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約束
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「し…失礼します」
──────── コトッ。
「ありがとう。ちょうど喉が渇いていたんだ。いただこう」
そう言うと、レオンハルトは目の前に出された飲み物に口をつける。
それと同時に王の隣に座るアーサーも同様に喉を潤したのだが、彼らの前に座る彼女たちはそれどころではなかった。
コソコソ…コソコソ…。
「ちょっと、何で国王様と聖騎士長様がこんなところに来てんのよ」
「そんなの僕だって知りませんよ」
「アンタ王国の聖騎士見習いでしょ。何で知らないのよ。ホンット役に立たないわね」
「なっ!?そこまで言うことないじゃないですか」
突然宿り木のホームへと訪れた国王レオンハルトと聖騎士長アーサー。
彼らの登場に動揺を隠せないミリアとマクスウェルが小声で口喧嘩を始め、他の者たちはそれを横目に苦笑いを浮かべながらも状況を理解出来ずにいた。
「クハハハハ。驚かせてしまったようですまないね」
「いえ…それよりも国王様がどうして私たちのホームまで?」
「此度の戦争、君たちには感謝してもしきれない思いがある。今回はそれを伝えに来た次第だ」
「そ…そんなそんな。そのお気持ちは本当に有り難いのですが、それでしたら今までと同様に王城まで呼んで頂ければこちらから伺いしましたのに」
「スズネの言う通りですよ。いくらアーサー様が一緒だからといっても、国王様が護衛も付けずにこのような場所まで・・・。万が一のことがあった場合、大問題になりますよ」
「相変わらずマクスウェルは心配性だな。そのために道中はわざわざ魔法で姿を変えて来たのだ。それに王国最強の聖騎士がいれば大抵の問題は問題ではなくなる」
「それは!…そうかもしれませんが」
「少し落ち着け、マクスウェル」
「はい・・・。申し訳ありません」
動揺が強過ぎるあまり声が大きくなってしまうマクスウェルであったが、師匠でもあるアーサーによって制止され、ようやく感情を落ち着かせた。
そして、来訪から十数分が経ち、スズネたちが平静を取り戻したことを確認したところでレオンハルトが話を切り出した。
「それでは本題に入ろうか。先ほども少し触れたんだが、此度の戦争において君たちには随分と助けられた。獣王国王城への道を切り開き、クロノ殿に関しては獣化した獣王ゼリックまでも捩じ伏せたとの報告を受けている。その結果、私が望んだ獣王国との和平協定も無事に結ぶことが出来た。改めてガルディア王国を代表して感謝する」
そう言うと、レオンハルトはスズネたちに向けて深々と頭を下げたのだった。
「ちょっ…あっ…頭を上げてください。私たちは私たちの出来ることをしたまでですから」
「そうですよ。それにアタシたちみたいな一般人に国王様が頭を下げるなんて」
「クハハハハ。そういってもらえると助かる。しかし、国王とはいっても一人の人間であることに変わりはない。誰かに助けられ、その相手に感謝を伝えるということは誰であろうとも当然のこと。私もそうしたいからそうしたまでだ」
常識的に考えれば、ミリアの言った通り国王が一般人であるスズネたちに頭を下げることなどあってはならないこと。
もし、これが王城での出来事だった場合、大臣であるドルーマンあたりが黙ってはいなかっただろう。
だからこそ、レオンハルトはわざわざ王都から離れた宿り木のホームにまで足を運んだのだ。
「まぁ~そう難しく考えないでもらいたい。ガルディアと獣王国ビステリアを救ってくれた者たちへ、この地に生きる者として感謝を伝えたかっただけの話だ」
穏やかな空気感に包まれながら優しい笑みをスズネたちへと向けるレオンハルト。
傍では、アーサーも同様に笑みを浮かべている。
そんな二人の姿を見て、ようやくスズネたちの緊張もほぐれ、笑顔がみえるようになったのだった。
そこからは和やかな団欒の時間となり、スズネたちは国王や聖騎士長と直接話せる貴重な時間を十分に楽しんだのであった。
そして、ある程度会話も弾みそれが落ち着きをみせ始めたところで、レオンハルトが今回来訪したもう一つの本題を口にする。
「いや、本当に楽しい時間だ。このような事が出来るのも君たちのおかげだ。特にクロノ殿、此度の獣王ゼリックとの戦いにおいて彼を生かしてくれたことに深く感謝する」
「くだらん。俺はお前らの仲間ではない。今回は俺に逆らった愚かな獣に躾をしたまでだ。貴様に礼を言われる筋合いはない」
「それでもだ。それでも貴殿の選択がガルディアと獣王国を、ひいてはこの大陸に生きる者たちの運命を大きく変えたのだ」
「フンッ」
「ホント素直じゃないわね。感謝されてんだから、その気持ちをちゃんと受け取りなさいよ」
「愚か者どもめ!旦那様は自分の力を他人にひけらかすようなことをせんだけなのじゃ」
「フフフフフ。まぁ~クロノらしいよ」
レオンハルトからの礼をあえて退け拒否するクロノであったのだが、もちろん本題はそこではない。
「クロノ殿、率直に聞きたいのだが・・・。貴殿、なぜこの大陸を支配しない?」
!?!?!?!?!?!?
レオンハルトの口から飛び出した衝撃的な言葉に驚きを隠せないスズネたち。
しかし、そんな彼女たちとは対照的に当の本人であるクロノは表情ひとつ変えずにとぼけたような返答をする。
「はぁ?質問の意味が分からないな」
「私は貴殿の本音を聞きたい。獣王ゼリックとの戦いはアーサーより報告を受けている。それだけの力を有しているのであれば、ガルディア王国だけではなく、この大陸そのものを手にすることも不可能ではないのではないか?」
「だから、言ってる意味が分かんねぇーって言ってんだよ。そこの聖騎士長様が夢か幻でも見たんじゃねぇーのか?」
「とぼけないでもらいたい。私は真剣な話をしている。天が割れ、そこから巨大な剣が現れたとも聞いている。それほどの魔法があれば、魔族を率いることなく、単身で我が国を攻め落とすことも可能ではないのか」
「そんな魔法あったっけな?忘れちまった」
真剣なレオンハルトの思いを逆撫でするようにとぼけた態度を続けながら不快な笑みをみせるクロノ。
それでも、レオンハルトは決して諦めることなく、真剣な眼差しを真っ直ぐ向け続けたのだった。
「・・・・・」
「・・・・・」
両者ともに口を開くことなく、沈黙の時間が流れる。
一分・・・五分・・・十分・・・。
どれくらいの時間が経っただろう。
そして、ついにその沈黙に耐えきれずスズネが口を開く。
「クロノ・・・」
「ハァ~~~~~。面倒くせぇ野郎だな。さっさと帰れよ」
「貴殿の本心を聞くまでは帰るわけにはいかない」
「ハァ~~~。分かったよ。俺の目指すものは魔族の復興だ」
!?!?!?!?!?!?!?!?
「おい!勘違いすんなよ。魔族の復興=支配ではない。それにその程度のことが目的であればとっくにやってるよ。目指すは全種族間の壁をぶち壊すことだ。国境だ、種族地域だ、そんないくつもあるくだらない壁を壊して、本当の意味での統一を実現させる」
あまりにもスケールの大きな話を前に、全員がその場で固まり、言葉を発することを忘れてしまう。
種族間の壁を無くす。
本当にそんなことが出来たなら、大陸に生きる全ての者がより自由な形で生きることが可能となる。
しかし、それはあまりにも険しく困難な道である。
それでも、クロノの言葉に嘘偽りはなく、その目は真剣そのものであった。
「本当にそんなことが可能なのか?」
「はぁ?そんなこと知らねぇーよ。出来るかどうかじゃなく ───── やるんだよ!!」
「どうしてそこまで・・・。何が貴殿をそこまで掻き立てるのだ?」
「・・・・・。約束だからだ。それが、あの人との ──────── 」
「あの人?」
「テメェーらには関係のないことだ。これ以上は話さん。以上!終わりだ!!」
強制的に話の終了を告げたクロノ。
どうやらこれ以上は彼の根幹に関わる内容になるようであり、それを隠すようにシャットアウトしたのであった。
「素晴らしい!クロノ殿、その目的の実現に微力ながら私も協力させてもらえないだろうか」
クロノがみせた心の一端に触れ、それに感銘を受けたレオンハルトが興奮気味に協力を申し出たのだが ─────── クロノの返答はあっさりとしたものであった。
「必要ない。今のお前程度では何の役にも立たん。お前らはお前らの出来る範囲のことを勝手にやってろ。そして、俺の邪魔だけはするな」
「クハハハハ。これは手厳しいな」
こうして、束の間のひと時を満喫し、レオンハルトとアーサーは王都メルサへと帰っていった。
そして、スズネたちも初めてクロノが目指しているものについて話を聞いたことにより、それぞれの中でいろいろな感情が芽生え始めるのであった。
──────── コトッ。
「ありがとう。ちょうど喉が渇いていたんだ。いただこう」
そう言うと、レオンハルトは目の前に出された飲み物に口をつける。
それと同時に王の隣に座るアーサーも同様に喉を潤したのだが、彼らの前に座る彼女たちはそれどころではなかった。
コソコソ…コソコソ…。
「ちょっと、何で国王様と聖騎士長様がこんなところに来てんのよ」
「そんなの僕だって知りませんよ」
「アンタ王国の聖騎士見習いでしょ。何で知らないのよ。ホンット役に立たないわね」
「なっ!?そこまで言うことないじゃないですか」
突然宿り木のホームへと訪れた国王レオンハルトと聖騎士長アーサー。
彼らの登場に動揺を隠せないミリアとマクスウェルが小声で口喧嘩を始め、他の者たちはそれを横目に苦笑いを浮かべながらも状況を理解出来ずにいた。
「クハハハハ。驚かせてしまったようですまないね」
「いえ…それよりも国王様がどうして私たちのホームまで?」
「此度の戦争、君たちには感謝してもしきれない思いがある。今回はそれを伝えに来た次第だ」
「そ…そんなそんな。そのお気持ちは本当に有り難いのですが、それでしたら今までと同様に王城まで呼んで頂ければこちらから伺いしましたのに」
「スズネの言う通りですよ。いくらアーサー様が一緒だからといっても、国王様が護衛も付けずにこのような場所まで・・・。万が一のことがあった場合、大問題になりますよ」
「相変わらずマクスウェルは心配性だな。そのために道中はわざわざ魔法で姿を変えて来たのだ。それに王国最強の聖騎士がいれば大抵の問題は問題ではなくなる」
「それは!…そうかもしれませんが」
「少し落ち着け、マクスウェル」
「はい・・・。申し訳ありません」
動揺が強過ぎるあまり声が大きくなってしまうマクスウェルであったが、師匠でもあるアーサーによって制止され、ようやく感情を落ち着かせた。
そして、来訪から十数分が経ち、スズネたちが平静を取り戻したことを確認したところでレオンハルトが話を切り出した。
「それでは本題に入ろうか。先ほども少し触れたんだが、此度の戦争において君たちには随分と助けられた。獣王国王城への道を切り開き、クロノ殿に関しては獣化した獣王ゼリックまでも捩じ伏せたとの報告を受けている。その結果、私が望んだ獣王国との和平協定も無事に結ぶことが出来た。改めてガルディア王国を代表して感謝する」
そう言うと、レオンハルトはスズネたちに向けて深々と頭を下げたのだった。
「ちょっ…あっ…頭を上げてください。私たちは私たちの出来ることをしたまでですから」
「そうですよ。それにアタシたちみたいな一般人に国王様が頭を下げるなんて」
「クハハハハ。そういってもらえると助かる。しかし、国王とはいっても一人の人間であることに変わりはない。誰かに助けられ、その相手に感謝を伝えるということは誰であろうとも当然のこと。私もそうしたいからそうしたまでだ」
常識的に考えれば、ミリアの言った通り国王が一般人であるスズネたちに頭を下げることなどあってはならないこと。
もし、これが王城での出来事だった場合、大臣であるドルーマンあたりが黙ってはいなかっただろう。
だからこそ、レオンハルトはわざわざ王都から離れた宿り木のホームにまで足を運んだのだ。
「まぁ~そう難しく考えないでもらいたい。ガルディアと獣王国ビステリアを救ってくれた者たちへ、この地に生きる者として感謝を伝えたかっただけの話だ」
穏やかな空気感に包まれながら優しい笑みをスズネたちへと向けるレオンハルト。
傍では、アーサーも同様に笑みを浮かべている。
そんな二人の姿を見て、ようやくスズネたちの緊張もほぐれ、笑顔がみえるようになったのだった。
そこからは和やかな団欒の時間となり、スズネたちは国王や聖騎士長と直接話せる貴重な時間を十分に楽しんだのであった。
そして、ある程度会話も弾みそれが落ち着きをみせ始めたところで、レオンハルトが今回来訪したもう一つの本題を口にする。
「いや、本当に楽しい時間だ。このような事が出来るのも君たちのおかげだ。特にクロノ殿、此度の獣王ゼリックとの戦いにおいて彼を生かしてくれたことに深く感謝する」
「くだらん。俺はお前らの仲間ではない。今回は俺に逆らった愚かな獣に躾をしたまでだ。貴様に礼を言われる筋合いはない」
「それでもだ。それでも貴殿の選択がガルディアと獣王国を、ひいてはこの大陸に生きる者たちの運命を大きく変えたのだ」
「フンッ」
「ホント素直じゃないわね。感謝されてんだから、その気持ちをちゃんと受け取りなさいよ」
「愚か者どもめ!旦那様は自分の力を他人にひけらかすようなことをせんだけなのじゃ」
「フフフフフ。まぁ~クロノらしいよ」
レオンハルトからの礼をあえて退け拒否するクロノであったのだが、もちろん本題はそこではない。
「クロノ殿、率直に聞きたいのだが・・・。貴殿、なぜこの大陸を支配しない?」
!?!?!?!?!?!?
レオンハルトの口から飛び出した衝撃的な言葉に驚きを隠せないスズネたち。
しかし、そんな彼女たちとは対照的に当の本人であるクロノは表情ひとつ変えずにとぼけたような返答をする。
「はぁ?質問の意味が分からないな」
「私は貴殿の本音を聞きたい。獣王ゼリックとの戦いはアーサーより報告を受けている。それだけの力を有しているのであれば、ガルディア王国だけではなく、この大陸そのものを手にすることも不可能ではないのではないか?」
「だから、言ってる意味が分かんねぇーって言ってんだよ。そこの聖騎士長様が夢か幻でも見たんじゃねぇーのか?」
「とぼけないでもらいたい。私は真剣な話をしている。天が割れ、そこから巨大な剣が現れたとも聞いている。それほどの魔法があれば、魔族を率いることなく、単身で我が国を攻め落とすことも可能ではないのか」
「そんな魔法あったっけな?忘れちまった」
真剣なレオンハルトの思いを逆撫でするようにとぼけた態度を続けながら不快な笑みをみせるクロノ。
それでも、レオンハルトは決して諦めることなく、真剣な眼差しを真っ直ぐ向け続けたのだった。
「・・・・・」
「・・・・・」
両者ともに口を開くことなく、沈黙の時間が流れる。
一分・・・五分・・・十分・・・。
どれくらいの時間が経っただろう。
そして、ついにその沈黙に耐えきれずスズネが口を開く。
「クロノ・・・」
「ハァ~~~~~。面倒くせぇ野郎だな。さっさと帰れよ」
「貴殿の本心を聞くまでは帰るわけにはいかない」
「ハァ~~~。分かったよ。俺の目指すものは魔族の復興だ」
!?!?!?!?!?!?!?!?
「おい!勘違いすんなよ。魔族の復興=支配ではない。それにその程度のことが目的であればとっくにやってるよ。目指すは全種族間の壁をぶち壊すことだ。国境だ、種族地域だ、そんないくつもあるくだらない壁を壊して、本当の意味での統一を実現させる」
あまりにもスケールの大きな話を前に、全員がその場で固まり、言葉を発することを忘れてしまう。
種族間の壁を無くす。
本当にそんなことが出来たなら、大陸に生きる全ての者がより自由な形で生きることが可能となる。
しかし、それはあまりにも険しく困難な道である。
それでも、クロノの言葉に嘘偽りはなく、その目は真剣そのものであった。
「本当にそんなことが可能なのか?」
「はぁ?そんなこと知らねぇーよ。出来るかどうかじゃなく ───── やるんだよ!!」
「どうしてそこまで・・・。何が貴殿をそこまで掻き立てるのだ?」
「・・・・・。約束だからだ。それが、あの人との ──────── 」
「あの人?」
「テメェーらには関係のないことだ。これ以上は話さん。以上!終わりだ!!」
強制的に話の終了を告げたクロノ。
どうやらこれ以上は彼の根幹に関わる内容になるようであり、それを隠すようにシャットアウトしたのであった。
「素晴らしい!クロノ殿、その目的の実現に微力ながら私も協力させてもらえないだろうか」
クロノがみせた心の一端に触れ、それに感銘を受けたレオンハルトが興奮気味に協力を申し出たのだが ─────── クロノの返答はあっさりとしたものであった。
「必要ない。今のお前程度では何の役にも立たん。お前らはお前らの出来る範囲のことを勝手にやってろ。そして、俺の邪魔だけはするな」
「クハハハハ。これは手厳しいな」
こうして、束の間のひと時を満喫し、レオンハルトとアーサーは王都メルサへと帰っていった。
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