魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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「本物の…王…だと?」

「なんだ?いっちょ前にショックでも受けてんのか?獣風情がちょっと力を得たくらいではしゃいでんじゃねーよ」


クロノの発言に対して明らかな怒りと殺意をあらわにするゼリック。
眉間にシワを寄せ、怒りのあまり全身から赤いオーラが滲み出ている。
そんな獣王の姿を初めて見たユニの身体が自然と震えだす。

ガクガクガクガクッ ──────── 。


「ユニさん、大丈夫ですか!?」

「はっ…はっ…はい…。すっ…すみません…」

「おい、スズネ。そいつを連れて離れてろ」

「うん、分かった。クロノ、無理しないでね」

「ハハッ。愚問だな」


そうこうしている間にもゼリックを覆うオーラはますます大きくなっており、彼の怒りの度合いが目に見えて表れていた。


「フゥー・・・。フゥー・・・」

「獣王!お前の相手は私だろ!よそ見などしている暇があるのか!!!」

「フゥー・・・。フゥー・・・。うるせぇーぞ、アーサー。あのクソ野郎…。魔王だかなんだか知らねぇーが、ナメたことばっか言いやがって ───── 楽に死ねると思うなよ」


まさに“怒髪天を衝く”とはこのことである。
ゼリックの顔に笑みは無い。
理性こそなんとか保っているようではあるが、完全にブチ切れる一歩手前のところまできてしまっている。


「クロノ殿!これは私と獣王の戦いだ。いくら貴殿とはいえども手出し無用でお願いしたい!!」


怒り狂う獣王ゼリック、そんな彼に対して過度なまでに挑発を続ける魔王クロノ。
そんな二人が作り出す状況に危機感を覚えたアーサーが、クロノを制止しようと願い出る。
しかし、魔王とはそんな願いを聞き入れるような男ではない。


「おいおい聖騎士長、勘違いすんな。勝手に助けに来たと思うな。勝手に仲間だと思うな。お前らヒト族に手を貸してやる道理など、この俺様には無いのだからな。さっきも言っただろ?俺は周囲からもてはやされ、のぼせ上がったお前ら二人をブチのめすために来たんだよ」


殺気に満ちた酷く冷たく鋭い言葉が投げ掛けられる。
そして、その思いも寄らない言葉を前に唖然とした表情をみせるアーサーなのであった。
そんな彼にもう一人の王が哀れみの言葉を贈る。


「ガッハッハッ。間抜けな面だなアーサー。まさか魔族の王が本気でお前らヒト族の味方になるとでも思ってたのか?笑わせるぜ。マジで ───── 無様だな」

「クッ…。黙れ!これはヒト族と獣人族の・・・我々の戦いだ!!」


バリバリバリバリッ ──────── 。

バリバリバリバリッ ──────── 。

二人の目の前に落とされたいかづち
最小限に威力などが抑えられていたそれは明らかな警告。


「ゴチャゴチャうるせぇーぞ!雑魚二人で戯れ合ってないでさっさとかかって来い」


わざと外された攻撃。
威嚇を意味しているのは言わずもがな。
ハッキリとした形で敵意を向けられた二人は対照的な表情を浮かべる。
アーサーはまさか本当に攻撃してくるとは思っていなかったかのように驚いた表情をみせ、片やゼリックはあえて攻撃を外されたことに腹を立てた様子でさらなる怒りをあらわにする。


「マジで…ナメた真似しやがって・・・。テメェー、人をおちょくんのも大概にしやがれ!!」


ドゴンッ! ──────── 。

大きな音と舞い上がった土煙だけを残してゼリックの姿が消える。
そして次の瞬間、突如としてクロノの目の前に姿を現したゼリックが渾身の力で刀を振り下ろしたのだった。


「この俺に雷で挑むとはいい度胸じゃねぇーか! ───── 鳴け!建御雷神たけみかづち


バチッ…バチチチチッ ──────── 。

それは主であるゼリックの呼び掛けに応えるように強力な雷を帯びてバチバチと大きな音を鳴らし始める。
そして、その雷の刃は鋭い斬撃となって澄ました態度を続ける魔王目掛けて一気に叩きつけられる。

バリバリバリバリッ!!!


「ガッハッハッハッハッ。魔王っつっても大したことねぇ~な」


ガガガッ…ガガガガガッ ──────── 。


「随分と楽しそうだな。王といっても獣風情では所詮この程度か」

「あぁ?」


自信満々で打ち込まれた斬撃。
意気揚々と相手を見下して吐かれたセリフ。
それほどの確信をもって放たれた攻撃だったのにも関わらず、ゼリックの一撃はクロノの周囲に張られた魔法障壁によって易々と受け止められたのであった。
しかし、この戦場においての攻防は当然これだけでは終わらない。

ザッザッザッザッザッ ──────── 。


「おい、私を相手によそ見をするとは随分と余裕だな」


ズズッ…ズズズズズッ ────── ズバァン!!

挑発を繰り返すクロノにばかり気を取られ、眼前の敵から目を逸らした一瞬の隙を突かれたゼリック。
その好機を逃すまいと高速移動によって一気に懐に潜り込んだアーサーが完全なる死角から聖剣エクスカリバーを斬り上げたのだった。


「こんの…クソ野郎がーーー」


シュンッ ───── スタッスタッスタッ。

完全に虚を突かれるも、間一髪のところで危険を察知し超反応でそれを回避した ───── かに思われたのだが。


ブシューッ!! ────── ツーーーッ。


距離を取ったゼリックの左目上部より血飛沫が舞う。
ギリギリのところで躱したかと思われたが、どうやら剣先が微かに触れていたようだ。

完全なる油断 ───── その一言に尽きる。

自身の不甲斐無さに苛立ちながらアーサーを睨みつける。
それでも流れ出る血の量ほど傷は深くなく、血を拭ったゼリックの目は死ぬどころか、むしろ先程までよりもさらに嬉々として輝いていた。

ようやく一太刀を浴びせることに成功したアーサーであったのだが、そんな彼には喜ぶ時間もひと息つく時間も与えられることはなかった。


「邪魔だ!どけ!! ──────── 爆裂炎弾エクスプロージョン


!? ──────── ドゴーーーーーン!!

アーサー目掛けて放たれた魔法。
高熱を帯びた球が直撃すると同時に大爆発が起こり、アーサーの身はあっという間に爆炎に包まれたのだった。


「アーサー様!!」


スズネの叫びも虚しく、アーサーが立っていた位置には激しい炎の柱が立ち上り、消えることなく燃え続けている。
しかし、その光景を前にしても相対している二人の男はどちらともアーサーが倒れたなどとは露ほども思っていなかった。


「ウオォォォォォ ──────── フンッ!!」


放たれた一閃。
それは周囲に強力な剣圧を放ち、それによって燃え盛っていた爆炎は跡形もなくかき消されたのであった。




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