魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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王国筆頭魔法師

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“トライデント”と“ネームレス”の争いに巻き込まれたスズネたちであったが、聖騎士団の介入もありなんとかその場は収まりようやく王城へと辿り着くことが出来た。
そして、これまでと同様に謁見の間へと通されたのだった。

謁見の間の扉が開かれるといつもと違う光景がスズネたちの目に飛び込んで来た。
今回は十二の剣ナンバーズや大臣たちの姿は無く、国王レオンハルトと王女ルナ、左右に聖騎士長アーサーと立派な白のローブを羽織った男が並び立っているだけであった。
聖騎士長であるアーサーと共に国王の両脇を固めているということは、ローブの男も只者ではないことは明白であった。

そして、国王が待つ玉座の前まで歩みを進めたスズネたちは片膝をついて跪く。
しかし、クロノだけはいつも通り腕を組んで仁王立ちしている。
そんなクロノに向けて笑顔で手を振るルナ姫。
その姿を間接視野にて捉えているにも関わらず一切見向きもしないクロノなのであった。


「それで、本日はいったい何用かな?」

「って言うかよ~この俺を待たせ過ぎなんだよ」

「ちょっとクロノ、ダメだよ」

「クソッ」


スズネたちが謁見を求めてきた今回の用件を聞く国王に対し、国王に会うまでに二週間も待たされたことについてクロノが不満を口にしたのだがスズネによって止められてしまう。
その後、スズネたちはトットカ村にて過去にヒト族と人魚族の間で起きたことの顛末と人魚族がクロノの配下に加わったことを国王に話したのだった。


「なるほど、過去にそのようなことが・・・。それでは、今後万が一にも我々ヒト族が人魚族に危害を加えようものならクロノ殿直々の報復があると ───── それは・・・なんとしても勘弁してもらいたい話だな」


そう言いながら国王はポリポリと頭を掻き苦笑いを浮かべるのであった。


「別にお前らが何もしなければ俺から仕掛けることはない。あくまでも、お前らヒト族次第だ」

「クロノ様、ご安心ください。今後人魚族の方々には決して危害を加えないこと及び両種族のより良い関係の発展をガルディア王国王族ノービス家の名においてお約束致しますわ」


非公式とはいえ、王族であるルナ姫がその家名を出してまで約束したことにより、今後ヒト族と人魚族の関係性がより良い方向に向かっていくことが公言されたのであった。
この言葉を聞き、国王であるレオンハルトとクロノの両名は静かに口元を緩めた。


「まぁ~そうであるならいい」

「ですので!是非とも私と婚約を!!」


興奮気味に段差を駆け下りたルナ姫がクロノの腕に抱きつきながら婚約を迫る。
そして、それを快く思わないあの少女が憤慨する。


「ぬぉぉぉぉぉ。貴様~どさくさに紛れて旦那様に抱きつくでないわ!それから旦那様とはわっちが先約済みなのじゃ」

「ウフフフフッ。そのような話クロノ様からは聞いておりませんよ。でも、第二夫人でしたら構いませんよ」

「何を~~~~~。わっちが第一夫人じゃ!貴様が二番目で良いではないか」

「王族が第二夫人など許されません。そこはお譲りください」

「「 ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ 」」


お互いに顔を寄せ合いながら睨み合いを続けるルナ姫とラーニャ。
この不毛な戦いによって自身の周りで戯れ合う二人の姿に疲れた表情を見せるクロノであったのだが、周囲の者たちは誰一人として助けようとはしなかった。
ただ今回の目的であったヒト族と人魚族の関係に少しではあるものの光明が見えたクロノの表情はどこか満足そうにも映って見えた。


「それでは私たちはこれで失礼します」


国王との謁見でクロノの望みが叶ったことを見届けたスズネが王宮をあとにしようとしたその時、それまで沈黙を続けていたローブの男が初めて口を開いた。


「陛下、私から宜しいでしょうか?」

「ん?別に構わぬが、どうしたんだ?ギュスターヴ」

「ありがとうございます。あちらにいる魔法師…名をラーニャといいましたか?」

「なんじゃ貴様、わっちの名を呼んだか?」

「ラーニャさん、あなたが若くしてたった二年でサーバイン校を卒業したという魔法師で間違いありませんか?」

「「「「「 えっ!? 」」」」」


ラーニャが天才であるということは知っている。
それは間近で見てきたスズネたちが誰よりも理解している。
だがしかし、あの入るのは簡単であるが出るのは難しいといわれる難関サーバイン戦闘専門学校をたったの二年で卒業したということは誰も知らなかった。


「だったら何だというんじゃ」

「あなた…王国魔法師団に来なさい。今なら私直属の部隊に入れるように計らいましょう」


!? !? !? !? !?


唐突に放たれたギュスターヴの言葉を前にその場にいた全員が驚愕する。
スズネたちはもちろんのこと、国王であるレオンハルトやアーサーですら聞かされていなかったようだ。


「ちょっとアンタ何を勝手に訳の分かんないこと言ってんのよ」

「そうっす!ラーニャはウチらの仲間っすよ!!」

「・・・・・」


急な展開に混乱し、ギュスターヴに対して怒りをぶつけるミリアとシャムロム。
そんな状況に困惑しつつも冷静にギュスターヴにその真意を問う国王レオンハルトなのであった。


「クハハハハッ。なかなか面白い話だが、ギュスターヴよ…その真意は如何に ───── 」

「陛下、これはそのように大層な話ではございません。ただの勧誘。優秀な魔法師がいるのであれば魔法師団に招き入れるのは至極当然の話。その中でも突出する実力を持つ者が現れたのであれば、王国筆頭魔法師である私の元で力を磨くべきだと愚行したまでです」



王国筆頭魔法師。
ガルディア王国において最高の魔法師の一人として認められた者だけが就ける要職であり、王国最高峰の魔法師たちが集まる魔法師団を一手にまとめる者。
そして、“武の聖騎士長”と“魔法の筆頭魔法師”が永らくガルディア王国を守護する双璧となっているのである。
そして、スズネたちにとってはスズネの祖母であるロザリーが元王国筆頭魔法師だったということもあり馴染みのあるものであった。

しかし、今はそれどころではない。
スズネたちにとってラーニャは大事な仲間であり、さらに少人数の“宿り木”において貴重な魔法師である。
そのラーニャが引き抜かれるということはまさに死活問題である。

ギュスターヴのいうことも一理あるが、スズネたちの気持ちも当然理解出来る。
そんな両者を前に難しい表情を見せる国王。
そして、苦悶する父の姿を心配そうに見つめるルナ姫。

その時、重苦しい沈黙が広がる広間の空気を切り裂く声が発せられる。


「どいつもこいつも勝手に話を進めるでないわ!わっちはそんなもんに入りはせんぞ」

「何故です!?聞いたところによると、あなたは最強の魔法師になりたいんですよね?それならばどう考えても私の元で王国最高峰の魔法師たちと研鑽を積むのが合理的でしょう」

「黙れ下郎!確かに貴様は王国最高の魔法師なのかもしれん・・・じゃがな、わっちの旦那様は世界最高の魔法師なのじゃ!!」

「クッ・・・」

「まぁ~当然だな。俺は魔女ババアからこいつを任されてんだ。こいつが欲しけりゃ~俺に勝ってからにしろ、三下が」


こうしてギュスターヴからの誘いを断ったラーニャ。
悔しそうな表情を見せるギュスターヴはまだ諦めていないようであったが、国王がいる手前これ以上無理矢理どうこうするようなことはなかった。
そして、この時のクロノの発言によりラーニャの恋の炎がさらに大きく燃え上がることとなる。


「旦那様~~~~~」

「何だよ。鬱陶しいからくっつくな」

「『こいつが欲しくば俺に勝ってからにしろ』。まさか、それ程までにわっちのことを好いておったとはのう」

「はぁ?そんなこと言ってねぇ~よ。俺はただ魔女ババアとの ───── 」

「まぁまぁ、そう照れるでない。これで晴れて両想いじゃな」


顔を赤らめながらクロノにピタリと寄り添うラーニャ。
それを面白く思わないルナが負けじと反対側から寄り添う。
これは ───────  デジャヴュ?
同じような場面を先程も見たような気がする。
一同がそんなことを思っている中、みんなが仲良く笑い、その中心に魔王と恐れられるクロノの姿があることを嬉しく思うスズネなのであった。


─────────────────────────


「クソッ…まぁ~いいでしょう。今回は顔見せだけのつもりでしたしね。しかし、次に会う時は逃しはしませんよ」


この日、普段はあまり公の場に姿を見せないギュスターヴが謁見の場に現れた真の目的が、実はラーニャではなくクロノであったことをスズネはもちろんのことその場にいた誰一人として知る由もなかった ──────── 。


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