は手に持っていた死体を投げ捨てると、一瞬のうちに右手を大きなハンマーへと変えた。
そして、そのまま自身に対して一直線に向かってくるミリアたち目掛けて一気にハンマーを振り下ろした。
─────── ガンッ!!
「デカい割に威力はそうでもないっすね」
魔人の一撃を難なく受け止めたシャムロムは、想定していたよりも衝撃が少ないことに拍子抜けした表情を見せつつさらりと言ってのける。
そして、ハンマーを打ち下ろしたことにより動きが止まった魔人の左足をマクスウェルが斬り膝をつかせ、それに合わせるようにしてミリアが右腕を斬り落とした。
ドシーン ─────── 。
「あれ?なんか呆気ないわね。もしかして、コイツ弱いんじゃないの」
「油断しないでください。師匠から聞いたでしょ、魔人は再生能力を有していると」
あまりの手応えの無さに驚くミリアを横目に、冷静に状況を見極めようとするマクスウェル。
そして、その言葉通り魔人は斬られた左足と斬り落とされた右腕をあっという間に元通りにしたのだった。
「やっぱり再生するっすよ」
「何か弱点とかないのかな」
「そんなチマチマした攻撃をしておるから再生されるのじゃ。わっちの火力で一気に灰にしてくれるわ」
そう言うと、ラーニャが詠唱を始める。
「燃え盛る炎よ、その爆炎を以って敵を焼き払え ───── 摩炎楼」
ボゥォォォォォ ─────── 。
立ち上る炎の柱に包まれた魔人は、その威力と熱気に顔を歪めながら怒号を上げる。
「グウォォォォォ」
その光景を前にして一瞬仕留めたかと思われたが、魔人は苦しみながらもゆっくりと歩を進め、何とか炎による包囲から抜け出したのだった。
「なんじゃあやつは!!皮膚を溶かされながらも無理矢理出てきおった」
全身をドロドロに溶かされながらもラーニャによる爆炎を突破した魔人は、先程と同様にすぐさま元の姿へと戻ったのだった。
「アヅイ…イダイ…許ザナイ…。皆ゴロジニジデヤル…」
「喋った!?今、アイツ喋ったわよ」
「どうやら痛覚もあるようですね。再生出来るからといって無敵というわけではなさそうです」
ボコッ、ボコッ、ボコッ、ボコッ。
怒りを露わにした魔人は次々と身体を形状変化させていく。
その異様な光景を目の当たりにし畏怖するスズネたち。
そして、準備が整うと魔人が遂に動く。
ドゴーン。
地面を蹴りつけ一気に加速した魔人がその巨体を存分に活かした突進を繰り出す。
咄嗟の音であったが、なんとかギリギリのところで魔人とメンバーたちの間に入ったシャムロムが大盾で魔人の強烈なタックルを受ける。
しかし、先程受けたものと比べて速度も威力も桁違いの一撃に弾き飛ばされたのだった。
─────── ドーン 。
「シャムロムー!!」
「イテテテテ…問題ないっすよ。頑丈さでは魔人にも負けないっす」
壁に打ちつけられたシャムロムであったが、他のメンバーたちの心配をよそに頭を軽く擦りながらすぐに立ち上がったのだった。
さすがはドワーフ族の中でも随一の頑丈さである。
一先ず最初の一撃はシャムロムによって難を逃れたが、そのスピードはスズネたちの想像していたよりも数段上をいっていた。
その衝撃に戸惑いを見せるスズネたちであったが、相手はそれが落ち着くのをわざわざ待ってはくれない。
動揺するスズネたちの陣形が整うよりも早く魔人が第二波の準備に取り掛かる。
そして、再び足に力を込めて地面を蹴り上げようとした、その時 ───── 。
ヒュンッ ───── 。
───── グサッ 。
「グウォォォォォ」
魔人の左眼に矢が突き刺さる。
突如左眼に走った激痛に悶え苦しむ魔人。
「第二射、いきます!!」
ヒュンッ ───── 。
───── グサッ 。
「グウォォォォォ」
続いて魔人の右眼が射抜かれる。
もちろん矢を放ったのはセスリーである。
魔人との戦闘が始まってすぐに他のメンバーたちと分かれ、少し距離をとった建物の上から魔人に狙いを定めていたのだった。
「凄いよ!!セスリー」
「今がチャンスね!行くわよマクスウェル」
「了解です」
セスリーが作り出した好機を逃すまいと一気に魔人へと襲い掛かるミリアとマクスウェル。
両眼を潰され再生も追いついていない隙を突いて切り刻んでいく。
ブシュッ ───── 。
ブシュッ ───── 。
ブシュッ ───── 。
ブシュッ ───── 。
二人の連撃を前に魔人は青い血を吹き出しながら崩れ落ちる。
そして、動きが止まったところにラーニャが止の一撃をお見舞いする。
「二人とも、そやつから離れるのじゃ」
その言葉を聞いたミリアとマクスウェルは急いでその場から離脱する。
「天に轟く雷鳴よ、眩い閃光と共に敵を撃て ───── 雷光」
バリバリバリバリッ ───── 。
ラーニャによる強力な雷魔法を受けた魔人は一瞬で黒焦げとなった。
スズネたちもさすがに討ち取ったかと思ったが、数秒の後黒焦げになった皮膚がボロボロと剥がれ落ちると、元の姿になった魔人がゆっくりと立ち上がったのだった。
そして再び戦闘になるかと思われたが、そこで誰しもが予想だにしていなかったことが起きる。
「イダイ…モウ…イヤダ…」
それは大粒の涙を流す魔人の姿であった。
そして、その姿と発した言葉に驚くスズネたち。
「えっ!?泣いて…る?」
「一体どういうこと?」
「僕たちを油断させるためかもしれません。十分に警戒してください」
突然の出来事に戸惑うスズネたちであったが、相手はこれまでに幾人もの人を殺害してきた魔人である。
その光景を不思議に思いながらも警戒を続けるのだった。
その時 ───── 。
「何をしている!!」
突如として何処からともなく声が発せられる。
そして、その声を耳にした途端に魔人が怯えるような反応を見せる。
「モウ…イヤダ…。イダイノモ…キズヅゲルノモ…」
「黙れ!!何のためにお前を生かしてやってると思っているんだ。もういい、今日は終いだ。帰って来い」
その言葉を聞いた魔人は逃げるように夜の闇へと消えていったのだった。
「ちょっと、今のは何だったのよ」
「分からないけど、私には魔人が自分の意思で事件を起こしているわけじゃないように思えたよ」
「裏で魔人を操っている者がいるようですね」
「それで、これからどうするんすか?」
魔人が姿を消し、何の手掛かりも無くなってしまったスズネたち。
どうすることも出来ず、ただただ沈黙だけが流れる。
スズネたちがとりあえずホームに帰ってから今後について話し合おう考えていると ───── 。
「ラーニャ」
「うむ、皆まで言わずとも良いぞ旦那様。ちゃんと印は付けてあるのじゃ」
クロノの呼び掛けに自信満々で応えるラーニャ。
どうやら最後に放った雷光を魔人にくらわせた際に追跡用の印を付けていたようだ。
それを聞いたスズネたちは、話し合いの末どうにも最後の魔人の言動と謎の声が気掛かりだということになり、全会一致で魔人を追いかけることにしたのだった。
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