魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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「まだまだ俺の本気からは三割にも満たない程度だ」


その言葉に驚愕した様子を見せる“ネームレス”と“トライデント”の面々であったが、なぜかスズネたち“宿り木”のメンバーたちはその言葉が事実だと感じはするものの驚くことはなかった。
もちろんこれまでに見てきた魔法の数々、体術や剣術などの近接戦闘スキルに驚かされてきたのだが、どのような状況下においてもクロノにはまだまだ余裕があったからだ。
それを誰よりも間近で見てきたスズネたちだからこそ、その言葉に嘘や誇張といったものが一切無いと思えたのである。


「アレって絶対に冗談なんかじゃないわよね」

「間違いないっす。クロノがその気になれば ───── 考えただけでも恐ろしいっす」

「当然じゃ!旦那様とわっちの手にかかれば世界征服も容易いことなのじゃ」

「でも、クロノはそんなことしない・・・よね?」


これまでに幾度となくクロノの強さをその目で見てきたスズネたちであったが、その真の実力については誰も知らない。
それでも、長い魔族の歴史において最強と云われているクロノにとってはこのガルディア王国を滅ぼすことも不可能ではないのではないかとどこかで感じていた。
そうした中でそんなことは絶対に無いと思ってはいるものの心配そうにクロノへと視線を向けるスズネなのであった。


「しねぇ~よ、そんなくだらねぇこと」

「だよね、だよね!みんな、クロノもこう言ってるし何も心配ないよ」

「わ…私は、クロノさんに救われた身ですので、何があったとしても最後までついていきます」

「まぁ~アタシはクロノがそんなことをしようもんなら叩っ斬るだけよ」

「僕はそうならないことを祈ります」


クロノのことなど気にせず好き勝手言いたいことを言い合うスズネたち。
そんなスズネたちを呆れたように見つめ頭を抱えるクロノであった。
その時、少し苛立った様子のカネロが地面に向けて拳を振り下ろした。


───────── ドゴーーーーーン 。


グラグラグラグラ。


カネロによる強力な一撃によって地面が震える。
その人間離れした衝撃に一同が驚愕する中、カネロが吠える。


「俺様を~無視すんじゃねぇーーーーー!!」

「ヒャッヒャッヒャッ。カネロの旦那がキレちまったよぉ。切るかぁ、裂くかぁ」


自身のことをほったらかしにして楽しそうに話すスズネたちを見て怒り狂うカネロ。
再び暴れ出すのではないかと周囲にいた者たちが心配した、その時 ─────── 。


「そこまでだ!」


ザッザッザッザッ ─────── 。


さすがに王都のど真ん中で暴れ過ぎたようだ。
とうとう騒ぎを聞きつけた王国製騎士団が姿を現し周囲を取り囲む。


「ラモラック様、住民の避難及び現場の包囲完了致しました」

「それでは、総員その場に待機。私が話をつけてくる」

「ハッ!了解致しました」


─────────────────────────


大通りに姿を現した騎士団を率いるのは、十二の剣ナンバーズ第六席ラモラック。
白い髪をしており、目は開いているのかいないのか分からないほどに細い、そして王都の街が破壊されるほどの騒動が起きているにも関わらず全くの無表情。
そんな何を考えているのかさっぱり分からない男がアルバート・カネロ・クロノたちが集まる場所へと近づいてきた。


「おい、ゴミクズ共。王都の街中で騒ぐな。胴と頭を分けられたくなければ、さっさと失せろ」


そう言い放つと、ラモラックは薄っすらと目蓋を開き眼光を光らせるのだった。


「なんだぁ~こいつは!?いきなり現れて何を言ってやがんだ?捻り潰すぞ」

「王国製騎士団団長ラモラック殿、我々トライデントはこの蛮族どもさえ攻撃を止めるのであれば立ち去りますよ」

「そこのお前は?」

「はぁ?なんで俺も入ってんだよ。こいつらが勝手に暴れ出しただけだろうが」


トンッ ───────── 。


ラモラックの問いに対して何故自分までもが加害者に含まれているのか納得が出来ずに苛立つクロノ。
そして、今にも胸ぐらを掴みにいきそうな勢いのクロノを手で制止したマクスウェルが二人の間に入る。


「失礼致しました、ラモラック様。我々はただ現場の近くを通りかかっただけですので、すぐにでもこの場から立ち去ります」

「おや?君は確かアーサー様のところにいた ────── 」

「はい、マクスウェルでございます」

「そうか。君がいるということは…彼女たちが“宿り木”、そしてその男が魔王クロノか ───── 理解した。それで、カネロ…貴様はどうする?」


アルバートとマクスウェルからは立ち去りの言質を取り、残すところはカネロのみ。
だが、立ち去れと言って素直に聞くような相手でないことは明白。
面倒ではあるが、カネロに対してだけは剣気をを飛ばし圧をかけるラモラックなのであった。


「あぁ?俺様は逃げも隠れもしねぇ~ぞ」

「止めろ!今の状況で十二の剣ナンバーズまで相手にするのはさすがに分が悪い。ここは一旦引くぞ、カネロ」

「リコ~~~俺様に指図すんじゃねぇ~よ ───── と言いたいところだが、まぁ~そうだな。命拾いしたなあ~雑魚騎士ども。それから魔王クロノ・・・また遊ぼうぜぇ~」


そう言い残すと、カネロたちは堂々と大通りの真ん中を歩いてメルサの街をあとにしたのだった。


─────────────────────────


「ハァ~やっと終わったわね」

「本当、一時はどうなるかと思ったね」

「国王様に謁見しに来て、とんでもない場面に出くわしたっすよ」

「ん?君たちはこれから国王様と謁見するのか?」

「は…はい。今日はそのために王都までやってきたんです」


こうしてラモラックに状況と王都に来た目的を話したスズネたちは、アルバートたちに別れを告げ王城へと向かうのであった。

ようやく当初の目的である国王への謁見に臨むことが出来ると思い、自然とスズネたちの足取りが軽くなる。


「さぁ~みんな早く行こ」


足早に先頭を駆けていくスズネ。
それを追うようにしてあとに続く他のメンバーたち。


タッタッタッタッタッ ─────── 。

─────── ドンッ 。


「キャッ!?」


先頭を走っていたスズネが突然路地から現れた男性とぶつかる。
完全に前方不注意であったスズネが悪いのだが、男性の方から謝罪の声を掛けてきた。


「おやおや、これは失礼致しました。可愛いお嬢さん」

「あっ…いえ、私の方こそ前も見ずにすみませんでした」


男性の謝罪を受け、即座に自身の不注意が招いたことだと謝罪するスズネであったのだが、その者の姿を見て目を丸くする。
その者は紫色のタキシードに同色のシルクハットを被っているのだが、注目すべき点はそこではない。
その顔には白い仮面が着けられており、右目部分には黄色で星が描かれ、左目部分には青色で涙のようなものが描かれていた。
そして、何よりも目立つのが赤色で描かれた両方の口角が大きく上がった口元である。

その面妖な姿に遅れてきたメンバーたちも警戒を強めたのだった。


「おや?もしかして、ワタクシ警戒されてます?」

「えっ…いや、そういうわけではないです」

「いやいや、この姿を見れば大抵の者は怪しみますからね。慣れておりますのでご心配なく。それより何かお急ぎのご様子でしたが、大丈夫ですか?」

「あっ!?そうだ!すみません、私たち急ぎの用があるのでこれで失礼します」

「はいはい、それではお気をつけて」


そうして再び王城へ向けて走り出したスズネたち。
それを見送る怪しげな男はいつまでもその後ろ姿を見つめているのだった。


「フフフフフッ。また、お会いしましょう ───── 魔王クロノさん」


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