魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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激突

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「よ~やく本気になったみたいだね。あまりにも弱過ぎて僕一人でヒト族を滅ぼしてやろうかと思っちゃったよ」


自身に向けられる殺気。
その量と濃度が増していくこの状況をまるで楽しんでいるかのように笑顔を見せるセロフト。
これまでの数回に及ぶ手合わせによってある程度冒険者たちの実力を測れたのか、その表情からは余裕が伺える。

その自分たちを見下した態度に憤りを感じ唇を噛むナルセナ。
しかし、数で上回っているにも関わらず圧倒的な個の力で蹴散らされたのだから、それは仕方のないことなのかもしれない。

湧き上がる怒りと悔しさをグッと押し殺し、目の前に立ちはだかる強敵を打ち倒すために意識を集中させる冒険者たち。
そんな状況の中、この場で一番高ランクの冒険者であるファイングが現有戦力とセロフトの実力を考慮した上で全パーティに向けてある提案をする。


「全員聞いてくれ。はっきり言って奴は強い。だから、こちらも今ある最強戦力で望もうと思う」

「して、その最高戦力とは?」

「現在いるメンバーから考えて、俺とナルセナ、オベロンとティタ、そしてラントの五名で奴を叩く。他の者たちは周囲に待機し援護及び魔法師の護衛、各パーティの魔法師たちはいつでも攻撃出来るように各自最大火力の魔法を準備いておいてくれ」

「我ら“土ノ民”に異論は無い。皆準備しろ」

「「「 ハッ! 」」」

「僕たち“フェアリー”も異論は無いよ。みんな準備してくれ」

「「「「「「「 了解! 」」」」」」」


こうしてすぐさま準備に取り掛かる冒険者たち。
対するセロフトはあまりにも実力差があると思っているのか、余裕を見せながらその準備が整うのをただただ静かに待っているのであった。

そして、いよいよ激突の時 ──────── 。
セロフトの前に立つのは、ファイング・ナルセナ・オベロン・ティタ・ラントの五名。
各パーティの猛者だけを集めた今回限りのチーム。
他のメンバーたちは彼らをサポートするために周囲に待機しており、魔法師たちは強力な攻撃魔法をいつでも放てるように構えを取っている。


「やっと準備が整った~。ほんと待ちくたびれたよ。まぁ~期待外れにならないように頑張ってね」

「心配するな。オレらもさっきまでとはわけが違うからよ。キッチリ仕留めてやらぁ」

「ナルセナ、もう落ち着く必要はないよ。ここからは出し惜しみは無しだ」

「ハッハッハッ、そうこなくっちゃなぁ!!」

「ティタ、僕たちも初めからトップギアでいくよ」

「了解。魔族なんて倒しちゃったら、私たちもAランク入り出来るかしらね」

「呑気なことを。まずは奴を倒すことが先決。それ以外は考えるだけ無駄」


まさに五者五様 ──────── 。
それぞれが自分の持ち味を最大限に発揮することだけに集中しており、そこに向かうまでのプロセスはバラバラである。
そんな彼らに『チームワーク』という言葉は存在しない。


ただし、

『目の前の敵を打ち倒す』

その目的だけは完全に一致していた。


「さぁ、行こう」


ファイングの発したその一言を合図に五人はセロフトに向かって歩き出す。
それを満面の笑みを浮かべて待ち受けるセロフト。
両者の激突まで五秒前 ────── 。


膨大に膨れ上がった赤い闘気をその身に纏いナルセナが一人駆け出した。
両者の激突まで三秒前 ────── 。


セロフトとの距離が五メートルを切る。
その地点からナルセナが空高く跳躍し、槍を構えて標準を合わせる。
両者の激突まで一秒前 ────── 。


ググッ、グググググッ。


ナルセナが手に持つ槍を力強く握り締め、溜めに溜めたその力を一気に解放しセロフト目掛けて一撃を放つ。


「このクソ野郎。喰らえ ────── 赤き剛突レッドストライク


ドゴーーーーーン!!


強力な一撃を受けたセロフトは横たわった状態のまま大量の土埃と共に宙へと舞い上がる。


「合わせるよティタ」

「OK。任せてよ」

「「舞い散れ ───── 合剣乱舞」」


そこにオベロンとティタによる合わせ技が襲い掛かる。
ピタリと息の合った剣舞の前にセロフトはズタズタに斬り刻まれていく。
さらに連撃が終わると同時に次の攻撃が迫り来る。


「蛮族め、そのまま眠れ ───── 土蛇の牙」


ラントが力強く拳を振り上げると、地面がせり上がり瞬く間に蛇の形へと変化していく。
そして、そのまま身動きが取れないセロフトに向かってその大きな口を広げ襲い掛かる。


グシャーーーーーン!!


土蛇の長く鋭い牙が身体を貫き、腹に大きな風穴を開けられたセロフトは力無く宙を舞う。
しかし、それでも相手は魔族である。
弱っているように見えても実際のところどうなのかは誰にも分からない。
それ故に死亡を確認するまではやってやり過ぎることなどないのだ。

そのことは今相対している五人が誰よりも理解していた。
だからこそ、初手ではあるもののファイングはここで仕留めるつもりなのであった。
詠唱によって両手でしっかりと握られた剣に光の粒を集めると、眩いばかりに光輝く剣をボロボロの相手に目掛けて打ち下ろした。


「光よ、我が剣に集え ───── 光の一閃リュミエール


ファイングが放った一太刀によって光に包まれたセロフトはそのまま地面に叩きつけられた。


ドーーーーーン!


ファイングたちによる怒涛の攻撃を目の当たりにした他の冒険者たちはその凄まじさに言葉を失ってしまう。
これだけの攻撃を受ければ、たとえ魔族であろうとも無事で済むわけがない。
その場にいた者たちは皆揃ってそう思った ────── 実際に相対した五人を除いて・・・。


「イタタタタ。初手から大技のオンパレードだね。おかげで大事な一張羅に穴が開いちゃったよ」


笑っている。
確かに全ての攻撃を受けていた。
それはその場にいた全員が確認している。
しかし、当の本人であるセロフトはまるで何事もなかったかのように振る舞い、この火口で出会ってからずっと変わらぬ笑みを見せるのであった。


「次は僕の番だよね。いっくよ~」


シュンッ ─────── 。

─────── ボゴッ!


「ガハァッ・・・」


突如その場から消えたように見えたセロフトは、一瞬のうちにラントの目の前に現れるとアッパー気味に拳を放った。
そして、ローブローに強烈な一撃を受けたラントはその場に崩れ落ち胃液を吐き出す。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」

「あれれ?もしかして見えてなかった?でも殺すつもりで殴ったのに、君なかなか頑丈だね」

「バッチリ見えてるよ、クソ野郎」


フォンッフォンッフォンッ ──────── 。


「うわっ!?」


ラントに一撃を入れたことにより一瞬の隙を見せたセロフトに対し、すぐさま攻撃を繰り出すナルセナ。
そして、それに呼応してオベロンとティタも連撃で攻め立てる。


ザンッ、ザンッ、ザンッ ───────。

ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュヒュンッ ──────── 。


ブシュッ ─────── 。

ブシュッ ─────── 。

ブシュッ ─────── 。


二人からの止むことのない攻撃を前に血を流しながら後退を余儀なくされるセロフトなのであったが、その動きを先読みしたナルセナが立ちはだかる。


「何処行くんだ?ここは通行止めなんだよ」


フォンフォンフォンフォンフォン。

素早い突きでセロフトの足を止めると、ナルセナは闘気によって赤く染められた槍の柄の真ん中に手をやり頭上で大きく旋回させる。
そして、十分に勢いがついたところで眼前の敵目掛けて力一杯に打ち下ろした。


「そのヘラヘラしたムカつく顔を真っ二つにしてやるよ!赤槍:奥義 ───── 大閃迴 」


ブフォン ──────── ドゴーーーーーン!!!!!


「う…そ…で…しょ…」


ナルセナによる大技を受けたセロフトは、彼女の言葉通り脳天から真っ二つに身体を割られ力無くその場に倒れたのであった。


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