魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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最強を目指して

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時は少し遡り、グリーンアイランド。

セロフトとの激闘を終えたスズネたちはその疲れと傷を癒す間もなく、戦死した冒険者たちを弔い埋葬していた。
ほとんどの者たちが丸焦げとなり誰が誰かも分からないほどに損傷していたのだが、スズネと契約を交わした緑龍ラフネリアスの魔法によりその傷は綺麗に治されていた。

一人、また一人と、決して目を覚ますことのないその姿を目に焼き付けながら土を被せていく。
その場の誰一人として言葉を発することはない。
そして全ての埋葬を終えたスズネたちは、盛り上がった十五の土山を見ながら締め付けられるような思いを胸にただただ立ち尽くすことしか出来なかった。


「ヴゥゥゥゥ…ウゥゥゥゥ…」


咽び泣く声がする。
その声の主はアシュロットである。
自身が気を失っている間に命を落とした仲間たちの墓前で両膝をつき失意に陥っている。
そのような状態で必死に涙を堪えようとしてはいるものの、溢れ出るものを止めることなど出来るはずもない。
特に日頃から傲慢になりがちなアシュロットのことを諌め、誰よりも気に掛けていたナルセナの死は彼にとって簡単に受け入れられるものではなかった。
そして、その傍にはそっと肩を抱き泣き崩れるアシュロットを支えるファイングの姿があった。


「アシュロット君・・・」

「止めときなさいよ。今のアイツにはどんな言葉を掛けても慰めにはならないわ」

「うん」


これまで目にしてきたアシュロットとはかけ離れた姿を目の当たりにし、なんとかしてあげたいと思いつつも、何もすることが出来ないスズネとミリアなのであった。


《クソッ!アシュロットだけじゃない。アタシだって何も出来なかった・・・》


「ミリア?どうかしたの?」

「えっ!?いや、なんでもないわ。ちょっとボーッとしちゃってた。疲れてんのかな?アハハハハ」

「みんなも疲れてるみたいだし、今日はもうゆっくり休もう」


その後灰じぃの家にてジョーカーと合流したスズネたちは、島に来た時と同様にコルトの案内の下、舟でプエルト村へと戻った。
そして、村に到着するとその安心感とこれまでの疲れが一気に押し寄せ、全員気を失ったように眠りについたのだった ─────── 。


─────────────────────────


~ 翌朝 ~


ブンッ、ブンッ、ブンッ ──────── 。

ブンッ、ブンッ、ブンッ ──────── 。


《ダメだ。このままじゃ・・・。強くなるためには別の“何か”が必要な気がする。誰かに師事するか ───── でも、アタシにはそんなツテなんて・・・》


ザッザッザッ ────── 。


「おはよう、ミリア。今日も朝から精が出るね」


自身が抱える不安を振り払うかのように朝の鍛錬に打ち込むミリア。
そんな彼女の元へスズネが姿を見せる。
どうやら朝早く目が覚めたと思ったら部屋にミリアの姿が無いことに気づき探しに来たようだ。


「スズネ、おはよう。なんか興奮しちゃってんのか眠れなくってさ。身体動かしてた方が落ち着くのよ」

「アハハハハ。なんかミリアらしいね」


ザッザッザッ ────── 。


「お二人ともおはようございます」


二人がいつものように仲良く談笑していると、そこに剣を手に携えたマクスウエルが現れた。
額からは滝のような汗が流れており、身体からは熱を帯びた白い蒸気が立ち上っている。
その様子から察するに、マクスウェルもまたミリアと同様に朝から剣の鍛錬をしていたようである。


「あっ!マクスウェル君、おはよう」

「アンタも朝の鍛錬?」

「ええ、こういうのは日々の積み重ねですからね。それに今回の件で僕自身の無力さを痛感したので・・・。まだまだ努力してもっと力を付けないと、このままでは何一つとして護ることは出来ない」


ミリアが感じていた自身の力の無さを同じように痛感していたマクスウェルは、その現実と正面から向き合い、あえてその事を口にしたのだった。


「チッ、アンタはいいわよね」

「ん?何がですか?」

「なんでもない!アタシは先に戻ってるわ」

「???。僕何か変なことでも言いましたか?」

「う~ん。そんなことはないと思うけど…。まぁ~気にしなくても大丈夫だよ。私たちも戻ろ」

「そう…ですか。とりあえず戻りましょう」


─────────────────────────


~ 冒険者ギルドモア支部 支部長室 ~


「おう。お前ら久しぶりだな」


──────── !?


「メリッサ様!!」


合同クエストの報告のためにギルドへと訪れたのだが、今回は出会した魔族についての報告も合わせて行うため支部長室へと通されたスズネたち。
そこでスズネたちを出迎えたのは支部長のリタとギルドマスターのメリッサであった。


《メリッサ様がなんでここに?でも、これはチャンスだわ。四聖にも数えられるメリッサ様に剣の指導をしてもらえれば、アタシはもっと強くなれる》


他の者たちが再会を喜び談笑している間もミリアの頭の中はメリッサに剣の指導を願い出るということでいっぱいであった。

願い出たところで了承してもらえるのか ────── 。
そもそもギルドマスターとして多忙なメリッサに指導してもらうことなど可能なのか ────── 。

いろんなことが頭の中を駆け巡る。
しかし、どれだけ考えても頭の中はまとまらない。
それどころか時間の経過と共にどんどんグチャグチャになっていく。
それほどまでにミリアは追い込まれており切羽詰まった状態なのであった。


「誰だ!!」


突然大きな声を張り上げたメリッサ。
後ろを振り向くとグリーンアイランドから一緒について来ていた老人の姿が。


《なんだ…誰かと思ったら灰じぃさんか》


「!? ───── しっ…師匠!?」

「ホッホッホッ。久しいなメリッサ。 ─────── 」


《えっ!?師匠?メリッサ様の?確かメリッサ様の師匠って ──────── 》


こうして突如としてその正体が明かされた灰じぃ ──── もとい、剣聖ミロク。
その事実を知った時、ミリアの中で“何か”が固まった。
メリッサの師匠であるミロクは“剣聖”と謳われ、メリッサと同じ四聖に数えられてはいるが、世間一般の中でも数多くいる剣士たちの中でも“世界最強の剣士”といえば誰もが口を揃えてミロクであると答えるだろう。
そんな人物が今目の前にいる。
ミリアに考える必要などなかった。

そして ──────── 。


「力を得た先で何を成す?」

「最強。そして、女でもこの世界で一番になれることを証明してやる」

「ホッホッホッ。それでは、さっそく明日から始めようかの」

「はい!!」


─────────────────────────


~ 翌日 ~


前日の夜にスズネたちパーティメンバーにミロクに剣の指導をお願いし了承されたことを報告したミリア。
パーティに何の相談もなく勝手に決めてしまった自分に対してメンバーたちは誰一人として文句を言うことはなかった。
それどころかミリアの夢に向けた大きな一歩を喜び、心から応援してくれたのだった。


グッ、グッ。
ゴトッ ─────── チャキン。


「よし!やるぞ!!」


こうして気合十分のミリアは勢い良くホームを飛び出し、世界最強の剣士である剣聖ミロクの指導を受けるべく、修練場へ向けて駆け出したのであった。



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